交わりのお話
「うーむ……」
「あれノフィ君。こんな時間にお散歩とは珍しいですね」
「ん? ああネム……か?」
それは、何気ない一日に起きた小さな変化だった。
「こう言うのも悪いが……お前、本当にネムか?」
「……何故そう思うのですか?」
「だって……ちょっと前まではそう言ったら「淫らな考えを持つなんて神への冒涜です!」とか言って怒ってたじゃねえか。今日はやたらリムとはいえ魔物と一緒になる事を勧めてくるし……なんかおかしいと思うさ」
「……そうですか……ふふふふ……」
「!?」
本当に小さな変化で、ほとんど誰も気づいていない程だ。
もちろん、私もまったく気づいていなかった。
「お前……いったい何者だ!」
「何者って……嫌ですわ。昔からノフィ君とずっと一緒にいたネムですよ。ただ、ここ数日の間にちょっと考え方が変わっただけですよ」
「考え方……?」
しかし、見えないところで確実に変わっていた。
少しずつ、ゆっくりと変化が起こっていたのだ。
「いえ、実はノフィ君に用事がありましてね。もう寝ているでしょうし明日にしようと考えていたのですが、こうして会ったのでぜひ聞いてもらおうかと」
「俺に用事? なんだ?」
「まあ、正確にはわたしではなく、更に言うとノフィ君に直接用事があるわけではないですけどね。夕方頃村にいらっしゃったお客様がリムちゃんに渡したいものがあるという事で来たのですが……」
「ですが……なんだ?」
「いえ、物も物ですし、それに直接行ったらあの方々はルネ先生に怒られてしまうかもと仰られていましたので、ノフィ君の手で渡した方がよろしいかと思いましてね」
「まあいいや。会えばわかると思うし、今から会うよ。教会に居るのか?」
「ええそうです。それではお願いします」
そして、その変化は、もっと大きな変化を呼ぶのであった。
もちろん、私自身も、大きな変化に巻き込まれていったのであった……
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「……」
「リム、そこのイヌサフラン取ってくれない?」
「……」
「リム? おーいリムー?」
「……はっ! な、何スノア兄ちゃん?」
「いや、だからそこのイヌサフラン取ってって」
「あ、うん。はい」
お婆ちゃんが倒れてから数日後。
お婆ちゃんやスノア兄ちゃんが言った通り、あれから特に心配になることは起こらなかった。
ということで今日もいつも通り診療所でスノア兄ちゃんと一緒に薬を調合していたのだが……
「どうしたの? 今日はなんだか気付いたらぼーっとしてるけど……もしかして体調悪い?」
「ううん……そうじゃないけど……」
「そう? それならいいけど……ぼーっとし過ぎて薬の調合は間違えないようにね。失敗したら只じゃ済まない事になるかもしれないからね」
「う、うん……わかってる」
なんだか今日は少し気を抜いた瞬間にぽけーっとしてしまう。
別に体調が悪いわけではない。原因もおおよそわかっているが……自分のお仕事はきちんとしなければならない。
何故なら、私のやっている事は人の命を預かるお仕事なのだから。
「今日は頑張る……けど、明日からしばらくの間お休みするね」
「え? ああっ! そうかそろそろそんな時期だったね。だから今日はぼーっとしてる事が多いのか……」
「うん。まだ大した事ないけど、たぶん明日から本格的になるから……」
だから、今日は頑張ってお仕事をこなす。だが、明日からはとてもじゃないが無理だろう。
何故かというと、今私がぼーっとしている原因は……おそらく発情期の前兆だからだ。
時期的にも今週中に来る事は予想できていたし、今もちょっと身体が火照っている感じはあるので、きっと明日辺りには本格的に来るだろう。
そうなると仕事どころじゃない。数日間ずーっとベッドの上で獣じみた自慰を続ける事となるのだ。
「なんならもう休んでいてもいいよ。集中できないとこっちとしても困るし……」
「ううん。今日は……せめて午前中だけは頑張る。一応まだ思考はちゃんとしているからね。ほら、ちゃんとお薬も作れてるでしょ?」
「んー……まあそうだね。でも無茶は駄目だよ。僕達は人の命を預かる仕事をしているんだからね」
「うん、わかってる!」
だからこそ、まだまともに考えて動ける今日は頑張ってお仕事をしたいのだ。
たしかに、薬の調合も診察も結構集中力が必要な事なので、このままぼーっとする様ならばやめたほうがいいだろう。
しかし、医者になるためになるべくいろんな事を覚えたい私は、今日一日、せめて午前中だけでも頑張りたい。
「んーよし。できたから渡してくるね!」
「うん。あ、明日から発情期だって事、ノフィ君に伝えておいたほうがいい?」
「んー……よろしく! なんだか今ノフィに会うと最初の時のように一気に発情して襲っちゃうかもしれないからね」
「わかった。お昼休みの時間に僕から伝えに行くから、リムはお婆ちゃんにも発情期に入ることを伝えてから自室で大人しくしていてね」
「うん!」
という事で、できた薬を患者さんに渡しに行く。
ノフィに伝えるのを頼んだりと、この後の予定を軽くスノア兄ちゃんと打ち合わせ、私は待合室まで掛けた。
「お待たせしましたトンさん! お薬できました!」
「いやいや、全然待ってないよ。ありがとうリムちゃん」
そして、薬を待っていたトンさんに、今しがた完成したものを渡した。
「いやあ、今日も元気だね。昔は暗かったのが嘘みたいだ」
「まあ、この村に来たばかりの時は色々と怖かったので……そういえば、血塗れの私を見つけてくれたのってトンさんでしたよね?」
「そうだね。でも、感謝はしないでね。あの時の自分は、リムちゃんが魔物と分かった瞬間に見捨てようとしたからね……というか、スノア君がいなかったらきっとリムちゃんを見捨てて逃げ帰ってたよ」
「まあ、仕方ないですよ。でも、実際には助けてくれたので感謝させてください。ありがとうございました!」
トンさんと言えば、この村の外れで血塗れになって倒れていた私を発見してくれた、いわば命の恩人の一人だ。
その事を聞いたのはつい最近だったので、ついでではないがあらためてお礼を言った。
「おやおや、懐かしい話をしておるのぉ」
「あ、お婆ちゃん! 診察終わったの?」
「ええ。今のところガネン君のお父さんが最後だからね」
お礼を言ったのとほぼ同時に、診察室からお婆ちゃんとガネンのお父さんが出てきた。
「あの頃と比べたら、リムちゃんはとっても元気で大きくなったのぉ……」
「えへへ……」
頭を撫でながらそう言うお婆ちゃん。なんだか照れくさい。
でも、たしかにこの村に来て数年は、自分でも暗かったと思う。
まあ、それは両親の死から立ち直れなかったというのが原因だから仕方ないとも思っている。
ちなみに、両親が最期に私に被せてくれた布は未だに部屋のクローゼットの奥深くに眠っている。
血塗れだし衛生上あまりよろしくないし、もう両親の匂いも残ってないが、やっぱり捨てられない。
あの布に顔を埋めて泣く事はない……というか、今となっては両親の事を思い出して、少し恋しくなっても泣く事は無くなったが、それでもやっぱり両親が私にくれた物なので、あの布は捨てられなかった。
「あ、そうだお婆ちゃん。私、午後からお休みするね」
「おや、どうかしたのかいの?」
「それは……いや、その……」
昔の事を懐かしむのはこれぐらいにして、私はついでに後で伝えようとしていた発情期に入る事をお婆ちゃんに伝えようとしたが、まだトンさん達がいたので言い止まった。
あまり人前で言う事でもないし、それに、ちょっとだけ恥ずかしい。
「ああ、自分達はお邪魔なようだね」
「みたいですね。という事で自分もスノア君から薬を受け取って帰ります。ありがとうございました。リムちゃん、これからもうちの息子と仲良くしてやってね」
「はい。それではお大事にー」
そんな私の気持ちを察してか、トンさん達は薬を受け取った後、そそくさと帰って行った。
「それで、どうしたんだい?」
「えっと……多分、明日から本格的な発情期に入ると思う。今もちょっとボーっとする一方で落ち着かない感じしてるしね。下腹部も割ときゅんとしてる」
「ああなるほど。もうそんな時期じゃったか」
二人きりになった後、改めて発情期に入る事を伝えた。
「今回も部屋に篭って一人で慰めるのかのぅ?」
「うんまあ……私だって魔物だし、恋人もいるし、それなりに男性器を入れて欲しいとは思うけど……」
発情期に入れば、私はずっと自分の部屋に篭って自慰に耽るだろう。
というか、狂ったように自慰をし続けないと身体は全く落ち着かないし、大変な事になる。
「そうじゃのう……難しい問題だねぇ……」
「うん……」
自慰中の妄想は大体がノフィと性交しているという内容だ。
