13話 明かされた想いと結ばれた幸せ
「そこをどけウェーラ!!」
「絶対に嫌です!」
魔王が交代し、身体が人間の若いメスと混じったような感じになってから数年が経った。
まだまだ人間の肉の味を思い出しては嘔吐するし、相変わらず今の魔王に思う所はあるが、流石に今の身体にも慣れてきたので何不自由なく生活していた。
「貴様、オレに逆らうというなら死を覚悟しているのだろうな!?」
「たとえティマ様が相手でもこれだけは絶対に譲れません!! 私の持つ全てを使ってでも止めます!」
人間への恨みは全く無くなったわけではない。ないが……昔ほどむやみやたらと全人類を恨んでいるというわけではなくなっていた。
勿論、父様を殺した人間はこの手で引き裂きぐちゃぐちゃにし挽き肉にしてやりたいと思っているが、それ以外の人間は別に殺そうだなんて思わず、むしろかつての宿敵達に感じたように興味を示し始めていたぐらいだ。
これはきっと魔王の影響だろう。だが、交代したばかりならともかく今はそう嫌な気持にはならなかった。時間が視野を広くしたのもあるだろう。
「例え主に歯向かう事になっても、この人を貴方に殺させません!」
「なんだと……! ウェーラ、そいつはなあ……!!」
そんな感じに今の身体や考えを受け入れつつのんびりと暮らしていたある日の夜の事。ウェーラが一人の人間を紹介したいと言ってオレの前に連れてきた。
昔は同じ人間でも嫌っていたウェーラが、1年程前から今の魔物らしく一人の人間に恋をしていた。最近のウェーラはそれもあってか明るくなり、見た目通り可愛くなっていた。
ここのところ聞いてもいないのに本人の口から何度か聞いていたし、きっとそいつを連れてきたのだろうと思っていた。だからその人間が誰であれ、オレは受け入れるつもりだった。
だが……
「そいつは……父様の仇なんだよ!!」
ウェーラが連れてきた男は……よりにもよって現在この世でただ一人殺してやりたいと思っている男だった。
「ウェーラ、退かないのならお前ごと殺すぞ!」
「絶対にやらせません!」
オレはこの男を見た瞬間、ほぼ無くなっていた恨みや殺意が爆発した。
勿論殺してやろうと鎌を生成し近付こうとしたら……ウェーラが両腕を広げ間に割り込み、それを阻んできた。
「何故オレに逆らってまでその男を庇う!?」
「それは……」
お前ごと殺すと言っても、実際に鎌を振り下ろして杖を折っても、尚も引かないウェーラ。
今まで従順であり、また意見を言えど脅せばすぐに引き下がっていたのに、今回に限っては何をしても引き下がらない。こんな事は初めてだったので、オレは怒り任せに怒鳴りながらも困惑しその理由を聞いてみた。
「それは……私はこの人が大好きだからです! ティマ様と並ぶぐらい、掛け替えのない人だからです!」
「なんだと?」
「この人がティマ様のお父様を殺した人間だと存じております。ですが……それでも、私はこの人をお兄様にしたいのです! この人を愛してしまったから!」
「くっ……」
それは、まさに想像通りだった。
何をふざけた事を……とは言えなかった。こんなに真剣に叫ぶウェーラを見た事が無いし、本気だと言うのがわかったから、つい気圧されてしまった。
「それに……ティマ様に、もう誰も人間を殺してほしくないのです」
「な……」
「私だってそう、かつて楽しんで人間を殺して来た事を今後悔しています。たとえ相手が憎き仇だとしても、きっと殺す事に抵抗を感じているはずです」
「そ、そんな事は……」
「もし違ったとしても……私は見たくありません。大切な人同士が、殺し殺される場面なんて……」
「……」
オレが怖いのか全身を震わせながらもそう言い放つウェーラ。瞳をウルウルさせ、目元を赤らませた顔で睨みながら、一歩もそこから動こうとはしない。それだけ引けないのだろう。
「……ちっ。勝手にしろ」
「あ……」
昔のオレなら知るかと言ってウェーラごとバッサリ行っていただろう。だが、今のオレにそんな事できなかった。なんだかんだ言っても、ウェーラの事を大切な部下だと思っているからだ。
そんな相手が決死の覚悟で止めているのだ。オレは何もできず……その場から逃げるように離れた。
……………………
「はぁ……」
やりきれない気持ちを抱えながら、オレは家の近くにある泉の近くの木陰で一人しゃがみ夜空を眺めていた。
ようやく仇と会えたというのに……よりにもよってそれが自分の右腕ともいえる部下が伴侶として選んだ相手だった。
「くそぉ……」
魔王交代前ならこんなに頭がゴチャゴチャとなる事は無かっただろう。だが、今の時代の魔物の思考に染まりつつあるオレに、あの男を殺す事はできなかった。
父様の仇を取りたい。だけど、ウェーラが選んだ伴侶を殺す事は躊躇する。自分でも気持ちの整理がつかないオレは、ただ溜息しか出ない。
「……」
飛び出してきたのはいいが、これからどうしようか。そんな事を考えつつ泉に手元の石を投げ、揺れる水面をボーっと見つめる。
「……貴様、何をしに来た?」
そして、背後の草陰に気配を感じたので声を掛けた。
「……」
「どうした? オレに殺されに来たのか?」
振り向かなくてもわかる。背後に居るのは、憎き仇だった。
他に気配を感じないところから、どうやら一人で来たらしい。すぐにでも手を掛けたい衝動を抑えながら声を掛ける。なるべく冗談交じりに聞こえる様に、殺されに来たのかと。
「……そうしたければ、そうしてくれて構わない」
「……あ?」
その返答は、殺してくれても構わないだった。
予想外の、そして腹の立つ返答にイラッとしながらも、話を聞き続ける。
「ウェーラから詳しく聞いた。まさかあのバフォメットに慕っている子供が居たとは思わなかった……謝って許されるものではないだろうが……済まなかった」
「……」
そして、その口から出てきたのは……謝罪。
「何だよ……何だよそれは……!!」
「その……」
「ふざけんな! 今更謝られたって……もう……クソっ!」
そう、今更謝られたところで、何もかもが遅い。殺された父様は戻ってこないし……オレが見当外れな恨みで虐殺し続けた人間だって誰一人戻ってこない。
やるせない気持ちに、オレはただ叫び続けた。いろんな感情が混ざり合い、涙を溢れ出しながら……
「……なあ」
「ん?」
「一つ、聞いていいか?」
しばらく言葉にならない言葉を叫んだ後、少しだけ落ち着いたオレは一つ質問をぶつけた。
「なんで……なんで貴様はオレの父様を……殺したんだ?」
「……」
どうして、父様を殺したのかを聞きたかった。
あのウェーラが好きになるような男だし、意味もなく殺したとは思えなかった。だからこそオレは、その理由を問い質したのだ。
「殺した理由は……敵討ちだ」
「敵討ち……」
「ああ……俺は、大切な人達が皆別の魔物に殺されている。母さんはドラゴンに喰われ、妹はヴァンパイアに血を全て吸い殺され、一番の親友はベルゼブブに肉塊にされ……父さんはお前の父に潰され食われた」
「……そうか……」
その答えは……予想はできていたが、敵討ちだった。
そう、オレにとってこいつが父様の仇であるように、こいつにとっては父様がこいつの父の仇だったのだ。
「俺は、復讐してやろうと多くの魔物を屠ってきた。母さんの仇だけは結局行方知れずだが、他の奴は皆仇を取った。それを邪魔する無関係な魔物もな……ウェーラが居なければ、きっとまだ復讐心に取り憑かれていただろう。それだけ深い恨みを抱えていた。魔物にも、親子の愛情があるだなんてずっと知らずにな……」
「じゃあ……自分がやった事だから、お前は殺しても構わないと言ったのか?」
「そうだ。自分が復讐として仇を取ったから、その子供に同じ事をされても文句は言えまい。ウェーラには悪いが……俺はそうなる覚悟でここに来た」
自分が復讐で父様を殺した。だから息子であるオレに殺されても文句はない。
そう告げるこいつの言葉に嘘はない。覚悟を決めた顔で、オレをジッと見ている。
「はぁ……」
それを聞かされたオレは、大きく一回溜息を吐き……
「……ふんっ!」
「ぐおっ……!!」
グッと踏み込み、その顔を一発殴った。
「……ふん。まだ許したわけじゃねえけど、この一発で済ませてやる」
「いてて……」
まだ腹も立っているし、憎悪の感情も残っている。
それでも、一発思いっきり殴っただけで結構スッキリした。気持ちの整理も少しだがついた。
「貴様を殺したい……その気持ちは変わらない。だが、オレが貴様を殺したら今度はオレがウェーラに恨まれちまう。それは避けたいからな」
「じゃあ……」
「ああ。貴様を殺しはしない。だが、オレの父様を殺したことは償ってもらう」
「そうか……では、俺はお前に何を償えばいいんだ?」
「ウェーラの兄様になるってなら丁度良い。お前は一生オレの召使として生きろ。逆らわず、オレの忠実な部下としてな」
「ああ……いや、了解しました。私は貴方様の召使として、ウェーラの兄として一生貴方に仕えます」
だからオレは妥協した。滅茶苦茶に引き裂いてやりたい気持ちを抑え、一生を掛けて償ってもらう事に決めた。
「オレの名前はティマ。主君の名前ぐらい一回で覚えろよ」
「はい、ティマ様。私はエイン、以後お慕い申し上げます」
「ああ……」
何時から自分はこんなにも丸くなったのだろうか。
そんな事を考えながら、オレはエインと共に心配しているであろうウェーラの元へと戻ったのであった。
……………………
「はぁ……」
住処に戻ったオレは、一人ベッドの上に寝転んで天井を見上げつつぼーっとしていた。
「兄様、か……」
帰った後一頻り説明し、その後オレは疲れたのですぐ寝室に入ったので実際はわからないが……今頃エインとウェーラは自室で交わっているだろう。そんな考えが頭に過ぎったオレは、無意識にそうぽつりと呟いた。
「欲しい……のかな?」
幼い少女の背徳と魅力を伝え、魔物らしく快楽に忠実であれ……今の時代のサバトの教義はこうであると、少し前にたまたま知り合った同族のトップクラスにそう聞いた。
そして、サバトに所属する者にとって、その背徳と魅力を伝える主な相手……夫となる人間の事は兄と表現するとの事。ウェーラにとってのエインはまさにその兄様という事だろう。
「オレは元々オスだったんだが……この身体はメスだしな……」
ウェーラは今の魔物らしく、復讐鬼であったエインをサバトの教え通り見事ロリコンに堕とし、こうして兄様を手に入れたわけだ。
では、主君である自分自身はどうだろうか。
今の魔物らしく、兄様を欲しいと思っているのだろうか。
「……まあ、羨ましい気持ちも無くは無いかな」
オスだった自分が全く無くなったわけではない。言葉使いを直す気もないし、小便の仕方以外行動だってかつてとそう変わらない。料理の一つでも始めたらそれっぽくなるかもしれないが、生憎そんな気も起きない。
しかし、兄様ができたウェーラの事をどう思っているかを考えたら……正直羨ましいと思う所もある。オレには両親も兄弟も居ないから、心から甘えられる相手が欲しいなんて思うのかもしれない。
「だが、人間か……」
一番恨んでいた人間だって一応受け入れられたのだ。今更人間が嫌いだなんて思っていない。
