旅3 恐ろしい?勇者は頼れる?仲間!
「「ごちそうさまー!!」」
現在13時、ちょうどお昼ご飯を食べ終えたところだ。
なだらかに続く土で出来た道…その道の両脇にある生い茂った草木…心地よく吹く風……
別に特別何かがある訳じゃないけど、なんとなくこの道の景色を見ながら食べたかったのでお昼は朝作って置いたサンドイッチを木陰に腰を下ろしながら食べた。
「よっこらしょっと…じゃあ出発しよっか!」
「うん…」
今日の朝ジーナを出て、私達は親魔物領のテトラストに向かう事にした。
どうやらそこにはリリム、つまりアメリちゃんのお姉さんが居るらしいのだ。
私の旅の目的はただいろんな所を見てまわるものだし、特に困ってはいないのだけど……
「でもサマリお姉ちゃん、ホントにいいの?アメリがお姉ちゃんたちに会いたいって言ってるだけでサマリお姉ちゃんにはかんけいない事なのに…」
「一緒に旅しているアメリちゃんのお姉さんに会いに行くんだから関係ないとは言いきれないし、私もアメリちゃんのお姉さん達に会ってみたいから全然良いって言ってるでしょ?」
「うん…」
どうやら自分の都合に私を合わさせてると考えているらしく、アメリちゃんは朝からずっとこんな調子だ。
そんなに気にすることではないのに…アメリちゃんは優しいなあ……
「それに私はアメリちゃんと一緒に旅がしたいから一緒にいるんだよ。そんな関係無いとか寂しい事言ってほしくないなあ…」
「うん…そうだね。ごめんなさい」
「いいよ、謝らなくても。そのかわりアメリちゃんは元気でいてほしいな!!」
「うん…うん!!じゃあ行こう!!」
一応元気になってくれたので一安心。というわけで早速テトラストに向けて出発!
……………
…………
………
……
…
カァー、カァー……
「……全然たどり着かないね…」
「……そうだね…」
現在18時。
昼から一回も休まずにずっと歩き続けたのに一向にテトラストどころかチェックポイントも見当たらない。
ジーナからテトラストまでは基本1本道だが、ベリリさんいわく『ちょっと』距離があるらしい。
出発前にベリリさんに聞いたところ、ジーナからずっと南に歩いていくと途中から道路が土から砂利に変わるところがあるらしく、更にそのままずっと真っ直ぐ進めば流れの激しい川が見えてくるとのこと。その川の上流方向へ川沿いに進めばテトラストに到着するらしい。
なので私達はまずその砂利に変わるところと川をチェックポイントとして目指していた。
だが、まだ私達の足元には土の地面が存在している。
まさかこんなに距離があるとは……
「どうする?今日はここまでにする?」
「うん……もうへとへと……」
ぐうぅぅぅぅ……
「……」
「…///」
ぐうぅぅぅぅ……
「今日はここまでにしよう。アメリちゃん、テント出してね」
「うん///」
歩きっぱなしで疲れたし、アメリちゃんのお腹が壮大に鳴っているので今日はこの道を少し外れた雑木林の中でキャンプする事にした。
明日までにはテトラストにたどり着くといいなぁ…
====================
「お腹いっぱいになった?」
「うん!ごちそうさま!!」
夕飯を食べ終え、満足になったのかアメリちゃんはもの凄く可愛い笑顔を浮かべている。
昼ごろの思い詰めている顔とは大違いだ。やっぱりアメリちゃんには笑顔でいてもらわなければ。
「ねえサマリお姉ちゃん、なんでこんなにお料理上手なの?」
「なんでって…うーん、昔からお料理していたから…かな?」
アメリちゃんにどうして料理が上手いのか聞かれたけど…あんまり自分が料理上手だって意識はないからはっきりとは答えられない。確かに両親含めいろんな人達が上手って言ってくれるけど、普通に料理しているだけなんだよな…
「ふーん……じゃあアメリも明日からお料理いっぱい手伝う!!」
「えっ!?」
とりあえず納得してくれたアメリちゃんが私の料理を手伝うと言い始めた。
一応今は食器を出してもらったりテーブルを拭いてもらったりと食事の手伝いはしてもらっているが、料理そのものは私が一人で作っている。
だって8歳の子に包丁持たせるとか危ないんだもん。私が料理を始めたのは7歳だけど、何回指を切りそうになった事か。
だからあまり手伝わせたくはないのだが…
「だってアメリもお料理出来るようになりたいもん!!ダメ?」
必死に頼んでくるアメリちゃんの目は本気だ。そこまで料理が出来るようになりたいのだろう。
ここまで本気なら逆に手伝ってもらった方がアメリちゃんのタメにもなるかな。
「うーん…いいよ!ただし、お料理中はちゃんと私の言う事を聞いてね!」
「はーい!!」
なので私は手伝ってもらう事にした。アメリちゃんが怪我してしまわないように気をつけなければ。
「アメリちゃんとりあえずシャワー浴びない?今日はずっと歩きっぱなしだったし風も吹いてたから多分体中に砂とかついてると思うし」
「うん!お姉ちゃんもいっしょにシャワー浴びよ!!」
「あ、お皿洗い終わったら行くよ。先行ってて!」
「ううん!アメリもお皿あらい手伝う!!」
…やっぱ可愛いな!!ホントこんな妹欲しかったよ!!