見た事もないノフィのペニスが私の陰唇に挿入され、ガンガン後ろから突いてきたり、逆に私が上に乗っかり腰を打ち付ける……といった類の妄想をしながら自分の指で行うと、絶頂した時の快感も大きくなる。
だが、そうやって妄想するからこそ、本物も欲しいと考えてしまうわけで……常に自慰をし続けて身体を疲れさせておかないときっとノフィの元に無我夢中で駆けつけて犯してしまうだろう。
本当の事を言えばそうしたいのだが……この村でお婆ちゃん達と一緒に医者として働く為には、我慢しなくてはならない。それが辛いところだ。
「まあ、そういう事で明日からは部屋に篭っちゃうね。さっきもボーっとしちゃってたし念のため午後も休むね」
「まあ、仕方ないからの。当分リムちゃんとお話しできないのも寂しいのぉ……」
「うん。だから……ぎゅっ!」
という事で、明日からしばらくの間は自室に篭って乱れ続ける日々が続く。
ご飯はお婆ちゃんが持ってきてくれるものの、最初のほうはともかく本格的になると興奮してまともに考えられないのでお話もできない。下手すれば興奮したままお婆ちゃんを噛んじゃうかもしれないので、発情期中は誰にも会わないようにしている。
なんだかんだそれは寂しいので、今のうちにお婆ちゃんを堪能すべくギュッと抱き着く。
お婆ちゃんの身体はちょっと硬い感じがするが、それでも抱き着いてて一番落ち着く。
「おやおや、リムちゃんはいつまでも甘えん坊じゃのう……」
「えへへ〜」
確かに私は甘えん坊なのかもしれない。
でも、それでいい。だってお婆ちゃんの事が大好きなのだから。
「あの、すみません」
「おっと、患者さんかの?」
「みたいだね。どうかしましたかー?」
しばらくそのままでいたが、入口のほうから村の駄菓子屋さんを経営しているおじさんの声が聞こえてきた。おそらく診察を受けに来たのだろう。
まだお昼まではちょっとある。という事で、私は名残惜しみながらもお婆ちゃんから離れ、患者さんの対応に動いたのであった。
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「……という事で、これからリムは発情期に入るから、なるべく近寄らないようにね。ノフィ君自身が病気になったら、僕かお婆ちゃんが出張するから呼んでね」
「はい。わざわざありがとうございますスノアさん」
昼過ぎ、スノアさんが家に来てリムが発情期に入る事を教えてくれた。
時期的にもそろそろかとは思っていたが、このタイミングで来てしまったか。
「う〜ん……」
スノアさんを見送った後、俺は自室に篭り、小さな箱の上で指を転がしながら、今までの人生で一番悩む。
「どうすっかなこれ……」
今日は一日中、正確には昨日の夜からずっとこの箱の中身の事で思い悩んでいた。
俺がずっと持っていても仕方ないし、些か不安もあるが、いつ渡そうか……
……………………
…………
……
…
「それで、俺にっていうかリムのお客さんって誰なんだよ?」
「まあまあ、慌てなくてもすぐにわかりますよ。その扉の向こう側にいますから」
それは、昨日の夜の事だった。
悩み事があって月が輝く夜道を散歩していたら、ちょっとだけ正体不明の違和感を感じたネムと出会った。
そしたら、なんでもリムにお客さんがいるとかで、しかもルネ先生が怖いからと俺伝いで渡してほしいものがあるらしいので、俺はネムに連れられて教会まで来ていた。
「さあ、どうぞお入りください」
「おう……失礼します」
俺も知っている人物だというが、いったい誰がいるのだろうか……
ちょっとドキドキしながら、俺は扉を開け、客人用の部屋へと入った。
「やあ、君か」
「あ、お前達は!」
「久しぶりだね少年。元気そうで何よりだ」
そこにいたのは……まだ俺達が小さかった頃に一度この村を訪れ、勘違いからリムを襲った勇者のヤムさんと、パートナーであるヴァルキリーのアミンさんだった。
「こらこら、仮にも勇者様と天使様であるお二方に向かってお前などと言うでない」
「あ……す、すみません……」
「いやいや、いいですよ。僕達は昔彼の恋人を早とちりで襲いましたし、嫌われていても仕方ありませんからね」
その場にいた、なんだか久しぶりに見たからかちょっとだけ雰囲気が変わったような気がする神父様に注意されたので謝ったが、たしかに俺はこの二人は嫌いとまではいかないものの、そんなに好きではなかった。
もちろん、今本人達に言われた通りの理由でだ。それ以外にもリムと付き合っていく中で魔物の実態を知った俺は、魔物というだけで傷付ける勇者といった類の人間に良い印象を持っていない。
「それで、何の用ですか?」
「君の彼女へお届け物があってね。でもそうだね……良ければ、少し話をしていかないかい?」
「え? まあ別にいいですけど……」
「ではノフィ君はこちらへ。シスターネムはお茶を持ってきてください。その後は私の隣へ」
「わかりましたリーパ様。折角ですのでお茶菓子も用意します」
なので、早く用事を済ませて帰ろうとしたが、話をしないかと誘われてしまった。
特に断る理由もないし、リーパ様や神父様、ネム達の前で断るのも失礼かなと思い、俺は話をしていく事にした。
という事で、他の二人と違い特に変わった様子がなさそうなリーパ様に案内された席に座った。
「それで話とは?」
「そうだね……君達の話を聞かせてほしいなと思ってね」
「君達……?」
「勿論、君とリムちゃんの話だ。シスターネムから二人が恋仲だとは聞いたが、本人の口からも聞きたいからね」
「そうですか……確かに俺とリムは付き合ってます」
そして、ヤムさん達と話をし始めた。
「お二人でデートとかよく行ってるよね?」
「はい。あまり遠くまでは行ってませんが、二人でよく出掛けていますね」
「ほお……どんな場所に行っているんだい?」
「まあ、そこの森とか、ヤムさん達に襲われた山とか……あと、隣町にも行ったりしますね」
「隣町? たしかこの村の隣町はどこも反魔物領だったような……」
「ああ、えっと……リムは人化の術を使えるので。勿論それを使って悪さなんてしてませんからね!」
「え、ああ。別に疑ってはないよ。なるほど、彼女は人化の術を使えるようになったんだね」
自然な流れで隣町にもデートに行っている事を言ってしまったが、リムが人化の術を使える事を言ってしまうのはマズい気がした。
それを理由に何か良からぬ事を企んでいるみたいな言い掛かりを付けられるのではないか……そう思ったが、特にそれといった事はなく、少し安心した。
「私達はリーパや神父から事前にあれから一人としてワーウルフにされた人は居ないと聞いたからね。そこまで大人しければ、出会った当初であれ魔物とはいえ悪い事をしているなどと疑う事はないよ」
「そうですか。それは良かったです」
「実際爪も傷付けないようにと未だにきちんと丸くしてますからね。はいノフィ君。お茶とお茶菓子」
「おう、サンキューネム」
話をしていると、ネムが温かい紅茶と白いソースが掛かった小さいカステラ状のケーキを持ってきた。
少し喉が渇いていた俺は、早速お茶を口に含んだ。
「ところで、もう君達は子作りしたのかい?」
「ぶ〜っ!?」
「わっ!? ちょっとノフィ君! 汚いじゃないですか!」
そのタイミングで、予想外かつ変な事を聞かれたので、つい口の中に入れたお茶を全部吹き出してしまった。
咄嗟に誰もいない方を向いたので誰にも掛かってはいないが、教会の床が濡れてしまった。
「まあ、いきなりそんな事聞かれたら驚いちゃうのも無理ないよね。床は私が拭いておくね」
「げほっ、げほっ……あ、ありがとうございますリーパ様……」
咳き込みながら、床を拭いてくれたリーパ様にお礼を言う。
「い、いきなり何を言い出すのですか!?」
「いやごめんごめん。魔物と付き合っているのならば避け続けられるとは思えないからね。それで、実際どうなんだい?」
それにしたって、まさか勇者から魔物と子作りしたかどうかを聞かれるだなんて思わなかった。
先程ネムに相談したばかりというタイミングだったし、いくらなんでも不意打ち過ぎる。
「いや、流石にしてませんよ。魔物との性行為は許されない事って言われてますし……」
「でもしようか迷っているのですよね? ついさっきその事で相談されましたし」
「あっこの野郎。しれっと言うんじゃねえ」
相手は勇者だし、それ以前に実際に子作りなどした事ないので、素直にしていないと伝える。
そしたら、すかさずネムにするかどうか迷っているというさっきした相談事をさらっと暴露されてしまった。
「成る程。まだシていないが、いつかはシたいと考えていると……」
「まあそりゃあ……魔物だからって、子供を産んではいけないってのは、やっぱり酷いと思うから……勇者としては、許せない事でしょうけどね」
「そうだね。『勇者としては』到底許可できるような事ではないね」