だけど、自分が心を許す人間が現れるとも思えなかった。ずっと人間とは争い闘ってきた相手だ。オレ自身が簡単に身も心も委ねるなんて想像がつかない。新たにそんな人間が出てくるのだろうか。
そして、今まで生きてきた中でも、知り合いと呼べる人間は一部を除いて居ない。その一部に該当する奴だって、もう十何年も会っていないのだ。
「タイトか……あいつ、どこ行ったんだろうか……」
その一人……タイトの事を思い出す。この姿になるよりずっと前から会っていない、オレの宿敵……いや、ライバル。
ある日突然妹と共に姿を消し、行方知らずとなったタイト。まだこの世のどこかに居るならば、今一度会いたいものだ。
「今だったら、タイトとも友達に成れてたのかねぇ……」
もし、魔王が交代した後でも奴らと会えていたなら、その関係もまた違ったものになっていたのかもしれない。
オレ自身が変わっているので少なくとも殺し合う関係ではいられない。ずっとぶつかり合っていたので仲良くはなっていないかもしれないが……それでも、分かり合えていたかもしれない。
「もしかして奴が兄様に……ははっそれはないか」
いや、仲良くなるどころか兄様になってくれたかも……なんて、まずなさそうな想像が一瞬浮かんだ。タイトは妹と共に魔物狩りを生業としていた人間だ。時代が変われど、そう簡単に魔物とそこまで深く仲良くはならないだろう。良くて喧嘩友達で終わりそうだ。
「でも……もしかしたらって思うとな……」
とはいえ、現実がどうであれ想像するだけなら自由だ。
だから、オレはベッドの上で目を閉じてもしタイトがオレの兄様になっていたらと想像し始めた。
タイト個人はオレより弱いとはいえ、その強さは兄様として申し分ない。知っている人間の中では、一番身を委ねられる人物だからだ。
「んん……」
如何にも堅物そうだから正直そんなに想像できないが、兄様であれば夜の営みもするだろう。という事で奴の性器が目の前に出された場面を想像する。
見た事ないタイトの男性器を想像する……たったそれだけで自分の性器が疼き、身体が少し熱を帯びる。
思わず自分の右手を股間に伸ばし、戸惑い無く下着をずらし、ちょんっと肉球を性器に触れさせた。この身体になってからどころか、生まれてから一度も性的な刺激を感じた事が無かったオレは、初めての感覚につい声を漏らす。
「く……んんっ」
奴に胸を揉まれているのを想像しながら、左手で自分の薄い胸を揉む。少し硬くなった乳首を爪先で弾く度、甘い息が口から溢れ出す。
股間を弄る肉球が心なしか粘つく。どうやら分泌液により湿ってきているらしい。割れ目の上部に手を持って行くと、ぷっくりとした陰核に触れて心地良い痺れが腰を駆け抜ける。
「んっ……ふぁっ……」
指で性器を弄り続けるうちにいつしか耳に届くようになった、股間から発せられるくちゅくちゅといった水音。オレは目を瞑り、全てタイトにやってもらっている想像を浮かべながら、夢中になって自慰を続ける。
タイトの肉棒が挿入される光景を浮かべながら、指先を割れ目の中に挿れる。下腹部に感じる圧迫感に、出した事のない可愛らしい声が漏れる。
「ぁっ……ぃあっ……あぁぁあっ……!」
爪を立てないように、挿入した指で優しく膣内を掻き回す。キュンとした甘い疼きが発生するたびに泡立った愛液が垂れ、ベッドのシーツを濡らす。
ほんのちょっと膨らみのあるおっぱいをこねる手も、より快楽を得ようと激しくなる。バフォメットという種族は総じて貧乳だが、その分直に刺激を受けるのか、股間と同等に甘い痺れが胸から身体中に駆け巡る。
「ふぁああっ……あっ……タイ……ト……っ!!」
タイトとの甘い交わりの想像もフィニッシュを迎える。それに合わせ陰唇への抽挿を繰り返す指の動きも激しくし、腰もくねらせる。
そして、挿れてない指の爪先で陰茎を強く押し……身体を貫通する雷のような大きな快楽が突き抜け、絶頂に達した。
身体を大きく震わし、腰を痙攣させながら、声にならない叫びをあげながらつぅ……と涎を垂らす。初めてイッたオレの脳は、快楽の暴力に真っ白になっていた。
「っ……はぁ……はぁ……」
数十秒間オレの精神は天に上りっぱなしだったが……やがて落ち着きを取り戻し、多少の気怠さを感じながら地上へと落ちた。
荒くなった呼吸を整える為、力なくベッドに沈む。火照った身体と対照的に、自分の分泌液で濡れたシーツが冷たい。
「はぁ……な、何やってるんだオレは……」
所謂賢者モードと言うやつだろうか……絶頂が過ぎた脳は、冷静になって自分がしでかした事に戦慄した。
「なんで……あいつの事を考えながら……!」
オレが自慰をする時にした想像は……かつての宿敵と性行為をしているものであった。それは紛れもなくオレが奴に好意を感じ、深い仲になりたいと思っているという事だ。
別に、かつて殺し合っていた相手であろうが、今の時代で兄様になってもらいたいと思う事は問題ない。そう、そこは問題ない。
問題なのは……
「あいつは……もうこの世界に居ねえんだぞ……!」
兄様になってくれたらと思った宿敵は……タイトは、少なくともこの世界にはもう居ない人間だという事だ。
これまでも何度か奴の所在を調べたが、その成果は全くなかった。そう思いたくなかったが、導き出された結論は……奴らは異界ないし別の世界に飛ばされたという事だった。
そうでなければただの人間が突然跡を追えない程綺麗さっぱり居なくなるなんてありえない。だからこそそう結論付けた。
つまり、もう二度と会う事のない相手だという事が問題なのだ。
「止めろ……止めてくれぇ……あいつを好きだなんて思わせないでくれよぉ……」
魂すらなく、死霊魔術で蘇らせる事すら不可能な相手に恋をする。それは、もはやただの生き地獄でしかない。
触れ合う事すらできない者を兄様として愛しながら生きる。オレが今まで多くの人間を殺し喰らってきた罰だったとしても、それはあまりにも重すぎる。
「……忘れよう。タイトへの好意を……」
このままではオレは一生叶うはずのない恋愛に悩み、一生兄様なんてできない。それは今の魔物として、いくらなんでも辛過ぎる。
だからオレは、タイトの事が好きだという気持ちを脳内から消す事にした。奴の存在自体を消しても綻びが生じ好意ごと蘇る可能性があるので、好きという気持ちだけを魔術で封印する。
「オレはオスだ……兄様なんていらない……オレの心はオスなんだ……」
身体を縮こませ、必死に自己暗示を掛ける。自分はオスだから兄様なんていらない、タイトを好きになんてなるはずがないんだ……と。
「オレは……オレは何をしていたんだ? うわっシーツが濡れてる……もしかして漏らした? 嘘だろぉ……」
こうしてオレはタイトへの好意を封印し、綺麗さっぱりと忘れた。
もう一度タイトがオレの目の前にでも現れない限り、絶対に解かれる事のない程強固な封印を掛け、何事もなかったように日々を過ごして……
……………………
そうか……そうだった……
全部……思い出した……
封印した好意も……タイトへの想いも……
だからオレは……タイトの事を……
……………………
…………
……
…
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「ん……んん……」
全身に走る痛みと、ちょっとした重みを感じて俺は目を覚ました。
「ん……ここは……?」
うっすらと目を開くと、そこは見知らぬ天井……ではなく、おそらく事前に案内されたコロシアムの医務室だ。どうやら俺はティマとの闘いの最後に気絶してそのまま医務室に運ばれたらしい。
「負けてはいないよな……勝ってもいないみたいだけど……」
気絶前の記憶が正しければ、互いに最後の渾身の一撃を放ってそれが互いに決まり、引き分けに終わったはずだ。
満身創痍だった事もあって最後のほうの記憶が曖昧だが、レニューが引き分けだとアナウンスしていたのはハッキリと覚えているし間違ってはいないだろう。
「ティマの奴もいるのか……?」
引き分けで気絶した結果ここに俺が居るという事は、同じく気絶させたティマもここに居るのだろうか。何気なしにそう考えた俺は、周りを見渡すため首を動かそうとした。
その瞬間だった。
「よお。やっと目を覚ましたか」
「ん……!?」
ティマの声が、俺の足元から聞こえてきた。
向かい側に居るにしては声が近いなと思いつつ、身体が重く持ち上がらないので首を少し起こしてみると……
「お、お前……何故上に乗っている!?」
「あん? いいじゃねえか別に。何か問題あるわけじゃないんだしさ」
「いや重いわ!」
ティマはあろう事か俺の身体の上に寝そべっていた。
どうやら先程から身体が重かったのは単純にダメージが残っているだけではなく、ティマが俺の上に覆い被さっていたからみたいだ。
「お前さあ、女の子に重いとかデリカシーねえな」
「あ、いや、その……って、オスだったお前がそれを言うか」
「うるせえ。オレだって今や立派なメスだ。まあ、どちらにせよ身体は動かないだろうから別に良いだろ。外傷はモルダやアルサ達の手によって治してあるが、蓄積したダメージ自体は残っているはずだ。人間より回復が速い魔物のオレでもここまで這ってじゃなければこれなかったぐらいボロボロなんだ。お前は指先一つを動かすだけで精一杯だろ?」
「まあ……それはそうだが……」
重いと言われ少し顔を赤らめつつ、口を尖らせてそう反論するティマ。確かに、少し可愛く思えたその仕種は女の子らしいだろう。
それはともかく、たしかにティマの言う通り、それとは関係なしに身体は満足に動かせない。普段なら今の軽いティマを持ち上げてどかすのも簡単にできるが、今はできそうもないどころか腕を上げるのさえ辛い。
「まあ、この話はそれくらいにして、そろそろ本題に入るとするか」
「本題?」
思ったように身体が動かないなと思っていたら、突然そう話を切り替えてきたティマ。
「ああ。オレとお前で闘って、オレが勝てばお前はこの村で暮らし続ける、お前が勝てばお前は村から出ていくという話になっていたな?」
「ああ、その通りだが……」
「だが、結果は相変わらず引き分けとなった。白黒はっきりさせる為に再戦ってのもいいが、互いの体力が万全になるのを待ってるとかなり先になっちまうし、少なくともオレの村長やサバトの長としての生活に支障が出ちまうからできれば避けたい」
「ではどうするつもりだ?」
互いに満身創痍になる程の闘いをしたので少し忘れていたが……この闘いは、たしかに村を出ていくかどうか勝ったほうの意思を通す目的があった。
しかし、結果はかつてと同じく引き分けに終わった。ではどうするか、という提案をティマはし始めたのだ。
「何、勝負の方法を変えようと思ってな。今度は……先にイッたほうの負けだ」
ニタァ……と顔を厭らしく歪ませながらそう言ってきたティマ。
「……ん? 言った? 行った? 逝った?」
「イッた。んー、お前でもわかるように言うとだな……今の魔物らしく、今度は性行為で勝負して、先に絶頂を迎えたほうの負けって事だ」
「……はあ!?」
どうやら今度はその表情通り厭らしい勝負をしようと言っているようだが……話が突拍子過ぎて何を言っているのか理解できなかった。