お皿洗いを二人で楽しく終わらせた後、二人で仲良くシャワーを浴びた。
アメリちゃんは子供なのに凄く綺麗な身体をしていてうらやましかった。
まあリリムだから綺麗なのは当たり前か。うらやましいのには変わりないけど。
そしてまだ日付が変わるまで約3時間ほどある時間にまた二人で一緒に寝た。
アメリちゃんの抱き心地は……言わなくてもわかるか。
====================
「やっと砂利道に出たね…」
「ながかったね〜…」
朝8時から歩き続けて現在13時。途中お昼ご飯を1時間位食べたので実質4時間歩いたらようやくチェックポイントとしていた砂利道に着いた。昨日から数えれば実に14時間歩いてようやくここである。
ベリリさんめ……なにが『ちょっと』距離があるだ。いくらなんでも長過ぎである。
アメリちゃんも長かったって言ってるのだから魔物基準で『ちょっと』という事でも無いだろう。クノイチ基準、それこそベリリさん基準では『ちょっと』かもしれないけど、これは普通に『かなりの』距離がある。
「でもまだまだテトラストまではかかりそうだね……」
「川見えないもんね……」
砂利道の周りは草木で囲まれていてとても歩いていけなさそうだからこのまま真っ直ぐ進めばいいのだろうけど、水の音もしなければ道の先に砂利以外の物が目に入る事もなかった。
これは今日も『テント』で1泊かな。
快適だから嫌ではないけど、早くアメリちゃんのお姉さんに会ってみたいからな〜…
「はぁ……とりあえず進もうか……」
「うんそう…だ……ね………!?」
「ん?どうしたのアメリちゃ……ん………!?」
先に進んでいこうとしたところ、アメリちゃんが何かを見たのか急に声が小さくなり驚いた顔をし始めた。
アメリちゃんの目線の先……草木が生い茂っている場所を見てみると……
「そこのリリム……もう逃さないぞ……今度こそ覚悟するんだな!!」
少し茶色っぽい黒髪と同じ色の瞳を持った、ジパング人に近い容姿の、歳が同じ位の男の子が居た。
「あ……そ………そんな……どうして………?」
しかし…その男の子は、白地に緑色と灰色で何かの模様が描かれたTシャツを着てジーパンを穿いているという服装こそ普通の男の子のものだが、背中には長い剣を背負っているし、教団を表す十字のアクセサリーが首に掛かっていた。
つまり、この男の子は……勇者。
「ふんっ!ジーナでたまたま見かけたからな。先回りして待ってたんだよ!」
「うそ……やだ………」
しかも、『もう』逃さないぞとか『今度こそ』覚悟と言ってたので、アメリちゃんが私と出会う前に襲ってきたと言っていた勇者だろう。
アメリちゃんも一度襲われたせいか目の前の勇者に怯えっぱなしだ。
「つーことで悪いけど死んでもらうぜ!!」
そう叫んだ勇者が背中の剣を鞘から抜き私の方に向かって剣を振り下ろしてきた!
……って私に!?なんで!?
「サマリお姉ちゃんにげて!!」
ドンッ!!
「えっ!?ちょっと!?アメリちゃん!?」
突然の事で動けなかった私をアメリちゃんが突き飛ばした。
「ありがとさん!よっと!」
「えっ!?きゃあああ!!うぐぅっ!!」
「アメリちゃん!!!!」
そのアメリちゃんの行動を狙っていたのか、勇者は顔をニヤリとさせた後剣をアメリちゃんの目の前に振り下ろした。
当たりこそしなかったものの、目の前に振り下ろされた事によってアメリちゃんは怯んで目を瞑ってしまった。
しかし、勇者の本当の狙いはそれだったらしく、目を瞑ったアメリちゃんのお腹をおもいっきり蹴り飛ばした!
「大丈夫アメリちゃん!!!?」
「げほっ…うぅ……いたいよ……」
「わざわざ女の子を突き離してくれてありがとさん。あくまで俺の狙いはお前だけだから女の子を無駄に傷つけなくて済むよ」
そのままアメリちゃんの上に剣を構える。どうやら剣を首に振り下ろすつもりのようだ。
(このままじゃアメリちゃんが…!!)
なんとか助けたいが今から起き上がって勇者に体当たりしようとしても間に合いそうにもない。
かといって諦めたくは無い。どうにかしてアメリちゃんを助けたい!
でもどうすれば……!?
ジャリッ……
(ん!?これは……!!)
何かが擦れ合う音が手元から聞こえた。
ふと見てみると、私の手の下には小さな石が沢山あった……って砂利道だから当たり前か。
でも砂利の中にはピンポン玉サイズのものもあった……!!
(そうだ!!これなら!!)
「じゃあ…悪いけど死んでもらうよ!!」
「うぅ……やだよ……アメリ死にたくないよ……」
私は咄嗟にそのピンポン玉サイズの石をいくつか拾い上げて……
「そう言われてもこっちも仕事だkいたっ!!痛い!!」
「うぅ……う?あ、サマリお姉ちゃん…」
全力で勇者の頭に投げつけた!