話し相手は勇者だ。魔物との子作りを考えているだなんて気軽に言っていいものではないので黙っていたかったのだが、ネムに言われてしまったので観念して正直に話した。
やはり、良い顔はされない。
「だけど、『僕個人としては』そう考えるのはいい事だと思うよ」
「え?」
……と思ったが、どうやらそうでもないらしい。
「それは相手の……恋人の事をきちんと考えているからこその悩みだ。大切にしているとは良い男じゃないか。何も恥ずべきことではない」
「アミンに言われちゃったけど、そういう事だよ」
「そ、それはどうも……」
たしかに、彼等の言う通り、この悩みはリムの事を思っての事だ。
自分の子供を欲しがるリムに、お前は魔物だから駄目だなんて言うのはあまりにも酷い話だ。
ただ、倫理的な問題もあるので、思い立ったら吉日だなんて安直な事はできない。だから悩んでいるのだ。
「まあ、まだシてないにしても、考えているのだったら丁度良かったかな」
「えっ、何が……?」
「何って、今日の本題さ」
そう言って、ヤムさんは自分の鞄らしき袋をガサゴソと探り始めた。
そういえば、元々リムに渡したい物があるとかで呼ばれたという事を忘れていた。その渡したい物を探しているのだろう。
「あった。これを君に持っていてもらいたい」
「これ……?」
そして、袋から取り出し渡された物は……手のひらサイズの小さな箱だった。
「これはいったい……開けてもいいですか?」
「勿論構わない。知っておいたほうがいいだろうからね」
中に何かが入っていそうだったので、俺は慎重にこの箱を開けて中身を確認した。
「これは……?」
「まあ、綺麗な宝石の付いた指輪ですね」
「本当に綺麗……」
その中身は……月のように丸くて黄色い宝石が付いた指輪だった。
「これをリムに……?」
「ああ。前にこの村に来た時、私がしているこの指輪とそっくりな指輪を売っている商人を見掛けたという話をしたら、是非欲しいと言われたものでね。見つけ出して買い取ったというわけさ」
「なんでも、彼女の母親の形見らしい」
「なっ!? これがリムの……」
どうしてヤムさん達がリムに指輪なんてと思ったら、どうやら、リムが昔依頼していたらしい。
しかもこれは、リムの母の形見だと言われた。
「失礼ですが、これがその形見だとどうして言えるのですか?」
「まあ、正直な話をすると確証はない。ただ、その指輪の外見は彼女の言っていた形見と一致していたし、それにその指輪にはワーウルフの魔力が高濃度で込められているからね」
「確かに魔物の魔力を感じるわ……人間女性がこの指輪を嵌めて数日過ごすだけであっという間にワーウルフに成れる呪いの装備品ね」
「ワーウルフの……」
正確には絶対形見とは言い切れないらしい。
それでも外見は一致しているし、ワーウルフの魔力が込められている呪いの装備品とかいうものだから、可能性が高いとの事。
「呪いの装備品を女性が所持した場合はその魔物になるが、男性が所持した場合はその魔力に対応した種族に好かれるようになる……というか、襲われやすくなると言われている」
「という事は……ワーウルフであるリムちゃんの恋人であるノフィ君なら問題ありませんね」
「そう……なるのか?」
呪いの装備品の効果が本当にそれだけならば、たしかにリムの恋人である俺ならば持っていても問題はないのだろう。
そう考えれば、この形見らしき指輪を渡すのは俺が適任なのかもしれない。
「そう、だからこれを君に渡してほしいんだ。なんなら、婚約指輪としてね」
「こっ!? そ、それはまだ気が早いですよ!」
「あら? でも最終的にはそうするつもりじゃないの?」
「ま、まあ……許されるならそうしたいですけど……」
流石に今すぐは気が早いが……たしかに、将来的にはリムと結婚して夫婦になりたいとは思っている。
リム以外に好きになった女はいないし、リム以上の女がいるとも思わない。だから、リムとは結婚したいと思っている。
「私は許さないとは言わないよ。君達の事は小さい時から知っているからね」
「私も、この地に降りたばかりの頃であれば反対したと思うけど、今となっては絶対にそんな事しないよ」
「勿論わたしは友人の幸せは祝福しますよ」
「ほら、この村の神父様や天使様、シスターだって祝福してくれるんだ。何も障害はないだろ?」
「ま、まあそうですけど……」
しかも、ここにきて何故か教会の人達が満場一致で賛成してくれている。
この前までは仕方ないな感が満載だったのにこの心変わり様はいったい何だろうか。
ちょっと奇妙に思いつつも、それは自分にとっては良い状況なので、その思いは口には出さず、お茶菓子と一緒に飲み込んだ。
「どちらにせよまだ早いですし、それに婚約指輪は自分でちゃんと用意したいのでこれは普通に渡す事にします」
「まあ、それならそれで構わないよ。確かに君に預けたから、きちんとリムちゃんに渡してほしい」
「了解です。明日、もしくは数日以内には渡します」
とりあえず渡す事を誓いながら、俺は指輪の入った箱を強く握りしめたのであった。
…
……
…………
……………………
「と、言ったはいいけど、こりゃあ渡すのは2週間後になるかな……」
指で転がしている箱の事を思い出しながら、俺はそう呟いた。
リムが発情期に入ってしまったのであれば、落ち着いて渡す事はできないと考えたからだ。
「でも、ワーウルフの魔力が篭っているなら他の家族が触らないようにしないといけないしなぁ……」
かといって、いつまでも自分で所持しておくのも些か不安が残る。
俺自身がワーウルフの魔力に侵食されるのは、リムと付き合う過程で遅かれ早かれそうなるのだから良いとしても、親や弟妹が侵されてしまうのは困る。
単純に魔物化したり他のワーウルフに襲われるのも困るが、そのワーウルフを呼び寄せたりワーウルフ化させたのがリムというあらぬ噂を立てられてしまう可能性があるのがもっと困る。
リム自身が受け入れられているといえども、それはリムが村人に考えられている魔物らしい行動を起こしていない事も大きい。そんな事になったら、リム自身に問題がなくとも信頼なんて一気に失ってしまうだろう。
「と言っても、発情期に会うのはなぁ……」
だが、発情期に会ってしまえば、確実に襲われる形で身体を交える事になるだろう。
まあ、この先のどこかで、子供を作るためにも身体を交えたいと悩んでいるわけではあるが……この村で医者になるという事を考えると今はまだしないほうが良いような気がするし、何より本人がわざわざスノアさんを使ってまで近寄らないように言うのだから、気持ちを汲めば近寄らないほうが良いのかもしれない。
だが、リムも相当我慢してそんな事を言っていると、パンさんやその知り合いなどいろんな魔物関係者から聞く。だから、踏ん切りがつかない状態が続いているのだから、いっそ襲われに行くのもありかもしれない。
他の村人には多少非難されるかもしれないが、昨日の様子からして教会の人達は多分文句を言ってこないだろうし、案外なんとかなるかもしれない。
「うむむ……どうしようかな……」
とはいえ、気楽に考え過ぎると悪い方向に進んだ時が怖い。
ここはやはり機会を待つべきかもしれない。でもそれはそれで怖いし、リムにまた我慢を強いてしまう事になる。
「う〜む……」
今までの人生の中で一番の悩みを浮かべ、結局解決しないまま、今日という日が過ぎていくのであった。
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「わふぅ……くぅ……ん♪」
ほとんど欠けた月が村を仄かに照らす夜。
私はベッドの上にうつ伏せで乗って、顔を枕に埋め、腰を少し浮かせた姿勢で、自分の指を陰唇に出し入れする。
既に濡れている膣襞を指で激しく擦る度に、くちゅくちゅと厭らしい水音が部屋に響く。
「んあっ、はっはっ、くぅ〜ん♪」
まるで犬のようにだらしなく舌を出し、上下の口から涎を垂らす。
火照った身体は少しの刺激で身体を震わせ、白く泡立った粘液を股間から溢れ出す。
「ふあ……あ……ぁ……❤」
膣内の少し感覚が違う場所……Gスポットを爪先で刺激し続けて……快感が爆発した。
がくがくと一際大きく腰が震え、頭が真っ白になる。
「はぁ……はぁ……♪」
身体の痙攣が収まり、呼吸が荒れる。
視界はまだぼやけているが、すとんと絶頂から落ちてきて、少しだけ落ち着く。
「ふぅ……はぁ……ご飯にしよ……」
発情期に入ってからおよそ2週間。ピークも過ぎ、少しずつ落ち着いていられる時間が増えてきた頃だ。
用意されている夜ご飯をゆっくりと食べる余裕は出てきた。だが、まだまだ子宮は疼き続けているような状態だ。
「はむはむ……」
乱れた服を着直してもどうせまた乱れるので、私はいろんな体液で濡れた身体をタオルで拭いた後、全裸のままご飯を食べる。