「という事で早速……」
「ま、待て! な、何を……!?」
こっちが混乱しているのを良い事に、もぞもぞと人の上に乗ったまま動き始めたティマ。人のズボンのベルトをガチャガチャと触り、勝手に外しだした。
「よっと。ほぉ、これがタイトの……」
「ちょっやめ……」
そのまま穿いてたものを下着までずり下ろし、下半身を露わにされてしまった。
じろじろと恥部をみているティマ……普通は隠しているところを他人に見られるのは恥ずかしい。
「なんなんだお前はもう……うわっ」
「へへ……想像してたものより良いな♪」
しかもそれだけでは終わらず、今度は直に性器を触ってきた。急に触られた事で思わずビクッとなる。
「さっきからお前は何をする気だ!?」
「言ったじゃねえか。今度はセックス勝負だ。オレの膣内にお前のモノを挿れて、先にイッた方が負けだ。だからヤる為に前戯しないとな」
「だから何故そんな勝負……うっ」
「おっ膨らんできた……何故って、さっきは昔の闘いをして決着つかなかったんだから、今度は今の魔物らしい闘いで勝負だって話だ」
「なっ……ぐぅっ!」
触るだけでは飽き足らず、その獣の手で俺の性器を弄り始めたティマ。柔らかくぷにぷにとした肉球が陰茎を軽く摘み、肌触りの良い獣毛が亀頭をくすぐる。
かつてティマが言っていた通り、俺は性行為はおろか自慰すらした事は無い。そんな中で何度も経験があるティマに弄られて我慢できるはずもなく、俺のペニスはあっという間に硬く勃起してしまった。
「あっという間にガチガチだなぁ……これじゃあ挿れる前に射精しちまうぜ?」
「くそっ離せ!」
「おっと。暴れるなよ。オレだってお前より動けるとはいえフラフラなんだし危ないからさ。それに、思わぬ刺激を受けて自滅するかもしれないぞ?」
「ぐ……」
ペニスを両手のひらの肉球で挟み、ゆっくりと上下に動かし始めたティマ。柔らかく、それでいて弾力がある肉球による初めての感触に、俺は早くも込み上がってくるものを感じた。
そもそもそれを勝負だと認める気はないが、それとは関係なしにティマに一方的にいいようにされるのは嫌なので、動ける範囲で暴れてみたが……流石に現状はあちらのほうが力も入るようで、片手で男性器を握りしめたままもう片方の手で身体を押さえつけられてしまった。
「あはぁ……こんなにそそるちんぽは初めてだ❤」
「ぬぁ……お前、いい加減に……」
「おっと。お前だけ晒してるのは不公平だったな」
「なっ……!」
ティマは俺のペニスをじっと見て、臭いでも嗅いでいるのか鼻をひくつかせながらウットリしている。
流石に恥ずかしさも性的興奮も限界が近いのでいい加減にしろと文句を言おうとしたら……おもむろにそう言いだして性器から手を離して膝立ちになり、自身が身に付けているガーターベルトを下着ごと取り外し、性器を露わにした。
「へへっ、どうだオレのつるぷにロリマンコは?」
「……ごく……」
つぅ……と透明な糸が引いている、無毛でふっくらとしたティマの女性器。性的な興奮に襲われているのもあり、生まれてこの方見た事もなかった少し赤らむそれに、思わず釘付けになる。
「そうかそうか、そんなに気になるか♪」
「はっ……!? い、いやそんなわけじゃ……」
「ほら、仕方ねえからもっと間近に……んっ♪」
「んぶっ!?」
見ていたことを指摘され狼狽えている俺に構わず、見せつけるように腰を前に出しながら顔に近付いてきたティマ。そのまま顔の真上まで来た瞬間、腰を下ろして俺の顔に自身の性器をくっつけてきた。
どことなく汗の香りがする女性器をそのまま顔の上を小さく滑らせ、ねっとりとした愛液を顔に塗す。離れようにも、ぷにぷにと柔らかい太腿で顔を挟まれているので動けない。
「んぐっんぼっ……んんー!」
「ぅあっ、息が、敏感なところに……あっ」
口で呼吸すると愛液が入りかねないので鼻で息をするが、それが丁度敏感な部分を掠めているようで、そう言いながら腰をくねらせ善がり始める。
興奮でほんのり紅くなった、つやつやとして張りのある艶めかしいお腹の肌に目が犯され、聞いた事のないティマの甘い声に耳を犯される。それらは俺をより一層興奮させ、痛いほどに性器を膨らまさせる。
「んっ……オレのほうも良い感じに高まってきたし、そろそろ挿れるぞ」
「はぁ……はぁ……や、やめ……ひうっ!」
しばらくの間俺の口回りで自身の性器を擦り付けていたティマだったが、そう言って顔から離れ、そのままずりずりと俺の腰の上まで移動した。
やはりそのまま性交に持って行く気のようで、ピンと上向きに勃起したペニスをそっと掴み、角度を調整し始めた。やはり心のどこかでティマはおろか魔物と性行為を行う事に抵抗感がある俺は止めるように呟くが……ペニスに与えられる肉球の刺激に、変な喘ぎとなってしまう。
「ほーら、勝負だ……んんっ♪」
ティマは見せつけるように身体の角度を変えながら、さっきよりもゆっくりと腰を下ろす。
そして、俺の抵抗空しく……奴の性器と俺の性器が触れ合った。
「うあ……あっ……」
「ふあ……これ、すご……❤」
たったそれだけで経験のない俺は達しそうになったが、負けず嫌いなのが功を奏してなんとか耐えた。
しかし、それで終わりではない。ティマは更に腰を下ろし、ペニスを熱い膣内へと飲み込んでいく。身体が小さい分膣が狭いからか、乳搾りの如く精液を搾り取られそうだ。
「ん……くぅ……あああっ❤」
それでもなお耐えていたのだが……根本まで入り、ティマのお尻が太腿に触れた瞬間、吸引されるかの如く吸い付いてきた膣肉に俺は……為す術もなく射精してしまった。
「ふぁっ、なんだこれぇ……しゅご……ふぁああああっ❤」
腰が抜ける程激しい射精。突き抜けるような快楽に頭が真っ白になり、何も考えられない。
それはティマも同じようで……俺から精液を搾り始めて数秒後、背中を弓形に反らせながら甲高い声を発し、ビクッビクッと大きく震え出した。
そして更にペニスを締める力が強まり、より多くの精を膣内に放出してしまう。
「ぁ……ひぁぁ……ぁぁ……」
ティマの顔を見ると、うっすらと涙を浮かべ白目を剥いてだらしなく涎を垂らしていた。そんなぐちゃぐちゃな顔にも拘らず、何故か俺は一瞬可愛らしいと思ってしまった。それを抜きにしても、幸せな表情に見えた。
「ぁ……ふぅ……オレもイッちまった……へへっ♪」
しばらく身体を痙攣させていたティマだったが、少しずつ落ち着いてきて、大きく息を吐いた後、俺の身体に凭れ掛かる。
まだ息は荒く、涎も垂れっぱなしだが、意識はハッキリしているようだ。まだまだ興奮で顔を赤らめながらも、得意げな顔をこちらに向けてきた。
「だが……オレよりもお前のほうが早くイッたよなぁ……?」
「え、あ、ああ……」
「じゃあ、オレの勝ちだな!」
たしかにティマの言う通り、俺のほうが先に絶頂を迎えた。
「はぁ……確かにそうだが、そんなの知るか」
「は?」
「俺は同意した覚えはない。お前が勝手に条件を押し付けて強姦しただけだろ」
「あ、いやその……」
だが、そもそも俺はそれに同意していない。それなのにティマが勝手に盛り上がり強姦に及んだだけである。
こっちとしてはただ襲われて無茶苦茶にされただけだ。呆れと共に少し腹も立つ。
「そっちがそういう勝手な事をするなら、俺も勝手に村を出ていかせてもらう」
「え……」
「規則とか知らん。お前が先に無理矢理したんだ。文句は言わせん」
だから俺はティマに苦言を呈し、勝敗は関係なしに村を出ていくと告げた。
言われたティマはショックでも受けたように固まり、さっきまでの幸せそうな顔が嘘みたいに真顔になる。
「ふぅ……わかったらどけ」
「……」
そのまま何も言わないまま顔を俯かせる。心なしか小さく震えてるようにも感じる。
「……おい、ティマ?」
「……ろよ……」
「ん? 何か言って……」
俯いた状態のまま、何か呟いているティマ。いったい何を言っているのかと聞き返そうとして……
「村を出ていくとか言うのを止めろよ!」
「うおっ!?」
バッと顔を上げたティマは、部屋全体に響き渡るほど大きな声で叫んだ。
「何で……何でそういう事言うんだよ!」
「ティマ……」
「もう会えないと思ってた……そんなお前と奇跡的にまた会えた。なのに……なのに、なんでまたオレの前から消えようとするんだ!」
叫び声をあげるティマは……泣いていた。
「オレさ……この際正直に言うとさ、タイトの事が好きなんだよ。何百年も前から……お前を兄様にしたかったんだよ」
「え……」
「さっき夢を見て思い出したんだ。今までずっと忘れてたけど……お前と一緒に居たかったんだよ。世界中のどこにも居なくなったから諦めてたけど、この時代になってまた現れてくれた……それなのに! お前はまたオレの前から居なくなろうとする! 過去に帰りたいとか言いだす! 」
「……」
「昔に戻るとか止めてくれよ……オレとこの時代で一緒に居てくれよ! 頼むから……お願いだからオレの兄様としてずっとそばに居てくれよぉ……」
今まで秘めていた想いを、感情をむき出しにしてぶつけてくる。
好きだ、そしてもう二度と居なくならないでくれと、俺の着ている服を掴み、ボロボロと大粒の涙を流しながら訴えてくる。
「ひっく……うぅ…………ぁ……」
「……そっか……」
一通り叫び終え、また顔を伏せながらむせび泣くティマ。
その想いを聞いた俺は、ゆっくりと腕を伸ばして……ティマの頭の上に、ポンッと手を乗せた。
「俺はさ、昔からそういった恋だのなんだのってのはわからないけど……お前の気持ちはわかったよ」
「タイト……?」
「俺が時間移動したから、お前がずっと苦しんでいたのはわかった。それと……お前が俺の事を好きってのもな」
そのままティマの頭を撫でる。滑らかで艶のある髪の毛が、俺の手の動きに合わせてさらさらと流れる。
撫でられたからか少し落ち着き顔を上げたティマに、俺はティマの想いを聞いた返答をし始めた。
「正直に言うとさ、俺はこの時代に来てからずっと不安で仕方なかったんだ。いきなり500年も時間が飛んで、お前を始め何もかもが変わってたんだ。唯一同じ立場だったホーラも変わってしまった。その全てを割り切って受け入れようとしても、頑固な自分じゃ受け入れきれなかった」
「それは、わかってるけど……」
「だからさ、俺はあんなにも元の時代に帰りたいと言ってたんだ。知らないティマではなく、よく知っているティマに会いたいってな」
本当にある日突然時間の流れから弾き出され、知っている場所は風変りし、知っていたはずの宿敵も全く別の存在になったと思っていた。
それは俺の心に不安となって重く圧し掛かり、逃げたくなっていたのだ。例え今の時代のほうが良くても、そこは俺の生きる世界ではないと思っていたのだ。
「でもさ、こうしてお前とまた闘ってわかったよ。たとえ姿形が変わっても、お前はお前だったんだって。何も変わらない、俺のよく知るティマだってわかったよ」
「……そうか……」
だが、それは俺の思い違いでしかなかった。
実際にティマと闘い、またしても引き分けた。闘い方こそ違っていたが、闘いの最中に感じた高揚は一緒だった。かつての宿敵の面影も強く感じた。