私が石を投げつけた事で勇者は怯みアメリちゃんから離れた。
その隙に私は立ち上がりアメリちゃんのもとへ駆け寄り、アメリちゃんを護るように抱き寄せた。
「アメリちゃん大丈夫!?お腹をおもいっきり蹴られてたけど…」
「う……サマリお姉ちゃん……だめ…アメリをおいて…はやく……にげて…」
「バカなこと言わないで!!」
アメリちゃんは逃げてって言ってくれるけど……アメリちゃんを置いて逃げるなんて……見殺しにするなんて絶対出来ない!!
「う……イテテ……もう!なにするんだ!!石を投げるなんて酷いじゃないか!!」
勇者が立ち直り私に文句を言ってきた。
「はあああ!?酷いじゃないかだって!?ふざけないで!!そっちはこんな可愛い子供を殺そうとしておいてよくそんな事言えたわね!?そっちのほうがよっぽど酷いでしょ!!」
そんな勇者に、私は怒った。
「はぁ…」
「そもそも魔物だからと言って子供を殺そうとするとかなんなの?バカなの?その行動が小さすぎるよ!!きちんとお話とかした事あるの?どーせないんでしょ?あったら殺そうとなんかしないよね?というか今のアメリちゃんを見てみなよ!!あなたに怯えてるでしょ?あなたはそんな怯えてる子供を蹴り飛ばした揚句殺そうとしているのよ?ばっかじゃないの!?魔物なら一切危険性の無い子供でも殺すの?それともアメリちゃんがあなたに何かした?何もしてないのに一方的に攻撃しただけでしょ?それにさっき仕事だからとか言ってたような気がするけど勇者の仕事って怯えてる子供を殺す事なの?違うでしょ?もしそうなら勇者ってダメ人間の集まりじゃん!!子供を一方的に傷つけるようなダメな人の集まりじゃん!!ていうかもうそんなの人間じゃなくて魔物じゃん!恐怖を与えて殺す魔物じゃんか!これじゃあどっちが魔物なのかわからないよ!本当にふざけないで!!最低よ!!」
怒りにまかせて普段じゃありえないほど目の前の勇者を言葉攻めした。
些か言い過ぎた気もする。
だって、良い終わるころから勇者はだんだんと顔色を悪くしていって……
「そ、そんな事言われたってさ、俺だって本当は殺したくは無いよ。魔物は怖いものだって言うから頑張って鍛えたけどいざ見てみたら人間の女子と見た目も中身もあんまり変わらないんだぜ?それを殺すとか俺ただの殺人鬼じゃんか。殺したくなんかないよ。特に子供なんて可愛いから絶対にやだよ。でもさ、勇者として教団のおえらいさんに子供のリリムを始末してこいって命令されたんじゃ仕方ないじゃん。使えなくて威張り散らしてるだけのクズでもあっちのほうが上司だもん、逆らえないじゃん。逆らったら『魔物の肩を持つ不届き者め!!』とか言ってキツイ罰を与えてきたりするし最悪の場合死刑だぜ?絶対嫌じゃんか。しかも右も左も文字もわからなかった俺を拾ってくれて勇者にしてくれた教団に悪いじゃないか。クズが多くても一応恩があるわけだから一生懸命無理して魔物にとっての悪い人を演じているのにそこまで言わなくても良いじゃないか。そりゃ俺だって蹴り飛ばしたときは胸が痛かったし剣を向けたときは『何やってんだ自分?』とか思ったさ。わざわざ逃げた相手をあほみたいに探してやっと見つけたから『今度こそ貴様は俺が殺すからな!』なんて自分に言い聞かせるように変な気合入れながら先回りして半日以上も待ち伏せしてるときは『俺何したいんだろう?』って考えたさ。でも『失敗しましたー(笑)』なんて言いながら帰ったら怒られて罰受けるわ役立たずとか罵られるわで嫌な思いするし最悪裏切り者のレッテル貼られて殺されるしどうしたらいいんだよーーー!!!!」
勇者は地面を指でぐりぐりと弄りながら暗い顔と声でなにやらブツブツと言いだした。
長すぎるし声も小さいためあまり喋っている内容を把握できなかったがとりあえず本当はアメリちゃんを殺したくないという事はわかった。
どうやらこの勇者もそうとう苦労しているようだ。立場と言うものがあるらしい。
不幸オーラが全開である。
「なんか勇者のお兄ちゃんかわいそう……」
あまりもの不幸な様子でさっきまで殺されかけたために怯えていたアメリちゃんが勇者をかわいそうに思い始めたほどだ。
なんだか私も目の前の不幸な勇者がかわいそうになってきた。
最初の強そうな雰囲気はどこに行ってしまったのか…
………あ、そうだ。
「じゃあどうするの?アメリちゃんを殺すの?」
「……どうしよう……」
「殺すのやめてって言ったらやめるの?殺したくないんでしょ?」
「そうだけど…そしたら帰った後あのウザいおえらいさんに何されるか…」
ますます暗くなった。そりゃあ最悪処刑されるとなると悩むよね。
「だったらさ…帰らなければいいじゃん!」
「そんな事言っても…俺他に行く当てないし…今そんなに金持ってないし…」
ほうほう…行く当てなし、金なしか…