この姿を誰かに見られたら恥ずかしいが、まずスノア兄ちゃんとお婆ちゃんは入ってこない。外からもカーテンはきちんと閉めてあるし、流石に覗く人は居ないと思いたい。
「……ん?」
美味しいご飯をもぐもぐと食べていると、鼻先にある匂いが掠めた。
「ノフィ……?」
間違えようがない。その匂いは、ノフィの匂いだった。
「いやまさか……」
ノフィの匂いは、段々と強くなる。この家に近づいてきているのだろうか。
発情期中は近付かないように伝えてあったはずだが……まさかもう発情期が過ぎたと思っているのだろうか。
時期的にはそう思われても仕方ない時期ではある。実際後2,3日したら完全に落ち着くだろうけど……今までは発情期が終わってこちらから会いに行くまで会っていなかったので、あっちから会いに来るのは珍しい。
そうでもしないと、発情期の途中で会ってしまう可能性がある。というか、今まさにそうなりそうだ。
「……」
とりあえず本当に近付いてきているのかを確認するため、少しだけカーテンを開けて玄関のほうを覗いてみた。
「あっ……♪」
そこには、予想通りノフィがいた。
しかも、玄関から家の中に入ってきた。
「ノフィ……いったい何の用だろう?」
ある程度落ち着いてはいるので、窓ガラスをぶち破ってまでノフィに抱き付きに行きたいという衝動は抑えられている。
「……んん……」
とはいえ、突然現れた恋人に、私の子宮は一旦の落ち着きを完全に吹き飛ばし、激しく疼いている。
まったく触れていないのに、愛液が滴り落ちて太腿を濡らしている。
今すぐ部屋を飛び出してノフィを犯したい、いや後ろからノフィに犯されたい……そんな衝動を、理性でぎりぎり抑えられている状態だ。
「ん……ふ……」
それにしても、本当に何をしに来たのだろうか。
今はもう夜遅い。本来のノフィなら寝ている時間であり、また診療所もとうに閉まっている時間だ。
もしかしたらノフィ本人、もしくは家族に何か急患だろうか。
それとも、私と性行為をする事を覚悟で会いに来てくれたのだろうか。
そんな事を考えながらも、再び火照り始めた身体を鎮めるために私は指を下腹部に伸ばし始めた。
「おいリム、居るか?」
「の、ノフィ!?」
それとほぼ同時に、扉の前からノフィの声が聞こえてきた。
勿論幻聴じゃない。匂いも気配も、扉の前にノフィがいる事を示している。
「ど、どうして来たの?」
「んーまあ直接渡したい物があってな。まだ発情期の最中だってさっきルネ先生に聞いたけど、まともに会話できる程度には落ち着いてるみたいだな」
「う、うん……でも……」
どうやら、私に何か渡したい物があってわざわざ発情期の最中かもしれないのに来てくれたらしい。
今すぐ扉を開けてノフィを部屋の中に引き摺り入れて交尾したい。そんな考えが頭を占めているが、どうにか押し出して会話を続ける。
「まだ身体はむずむずしてるし、今入ってくると絶対我慢できずにノフィの事襲っちゃうよ? お互いのためにも、今日は帰ったほうが……」
「そうか……」
なるべく冷静を装い、今日は引き返すようにとノフィに言う。
もちろん、入ってきてほしい、私のあられもない姿を見て興奮してほしい、子作りしてほしいと、本心では帰ってほしくないと考えている。
でも、この村で過ごすには、これ以上踏み込んではいけない。絶対取り返しがつかなくなるから、今日は帰ってほしい。
そう思っていたのに……
「まあ、入るぞ」
「え……!?」
そう思っていたのに、私の制止も聞かず、ノフィは堂々と扉を開けて部屋に入ってきたのであった。
====================
「おいリム、居るか?」
「の、ノフィ!?」
あれから約2週間。そろそろ発情期も終わりかなと思いながら、リムに会いに診療所までやってきた。
勿論あの指輪も、ズボンのポケットに箱ごと入れて持ってきてある。今日は、一応これを渡すために来たのだ。
「ど、どうして来たの?」
「んーまあ直接渡したい物があってな。まだ発情期の最中だってさっきルネ先生に聞いたけど、まともに会話できる程度には落ち着いてるみたいだな」
「う、うん……でも……」
診療所に来た時に対応してくれたルネ先生に先程告げられたが、どうやらまだ完全には発情期は過ぎていないようだ。
それでも落ち着きはあるようで、俺の発する言葉にきちんと返答してくれる。
「まだ身体はむずむずしてるし、今入ってくると絶対我慢できずにノフィの事襲っちゃうよ? お互いのためにも、今日は帰ったほうが……」
「そうか……」
予想通りではあるが、まだ発情期が過ぎ去っていないリムは俺に帰れと言ってきた。
それはそうだ。これからの事を考えると、ここで俺を襲うのはリム的にも困ってしまう事になるのだから。
だが、俺はここに来た時から覚悟を決めていた。いや、来る前から決めていた。
今日既に発情期が終わっていたら、普通に指輪を渡して、これから村の外へ出ていく時、俺も一緒に行こうかと考えている事を告げ、そのまま帰ろうと。
「まあ、入るぞ」
「え……!?」
そして、発情期の最中であれば……今日こそ、身体を交わらせようと。もう、我慢させるのはやめようと。
だから俺は、リムの制止を聞かずに……リムの部屋の扉を開け、ゆっくりと部屋の中に入った。
「うわ、すごい恰好のわっ!?」
「はっ、はっ……ノフィのばかぁ……❤」
ランプの炎が揺らめく部屋に入ってまず目に入ったのは、一糸纏わぬ姿で座っていたリムの姿だった。
まったく予想できていなかったわけではないものの、今まで見た事ない全裸姿に思わず怯む。
そして、次の瞬間……目の前からリムが消えたと思ったら、気付けば目の前には天井が広がっていた。それと同時に、背中に少しの痛みを感じた。
「いたたた……」
「あんなに言ったのにぃ……入ってくるなんてぇ……もう我慢なんてしないんだからね♪」
腹の上に重みを感じ、顔を向けると……そこには、顔を赤らめ、今まで見た事のない表情を浮かべたリムが乗っていた。どうやら俺はリムに押し倒されたようだ。
息は荒く、眼光は鋭く光り、舐め回すように全身を見てくる……まさに、獲物を追い詰めた獣のような顔を浮かべていた。
「ちょ、ちょっと落ちつんぶっ!?」
「んじゅ、んっ、んんっ♪」
まずは指輪を渡したかったこともあるし、何よりも慌てて制止しようとしたが、リムの顔が近づいてきて……唇で塞ぎ止められた。
そのまま舌で唇を割り、口内に舌が侵入してきて、俺の舌を絡める。軽いものは幾度となくしてきたが、ここまでのものは初めてであった。
くちゅくちゅと互いの唾液が混ざり合い、舐め取り、飲み込まされる。唾液なんてあまり綺麗なものというイメージはないが、リムの唾液は、どこか甘い蜜のように感じた。
「ぷはっ、はぁ……はぁ……❤」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
長い長いキスの後、惜しむように舌を絡ませたまま唇を離す。
互いの舌同士に透明な橋が架かり……やがて顔の上に滴り落ちた。
荒い呼吸を何とか落ち着かせようとするが……興奮が勝っているのか、なかなか落ち着けない。
「はぁ……はぁ……うっ!」
「わふ……ノフィのおちんちん、おっきぃ❤」
「うぅっ、だ、だから少し落ち着けって……」
「無理だよぉ……これがずっと欲しかったんだもん。何年もお預け食らってたものが目の前にあって、我慢なんてむりぃ……❤」
それに、リムはおもむろに俺の性器を下履きの上から撫でてきた。
裸のリムが俺に馬乗りになり、ディープな接吻までした。そしてその前からリムの意外と柔らかいお尻が押し付けられていたのだ。撫でられた陰茎は、既にガチガチに膨らんでいた。
あまり知識はないものの、一通りの性教育は年齢が2桁になった辺りで習っている。とはいえ、流石にこの状況はどうしたらいいかわからなかった。
「それじゃあ脱がしちゃうよ」
「ちょ……うわ!」
こちらが慌てふためいている隙に、リムは体の向きを変えて、お尻を俺の顔のほうへと向けた。
目の前には激しく動く銀毛の尻尾。そして、リムの丸いお尻。思わず凝視してしまう。
そのため抵抗する動きが止まってしまったので、リムはその隙を逃がさずに今度は下履きを引き摺り下ろした。
スースーとした感覚から、おそらく下着ごと剥ぎ取られ、俺の下半身は丸出し状態になってしまったみたいだ。
「わふぅ❤ やっぱり大きい……❤」
「うっ……」
まじまじと俺の股間をもの欲しそうに凝視するリム。恋人とはいえ異性に自分の恥部を見られ、恥ずかしさが込み上がる。
だが、そんな恥ずかしさも、不意に襲った陰茎への刺激で吹き飛ぶ。
リムの肉球だと思われる柔らかなものが、ペニスの竿部分をぷにぷにと触ってくる。柔らかな獣毛が亀頭に触れ、弱めの快感が与えられる。