姿形こそ違えど、結局目の前の宿敵は変わらないんだと実感した。
「ああ。それで、さっきは強姦された怒りでああ言ったけど……そこまで俺の事を想ってくれているお前の前から消えようだなんて、もう言わない。俺を好いてくれる奴を悲しませるのは嫌だからな……」
「それは……本当か?」
「ああ、本当だ」
そして、ティマの告白を聞いた俺は……もう、過去に帰る事を諦めざるを得なかった。
涙を流しながら消えないでくれと言われ、なお帰りたいだなんて思えるほど俺は薄情ではない。それに、ずっと変わらない宿敵が居てくれるなら、ここは俺の生きる世界だと思えるから、もう帰る必要もない。
ならば、ずっとそばに居て欲しいと願うティマの傍に居てあげたい。いや、俺もティマの傍に居たいと思い直したのだった。
「だがまあ、一つだけ言っておくとだな……俺にお前の言う兄様……夫が務まる自信は無い」
「え?」
「最初に言ったが、俺は恋だのなんだのってのがわからん。今のお前を可愛いとは思っているが……恋愛対象として見ているかどうか自分でもわかってないんだ」
とはいえ、ずっと魔物と戦っていたせいか恋愛感情というものが理解できないので、兄様になってくれと言われたほうはちょっと困っている。
たしかに今の……それこそ今現在俺に頭を撫でられているティマは可愛いとは思っているが、おそらくそれは微笑ましい感じの可愛さだ。少なくとも俺に幼女趣味はないので、恋愛対象として見れるかと言うと……正直自信は無い。
「ああ、なるほどな……そこは安心してくれ♪」
「安心してくれって……んぎっ!?」
それを聞いたティマは一瞬がっかりした表情を見せたものの、すぐさま悪戯でも思い浮かんだかのような笑顔になった。
その刹那……股間に強い快感が走った。
「サバトを統べるオレが、お前を直々に調教してやるからさ。幼い少女の背徳と魅力をたぁっぷり身体に刻ませて、オレの様な少女の身体でしか興奮できないように……いや、それどころかオレ以外じゃ欲情できないようにしてやるよ❤」
「なっ……んひぃっ!」
真剣な雰囲気に忘れていたが、俺とティマの性器はまだ結合しっぱなしだった。そこに力を入れ締め付け刺激され、俺のペニスは一瞬にして硬さを取り戻した。
そう宣告しながら起き上がったティマの下腹部には、結合部から流れ出ていた白濁液がこびり付き糸を引いていた。己の欲の塊をまじまじと見せつけられているようで恥ずかしい。
「ほら、どうだこのちっぱいは? 鷲掴みやパイズリはできないが……」
「わっな、何を……うおぉ……」
「んんっ、ほら、膨らみかけのおっぱいでも柔らかさはあるだろ? もっと激しく弄ってくれていいんだぜ?」
起き上がり様に、まだ身に付けていた上の服も脱ぎ去り、自身の胸を露わにしたティマ。小さくほんのりと膨らんだ丘の頂点に、綺麗な桜色の乳首がぷっくりと勃っている。
つい凝視していた隙にティマは俺の腕を掴み、その胸に無理矢理押し付けた。ティマの言う通りそこは確かに柔らかい。そして、手のひらの真ん中に当たる乳首は対照的に硬くコリコリしていた。
「んんっ、いいじゃねえか。拙いけど……んっ、ついさっきまで童貞だったとは思えねえぐらいには気持ち……あっ❤」
そのまま俺はティマに操られるわけでもなく、自然と胸をこねていた。小さな胸なので重量感は無いが、つぷっと沈む指先に彼女の高鳴った心臓の鼓動を感じ取れる。また、指先で乳首を押す度に、ティマの口から甘い吐息が漏れ出る。それに併せて締まる膣壁に、俺はまた精を注ぎそうになる。
「うぉ、これ、凄すぎ、てぇ……」
「んっ、はっ、ひっ、ひぁっ、おちんぽが、びくびくってぇ……♪ も、イクのっ、かぁ……❤」
ただ膣を締めるだけで留まらず、上下に動き始めたティマ。雁首が膣肉に摩擦を起こす度、ずんっと全身に大きな快感が叩きこまれる。
彼女の言うように、もう我慢の限界を迎えている。既に臨戦態勢を迎えた男根は、幼い少女の身体に欲望を蒔こうと大きく震えた。
「あっ、んんっ、ひぅっ!」
「ぐううあっ……!」
「ああっ、また、アツいのがぁ……❤」
そして、ティマが一際大きく跳ね、鈴口がその最奥に触れ……俺は先程以上の勢いで射精した。
その小さなお腹を自分の精液ではち切れんばかりにするかの如く流し込むペニスを、一滴も溢さんとぴっちりと締め付け吸い上げるティマのアソコ。その刺激が更なる快感となりより一層精を吐き出させる。
そんなティマもまた絶頂を迎えたようで、またしても身体を大きく震えさせ声にならない叫びをあげている。尻尾は逆立ち、耳も大きく広げ、全身で悦びを表現していた。
「ぅあ……あはぁ❤ も、もっとぉ……❤」
「ひぅ……ちょ、ちょっと待ってくれ。射精してすぐはヤバ……ああっ!」
「悪いが待てん。なんせこっちは何百年も待たされてるからな……最低でも溢れ出るぐらい子宮に注いでもらって、更に全身ぶっかけてもらうまで続けるからなぁ……❤」
何十秒と続いた射精が落ち着いた……と思えば間髪入れずティマはまた腰を振り始めた。
射精したばかりで敏感になっているペニスが蕩けてしまう程の快楽に痺れ、なすがままにされてしまう。
「ふぁぁあああっ! イイッ! 他の野郎のなんてもうムリィ! タイトのしゅきぃ……タイトらいしゅきぃ❤」
欲しかったモノがようやく手に入ったティマは、一心不乱にそれを貪り続ける。
俺もいつしかティマのもたらす肉欲の渦に飲み込まれ、幼い魅力と背徳をたっぷりと思い知らされるのであった。
====================
「はぁ……結局2時間も遅くなったじゃない」
「し、仕方ないでしょ! 貴女があそこまで私の痴態を晒させるからお兄様が興奮しっぱなしで……」
「すみません。ウェーラの可愛さのあまりすっかり盛り上がってしまって……」
「僕達はきちんと4時間で止めてきたのに……」
「いやいや、二人よりは早かっただけでヴェン君達も遅れてきたじゃないか」
「あ、いえ、移動時間考えずに4時間丁度で止めたのでちょっと遅れて……」
「まあ、過ぎた事だし仕方ないわ。とりあえずお兄ちゃん達の様子を見に行きましょ」
試合が終わってから6時間ぐらいが経った。
試合で溜まった性欲を存分に発散させた後、私とウェーラ、それにヴェン、エインさん、レニューさん、ジェニアさんが、お兄ちゃんとティマさんの仲をどうにかしようとコロシアムの控室に集まっていた。
「あれほどの激闘とはいえ、流石に6時間も経てば村長さんだけでも気絶から回復はしていそうだが……」
「まあ、この村の医療は高度な薬学と魔術のお陰で結構発展してますからね。疲労は残っていると思いますが、外傷はほぼなくなっていると思いますし、目覚めていてもおかしくはありません」
「んー、険悪なムードになってなければいいけど……」
ちょっと予定より遅れてしまったが、これから私達はお兄ちゃんとティマさんの仲を良い雰囲気にするため動き始めた。
まずは二人が寝ているであろう医務室へと急ぐ。まだ目覚めていなければいいが、起きていて喧嘩なんてしていたらすべてが無駄になってしまうので自然と早歩きとなる。
「自警団の団長という立場として言わせてもらえば、立派な戦力であるタイトにこの村を出ていってほしくないのだが……」
「それは皆同じ気持ちですよ。僕としても頼りになるお義兄さんですし、別れは寂しいです」
「私はあまりタイトさん自身とは関わりありませんが……ティマ様の幸せを願うならば、タイトさんと離れ離れにしては駄目だとは思いますからね」
「その通り。だからこそ二人をくっつけたい。協力感謝します」
それぞれの理由でお兄ちゃんに村を出ていってもらいたくない人が集まり、協力してくれる事に私はとても感謝した。
ここに居る人だけじゃない。もっと多くの人達に村を出ていってほしくないと思われている事に、お兄ちゃんが気付けばいいが……
「さて、協力するはいいけどどうすればいい?」
「お兄ちゃんのほうは私が言い包めます。皆さんはティマさんの恋心を刺激してください。ティマさんのほうだけでも自覚してもらえればグッと成功率は上がると思いますから」
「そのままラブラブな感じになってくれれば万々歳ってところか……しかし、上手くいくのか?」
私達がしようとしている事、それは……当初の予定通り試合結果を引き分けにして勝敗をあやふやにする事ができたので、この後は私達があの手この手を使いティマさんにお兄ちゃんへの恋心を自覚させ、なし崩しの形でくっつけさせるつもりだ。
お兄ちゃんもティマさんも結構頑固なので上手くいくかどうかはわからないが、何もしないで二人が別れるよりはマシだ。それに、流石に自分の事を愛している人が居るのに過去に帰ろうとするほどうちの兄は薄情ではないと思いたい。
上手くいけばそのまま丸く収まるだろう。もし上手くいかなくても、手段がないわけではない。
「できれば本人達で良い雰囲気になってほしいですが、最終手段としてウェーラが先程試合で使用していた杖……通称ラヴァーステッキがあります」
「ああ、そういえば気になっていたが、それはどういう杖なんだ?」
「これはいわば淫魔の力に特化した魔術媒体よ。私達魔物の持つ魔力を全てサキュバスのそれに変換する杖ってところかしら。試合で見せた通り発情させたりする魔術はかなり強力にする代わり、それ以外の攻撃系魔術は出せなくなるのよね」
「だからこそ私でもウェーラに勝てた。じゃなきゃ普通に負けてる」
「まあホーラちゃんは発情魔術ほとんど効かなそうだしな。成る程、それで無理やり二人を発情させて既成事実を作るって事か」
できれば素直な気持ちになって丸く収めたいのであまりやりたくはないが、最終手段としては二人に既成事実を作らせる事も可能だ。
たとえ無理やりだったとしても恋心を持つティマさんと責任感はきちんと持っているお兄ちゃんならばそのままくっつくだろう。後で滅茶苦茶怒られそうだが、それを覚悟でやるつもりだ。
「さてそろそろ医務室に……あれ?」
「ん? 何してるのかしら?」
簡潔に作戦を確認し、そろそろ医務室が見えてきたのだが……何故か見張りをしていたと思われる魔女とファミリアの二人が揃って部屋の中の様子をこそっと見ていた。
「あなた達、何してるの?」
「あ、ウェーラ様。しーっです」
「こっそり部屋の中を見て下さい」
「こっそり……あっ!」
一体何をしているのかを聞こうとしたら静かにしてと言われてしまった。
そして部屋の中の様子を見てと言われたので、こっそり見てみたら……
「ふああ……これで5発目だな♪ ほら、もっとオレの身体に溺れちまいな❤」
「うおぉぉ……はぁ……と、止まらん……これ……あふぁぁ……」
そこには、幸せそうに顔を紅潮させながら交わる二人の姿があった。
部屋中に立ち篭る精臭や5発目という発言からしてもう随分性交に励んでいるみたいだ。
「……これは私達が何かしなくても大丈夫そうね」
「ええ……本当に良かった」
「これで一安心ですね」
私達が手を出すまでもない。もう何も心配はいらないだろう。
幸せそうに交わり続ける二人の様子を見守りながら、私達は扉の外で皆胸を撫で下ろすのであった。
「絶対に嫌です!」