「ところであなたは強いの?」
「へっ?いきなりなんだよ?」
「いいから!あなたは子供と言っても魔王の娘であるアメリちゃんを始末するように言われるような立場だから強いの?」
「まあ…そこそこは…魔法は使えないけど…」
さらに強いときた……これは良いじゃないか。
「だったらさ、教団なんてやめちゃって私達と一緒に旅しようよ!!」
「「ええっ!?」」
条件も良いし、私は勇者に一緒に旅しないかと誘ってみた。
やっぱりアメリちゃんも勇者も驚いた顔をしている。
「な、なんで俺を!?」
「だってアメリちゃんを殺さなかった場合帰れないんでしょ?しかも本人は殺したくないと言っている。だったらいいじゃん。今後もこうして襲ってくる勇者が居ないとは思えないし、強い人がいるのは心強いと思ったからね!」
「そ、そうだけど…でも…」
「迷う事ある?アメリちゃんを殺さずに教団の人に怒られない良い方法だと思うけど?行く当てないんだったらなおさら良いじゃん!」
「いや…そうじゃなくて…」
「あ、でもアメリちゃんが嫌がったら無しね」
「うん、それ。俺さっきまで殺そうとしてたわけだし…実際お腹蹴っちゃったし…」
「どう、アメリちゃん?」
私としてはさっきの呟きからしてみてもこの勇者は悪い人とは思えないどころか良い人だと思うので、一緒に旅をして護ってもらうのがとても良いと思うのだが、実際襲われたアメリちゃんが怖がってたら意味が無い。嫌いな人と一緒に旅したってつまらないだろうからね。
だから私はまだ抱きかかえているアメリちゃんに意見を聞いてみた。
「う〜ん……」
「ダメ?」
やっぱり相当悩んでいるようだ。見たことないほど難しい顔をして唸っている。
「う〜ん……ねえ、勇者のお兄ちゃん…」
「な、なんだい?」
「勇者のお兄ちゃんは、もうアメリをころそうとしない?」
「……ああ、もちろん。本当は最初っから殺したくなんて無かったし……」
「ホント?」
「うん、ホント」
「ホントにホント?」
「ああ、ホントにホントだ」
「ホントにホントにホント?」
「…ホントにホントにホントだ!!」
それだけ聞いたアメリちゃんの顔はいつも通りの可愛い顔になり……
「だったら……アメリたちといっしょに旅しよ!」
そして笑顔で、勇者にこう告げた。
「じゃ、決定ってことで!」
「……いいのかなぁ…」
「決定ってことで!!」
「……了解」
こうして、元勇者が(半分強引に)旅仲間になった!
「じゃあまず…え〜と、アメリちゃんだっけ?」
「う、うん。アメリだよ」
「アメリちゃん…お腹蹴ってゴメンなさい!それに殺そうとしてゴメンなさい!!」
元勇者は地面に膝をついて平伏し、額をおもいっきり地面に打ち付けてアメリちゃんに謝った。
ベリリさんのものよりは若干形が悪いけど地面が砂利だからキツそうな土下座だ。
今土下座流行ってるのかな?
「ううん、いいよ。これからアメリたちをまもってくれるんでしょ?えっと……」
「あ、俺の名前はユウロ!少し背が低いし童顔だけどこう見えて19歳だから。これからよろしく!」
「うん。よろしくねユウロお兄ちゃん!アメリは8さいだよ!」
へぇ〜ユウロって言うのか…もう少し若いと思った。
「よろしくユウロ!あ、私はサマリ。年齢は17歳よ!」
「えっ!?14歳位だと思ってた!そんなに変わらないんだ!!」
「……」
ユウロの目線から…私のBカップの胸と低い身長(150cm)と子供顔から判断してたな……
自分の事を棚にあげといて何だが、大変失礼である。
「……」
「……ごめんなさい。そんなに睨まないでください」
「わかればよろしい」
謝ったので許してあげよう。
「じゃ、テトラストへさっそくしゅっぱーつ!」
「そうだね!今日中に到着できると良いね!!」
話もまとまったし、全員の自己紹介も済んだので早速テトラストに向けて旅を再開させる事にした。
なんとか今日中にテトラストに着いて、明日アメリちゃんのお姉さんの情報を集めれば良いだろう。
アメリちゃんのお姉さんに会えるかもしれない……どんな人(リリム)だろうか?楽しみである。
「昨日二人が出た時間があの時間で…今ここに着いたってことは……うん、今日中にテトラストまでたどり着くのは物理的に無理だと思う」
「「……」」
「ほら、一応この地図ギリギリテトラスト載ってるけど、今ここだよね?ここってまだジーナの方が近い所なんだよね。だから到着は早くても明日の夕方、下手すれば明後日の朝から昼頃になるかと」
「「……」」
……だれだ、『ちょっと』距離あるって言った奴。
もし今度会う機会があったら絶対文句言ってやる。
現在13時、ちょうどお昼ご飯を食べ終えたところだ。
なだらかに続く土で出来た道…その道の両脇にある生い茂った草木…心地よく吹く風……