そのどちらもがくすぐったくも、たしかに俺の快感を強めていく。
「くんくん……きゅーん……♪」
しばらくはそのまま手で弄っていたが、何を思ったのか俺の上に乗ったまま身体をスライドさせ、お尻を顔の上まで移動させた。
足は顔の横に移動し、ネムやアルモ程ではないが膨らみ柔らかさのある胸で俺の身体を押さえつけている。
目の前には、透明な液体を滴らせている、男の俺にはついていない割れ目があった。
これがリムの女性器……初めて見るそれから目を離せないでいると、不意に先程までとは異質な刺激が亀頭を襲った。
「くんくん……ペロッ♪」
「ふあっ、お、おいリムグッ!?」
「ぺちゃ、じゅる……はぅっ♪」
あろう事か、リムは俺の陰茎を、嬉しそうに舐め始めたのだ。
俺からは見えないが、この柔らかくて自由に蠢くこれはどう考えてもリムの舌だ。その舌が、亀頭や雁首、竿、挙句の果てに陰嚢まで舐め始める。
舌の柔らかく少しざらついた感触が気持ちいいし、それ以上に、リムが俺の醜く汚い部位を夢中で舐めているという事実が、より一層興奮剤となる。
それと同時に、顔を足で挟み固定し、分泌液を漏らす秘所を口や鼻に押し付けられた。それはまるで口のように激しく俺の唇を奪い、ぬめぬめとした体液を顔面に塗りたくる。
「じゅぷ、じゅる、じゅずずぅぅ……」
「ぶわっ、り、リム、やめろ、出ちまう……!」
「んふふぅ……❤」
舐めているだけでは飽き足らず、その口いっぱいに頬張り、顔を上下に動かし始めたリム。
舌の上で筋が撫でられ、時々痛くない程度に噛まれる。その度に陰茎は勝手に震え、腰に何かジワリとする。そして、竿の中を駆け上がり、尿意にも似たものが込みあがってきた。
おそらくだが、これが赤ちゃんの素……精子を射精する準備段階なのだろう。
その精子とやらを口の中に出すのは良くない気がした。だからこそ、何かが漏れそうなのを必死に耐えていたのだが……
「ちゅぽん……うわあっ!?」
「うあっ、あっ、あぁ〜……!」
じゅうっと吸い付きながら口を離そうとしたとき、リムの犬歯らしき歯が雁首に引っかかった。
その刺激が引き金となり、俺はリムの顔に向けて射精してしまった。
腰が勝手にがくがくと跳ね、ペニスから迸る液をリムの前面に万遍なくぶっ掛ける。
「ふあぁぁ……❤」
「はぁ……ぁ……わ、わるいリム……ぶわっ!?」
こちらの射精が落ち着き始めたタイミングで、顔の上にある陰唇からポタタ……と愛液が降り注いだ。
呼吸を整えるために開いていた口の中に注がれ、思わず飲み込んでしまったが……不思議と不快感もなく、それこそジュースのように、もっと欲しいと少し考えてしまったほどだ。
「ん……ペロ……♪」
「お、おい……そんなもの舐めて大丈夫なのか?」
「うん。美味しいよ。だってノフィのだもん❤」
お尻を顔から離し、立ち上がったリム。想像通り、顔や胸、お腹には白い粘液がべっとりと張り付いており、ゆっくりと垂れ流れていた。
そして、頬に掛かっていた垂れ流れてきた精液をペロリと舐める。そんな事は無いと本能でわかる精液を、美味しい、美味しいと呟きながら猫のように身体中を舐めて取る。
俺は射精後のけだるさを感じながらも、身体を少し起こす。まだ硬さを保っているペニスが、自分の体液とリムの唾液でテカっている。
「でもぉ……今度こそこっちに出してぇ❤」
「ごくっ……」
身体に付着した精液を全て舐め取った後、そんな事をいつになく甘い声で囁きながらベッドの上に乗り、お尻を見せつけるように四つん這いになり、後ろに回した手で秘所をくぱぁと広げた。
暗い部屋の中でも綺麗なピンク色だと分かるその割れ目は、ぬちゃぁと糸を引いて、もの欲しそうに蠢いている。
男としての本能か、初めて見たはずのその穴の中に、自分の醜悪な肉棒を突き入れたいと考え始めた自分。
既に忘れかけていた指輪の事を完全に思考の外に追いやり、目の前のメスと交わる事しか考えられなくなっていく。
「ほら、後ろから挿れてぇ……❤」
「お、おう……わかった」
ギンギンになり少し痛く感じるほどになったペニスをぶら下げ、ふらふらと立ち上がる。
他人の性行為など見た事ないが、犬の交尾であれば過去に偶然見た事がある。今のリムは、その犬のメスと同じような姿をしていた。つまり雄である俺は、後ろから抱き着くようにこの男根を入れればいいのだろう。
四つん這いになっているリムの後ろに立った俺は、手を腰に添え、もう一方の手でペニスの位置を広げている穴に入るように調整し始めた。
「ほら、早くぅ……❤」
「あ、ああ……行くぞ」
とはいえ、初めてだから手間取ってしまう。焦らされているとでも思ったのか、急かされてしまった。
長い間意図的に避けてきた子作りを、今ようやくしてあげることができるのだ。尻尾がこれまでにないほど激しく揺れ動き続けているので、リムも喜んでくれている事がわかる。
もちろん、俺だって嬉しい。今まで我慢させてきたリムを、ようやく喜ばす事ができるのだから。
「こ、これでいいのか……くぅっ……」
「あ、ああ……きたぁ……♪」
そして、とうとうその時が来た。
ようやく入口を捉えられたペニスの先端が、ゆっくりとリムの膣内へと沈んでいく。
「す、すげぇ……なんか、絡みついてくる……これが、子作り……」
「きゃうぅん♪ しゅごいぃぃ……指なんかと全然違ぁう❤」
本当にゆっくりと、進んでいないんじゃないかと思うほどゆっくりと腰を前に進めていく。
そうでもしないと、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる膣肉や、絡みついてくる愛液や襞による刺激で、すぐにまた射精を始めかねないからだ。それだけ、リムの中は気持ちが良かった。
ようやく手に入った望んでいたものをもう離すまいとしているのか、沈むごとに膣はギュッと窄まる。
途中で引っかかるものを感じながらも、射精を堪えながら腰を前に押し付けていき……とうとう根本まで沈み込んだ。
「ふぅ……は、挿入ったぞ……って、これ血……?」
全部入れられた事に一息ついていたら、結合部から愛液と共に赤い液体が流れているのが見えた。
ランプの光だけが光源なのでわかりにくいが、おそらくこれは……血。
「わうぅん……の、ノフィに処女膜破られちゃった……❤」
「えっ!? わ、わるい! 痛かったか!?」
「謝らなくていいよ。痛くなかったし、それに……嬉しいからぁ❤」
処女膜というものはよくわからないが、途中で感じた引っ掛かりを突き破ったから流血してしまった事はわかった。
だから俺は慌てて謝ったが、本人曰く痛くないから構わないとの事。こちらに向けた蕩け切った表情が、痛くないことを如実に示している。
「うぅ……それにしてもこれ、どうしたら……うっ」
「動いてぇ……激しく、腰をぉ……あっ❤」
とにかく地の事は心配ないのでもういいとして、これからどうすればいいかわからず、俺は動けないでいた。
性行為は勿論の事、そういう性の知識を基本中の基本しか持ち合わせてない。だから、子作りのためにどうすればいいかもよくわかっていない。犬の交尾では腰を振っていたが、それでいいのかも自信がなかった。
そんな俺の様子を察してか、激しく腰を振ってと言いながらゆさゆさと自分で腰を軽く揺らしたリム。この小さな動きだけでも気持ち良く、中に沈むペニスをより一層膨らまさせる。
「う……あっ、こ、こう、か?」
「わっ、あっ、ふぁっ、う、うんっ♪ ぁあっ、ひあっ!」
そして俺は、ゆっくりと、ぎこちない動きだが腰を動かし始めた。
まずはゆっくりと引き抜く。逃さまいとするように、強く窄められ膣肉が引っかかる。
それでもどうにか抜ける直前まで引いた後、次はまたゆっくりと中に割り入れる。先程とは逆に押し出されそうになりつつも、それとは逆に貪欲に呑み込んでいく。
初めてだから決して上手いものではなく、一つ一つの動きは大雑把だが、すっかり興奮しきったリムは、それだけでも顔が蕩け、口からは涎と喘ぎ声が漏れだしている。
「ぐ、う、こ、これ凄いな……!」
「わぅんっ、あっ、はっ、くゎあっ❤」
顔の半分をベッドに埋め、目はあらぬ方向を向き、口から舌と涎を垂らし、言葉になっていない声を漏らし続けるリム。その表情は、まさしく悦び狂っているといえる。
そして、リムの膣からもたらされる快感に、いつしか俺もこの性行為……いや、交尾に夢中になっていた。
もっと気持ち良くなりたい。もっとリムの悦び崩れる顔を見たい。そう思ううちに、気付けば俺は腰の動きを自然と速くしていた。
「ふっ、くっ、り、リム……も、もう……!」
「わおぉんっ、だしてぇ……❤ しょっ、そのまま、わふっ、私のなかにぃ……ふぁ、子供作るのぉ……ふぁあっ❤」
リムの部屋の中は、パンッパンッとオスとメスの肉がぶつかり合う音と、互いの漏らす息と喘ぎ声だけが響く。