魔王が交代し、身体が人間の若いメスと混じったような感じになってから数年が経った。
まだまだ人間の肉の味を思い出しては嘔吐するし、相変わらず今の魔王に思う所はあるが、流石に今の身体にも慣れてきたので何不自由なく生活していた。
「貴様、オレに逆らうというなら死を覚悟しているのだろうな!?」
「たとえティマ様が相手でもこれだけは絶対に譲れません!! 私の持つ全てを使ってでも止めます!」
人間への恨みは全く無くなったわけではない。ないが……昔ほどむやみやたらと全人類を恨んでいるというわけではなくなっていた。
勿論、父様を殺した人間はこの手で引き裂きぐちゃぐちゃにし挽き肉にしてやりたいと思っているが、それ以外の人間は別に殺そうだなんて思わず、むしろかつての宿敵達に感じたように興味を示し始めていたぐらいだ。
これはきっと魔王の影響だろう。だが、交代したばかりならともかく今はそう嫌な気持にはならなかった。時間が視野を広くしたのもあるだろう。
「例え主に歯向かう事になっても、この人を貴方に殺させません!」
「なんだと……! ウェーラ、そいつはなあ……!!」
そんな感じに今の身体や考えを受け入れつつのんびりと暮らしていたある日の夜の事。ウェーラが一人の人間を紹介したいと言ってオレの前に連れてきた。
昔は同じ人間でも嫌っていたウェーラが、1年程前から今の魔物らしく一人の人間に恋をしていた。最近のウェーラはそれもあってか明るくなり、見た目通り可愛くなっていた。
ここのところ聞いてもいないのに本人の口から何度か聞いていたし、きっとそいつを連れてきたのだろうと思っていた。だからその人間が誰であれ、オレは受け入れるつもりだった。
だが……
「そいつは……父様の仇なんだよ!!」
ウェーラが連れてきた男は……よりにもよって現在この世でただ一人殺してやりたいと思っている男だった。
「ウェーラ、退かないのならお前ごと殺すぞ!」
「絶対にやらせません!」
オレはこの男を見た瞬間、ほぼ無くなっていた恨みや殺意が爆発した。
勿論殺してやろうと鎌を生成し近付こうとしたら……ウェーラが両腕を広げ間に割り込み、それを阻んできた。
「何故オレに逆らってまでその男を庇う!?」
「それは……」
お前ごと殺すと言っても、実際に鎌を振り下ろして杖を折っても、尚も引かないウェーラ。
今まで従順であり、また意見を言えど脅せばすぐに引き下がっていたのに、今回に限っては何をしても引き下がらない。こんな事は初めてだったので、オレは怒り任せに怒鳴りながらも困惑しその理由を聞いてみた。
「それは……私はこの人が大好きだからです! ティマ様と並ぶぐらい、掛け替えのない人だからです!」
「なんだと?」
「この人がティマ様のお父様を殺した人間だと存じております。ですが……それでも、私はこの人をお兄様にしたいのです! この人を愛してしまったから!」
「くっ……」
それは、まさに想像通りだった。
何をふざけた事を……とは言えなかった。こんなに真剣に叫ぶウェーラを見た事が無いし、本気だと言うのがわかったから、つい気圧されてしまった。
「それに……ティマ様に、もう誰も人間を殺してほしくないのです」
「な……」
「私だってそう、かつて楽しんで人間を殺して来た事を今後悔しています。たとえ相手が憎き仇だとしても、きっと殺す事に抵抗を感じているはずです」
「そ、そんな事は……」
「もし違ったとしても……私は見たくありません。大切な人同士が、殺し殺される場面なんて……」
「……」
オレが怖いのか全身を震わせながらもそう言い放つウェーラ。瞳をウルウルさせ、目元を赤らませた顔で睨みながら、一歩もそこから動こうとはしない。それだけ引けないのだろう。
「……ちっ。勝手にしろ」
「あ……」
昔のオレなら知るかと言ってウェーラごとバッサリ行っていただろう。だが、今のオレにそんな事できなかった。なんだかんだ言っても、ウェーラの事を大切な部下だと思っているからだ。
そんな相手が決死の覚悟で止めているのだ。オレは何もできず……その場から逃げるように離れた。
……………………
「はぁ……」
やりきれない気持ちを抱えながら、オレは家の近くにある泉の近くの木陰で一人しゃがみ夜空を眺めていた。
ようやく仇と会えたというのに……よりにもよってそれが自分の右腕ともいえる部下が伴侶として選んだ相手だった。
「くそぉ……」
魔王交代前ならこんなに頭がゴチャゴチャとなる事は無かっただろう。だが、今の時代の魔物の思考に染まりつつあるオレに、あの男を殺す事はできなかった。
父様の仇を取りたい。だけど、ウェーラが選んだ伴侶を殺す事は躊躇する。自分でも気持ちの整理がつかないオレは、ただ溜息しか出ない。
「……」
飛び出してきたのはいいが、これからどうしようか。そんな事を考えつつ泉に手元の石を投げ、揺れる水面をボーっと見つめる。
「……貴様、何をしに来た?」
そして、背後の草陰に気配を感じたので声を掛けた。
「……」
「どうした? オレに殺されに来たのか?」
振り向かなくてもわかる。背後に居るのは、憎き仇だった。
他に気配を感じないところから、どうやら一人で来たらしい。すぐにでも手を掛けたい衝動を抑えながら声を掛ける。なるべく冗談交じりに聞こえる様に、殺されに来たのかと。
「……そうしたければ、そうしてくれて構わない」
「……あ?」
その返答は、殺してくれても構わないだった。
予想外の、そして腹の立つ返答にイラッとしながらも、話を聞き続ける。
「ウェーラから詳しく聞いた。まさかあのバフォメットに慕っている子供が居たとは思わなかった……謝って許されるものではないだろうが……済まなかった」
「……」
そして、その口から出てきたのは……謝罪。
「何だよ……何だよそれは……!!」
「その……」
「ふざけんな! 今更謝られたって……もう……クソっ!」
そう、今更謝られたところで、何もかもが遅い。殺された父様は戻ってこないし……オレが見当外れな恨みで虐殺し続けた人間だって誰一人戻ってこない。
やるせない気持ちに、オレはただ叫び続けた。いろんな感情が混ざり合い、涙を溢れ出しながら……
「……なあ」
「ん?」
「一つ、聞いていいか?」
しばらく言葉にならない言葉を叫んだ後、少しだけ落ち着いたオレは一つ質問をぶつけた。
「なんで……なんで貴様はオレの父様を……殺したんだ?」
「……」
どうして、父様を殺したのかを聞きたかった。
あのウェーラが好きになるような男だし、意味もなく殺したとは思えなかった。だからこそオレは、その理由を問い質したのだ。
「殺した理由は……敵討ちだ」
「敵討ち……」
「ああ……俺は、大切な人達が皆別の魔物に殺されている。母さんはドラゴンに喰われ、妹はヴァンパイアに血を全て吸い殺され、一番の親友はベルゼブブに肉塊にされ……父さんはお前の父に潰され食われた」
「……そうか……」
その答えは……予想はできていたが、敵討ちだった。
そう、オレにとってこいつが父様の仇であるように、こいつにとっては父様がこいつの父の仇だったのだ。
「俺は、復讐してやろうと多くの魔物を屠ってきた。母さんの仇だけは結局行方知れずだが、他の奴は皆仇を取った。それを邪魔する無関係な魔物もな……ウェーラが居なければ、きっとまだ復讐心に取り憑かれていただろう。それだけ深い恨みを抱えていた。魔物にも、親子の愛情があるだなんてずっと知らずにな……」
「じゃあ……自分がやった事だから、お前は殺しても構わないと言ったのか?」
「そうだ。自分が復讐として仇を取ったから、その子供に同じ事をされても文句は言えまい。ウェーラには悪いが……俺はそうなる覚悟でここに来た」
自分が復讐で父様を殺した。だから息子であるオレに殺されても文句はない。
そう告げるこいつの言葉に嘘はない。覚悟を決めた顔で、オレをジッと見ている。
「はぁ……」
それを聞かされたオレは、大きく一回溜息を吐き……
「……ふんっ!」
「ぐおっ……!!」
グッと踏み込み、その顔を一発殴った。
「……ふん。まだ許したわけじゃねえけど、この一発で済ませてやる」
「いてて……」
まだ腹も立っているし、憎悪の感情も残っている。
それでも、一発思いっきり殴っただけで結構スッキリした。気持ちの整理も少しだがついた。
「貴様を殺したい……その気持ちは変わらない。だが、オレが貴様を殺したら今度はオレがウェーラに恨まれちまう。それは避けたいからな」
「じゃあ……」
「ああ。貴様を殺しはしない。だが、オレの父様を殺したことは償ってもらう」
「そうか……では、俺はお前に何を償えばいいんだ?」
「ウェーラの兄様になるってなら丁度良い。お前は一生オレの召使として生きろ。逆らわず、オレの忠実な部下としてな」
「ああ……いや、了解しました。私は貴方様の召使として、ウェーラの兄として一生貴方に仕えます」
だからオレは妥協した。滅茶苦茶に引き裂いてやりたい気持ちを抑え、一生を掛けて償ってもらう事に決めた。
「オレの名前はティマ。主君の名前ぐらい一回で覚えろよ」
「はい、ティマ様。私はエイン、以後お慕い申し上げます」
「ああ……」
何時から自分はこんなにも丸くなったのだろうか。
そんな事を考えながら、オレはエインと共に心配しているであろうウェーラの元へと戻ったのであった。
……………………
「はぁ……」
住処に戻ったオレは、一人ベッドの上に寝転んで天井を見上げつつぼーっとしていた。
「兄様、か……」
帰った後一頻り説明し、その後オレは疲れたのですぐ寝室に入ったので実際はわからないが……今頃エインとウェーラは自室で交わっているだろう。そんな考えが頭に過ぎったオレは、無意識にそうぽつりと呟いた。
「欲しい……のかな?」
幼い少女の背徳と魅力を伝え、魔物らしく快楽に忠実であれ……今の時代のサバトの教義はこうであると、少し前にたまたま知り合った同族のトップクラスにそう聞いた。
そして、サバトに所属する者にとって、その背徳と魅力を伝える主な相手……夫となる人間の事は兄と表現するとの事。ウェーラにとってのエインはまさにその兄様という事だろう。
「オレは元々オスだったんだが……この身体はメスだしな……」
ウェーラは今の魔物らしく、復讐鬼であったエインをサバトの教え通り見事ロリコンに堕とし、こうして兄様を手に入れたわけだ。
では、主君である自分自身はどうだろうか。
今の魔物らしく、兄様を欲しいと思っているのだろうか。
「……まあ、羨ましい気持ちも無くは無いかな」
オスだった自分が全く無くなったわけではない。言葉使いを直す気もないし、小便の仕方以外行動だってかつてとそう変わらない。料理の一つでも始めたらそれっぽくなるかもしれないが、生憎そんな気も起きない。
しかし、兄様ができたウェーラの事をどう思っているかを考えたら……正直羨ましいと思う所もある。オレには両親も兄弟も居ないから、心から甘えられる相手が欲しいなんて思うのかもしれない。
「だが、人間か……」
一番恨んでいた人間だって一応受け入れられたのだ。今更人間が嫌いだなんて思っていない。
だけど、自分が心を許す人間が現れるとも思えなかった。ずっと人間とは争い闘ってきた相手だ。オレ自身が簡単に身も心も委ねるなんて想像がつかない。新たにそんな人間が出てくるのだろうか。