別に特別何かがある訳じゃないけど、なんとなくこの道の景色を見ながら食べたかったのでお昼は朝作って置いたサンドイッチを木陰に腰を下ろしながら食べた。
「よっこらしょっと…じゃあ出発しよっか!」
「うん…」
今日の朝ジーナを出て、私達は親魔物領のテトラストに向かう事にした。
どうやらそこにはリリム、つまりアメリちゃんのお姉さんが居るらしいのだ。
私の旅の目的はただいろんな所を見てまわるものだし、特に困ってはいないのだけど……
「でもサマリお姉ちゃん、ホントにいいの?アメリがお姉ちゃんたちに会いたいって言ってるだけでサマリお姉ちゃんにはかんけいない事なのに…」
「一緒に旅しているアメリちゃんのお姉さんに会いに行くんだから関係ないとは言いきれないし、私もアメリちゃんのお姉さん達に会ってみたいから全然良いって言ってるでしょ?」
「うん…」
どうやら自分の都合に私を合わさせてると考えているらしく、アメリちゃんは朝からずっとこんな調子だ。
そんなに気にすることではないのに…アメリちゃんは優しいなあ……
「それに私はアメリちゃんと一緒に旅がしたいから一緒にいるんだよ。そんな関係無いとか寂しい事言ってほしくないなあ…」
「うん…そうだね。ごめんなさい」
「いいよ、謝らなくても。そのかわりアメリちゃんは元気でいてほしいな!!」
「うん…うん!!じゃあ行こう!!」
一応元気になってくれたので一安心。というわけで早速テトラストに向けて出発!
……………
…………
………
……
…
カァー、カァー……
「……全然たどり着かないね…」
「……そうだね…」
現在18時。
昼から一回も休まずにずっと歩き続けたのに一向にテトラストどころかチェックポイントも見当たらない。
ジーナからテトラストまでは基本1本道だが、ベリリさんいわく『ちょっと』距離があるらしい。
出発前にベリリさんに聞いたところ、ジーナからずっと南に歩いていくと途中から道路が土から砂利に変わるところがあるらしく、更にそのままずっと真っ直ぐ進めば流れの激しい川が見えてくるとのこと。その川の上流方向へ川沿いに進めばテトラストに到着するらしい。
なので私達はまずその砂利に変わるところと川をチェックポイントとして目指していた。
だが、まだ私達の足元には土の地面が存在している。
まさかこんなに距離があるとは……
「どうする?今日はここまでにする?」
「うん……もうへとへと……」
ぐうぅぅぅぅ……
「……」
「…///」
ぐうぅぅぅぅ……
「今日はここまでにしよう。アメリちゃん、テント出してね」
「うん///」
歩きっぱなしで疲れたし、アメリちゃんのお腹が壮大に鳴っているので今日はこの道を少し外れた雑木林の中でキャンプする事にした。
明日までにはテトラストにたどり着くといいなぁ…
====================
「お腹いっぱいになった?」
「うん!ごちそうさま!!」
夕飯を食べ終え、満足になったのかアメリちゃんはもの凄く可愛い笑顔を浮かべている。
昼ごろの思い詰めている顔とは大違いだ。やっぱりアメリちゃんには笑顔でいてもらわなければ。
「ねえサマリお姉ちゃん、なんでこんなにお料理上手なの?」
「なんでって…うーん、昔からお料理していたから…かな?」
アメリちゃんにどうして料理が上手いのか聞かれたけど…あんまり自分が料理上手だって意識はないからはっきりとは答えられない。確かに両親含めいろんな人達が上手って言ってくれるけど、普通に料理しているだけなんだよな…
「ふーん……じゃあアメリも明日からお料理いっぱい手伝う!!」
「えっ!?」
とりあえず納得してくれたアメリちゃんが私の料理を手伝うと言い始めた。
一応今は食器を出してもらったりテーブルを拭いてもらったりと食事の手伝いはしてもらっているが、料理そのものは私が一人で作っている。
だって8歳の子に包丁持たせるとか危ないんだもん。私が料理を始めたのは7歳だけど、何回指を切りそうになった事か。
だからあまり手伝わせたくはないのだが…
「だってアメリもお料理出来るようになりたいもん!!ダメ?」
必死に頼んでくるアメリちゃんの目は本気だ。そこまで料理が出来るようになりたいのだろう。
ここまで本気なら逆に手伝ってもらった方がアメリちゃんのタメにもなるかな。
「うーん…いいよ!ただし、お料理中はちゃんと私の言う事を聞いてね!」
「はーい!!」
なので私は手伝ってもらう事にした。アメリちゃんが怪我してしまわないように気をつけなければ。
「アメリちゃんとりあえずシャワー浴びない?今日はずっと歩きっぱなしだったし風も吹いてたから多分体中に砂とかついてると思うし」
「うん!お姉ちゃんもいっしょにシャワー浴びよ!!」
「あ、お皿洗い終わったら行くよ。先行ってて!」
「ううん!アメリもお皿あらい手伝う!!」
…やっぱ可愛いな!!ホントこんな妹欲しかったよ!!