リムの腰を持ってただ抽挿を繰り返し続けるうちに、先程以上の射精感が込みあがってきた。
ビクビクと腰が痙攣し、男根がリムの膣内で跳ねる。その度に甘い声を漏らすリムを見て、さらに高鳴る。
そして、大きく腰を打ち付けた際、亀頭の先端に何か壁みたいなものにぶつかり……その衝撃で、とうとうペニスは暴発した。
「っ……!」
「わおおぉぉぉぉぉぉんっ❤ きたぁぁぁっ❤」
射精し始めたのとほぼ同時に、リムの膣が一際ギュッと締まり、がくがくと大きく震えた。
その刺激もあるのか、ビュルルル……と、口でされた時とは比較にならない程強い勢いでリムの子宮へと精液を注ぎ入れる。
今まで感じた事のない強い快感に、俺の足も震え、腰の力が抜けて、結合したままリムの背中の上に覆いかぶさる形に倒れる。
「ぐっ、うっ……はぁ……はぁ……ふぅ……」
「ふぁっ……ぁっ……わふ……ぅ……はぁ……♪」
しばらく射精し続けたが、2,30秒経った辺りで止まった。
射精したためか少し柔らかくなり萎んだペニスをリムから引き抜き、そのまままだ力なく沈んでいるリムの隣に寝転ぶ。
まだまだ興奮しているが、それ以上の、立つ事もできない程の疲れが押し寄せた。
まさか性行為が、子供を作る行為がここまで疲れるとは思わなかった。普段跳ねている時間にこの疲れもあり、自然と瞼が閉まっていく。
服着て自分の家に帰るとか、そもそも例の指輪を渡さないととか、いろいろとやらなきゃいけない事はあるが……それはもうできそうにない。
「あふぅ……ノフィのせーし、いっぱぁい……❤ ノフィとの子供……わふぅ❤」
そんな事を呟くリムの声を遠くに聞きながら、俺はそのまま寝てしまった……
====================
「ふぁ〜……く……ん……」
朝、鳥の鳴き声で目が覚めた私。
「ん……?」
どうやらいつもと違う姿勢で寝たらしく、足の先がベッドからはみ出していた。
そして、鼻先に掠める、私以外の人の匂い。
「あ……♪」
開けた目には、私の横で寝ているノフィの顔が映された。
「そっか……昨日私はノフィと……」
そして思い出す、昨日の出来事。
ノフィを見て完全に発情しきった私は、四つん這いになって後背位で性行為を行ったのであった。
「わふぅ……❤」
下腹部を撫でると、そこに感じたノフィの精液。
そこそこ時間が経っているので少ないとは思うものの、ようやく手に入ったノフィの精に、私は顔を綻ばせる。
「あれ? あっ……」
寝息を立てているので、まだノフィは寝ているようだ。そう思いながらノフィのほうを見たら……視界に入った、半勃ちのペニス。
どうやらノフィは下履きも履かずに寝てしまったようだ。乾いた液体が付着している肉棒が、呼吸に合わせて少し揺れている。
「んふ……♪」
まだ発情期だからだろうか、ペニスを見た私の子宮は、またもや疼き始めた。
目の前にある男根が欲しくてたまらない。陰唇がジワリと湿り気を帯びていく。
「わふぅ♪」
ノフィを起こさないようにゆっくりと近づき、丸出しのペニスに両手を伸ばし、挟むように優しく握る。
肉球で刺激しながら、両手を交互に上下させるとむくりと膨らんでいく。
寝たままであるが、私の手淫で感じてくれているのだろう。あっという間に昨日と同じぐらい大きくなった。
「それじゃあ、入れちゃうよ……❤」
普段の私とノフィの立場は対等で、主従関係などは特にない。憶測ではあるが、ノフィ自身が同い年にそういう関係を持ちたくないと考えており、私もその考えに賛同したからだろう。
だが、私が普段自慰をする時の妄想では、私が攻めている時もあるにはあるが、どちらかと言えば受け身な事が多い。
特に絶頂に達しやすく、またその快感が大きいものは、後背位で後ろからガンガン突かれるものであった。
この村に来てからずっと持っていた私の人間に対する不安を完全に取り除いてくれたのはノフィだ。心の奥底ではノフィを強く慕っているところもあるのだろう。
だから、昨夜もノフィを押し倒してその気にさせた後、自ら四つん這いになって後ろから犯されることを望んだのだ。実際、後ろからガンガン突かれて気持ちよく、頭が真っ白になり、今まで経験した事もないぐらい大きくイッたのだ。
しかし、今ノフィは寝ている。ノフィから動く事は無いので、今度は私が上になろうと、ノフィの股間の上に跨った。
「ん……くぅ……んっ♪」
片手でペニスの位置を調整し、ゆっくりと腰を下ろす。
既に受け入れる準備ができていた秘所は、何の抵抗もなくノフィのペニスを埋めていく。
下腹部に広がる嬉しい圧迫感。全て入った時には、私の頭は幸せ一色だった。
「んっ、んっ、あっ、あふっ、んんっ♪」
昨夜も私の膣内を擦ったペニス。私の膣が形を覚えたのか、ただ腰を振っているだけなのに特に感じる部分を的確に攻めてくる。
お尻が腰に当たる度に、子宮口を先端が突き、電流のように快感が全身を流れる。
「ん、んん……リム……?」
「あっ、ふっ、お、おはよっ、ノフィ!」
「ああ……っておい!? な、何を……はうっ!」
激しく動いていたからか、ぐっすり寝ていたはずのノフィが目を覚ました。
最初は寝ぼけていたのか状況がわかっていなかったみたいだが、しばらくして意識が覚醒したのか、会館で顔を歪めた。
「ら、らってぇ、ノフィのおちんちんがあったんだもん♪ ずぽずぽしたかったんだもん♪」
「ふっ、ふぅぅっ、ぅあっ!」
「もっとノフィの精液欲しい! 好きな人の子供、欲しい! わおおぉぉぉんっ❤」
ぞくぞくと快楽で包まれた身体を震わせながら、目を覚ましたノフィにもっと種付けしてと告げる。
その言葉が聞いたのか、ノフィのペニスがぐんと大きくなり、強く痙攣する。もうすぐ射精する合図だ。
「ふっ、ぐぅ……り、リム……」
「わふっ、な、なにぃ?」
「あぁっ、お、俺達の子供、う、産んでくれっ」
ラストスパートと言わんばかりに腰の動きを速めたところで、ノフィが私にそう囁いた。
「わふっ!? くうぅぅぅぅぅぅうんっ❤」
その言葉を聞いた私は、一直線に絶頂へと上り詰めた。
ノフィに抱き付き、肩を甘噛みする。そうでもしないと、私の身体が飛んでしまうような錯覚に陥った。
膣肉がキュンキュンと痙攣し、頭の中がパチパチとスパークしたかのように真っ白になる。
「うあっ、ああぁぁ……!」
絶頂の最中に、子宮内に入ってくる熱を感じた。
子宮口をこじ開け、空気に触れていない新鮮な精液が、私の卵子を犯そうと注がれる。
濃厚な精液の味は、昨日と変わらず甘美なものだった。愛しい人の精の味は、飽きるわけがないし、もっと欲しい。
ノフィの言葉通り、子供を産むためにも、もっと搾り取らなければ。
「あふ、ふぁ、ノフィ、もっとぉ❤」
まだイッている最中というのに、理性を吹き飛ばし、また朝になり体力も完全回復した私は、さらに気持ちよくなろうと腰を大きく振る。
上下だけでなく、前後に動かしたり、円を描くように動くと、また違った快楽が身体を駆け巡る。
「ふわぁっ、あふぅ、好きぃ……!」
互いの手の指を絡め、ギュッと繋ぎながら腰を振り、ひたすらに快感を貪る。
ノフィのほうも慣れたのか、それとも本能で動いているのか、私の動きに合わせて腰を突き動かす。
膨らんだ亀頭が膣肉を広げ、雁首が襞を引っ掻きまわす。ガツンと子宮口を叩き続ける。
もう何も考えられない程、思考という思考が快楽一色に染まっている。締まりのない顔を浮かべ、涎をぼたぼたとノフィの胸の上に垂らす。
「わぅ、んはぁっ、ふぁ、しゅきぃ……子供、作るのぉ❤」
互いの汗や唾液、愛液や精液が飛び跳ね、身体を汚していく。
それも気にせず、何も考えず、悦びと幸福感だけが身体を支配する。
「リム、射精る……!!」
「私も、イク、イクぅぅっ! あおぉぉぉぉぉぉおおんっ❤」
そして、激しく達した私。背中を反らせ、全身ががくがくと震え、ノフィのペニスを強く絞る。ノフィも耐え切れず、腰を高く突き上げて射精した。
本日2度目、昨日から合わせて4回目の射精だというのに、その勢いは衰えない。私の子宮内を大量の精液で白く染めんばかりに出す。
「く……う……はぁ……」
「はぁ……はぁ……わふぅ……」
ノフィの身体に体重を預け、ゆったりと寝ころぶ。
繋がったままのペニスはまだ硬さを保っている。若者とはいえ、人間にしては精力がありすぎるが、そんな疑問も思い浮かばないほど、私はノフィのおちんちんに夢中になっていた。
「リムちゃん、そろそろええかね?」
「はぁ……うえっ!? お婆ちゃん!?」
「朝ご飯持ってきたよ。入るよ」
「ま、待っておばあ……」
しかし、もう一度シようとする前に、扉の向こうから元気なお婆ちゃんの声が聞こえてきて、身体の動きを止めた。