そして、今まで生きてきた中でも、知り合いと呼べる人間は一部を除いて居ない。その一部に該当する奴だって、もう十何年も会っていないのだ。
「タイトか……あいつ、どこ行ったんだろうか……」
その一人……タイトの事を思い出す。この姿になるよりずっと前から会っていない、オレの宿敵……いや、ライバル。
ある日突然妹と共に姿を消し、行方知らずとなったタイト。まだこの世のどこかに居るならば、今一度会いたいものだ。
「今だったら、タイトとも友達に成れてたのかねぇ……」
もし、魔王が交代した後でも奴らと会えていたなら、その関係もまた違ったものになっていたのかもしれない。
オレ自身が変わっているので少なくとも殺し合う関係ではいられない。ずっとぶつかり合っていたので仲良くはなっていないかもしれないが……それでも、分かり合えていたかもしれない。
「もしかして奴が兄様に……ははっそれはないか」
いや、仲良くなるどころか兄様になってくれたかも……なんて、まずなさそうな想像が一瞬浮かんだ。タイトは妹と共に魔物狩りを生業としていた人間だ。時代が変われど、そう簡単に魔物とそこまで深く仲良くはならないだろう。良くて喧嘩友達で終わりそうだ。
「でも……もしかしたらって思うとな……」
とはいえ、現実がどうであれ想像するだけなら自由だ。
だから、オレはベッドの上で目を閉じてもしタイトがオレの兄様になっていたらと想像し始めた。
タイト個人はオレより弱いとはいえ、その強さは兄様として申し分ない。知っている人間の中では、一番身を委ねられる人物だからだ。
「んん……」
如何にも堅物そうだから正直そんなに想像できないが、兄様であれば夜の営みもするだろう。という事で奴の性器が目の前に出された場面を想像する。
見た事ないタイトの男性器を想像する……たったそれだけで自分の性器が疼き、身体が少し熱を帯びる。
思わず自分の右手を股間に伸ばし、戸惑い無く下着をずらし、ちょんっと肉球を性器に触れさせた。この身体になってからどころか、生まれてから一度も性的な刺激を感じた事が無かったオレは、初めての感覚につい声を漏らす。
「く……んんっ」
奴に胸を揉まれているのを想像しながら、左手で自分の薄い胸を揉む。少し硬くなった乳首を爪先で弾く度、甘い息が口から溢れ出す。
股間を弄る肉球が心なしか粘つく。どうやら分泌液により湿ってきているらしい。割れ目の上部に手を持って行くと、ぷっくりとした陰核に触れて心地良い痺れが腰を駆け抜ける。
「んっ……ふぁっ……」
指で性器を弄り続けるうちにいつしか耳に届くようになった、股間から発せられるくちゅくちゅといった水音。オレは目を瞑り、全てタイトにやってもらっている想像を浮かべながら、夢中になって自慰を続ける。
タイトの肉棒が挿入される光景を浮かべながら、指先を割れ目の中に挿れる。下腹部に感じる圧迫感に、出した事のない可愛らしい声が漏れる。
「ぁっ……ぃあっ……あぁぁあっ……!」
爪を立てないように、挿入した指で優しく膣内を掻き回す。キュンとした甘い疼きが発生するたびに泡立った愛液が垂れ、ベッドのシーツを濡らす。
ほんのちょっと膨らみのあるおっぱいをこねる手も、より快楽を得ようと激しくなる。バフォメットという種族は総じて貧乳だが、その分直に刺激を受けるのか、股間と同等に甘い痺れが胸から身体中に駆け巡る。
「ふぁああっ……あっ……タイ……ト……っ!!」
タイトとの甘い交わりの想像もフィニッシュを迎える。それに合わせ陰唇への抽挿を繰り返す指の動きも激しくし、腰もくねらせる。
そして、挿れてない指の爪先で陰茎を強く押し……身体を貫通する雷のような大きな快楽が突き抜け、絶頂に達した。
身体を大きく震わし、腰を痙攣させながら、声にならない叫びをあげながらつぅ……と涎を垂らす。初めてイッたオレの脳は、快楽の暴力に真っ白になっていた。
「っ……はぁ……はぁ……」
数十秒間オレの精神は天に上りっぱなしだったが……やがて落ち着きを取り戻し、多少の気怠さを感じながら地上へと落ちた。
荒くなった呼吸を整える為、力なくベッドに沈む。火照った身体と対照的に、自分の分泌液で濡れたシーツが冷たい。
「はぁ……な、何やってるんだオレは……」
所謂賢者モードと言うやつだろうか……絶頂が過ぎた脳は、冷静になって自分がしでかした事に戦慄した。
「なんで……あいつの事を考えながら……!」
オレが自慰をする時にした想像は……かつての宿敵と性行為をしているものであった。それは紛れもなくオレが奴に好意を感じ、深い仲になりたいと思っているという事だ。
別に、かつて殺し合っていた相手であろうが、今の時代で兄様になってもらいたいと思う事は問題ない。そう、そこは問題ない。
問題なのは……
「あいつは……もうこの世界に居ねえんだぞ……!」
兄様になってくれたらと思った宿敵は……タイトは、少なくともこの世界にはもう居ない人間だという事だ。
これまでも何度か奴の所在を調べたが、その成果は全くなかった。そう思いたくなかったが、導き出された結論は……奴らは異界ないし別の世界に飛ばされたという事だった。
そうでなければただの人間が突然跡を追えない程綺麗さっぱり居なくなるなんてありえない。だからこそそう結論付けた。
つまり、もう二度と会う事のない相手だという事が問題なのだ。
「止めろ……止めてくれぇ……あいつを好きだなんて思わせないでくれよぉ……」
魂すらなく、死霊魔術で蘇らせる事すら不可能な相手に恋をする。それは、もはやただの生き地獄でしかない。
触れ合う事すらできない者を兄様として愛しながら生きる。オレが今まで多くの人間を殺し喰らってきた罰だったとしても、それはあまりにも重すぎる。
「……忘れよう。タイトへの好意を……」
このままではオレは一生叶うはずのない恋愛に悩み、一生兄様なんてできない。それは今の魔物として、いくらなんでも辛過ぎる。
だからオレは、タイトの事が好きだという気持ちを脳内から消す事にした。奴の存在自体を消しても綻びが生じ好意ごと蘇る可能性があるので、好きという気持ちだけを魔術で封印する。
「オレはオスだ……兄様なんていらない……オレの心はオスなんだ……」
身体を縮こませ、必死に自己暗示を掛ける。自分はオスだから兄様なんていらない、タイトを好きになんてなるはずがないんだ……と。
「オレは……オレは何をしていたんだ? うわっシーツが濡れてる……もしかして漏らした? 嘘だろぉ……」
こうしてオレはタイトへの好意を封印し、綺麗さっぱりと忘れた。
もう一度タイトがオレの目の前にでも現れない限り、絶対に解かれる事のない程強固な封印を掛け、何事もなかったように日々を過ごして……
……………………
そうか……そうだった……
全部……思い出した……
封印した好意も……タイトへの想いも……
だからオレは……タイトの事を……
……………………
…………
……
…
====================
「ん……んん……」
全身に走る痛みと、ちょっとした重みを感じて俺は目を覚ました。
「ん……ここは……?」
うっすらと目を開くと、そこは見知らぬ天井……ではなく、おそらく事前に案内されたコロシアムの医務室だ。どうやら俺はティマとの闘いの最後に気絶してそのまま医務室に運ばれたらしい。
「負けてはいないよな……勝ってもいないみたいだけど……」
気絶前の記憶が正しければ、互いに最後の渾身の一撃を放ってそれが互いに決まり、引き分けに終わったはずだ。
満身創痍だった事もあって最後のほうの記憶が曖昧だが、レニューが引き分けだとアナウンスしていたのはハッキリと覚えているし間違ってはいないだろう。
「ティマの奴もいるのか……?」
引き分けで気絶した結果ここに俺が居るという事は、同じく気絶させたティマもここに居るのだろうか。何気なしにそう考えた俺は、周りを見渡すため首を動かそうとした。
その瞬間だった。
「よお。やっと目を覚ましたか」
「ん……!?」
ティマの声が、俺の足元から聞こえてきた。
向かい側に居るにしては声が近いなと思いつつ、身体が重く持ち上がらないので首を少し起こしてみると……
「お、お前……何故上に乗っている!?」
「あん? いいじゃねえか別に。何か問題あるわけじゃないんだしさ」
「いや重いわ!」
ティマはあろう事か俺の身体の上に寝そべっていた。
どうやら先程から身体が重かったのは単純にダメージが残っているだけではなく、ティマが俺の上に覆い被さっていたからみたいだ。
「お前さあ、女の子に重いとかデリカシーねえな」
「あ、いや、その……って、オスだったお前がそれを言うか」
「うるせえ。オレだって今や立派なメスだ。まあ、どちらにせよ身体は動かないだろうから別に良いだろ。外傷はモルダやアルサ達の手によって治してあるが、蓄積したダメージ自体は残っているはずだ。人間より回復が速い魔物のオレでもここまで這ってじゃなければこれなかったぐらいボロボロなんだ。お前は指先一つを動かすだけで精一杯だろ?」
「まあ……それはそうだが……」
重いと言われ少し顔を赤らめつつ、口を尖らせてそう反論するティマ。確かに、少し可愛く思えたその仕種は女の子らしいだろう。
それはともかく、たしかにティマの言う通り、それとは関係なしに身体は満足に動かせない。普段なら今の軽いティマを持ち上げてどかすのも簡単にできるが、今はできそうもないどころか腕を上げるのさえ辛い。
「まあ、この話はそれくらいにして、そろそろ本題に入るとするか」
「本題?」
思ったように身体が動かないなと思っていたら、突然そう話を切り替えてきたティマ。
「ああ。オレとお前で闘って、オレが勝てばお前はこの村で暮らし続ける、お前が勝てばお前は村から出ていくという話になっていたな?」
「ああ、その通りだが……」
「だが、結果は相変わらず引き分けとなった。白黒はっきりさせる為に再戦ってのもいいが、互いの体力が万全になるのを待ってるとかなり先になっちまうし、少なくともオレの村長やサバトの長としての生活に支障が出ちまうからできれば避けたい」
「ではどうするつもりだ?」
互いに満身創痍になる程の闘いをしたので少し忘れていたが……この闘いは、たしかに村を出ていくかどうか勝ったほうの意思を通す目的があった。
しかし、結果はかつてと同じく引き分けに終わった。ではどうするか、という提案をティマはし始めたのだ。
「何、勝負の方法を変えようと思ってな。今度は……先にイッたほうの負けだ」
ニタァ……と顔を厭らしく歪ませながらそう言ってきたティマ。
「……ん? 言った? 行った? 逝った?」
「イッた。んー、お前でもわかるように言うとだな……今の魔物らしく、今度は性行為で勝負して、先に絶頂を迎えたほうの負けって事だ」
「……はあ!?」
どうやら今度はその表情通り厭らしい勝負をしようと言っているようだが……話が突拍子過ぎて何を言っているのか理解できなかった。
「という事で早速……」
「ま、待て! な、何を……!?」
こっちが混乱しているのを良い事に、もぞもぞと人の上に乗ったまま動き始めたティマ。人のズボンのベルトをガチャガチャと触り、勝手に外しだした。