お皿洗いを二人で楽しく終わらせた後、二人で仲良くシャワーを浴びた。
アメリちゃんは子供なのに凄く綺麗な身体をしていてうらやましかった。
まあリリムだから綺麗なのは当たり前か。うらやましいのには変わりないけど。
そしてまだ日付が変わるまで約3時間ほどある時間にまた二人で一緒に寝た。
アメリちゃんの抱き心地は……言わなくてもわかるか。
====================
「やっと砂利道に出たね…」
「ながかったね〜…」
朝8時から歩き続けて現在13時。途中お昼ご飯を1時間位食べたので実質4時間歩いたらようやくチェックポイントとしていた砂利道に着いた。昨日から数えれば実に14時間歩いてようやくここである。
ベリリさんめ……なにが『ちょっと』距離があるだ。いくらなんでも長過ぎである。
アメリちゃんも長かったって言ってるのだから魔物基準で『ちょっと』という事でも無いだろう。クノイチ基準、それこそベリリさん基準では『ちょっと』かもしれないけど、これは普通に『かなりの』距離がある。
「でもまだまだテトラストまではかかりそうだね……」
「川見えないもんね……」
砂利道の周りは草木で囲まれていてとても歩いていけなさそうだからこのまま真っ直ぐ進めばいいのだろうけど、水の音もしなければ道の先に砂利以外の物が目に入る事もなかった。
これは今日も『テント』で1泊かな。
快適だから嫌ではないけど、早くアメリちゃんのお姉さんに会ってみたいからな〜…
「はぁ……とりあえず進もうか……」
「うんそう…だ……ね………!?」
「ん?どうしたのアメリちゃ……ん………!?」
先に進んでいこうとしたところ、アメリちゃんが何かを見たのか急に声が小さくなり驚いた顔をし始めた。
アメリちゃんの目線の先……草木が生い茂っている場所を見てみると……
「そこのリリム……もう逃さないぞ……今度こそ覚悟するんだな!!」
少し茶色っぽい黒髪と同じ色の瞳を持った、ジパング人に近い容姿の、歳が同じ位の男の子が居た。
「あ……そ………そんな……どうして………?」
しかし…その男の子は、白地に緑色と灰色で何かの模様が描かれたTシャツを着てジーパンを穿いているという服装こそ普通の男の子のものだが、背中には長い剣を背負っているし、教団を表す十字のアクセサリーが首に掛かっていた。
つまり、この男の子は……勇者。
「ふんっ!ジーナでたまたま見かけたからな。先回りして待ってたんだよ!」
「うそ……やだ………」
しかも、『もう』逃さないぞとか『今度こそ』覚悟と言ってたので、アメリちゃんが私と出会う前に襲ってきたと言っていた勇者だろう。
アメリちゃんも一度襲われたせいか目の前の勇者に怯えっぱなしだ。
「つーことで悪いけど死んでもらうぜ!!」
そう叫んだ勇者が背中の剣を鞘から抜き私の方に向かって剣を振り下ろしてきた!
……って私に!?なんで!?
「サマリお姉ちゃんにげて!!」
ドンッ!!
「えっ!?ちょっと!?アメリちゃん!?」
突然の事で動けなかった私をアメリちゃんが突き飛ばした。
「ありがとさん!よっと!」
「えっ!?きゃあああ!!うぐぅっ!!」
「アメリちゃん!!!!」
そのアメリちゃんの行動を狙っていたのか、勇者は顔をニヤリとさせた後剣をアメリちゃんの目の前に振り下ろした。
当たりこそしなかったものの、目の前に振り下ろされた事によってアメリちゃんは怯んで目を瞑ってしまった。
しかし、勇者の本当の狙いはそれだったらしく、目を瞑ったアメリちゃんのお腹をおもいっきり蹴り飛ばした!
「大丈夫アメリちゃん!!!?」
「げほっ…うぅ……いたいよ……」
「わざわざ女の子を突き離してくれてありがとさん。あくまで俺の狙いはお前だけだから女の子を無駄に傷つけなくて済むよ」
そのままアメリちゃんの上に剣を構える。どうやら剣を首に振り下ろすつもりのようだ。
(このままじゃアメリちゃんが…!!)
なんとか助けたいが今から起き上がって勇者に体当たりしようとしても間に合いそうにもない。
かといって諦めたくは無い。どうにかしてアメリちゃんを助けたい!
でもどうすれば……!?
ジャリッ……
(ん!?これは……!!)
何かが擦れ合う音が手元から聞こえた。
ふと見てみると、私の手の下には小さな石が沢山あった……って砂利道だから当たり前か。
でも砂利の中にはピンポン玉サイズのものもあった……!!
(そうだ!!これなら!!)
「じゃあ…悪いけど死んでもらうよ!!」
「うぅ……やだよ……アメリ死にたくないよ……」
私は咄嗟にそのピンポン玉サイズの石をいくつか拾い上げて……
「そう言われてもこっちも仕事だkいたっ!!痛い!!」
「うぅ……う?あ、サマリお姉ちゃん…」
全力で勇者の頭に投げつけた!