どうやら朝ご飯を持ってきてくれたらしい。たしかに、今は丁度朝食の時間ではある。だから持ってきてくれたことはわかる。発情期の時は毎度自室に持ってきてくれていたので、部屋に入ろうとしているのもおかしくはない。
だが、今の私達は一糸纏わぬ姿をしている。いや、それどころか繋がったままだ。流石に見られると恥ずかしいので慌てて制止しようとしたが……
「おやおや、ひ孫作りのお邪魔だったかのぅ……」
「あうぅ……」
特に気にする事なく、朝ご飯を持ったお婆ちゃんが入ってきた。
そして、私達の姿を見て……顔をほんのりと赤らめながら、そんな事を言ってきた。
慌てて尻尾で隠したが、その視線や言動から、性器同士が結合しているのをバッチリ見られただろう……恥ずかしさのあまり、身体を縮こませる。
「うわっ!? る、ルネ先生、これは……」
「慌てなくてもええ。ノフィちゃんの分もちゃんとある」
「い、いや、そうじゃなくて……その……うわあ……」
しばらく息絶え絶えにしてボーっとなっていたノフィもお婆ちゃんに気付き、慌てて散らかっていた布団を私ごと被せる。
それでもやっぱり恥ずかしいようで、顔だけではなく全身が赤く染まる。
「盛ってても良いが、ご飯はきちんと食べるんじゃよ?」
「う、うん……」
「それと、もう少ししたら開業時間になるから、声は抑えるんじゃよ。狼の遠吠えみたいな声が家中に響いとったからのぅ……」
「うそっ!? わうぅ……」
「二人が性交しておるのは私らだけの秘密じゃからの。庇い切れんで、自分達でバラすんでねえぞ」
「は、はい……」
そう言い残して、お婆ちゃんは部屋から出ていった。
まさか私の叫び声がそんなに聞こえていたとは……気を付けるとか以前に、物凄く恥ずかしい。
「じゃ、じゃあ飯にしようぜ……」
「う、うん。そうだね」
お婆ちゃん襲撃で流石に気分も落ち着いた。膣内に入れっぱなしのノフィのペニスも、完全に縮こまっている。という事で、ご飯を食べるために一旦結合を解いた。触れていた熱がなくなり、ちょっとだけ寂しい。
つう……と陰唇から太腿を垂れ流れる精液。漏れ出る程には子宮いっぱいノフィの精で満たされているが、用意されたご飯も食べる。
とりあえず裸のままなのもどうかと思ったので、床に置きっぱなしだったバスタオルを身体に巻いて、胸から股下まで隠す。
「お、おい、服着ないのかよ」
「うん。だって、ご飯の後はまたやるつもりだしね♪」
「お、おう……そうかい……」
「それに、集落にいた頃はこんな感じの格好してたしね。お腹が出てないから今のほうが隠れてるよ」
「へぇ……随分ハレンチな恰好してたんだな」
「人間にとってはそうかもね。ほら、私達には毛皮もあるし、魔力の関係かそんな格好でも寒くないしね」
ノフィのほうも、私が脱がした下着やズボンを履き直す。
まだ疼きは止まっていないし、一度知ってしまったノフィの精を我慢なんてできない。だからまたご飯を食べた後、性行為をしようとは思っている。
とはいえ、ご飯はゆっくりと食べたいので、わざわざ裸を隠す。興奮してご飯も食べずにというのは、作ってくれたスノア兄ちゃんや持ってきてくれたお婆ちゃんに悪い。
「ほら、ご飯食べよ」
「おう」
ノフィの着替えが終わったので、早速ご飯を食べ始める。
「もぐもぐ……スノアさんの飯は美味いなぁ……」
「こっちも作れるように教えてもらってるけど、薬の調合のように上手くいかないんだよなぁ……」
「薬の調合のほうが難しそうなもんだけどなぁ……」
さっきまでの激しい行為が嘘かのように、ゆっくりとした雰囲気でノフィとお話ししながら朝ご飯の目玉焼きを頬張る。
「そういえばノフィ、なんか渡したい物があったとか言ってなかった?」
「あ……ああっ! そうだ!!」
そういえば、どうしてノフィが来たんだろう。
そう思ったところで、そういえばノフィは何か渡したい物があって私に会いに来たという事を思い出した。
「そうそう、これこれ」
「これ? 何?」
いったい何だろうと思ったら、ノフィはズボンのポケットに手を突っ込んで、小さな箱を取り出した。
そしてその箱を私に手渡してきた。いったい何が入っているのだろうか。
「まあいいや。ありがとうねノフィ」
「おう。と言ってもまあ、俺からじゃないんだけどな」
「え? じゃあ誰から?」
しかもノフィからのプレゼントじゃないらしい。
益々何かわからない。だから、とりあえず開ける事にした。
「それな……この村に来てたヤムさん、いつぞやの勇者からだ。2週間ほど前に渡されたから、昨日渡しに来たんだよ」
「え……じゃあまさか……!?」
開けようとしたところで、この箱がヤムさんからのものだとノフィが言った。
ヤムさんと言えば、7年ぐらい前に来た時に私は頼み事をしていた。
お母さんの指輪らしきものを見たと言ったから、それを探してきてほしいと。
もしかしてこの箱の中身は……そう思いながら、私は緊張した手つきで箱を開けた。
「こ、これは……」
その箱の中身は……キラキラした石が付いている指輪が出てきた。丸くて黄色い宝石が付いた指輪だった。
「なんか、リムの母親の形見だとかなんとか……っておい!?」
幼い頃に見たお母さんの宝物。それが、目の前にある。
同じ形の指輪……ではない。
「う……うぅ……おかあさぁん……わあああああっ!」
指輪からは……忘れられない、お母さんの匂いがした。
これはあの、大きくなったら私にくれると言った、お母さんの指輪だ。
「わああんっ! おかあさぁぁん!!」
「お、おい! 大丈夫か?」
「うっひっく……ふわああああんっ!」
久々に感じたお母さんの気配に、懐かしさや嬉しさ、寂しさなんかが混ざって、私は久々に泣いてしまった。
指輪をぎゅっと握りしめながら、両親の笑顔を思い出し、大粒の涙を流した。
「うぅ……ひっく……」
「落ち着いたか?」
「ひっく……うん……大丈夫……」
ようやく手にしたお母さんの宝物。
お母さんがもうこの世にいないのはわかっているけど……それでも、すぐに行くと言っていたお母さんが、指輪という形でようやく来てくれた気がした。
「ノフィ……」
「わっと。まだご飯食ってるからそういうのは……」
「そうじゃないから……ちょっとの間こうさせて……」
それでも残る寂しさに、私はノフィにギュッと抱き着いて誤魔化す。
お母さんが言っていた、この指輪よりも大切な宝物……今の私には、それが何だったのかはなんとなくわかる。
きっと、今私が抱き着いている相手と、いつかできるであろうその子供、それと同じ物だろう、と……
「まあ、良かったな。お袋さんの形見が無事届いて……」
「うん……まだこの村にいてくれるんだったら、お礼言わないとね……」
ある程度落ち着いたので、ノフィから離れて食事を再開した。
お母さんの指輪は、中指に填めた。大事に仕舞っておこうと思っているが、お婆ちゃん達にも報告したいし、しばらくは身に着けておく。
「でもよくわかったな。それがリムのお袋さんの物だって」
「うん。お母さんの匂いがするから……」
「匂いか……魔力が篭ってるからかな?」
「魔力?」
「ああ。なんでもリーパ様曰くワーウルフの魔力がたっぷりと込められてるらしい。なんでも呪いの装備品だとよ」
「へぇ……」
お母さんの強い匂いが残っているのは、お母さんの魔力が込められているから。
その話を聞いて納得した。たしかにこの指輪は、物の中ではお母さんの一番の宝物だ。それだけ思い入れもあるし、呪いの装備品みたいになっていてもおかしくはない。
「なるほどねぇ……」
「あん? どうかしたか?」
「いやあ、だからノフィの精力も強いのかと思ってね。ノフィも人間辞め始めたんだなと」
「うえっ!? そうなのか?」
そんな呪いの装備品を、口ぶりからして2週間もずっと持っていたノフィ。
これだけ強く込められている魔力がある。ずっとその手に持っていたノフィは既にインキュバス化が始まっているのだろう。
どうりで何回射精しても元気なわけだ。いくら若者といえど、普通の人間なら昨日と合わせて4回も射精していたらそろそろ打ち止めになるのだが、インキュバスなら問題ない。ちょっとだけ引っかかっていた疑問も解消した。
「ど、どう変わるんだ?」
「姿は変わらないって。ほら、インキュバス化だよ」
「あ、ああ。そういえば魔物と交わった男はインキュバスってのになるんだっけか」
「そうそう、見た目は変わらないよ。ただ精力がついて長生きになるだけだからね。多分だけど、ノフィもこの先ずっとその姿のまま60とか70歳になるんじゃないかな」
「そっかあ……」
指輪の事は一段落ついたので、他愛のないお話をしながら食事を進めていたのだが……
「長生きと言えば、ルネ先生ってすっごく長生きだよな」
「え? あ、うん。言われてみればそうだね」
話は突然、お婆ちゃんの事になった。
「俺達が生まれた頃からお婆さんなのにまだ元気だよな。俺の爺ちゃん婆ちゃんなんてもう死んだのにさ。本当に長生きだよな」