「よっと。ほぉ、これがタイトの……」
「ちょっやめ……」
そのまま穿いてたものを下着までずり下ろし、下半身を露わにされてしまった。
じろじろと恥部をみているティマ……普通は隠しているところを他人に見られるのは恥ずかしい。
「なんなんだお前はもう……うわっ」
「へへ……想像してたものより良いな♪」
しかもそれだけでは終わらず、今度は直に性器を触ってきた。急に触られた事で思わずビクッとなる。
「さっきからお前は何をする気だ!?」
「言ったじゃねえか。今度はセックス勝負だ。オレの膣内にお前のモノを挿れて、先にイッた方が負けだ。だからヤる為に前戯しないとな」
「だから何故そんな勝負……うっ」
「おっ膨らんできた……何故って、さっきは昔の闘いをして決着つかなかったんだから、今度は今の魔物らしい闘いで勝負だって話だ」
「なっ……ぐぅっ!」
触るだけでは飽き足らず、その獣の手で俺の性器を弄り始めたティマ。柔らかくぷにぷにとした肉球が陰茎を軽く摘み、肌触りの良い獣毛が亀頭をくすぐる。
かつてティマが言っていた通り、俺は性行為はおろか自慰すらした事は無い。そんな中で何度も経験があるティマに弄られて我慢できるはずもなく、俺のペニスはあっという間に硬く勃起してしまった。
「あっという間にガチガチだなぁ……これじゃあ挿れる前に射精しちまうぜ?」
「くそっ離せ!」
「おっと。暴れるなよ。オレだってお前より動けるとはいえフラフラなんだし危ないからさ。それに、思わぬ刺激を受けて自滅するかもしれないぞ?」
「ぐ……」
ペニスを両手のひらの肉球で挟み、ゆっくりと上下に動かし始めたティマ。柔らかく、それでいて弾力がある肉球による初めての感触に、俺は早くも込み上がってくるものを感じた。
そもそもそれを勝負だと認める気はないが、それとは関係なしにティマに一方的にいいようにされるのは嫌なので、動ける範囲で暴れてみたが……流石に現状はあちらのほうが力も入るようで、片手で男性器を握りしめたままもう片方の手で身体を押さえつけられてしまった。
「あはぁ……こんなにそそるちんぽは初めてだ❤」
「ぬぁ……お前、いい加減に……」
「おっと。お前だけ晒してるのは不公平だったな」
「なっ……!」
ティマは俺のペニスをじっと見て、臭いでも嗅いでいるのか鼻をひくつかせながらウットリしている。
流石に恥ずかしさも性的興奮も限界が近いのでいい加減にしろと文句を言おうとしたら……おもむろにそう言いだして性器から手を離して膝立ちになり、自身が身に付けているガーターベルトを下着ごと取り外し、性器を露わにした。
「へへっ、どうだオレのつるぷにロリマンコは?」
「……ごく……」
つぅ……と透明な糸が引いている、無毛でふっくらとしたティマの女性器。性的な興奮に襲われているのもあり、生まれてこの方見た事もなかった少し赤らむそれに、思わず釘付けになる。
「そうかそうか、そんなに気になるか♪」
「はっ……!? い、いやそんなわけじゃ……」
「ほら、仕方ねえからもっと間近に……んっ♪」
「んぶっ!?」
見ていたことを指摘され狼狽えている俺に構わず、見せつけるように腰を前に出しながら顔に近付いてきたティマ。そのまま顔の真上まで来た瞬間、腰を下ろして俺の顔に自身の性器をくっつけてきた。
どことなく汗の香りがする女性器をそのまま顔の上を小さく滑らせ、ねっとりとした愛液を顔に塗す。離れようにも、ぷにぷにと柔らかい太腿で顔を挟まれているので動けない。
「んぐっんぼっ……んんー!」
「ぅあっ、息が、敏感なところに……あっ」
口で呼吸すると愛液が入りかねないので鼻で息をするが、それが丁度敏感な部分を掠めているようで、そう言いながら腰をくねらせ善がり始める。
興奮でほんのり紅くなった、つやつやとして張りのある艶めかしいお腹の肌に目が犯され、聞いた事のないティマの甘い声に耳を犯される。それらは俺をより一層興奮させ、痛いほどに性器を膨らまさせる。
「んっ……オレのほうも良い感じに高まってきたし、そろそろ挿れるぞ」
「はぁ……はぁ……や、やめ……ひうっ!」
しばらくの間俺の口回りで自身の性器を擦り付けていたティマだったが、そう言って顔から離れ、そのままずりずりと俺の腰の上まで移動した。
やはりそのまま性交に持って行く気のようで、ピンと上向きに勃起したペニスをそっと掴み、角度を調整し始めた。やはり心のどこかでティマはおろか魔物と性行為を行う事に抵抗感がある俺は止めるように呟くが……ペニスに与えられる肉球の刺激に、変な喘ぎとなってしまう。
「ほーら、勝負だ……んんっ♪」
ティマは見せつけるように身体の角度を変えながら、さっきよりもゆっくりと腰を下ろす。
そして、俺の抵抗空しく……奴の性器と俺の性器が触れ合った。
「うあ……あっ……」
「ふあ……これ、すご……❤」
たったそれだけで経験のない俺は達しそうになったが、負けず嫌いなのが功を奏してなんとか耐えた。
しかし、それで終わりではない。ティマは更に腰を下ろし、ペニスを熱い膣内へと飲み込んでいく。身体が小さい分膣が狭いからか、乳搾りの如く精液を搾り取られそうだ。
「ん……くぅ……あああっ❤」
それでもなお耐えていたのだが……根本まで入り、ティマのお尻が太腿に触れた瞬間、吸引されるかの如く吸い付いてきた膣肉に俺は……為す術もなく射精してしまった。
「ふぁっ、なんだこれぇ……しゅご……ふぁああああっ❤」
腰が抜ける程激しい射精。突き抜けるような快楽に頭が真っ白になり、何も考えられない。
それはティマも同じようで……俺から精液を搾り始めて数秒後、背中を弓形に反らせながら甲高い声を発し、ビクッビクッと大きく震え出した。
そして更にペニスを締める力が強まり、より多くの精を膣内に放出してしまう。
「ぁ……ひぁぁ……ぁぁ……」
ティマの顔を見ると、うっすらと涙を浮かべ白目を剥いてだらしなく涎を垂らしていた。そんなぐちゃぐちゃな顔にも拘らず、何故か俺は一瞬可愛らしいと思ってしまった。それを抜きにしても、幸せな表情に見えた。
「ぁ……ふぅ……オレもイッちまった……へへっ♪」
しばらく身体を痙攣させていたティマだったが、少しずつ落ち着いてきて、大きく息を吐いた後、俺の身体に凭れ掛かる。
まだ息は荒く、涎も垂れっぱなしだが、意識はハッキリしているようだ。まだまだ興奮で顔を赤らめながらも、得意げな顔をこちらに向けてきた。
「だが……オレよりもお前のほうが早くイッたよなぁ……?」
「え、あ、ああ……」
「じゃあ、オレの勝ちだな!」
たしかにティマの言う通り、俺のほうが先に絶頂を迎えた。
「はぁ……確かにそうだが、そんなの知るか」
「は?」
「俺は同意した覚えはない。お前が勝手に条件を押し付けて強姦しただけだろ」
「あ、いやその……」
だが、そもそも俺はそれに同意していない。それなのにティマが勝手に盛り上がり強姦に及んだだけである。
こっちとしてはただ襲われて無茶苦茶にされただけだ。呆れと共に少し腹も立つ。
「そっちがそういう勝手な事をするなら、俺も勝手に村を出ていかせてもらう」
「え……」
「規則とか知らん。お前が先に無理矢理したんだ。文句は言わせん」
だから俺はティマに苦言を呈し、勝敗は関係なしに村を出ていくと告げた。
言われたティマはショックでも受けたように固まり、さっきまでの幸せそうな顔が嘘みたいに真顔になる。
「ふぅ……わかったらどけ」
「……」
そのまま何も言わないまま顔を俯かせる。心なしか小さく震えてるようにも感じる。
「……おい、ティマ?」
「……ろよ……」
「ん? 何か言って……」
俯いた状態のまま、何か呟いているティマ。いったい何を言っているのかと聞き返そうとして……
「村を出ていくとか言うのを止めろよ!」
「うおっ!?」
バッと顔を上げたティマは、部屋全体に響き渡るほど大きな声で叫んだ。
「何で……何でそういう事言うんだよ!」
「ティマ……」
「もう会えないと思ってた……そんなお前と奇跡的にまた会えた。なのに……なのに、なんでまたオレの前から消えようとするんだ!」
叫び声をあげるティマは……泣いていた。
「オレさ……この際正直に言うとさ、タイトの事が好きなんだよ。何百年も前から……お前を兄様にしたかったんだよ」
「え……」
「さっき夢を見て思い出したんだ。今までずっと忘れてたけど……お前と一緒に居たかったんだよ。世界中のどこにも居なくなったから諦めてたけど、この時代になってまた現れてくれた……それなのに! お前はまたオレの前から居なくなろうとする! 過去に帰りたいとか言いだす! 」
「……」
「昔に戻るとか止めてくれよ……オレとこの時代で一緒に居てくれよ! 頼むから……お願いだからオレの兄様としてずっとそばに居てくれよぉ……」
今まで秘めていた想いを、感情をむき出しにしてぶつけてくる。
好きだ、そしてもう二度と居なくならないでくれと、俺の着ている服を掴み、ボロボロと大粒の涙を流しながら訴えてくる。
「ひっく……うぅ…………ぁ……」
「……そっか……」
一通り叫び終え、また顔を伏せながらむせび泣くティマ。
その想いを聞いた俺は、ゆっくりと腕を伸ばして……ティマの頭の上に、ポンッと手を乗せた。
「俺はさ、昔からそういった恋だのなんだのってのはわからないけど……お前の気持ちはわかったよ」
「タイト……?」
「俺が時間移動したから、お前がずっと苦しんでいたのはわかった。それと……お前が俺の事を好きってのもな」
そのままティマの頭を撫でる。滑らかで艶のある髪の毛が、俺の手の動きに合わせてさらさらと流れる。
撫でられたからか少し落ち着き顔を上げたティマに、俺はティマの想いを聞いた返答をし始めた。
「正直に言うとさ、俺はこの時代に来てからずっと不安で仕方なかったんだ。いきなり500年も時間が飛んで、お前を始め何もかもが変わってたんだ。唯一同じ立場だったホーラも変わってしまった。その全てを割り切って受け入れようとしても、頑固な自分じゃ受け入れきれなかった」
「それは、わかってるけど……」
「だからさ、俺はあんなにも元の時代に帰りたいと言ってたんだ。知らないティマではなく、よく知っているティマに会いたいってな」
本当にある日突然時間の流れから弾き出され、知っている場所は風変りし、知っていたはずの宿敵も全く別の存在になったと思っていた。
それは俺の心に不安となって重く圧し掛かり、逃げたくなっていたのだ。例え今の時代のほうが良くても、そこは俺の生きる世界ではないと思っていたのだ。
「でもさ、こうしてお前とまた闘ってわかったよ。たとえ姿形が変わっても、お前はお前だったんだって。何も変わらない、俺のよく知るティマだってわかったよ」
「……そうか……」
だが、それは俺の思い違いでしかなかった。
実際にティマと闘い、またしても引き分けた。闘い方こそ違っていたが、闘いの最中に感じた高揚は一緒だった。かつての宿敵の面影も強く感じた。
姿形こそ違えど、結局目の前の宿敵は変わらないんだと実感した。
「ああ。それで、さっきは強姦された怒りでああ言ったけど……そこまで俺の事を想ってくれているお前の前から消えようだなんて、もう言わない。俺を好いてくれる奴を悲しませるのは嫌だからな……」