私が石を投げつけた事で勇者は怯みアメリちゃんから離れた。
その隙に私は立ち上がりアメリちゃんのもとへ駆け寄り、アメリちゃんを護るように抱き寄せた。
「アメリちゃん大丈夫!?お腹をおもいっきり蹴られてたけど…」
「う……サマリお姉ちゃん……だめ…アメリをおいて…はやく……にげて…」
「バカなこと言わないで!!」
アメリちゃんは逃げてって言ってくれるけど……アメリちゃんを置いて逃げるなんて……見殺しにするなんて絶対出来ない!!
「う……イテテ……もう!なにするんだ!!石を投げるなんて酷いじゃないか!!」
勇者が立ち直り私に文句を言ってきた。
「はあああ!?酷いじゃないかだって!?ふざけないで!!そっちはこんな可愛い子供を殺そうとしておいてよくそんな事言えたわね!?そっちのほうがよっぽど酷いでしょ!!」
そんな勇者に、私は怒った。
「はぁ…」
「そもそも魔物だからと言って子供を殺そうとするとかなんなの?バカなの?その行動が小さすぎるよ!!きちんとお話とかした事あるの?どーせないんでしょ?あったら殺そうとなんかしないよね?というか今のアメリちゃんを見てみなよ!!あなたに怯えてるでしょ?あなたはそんな怯えてる子供を蹴り飛ばした揚句殺そうとしているのよ?ばっかじゃないの!?魔物なら一切危険性の無い子供でも殺すの?それともアメリちゃんがあなたに何かした?何もしてないのに一方的に攻撃しただけでしょ?それにさっき仕事だからとか言ってたような気がするけど勇者の仕事って怯えてる子供を殺す事なの?違うでしょ?もしそうなら勇者ってダメ人間の集まりじゃん!!子供を一方的に傷つけるようなダメな人の集まりじゃん!!ていうかもうそんなの人間じゃなくて魔物じゃん!恐怖を与えて殺す魔物じゃんか!これじゃあどっちが魔物なのかわからないよ!本当にふざけないで!!最低よ!!」
怒りにまかせて普段じゃありえないほど目の前の勇者を言葉攻めした。
些か言い過ぎた気もする。
だって、良い終わるころから勇者はだんだんと顔色を悪くしていって……
「そ、そんな事言われたってさ、俺だって本当は殺したくは無いよ。魔物は怖いものだって言うから頑張って鍛えたけどいざ見てみたら人間の女子と見た目も中身もあんまり変わらないんだぜ?それを殺すとか俺ただの殺人鬼じゃんか。殺したくなんかないよ。特に子供なんて可愛いから絶対にやだよ。でもさ、勇者として教団のおえらいさんに子供のリリムを始末してこいって命令されたんじゃ仕方ないじゃん。使えなくて威張り散らしてるだけのクズでもあっちのほうが上司だもん、逆らえないじゃん。逆らったら『魔物の肩を持つ不届き者め!!』とか言ってキツイ罰を与えてきたりするし最悪の場合死刑だぜ?絶対嫌じゃんか。しかも右も左も文字もわからなかった俺を拾ってくれて勇者にしてくれた教団に悪いじゃないか。クズが多くても一応恩があるわけだから一生懸命無理して魔物にとっての悪い人を演じているのにそこまで言わなくても良いじゃないか。そりゃ俺だって蹴り飛ばしたときは胸が痛かったし剣を向けたときは『何やってんだ自分?』とか思ったさ。わざわざ逃げた相手をあほみたいに探してやっと見つけたから『今度こそ貴様は俺が殺すからな!』なんて自分に言い聞かせるように変な気合入れながら先回りして半日以上も待ち伏せしてるときは『俺何したいんだろう?』って考えたさ。でも『失敗しましたー(笑)』なんて言いながら帰ったら怒られて罰受けるわ役立たずとか罵られるわで嫌な思いするし最悪裏切り者のレッテル貼られて殺されるしどうしたらいいんだよーーー!!!!」
勇者は地面を指でぐりぐりと弄りながら暗い顔と声でなにやらブツブツと言いだした。
長すぎるし声も小さいためあまり喋っている内容を把握できなかったがとりあえず本当はアメリちゃんを殺したくないという事はわかった。
どうやらこの勇者もそうとう苦労しているようだ。立場と言うものがあるらしい。
不幸オーラが全開である。
「なんか勇者のお兄ちゃんかわいそう……」
あまりもの不幸な様子でさっきまで殺されかけたために怯えていたアメリちゃんが勇者をかわいそうに思い始めたほどだ。
なんだか私も目の前の不幸な勇者がかわいそうになってきた。
最初の強そうな雰囲気はどこに行ってしまったのか…
………あ、そうだ。
「じゃあどうするの?アメリちゃんを殺すの?」
「……どうしよう……」
「殺すのやめてって言ったらやめるの?殺したくないんでしょ?」
「そうだけど…そしたら帰った後あのウザいおえらいさんに何されるか…」
ますます暗くなった。そりゃあ最悪処刑されるとなると悩むよね。
「だったらさ…帰らなければいいじゃん!」
「そんな事言っても…俺他に行く当てないし…今そんなに金持ってないし…」
ほうほう…行く当てなし、金なしか…
「ところであなたは強いの?」
「へっ?いきなりなんだよ?」
「いいから!あなたは子供と言っても魔王の娘であるアメリちゃんを始末するように言われるような立場だから強いの?」
「まあ…そこそこは…魔法は使えないけど…」
さらに強いときた……これは良いじゃないか。
「だったらさ、教団なんてやめちゃって私達と一緒に旅しようよ!!」
「「ええっ!?」」
条件も良いし、私は勇者に一緒に旅しないかと誘ってみた。
やっぱりアメリちゃんも勇者も驚いた顔をしている。
「な、なんで俺を!?」
「だってアメリちゃんを殺さなかった場合帰れないんでしょ?しかも本人は殺したくないと言っている。だったらいいじゃん。今後もこうして襲ってくる勇者が居ないとは思えないし、強い人がいるのは心強いと思ったからね!」
「そ、そうだけど…でも…」
「迷う事ある?アメリちゃんを殺さずに教団の人に怒られない良い方法だと思うけど?行く当てないんだったらなおさら良いじゃん!」
「いや…そうじゃなくて…」
「あ、でもアメリちゃんが嫌がったら無しね」
「うん、それ。俺さっきまで殺そうとしてたわけだし…実際お腹蹴っちゃったし…」
「どう、アメリちゃん?」
私としてはさっきの呟きからしてみてもこの勇者は悪い人とは思えないどころか良い人だと思うので、一緒に旅をして護ってもらうのがとても良いと思うのだが、実際襲われたアメリちゃんが怖がってたら意味が無い。嫌いな人と一緒に旅したってつまらないだろうからね。
だから私はまだ抱きかかえているアメリちゃんに意見を聞いてみた。
「う〜ん……」
「ダメ?」
やっぱり相当悩んでいるようだ。見たことないほど難しい顔をして唸っている。
「う〜ん……ねえ、勇者のお兄ちゃん…」
「な、なんだい?」
「勇者のお兄ちゃんは、もうアメリをころそうとしない?」
「……ああ、もちろん。本当は最初っから殺したくなんて無かったし……」
「ホント?」
「うん、ホント」
「ホントにホント?」
「ああ、ホントにホントだ」
「ホントにホントにホント?」
「…ホントにホントにホントだ!!」
それだけ聞いたアメリちゃんの顔はいつも通りの可愛い顔になり……
「だったら……アメリたちといっしょに旅しよ!」
そして笑顔で、勇者にこう告げた。
「じゃ、決定ってことで!」
「……いいのかなぁ…」
「決定ってことで!!」
「……了解」
こうして、元勇者が(半分強引に)旅仲間になった!
「じゃあまず…え〜と、アメリちゃんだっけ?」
「う、うん。アメリだよ」
「アメリちゃん…お腹蹴ってゴメンなさい!それに殺そうとしてゴメンなさい!!」
元勇者は地面に膝をついて平伏し、額をおもいっきり地面に打ち付けてアメリちゃんに謝った。
ベリリさんのものよりは若干形が悪いけど地面が砂利だからキツそうな土下座だ。
今土下座流行ってるのかな?
「ううん、いいよ。これからアメリたちをまもってくれるんでしょ?えっと……」
「あ、俺の名前はユウロ!少し背が低いし童顔だけどこう見えて19歳だから。これからよろしく!」
「うん。よろしくねユウロお兄ちゃん!アメリは8さいだよ!」
へぇ〜ユウロって言うのか…もう少し若いと思った。
「よろしくユウロ!あ、私はサマリ。年齢は17歳よ!」
「えっ!?14歳位だと思ってた!そんなに変わらないんだ!!」
「……」
ユウロの目線から…私のBカップの胸と低い身長(150cm)と子供顔から判断してたな……
自分の事を棚にあげといて何だが、大変失礼である。
「……」
「……ごめんなさい。そんなに睨まないでください」
「わかればよろしい」
謝ったので許してあげよう。
「じゃ、テトラストへさっそくしゅっぱーつ!」
「そうだね!今日中に到着できると良いね!!」
話もまとまったし、全員の自己紹介も済んだので早速テトラストに向けて旅を再開させる事にした。
なんとか今日中にテトラストに着いて、明日アメリちゃんのお姉さんの情報を集めれば良いだろう。
アメリちゃんのお姉さんに会えるかもしれない……どんな人(リリム)だろうか?楽しみである。
「昨日二人が出た時間があの時間で…今ここに着いたってことは……うん、今日中にテトラストまでたどり着くのは物理的に無理だと思う」
「「……」」
「ほら、一応この地図ギリギリテトラスト載ってるけど、今ここだよね?ここってまだジーナの方が近い所なんだよね。だから到着は早くても明日の夕方、下手すれば明後日の朝から昼頃になるかと」
「「……」」
……だれだ、『ちょっと』距離あるって言った奴。
もし今度会う機会があったら絶対文句言ってやる。
12/03/07 21:08更新 / マイクロミー
戻る
次へ