「それは……本当か?」
「ああ、本当だ」
そして、ティマの告白を聞いた俺は……もう、過去に帰る事を諦めざるを得なかった。
涙を流しながら消えないでくれと言われ、なお帰りたいだなんて思えるほど俺は薄情ではない。それに、ずっと変わらない宿敵が居てくれるなら、ここは俺の生きる世界だと思えるから、もう帰る必要もない。
ならば、ずっとそばに居て欲しいと願うティマの傍に居てあげたい。いや、俺もティマの傍に居たいと思い直したのだった。
「だがまあ、一つだけ言っておくとだな……俺にお前の言う兄様……夫が務まる自信は無い」
「え?」
「最初に言ったが、俺は恋だのなんだのってのがわからん。今のお前を可愛いとは思っているが……恋愛対象として見ているかどうか自分でもわかってないんだ」
とはいえ、ずっと魔物と戦っていたせいか恋愛感情というものが理解できないので、兄様になってくれと言われたほうはちょっと困っている。
たしかに今の……それこそ今現在俺に頭を撫でられているティマは可愛いとは思っているが、おそらくそれは微笑ましい感じの可愛さだ。少なくとも俺に幼女趣味はないので、恋愛対象として見れるかと言うと……正直自信は無い。
「ああ、なるほどな……そこは安心してくれ♪」
「安心してくれって……んぎっ!?」
それを聞いたティマは一瞬がっかりした表情を見せたものの、すぐさま悪戯でも思い浮かんだかのような笑顔になった。
その刹那……股間に強い快感が走った。
「サバトを統べるオレが、お前を直々に調教してやるからさ。幼い少女の背徳と魅力をたぁっぷり身体に刻ませて、オレの様な少女の身体でしか興奮できないように……いや、それどころかオレ以外じゃ欲情できないようにしてやるよ❤」
「なっ……んひぃっ!」
真剣な雰囲気に忘れていたが、俺とティマの性器はまだ結合しっぱなしだった。そこに力を入れ締め付け刺激され、俺のペニスは一瞬にして硬さを取り戻した。
そう宣告しながら起き上がったティマの下腹部には、結合部から流れ出ていた白濁液がこびり付き糸を引いていた。己の欲の塊をまじまじと見せつけられているようで恥ずかしい。
「ほら、どうだこのちっぱいは? 鷲掴みやパイズリはできないが……」
「わっな、何を……うおぉ……」
「んんっ、ほら、膨らみかけのおっぱいでも柔らかさはあるだろ? もっと激しく弄ってくれていいんだぜ?」
起き上がり様に、まだ身に付けていた上の服も脱ぎ去り、自身の胸を露わにしたティマ。小さくほんのりと膨らんだ丘の頂点に、綺麗な桜色の乳首がぷっくりと勃っている。
つい凝視していた隙にティマは俺の腕を掴み、その胸に無理矢理押し付けた。ティマの言う通りそこは確かに柔らかい。そして、手のひらの真ん中に当たる乳首は対照的に硬くコリコリしていた。
「んんっ、いいじゃねえか。拙いけど……んっ、ついさっきまで童貞だったとは思えねえぐらいには気持ち……あっ❤」
そのまま俺はティマに操られるわけでもなく、自然と胸をこねていた。小さな胸なので重量感は無いが、つぷっと沈む指先に彼女の高鳴った心臓の鼓動を感じ取れる。また、指先で乳首を押す度に、ティマの口から甘い吐息が漏れ出る。それに併せて締まる膣壁に、俺はまた精を注ぎそうになる。
「うぉ、これ、凄すぎ、てぇ……」
「んっ、はっ、ひっ、ひぁっ、おちんぽが、びくびくってぇ……♪ も、イクのっ、かぁ……❤」
ただ膣を締めるだけで留まらず、上下に動き始めたティマ。雁首が膣肉に摩擦を起こす度、ずんっと全身に大きな快感が叩きこまれる。
彼女の言うように、もう我慢の限界を迎えている。既に臨戦態勢を迎えた男根は、幼い少女の身体に欲望を蒔こうと大きく震えた。
「あっ、んんっ、ひぅっ!」
「ぐううあっ……!」
「ああっ、また、アツいのがぁ……❤」
そして、ティマが一際大きく跳ね、鈴口がその最奥に触れ……俺は先程以上の勢いで射精した。
その小さなお腹を自分の精液ではち切れんばかりにするかの如く流し込むペニスを、一滴も溢さんとぴっちりと締め付け吸い上げるティマのアソコ。その刺激が更なる快感となりより一層精を吐き出させる。
そんなティマもまた絶頂を迎えたようで、またしても身体を大きく震えさせ声にならない叫びをあげている。尻尾は逆立ち、耳も大きく広げ、全身で悦びを表現していた。
「ぅあ……あはぁ❤ も、もっとぉ……❤」
「ひぅ……ちょ、ちょっと待ってくれ。射精してすぐはヤバ……ああっ!」
「悪いが待てん。なんせこっちは何百年も待たされてるからな……最低でも溢れ出るぐらい子宮に注いでもらって、更に全身ぶっかけてもらうまで続けるからなぁ……❤」
何十秒と続いた射精が落ち着いた……と思えば間髪入れずティマはまた腰を振り始めた。
射精したばかりで敏感になっているペニスが蕩けてしまう程の快楽に痺れ、なすがままにされてしまう。
「ふぁぁあああっ! イイッ! 他の野郎のなんてもうムリィ! タイトのしゅきぃ……タイトらいしゅきぃ❤」
欲しかったモノがようやく手に入ったティマは、一心不乱にそれを貪り続ける。
俺もいつしかティマのもたらす肉欲の渦に飲み込まれ、幼い魅力と背徳をたっぷりと思い知らされるのであった。
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「はぁ……結局2時間も遅くなったじゃない」
「し、仕方ないでしょ! 貴女があそこまで私の痴態を晒させるからお兄様が興奮しっぱなしで……」
「すみません。ウェーラの可愛さのあまりすっかり盛り上がってしまって……」
「僕達はきちんと4時間で止めてきたのに……」
「いやいや、二人よりは早かっただけでヴェン君達も遅れてきたじゃないか」
「あ、いえ、移動時間考えずに4時間丁度で止めたのでちょっと遅れて……」
「まあ、過ぎた事だし仕方ないわ。とりあえずお兄ちゃん達の様子を見に行きましょ」
試合が終わってから6時間ぐらいが経った。
試合で溜まった性欲を存分に発散させた後、私とウェーラ、それにヴェン、エインさん、レニューさん、ジェニアさんが、お兄ちゃんとティマさんの仲をどうにかしようとコロシアムの控室に集まっていた。
「あれほどの激闘とはいえ、流石に6時間も経てば村長さんだけでも気絶から回復はしていそうだが……」
「まあ、この村の医療は高度な薬学と魔術のお陰で結構発展してますからね。疲労は残っていると思いますが、外傷はほぼなくなっていると思いますし、目覚めていてもおかしくはありません」
「んー、険悪なムードになってなければいいけど……」
ちょっと予定より遅れてしまったが、これから私達はお兄ちゃんとティマさんの仲を良い雰囲気にするため動き始めた。
まずは二人が寝ているであろう医務室へと急ぐ。まだ目覚めていなければいいが、起きていて喧嘩なんてしていたらすべてが無駄になってしまうので自然と早歩きとなる。
「自警団の団長という立場として言わせてもらえば、立派な戦力であるタイトにこの村を出ていってほしくないのだが……」
「それは皆同じ気持ちですよ。僕としても頼りになるお義兄さんですし、別れは寂しいです」
「私はあまりタイトさん自身とは関わりありませんが……ティマ様の幸せを願うならば、タイトさんと離れ離れにしては駄目だとは思いますからね」
「その通り。だからこそ二人をくっつけたい。協力感謝します」
それぞれの理由でお兄ちゃんに村を出ていってもらいたくない人が集まり、協力してくれる事に私はとても感謝した。
ここに居る人だけじゃない。もっと多くの人達に村を出ていってほしくないと思われている事に、お兄ちゃんが気付けばいいが……
「さて、協力するはいいけどどうすればいい?」
「お兄ちゃんのほうは私が言い包めます。皆さんはティマさんの恋心を刺激してください。ティマさんのほうだけでも自覚してもらえればグッと成功率は上がると思いますから」
「そのままラブラブな感じになってくれれば万々歳ってところか……しかし、上手くいくのか?」
私達がしようとしている事、それは……当初の予定通り試合結果を引き分けにして勝敗をあやふやにする事ができたので、この後は私達があの手この手を使いティマさんにお兄ちゃんへの恋心を自覚させ、なし崩しの形でくっつけさせるつもりだ。
お兄ちゃんもティマさんも結構頑固なので上手くいくかどうかはわからないが、何もしないで二人が別れるよりはマシだ。それに、流石に自分の事を愛している人が居るのに過去に帰ろうとするほどうちの兄は薄情ではないと思いたい。
上手くいけばそのまま丸く収まるだろう。もし上手くいかなくても、手段がないわけではない。
「できれば本人達で良い雰囲気になってほしいですが、最終手段としてウェーラが先程試合で使用していた杖……通称ラヴァーステッキがあります」
「ああ、そういえば気になっていたが、それはどういう杖なんだ?」
「これはいわば淫魔の力に特化した魔術媒体よ。私達魔物の持つ魔力を全てサキュバスのそれに変換する杖ってところかしら。試合で見せた通り発情させたりする魔術はかなり強力にする代わり、それ以外の攻撃系魔術は出せなくなるのよね」
「だからこそ私でもウェーラに勝てた。じゃなきゃ普通に負けてる」
「まあホーラちゃんは発情魔術ほとんど効かなそうだしな。成る程、それで無理やり二人を発情させて既成事実を作るって事か」
できれば素直な気持ちになって丸く収めたいのであまりやりたくはないが、最終手段としては二人に既成事実を作らせる事も可能だ。
たとえ無理やりだったとしても恋心を持つティマさんと責任感はきちんと持っているお兄ちゃんならばそのままくっつくだろう。後で滅茶苦茶怒られそうだが、それを覚悟でやるつもりだ。
「さてそろそろ医務室に……あれ?」
「ん? 何してるのかしら?」
簡潔に作戦を確認し、そろそろ医務室が見えてきたのだが……何故か見張りをしていたと思われる魔女とファミリアの二人が揃って部屋の中の様子をこそっと見ていた。
「あなた達、何してるの?」
「あ、ウェーラ様。しーっです」
「こっそり部屋の中を見て下さい」
「こっそり……あっ!」
一体何をしているのかを聞こうとしたら静かにしてと言われてしまった。
そして部屋の中の様子を見てと言われたので、こっそり見てみたら……
「ふああ……これで5発目だな♪ ほら、もっとオレの身体に溺れちまいな❤」
「うおぉぉ……はぁ……と、止まらん……これ……あふぁぁ……」
そこには、幸せそうに顔を紅潮させながら交わる二人の姿があった。
部屋中に立ち篭る精臭や5発目という発言からしてもう随分性交に励んでいるみたいだ。
「……これは私達が何かしなくても大丈夫そうね」
「ええ……本当に良かった」
「これで一安心ですね」
私達が手を出すまでもない。もう何も心配はいらないだろう。
幸せそうに交わり続ける二人の様子を見守りながら、私達は扉の外で皆胸を撫で下ろすのであった。
17/03/17 23:22更新 / マイクロミー
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