「んーまあ……この前倒れたりしてたから、結構足腰には来てたりするのかもしれないけど……」
確かに、お婆ちゃんはやたらと長生きだ。
私がこの村に来た時から既にお婆ちゃんは結構な歳だったと思う。なのにまだ生きているのは、たしかにちょっと不思議に思う事もある。
「というかルネ先生って今何歳だ?」
「え……さあ?」
「さあ……って、リムも知らないのかよ」
「うん。言われてみれば、なんだかんだ教えてもらった事ないよ」
というか、私はお婆ちゃんの年齢を知らない。
今まで幾度も聞いた事があったけど、その度に誤魔化されている気がする。
「でも、スノア兄ちゃんの年齢からして80歳以上、下手すれば100歳近いとは思うけど……」
「凄い長生きだな……それであの元気って、やっぱ医者だからか?」
「う〜ん……」
スノア兄ちゃんが30代後半な事を考えると、祖母であるお婆ちゃんはそれに約50歳ほど足した年齢だろう。若くても40歳は離れているだろうから、この年齢予想もあながち間違ってはないはずだ。
それにしては、今のお婆ちゃんは元気すぎる。医者だからと言っても、特にこれと言って長生きのためにやっている事は無いし、それに……
「というか、俺の気のせいかもしれないけど……ルネ先生って、全然変わらないよな。老けも感じないっていうか……」
「うん……」
「なんちうか、まるでインキュバスみたいだな」
「いや、流石にインキュバスは無いよ。お婆ちゃんは女だからね」
「わかってるよ、例えだよ」
ノフィの言う通り、お婆ちゃんは全然姿が変わらない。
本当に初めてお婆ちゃんと出会った時から全く変わらない。スノア兄ちゃんなんかは白髪があったり目尻に皺ができていたりしているが、お婆ちゃんは見た目が何一つ変わってないのだ。
「あと……」
「なんかあったんか?」
「あ、うん……まあ……気のせいだと思うけど……」
あと、私の脳裏を掠めた記憶がある。
ハッキリと思い出せないし、現実だったかどうかは曖昧だけど……私はお婆ちゃんの手を思いっきり噛んだことがあったような気がする。
それは、この村に流れ着いた直後の事だ。目の前にいた人間に、怖かった私は敵意をむき出しにして、手の甲を噛み千切った。
意識が朦朧としていたのでハッキリとは思い出せないが、それが現実ならば相手はお婆ちゃんだったはずだ。
ただ、それだとお婆ちゃんがワーウルフに成っていない事がおかしい。
それに……その時口に入った液体が、血とはかけ離れた臭いや味だったような、そんな記憶があるのだ。
流石に気のせいだと思いたいけど……この記憶が、間違った記憶とはどうしてか思えなかった。
「まあ、お婆ちゃんの事は置いといて……」
「ん? ああ、もう飯食い終わったんか……って、おい、何を……」
「何って……そんなの子作りの続きに決まってるじゃん♪ ほら、今度は昨日みたいに後ろからガンガン来てよ♪」
「ごく……お、おう……まあちょっと待て。まだちょっと飯残ってるから……」
とはいえ、今の私はその疑問を深くは考えなかった。
何故ならば、まだ発情している私は、ご飯を食べ終わり早速ノフィのおちんちんが欲しくなったからだ。
バスタオルを剥ぎ取り、疼いている秘裂をノフィのほうに見せ、交尾に誘う。
ノフィもすっかり交尾の虜になったのか、視線を私から動かさず、生唾を飲みながら、その股間を勃たせている。
だからこの後は、また快楽の渦に飲まれるのであった。
私がお婆ちゃんの秘密を知るのは、この日からすぐ先の未来の話であった。
「あれノフィ君。こんな時間にお散歩とは珍しいですね」
「ん? ああネム……か?」
それは、何気ない一日に起きた小さな変化だった。
「こう言うのも悪いが……お前、本当にネムか?」
「……何故そう思うのですか?」
「だって……ちょっと前まではそう言ったら「淫らな考えを持つなんて神への冒涜です!」とか言って怒ってたじゃねえか。今日はやたらリムとはいえ魔物と一緒になる事を勧めてくるし……なんかおかしいと思うさ」
「……そうですか……ふふふふ……」
「!?」
本当に小さな変化で、ほとんど誰も気づいていない程だ。
もちろん、私もまったく気づいていなかった。
「お前……いったい何者だ!」
「何者って……嫌ですわ。昔からノフィ君とずっと一緒にいたネムですよ。ただ、ここ数日の間にちょっと考え方が変わっただけですよ」
「考え方……?」
しかし、見えないところで確実に変わっていた。
少しずつ、ゆっくりと変化が起こっていたのだ。
「いえ、実はノフィ君に用事がありましてね。もう寝ているでしょうし明日にしようと考えていたのですが、こうして会ったのでぜひ聞いてもらおうかと」
「俺に用事? なんだ?」
「まあ、正確にはわたしではなく、更に言うとノフィ君に直接用事があるわけではないですけどね。夕方頃村にいらっしゃったお客様がリムちゃんに渡したいものがあるという事で来たのですが……」
「ですが……なんだ?」
「いえ、物も物ですし、それに直接行ったらあの方々はルネ先生に怒られてしまうかもと仰られていましたので、ノフィ君の手で渡した方がよろしいかと思いましてね」
「まあいいや。会えばわかると思うし、今から会うよ。教会に居るのか?」
「ええそうです。それではお願いします」
そして、その変化は、もっと大きな変化を呼ぶのであった。
もちろん、私自身も、大きな変化に巻き込まれていったのであった……
====================
「……」
「リム、そこのイヌサフラン取ってくれない?」
「……」
「リム? おーいリムー?」
「……はっ! な、何スノア兄ちゃん?」
「いや、だからそこのイヌサフラン取ってって」
「あ、うん。はい」
お婆ちゃんが倒れてから数日後。
お婆ちゃんやスノア兄ちゃんが言った通り、あれから特に心配になることは起こらなかった。
ということで今日もいつも通り診療所でスノア兄ちゃんと一緒に薬を調合していたのだが……
「どうしたの? 今日はなんだか気付いたらぼーっとしてるけど……もしかして体調悪い?」
「ううん……そうじゃないけど……」
「そう? それならいいけど……ぼーっとし過ぎて薬の調合は間違えないようにね。失敗したら只じゃ済まない事になるかもしれないからね」
「う、うん……わかってる」
なんだか今日は少し気を抜いた瞬間にぽけーっとしてしまう。
別に体調が悪いわけではない。原因もおおよそわかっているが……自分のお仕事はきちんとしなければならない。
何故なら、私のやっている事は人の命を預かるお仕事なのだから。
「今日は頑張る……けど、明日からしばらくの間お休みするね」
「え? ああっ! そうかそろそろそんな時期だったね。だから今日はぼーっとしてる事が多いのか……」
「うん。まだ大した事ないけど、たぶん明日から本格的になるから……」
だから、今日は頑張ってお仕事をこなす。だが、明日からはとてもじゃないが無理だろう。
何故かというと、今私がぼーっとしている原因は……おそらく発情期の前兆だからだ。
時期的にも今週中に来る事は予想できていたし、今もちょっと身体が火照っている感じはあるので、きっと明日辺りには本格的に来るだろう。
そうなると仕事どころじゃない。数日間ずーっとベッドの上で獣じみた自慰を続ける事となるのだ。
「なんならもう休んでいてもいいよ。集中できないとこっちとしても困るし……」
「ううん。今日は……せめて午前中だけは頑張る。一応まだ思考はちゃんとしているからね。ほら、ちゃんとお薬も作れてるでしょ?」
「んー……まあそうだね。でも無茶は駄目だよ。僕達は人の命を預かる仕事をしているんだからね」
「うん、わかってる!」
だからこそ、まだまともに考えて動ける今日は頑張ってお仕事をしたいのだ。
たしかに、薬の調合も診察も結構集中力が必要な事なので、このままぼーっとする様ならばやめたほうがいいだろう。
しかし、医者になるためになるべくいろんな事を覚えたい私は、今日一日、せめて午前中だけでも頑張りたい。
「んーよし。できたから渡してくるね!」
「うん。あ、明日から発情期だって事、ノフィ君に伝えておいたほうがいい?」
「んー……よろしく! なんだか今ノフィに会うと最初の時のように一気に発情して襲っちゃうかもしれないからね」
「わかった。お昼休みの時間に僕から伝えに行くから、リムはお婆ちゃんにも発情期に入ることを伝えてから自室で大人しくしていてね」
「うん!」
という事で、できた薬を患者さんに渡しに行く。
ノフィに伝えるのを頼んだりと、この後の予定を軽くスノア兄ちゃんと打ち合わせ、私は待合室まで掛けた。
「お待たせしましたトンさん! お薬できました!」
「いやいや、全然待ってないよ。ありがとうリムちゃん」
そして、薬を待っていたトンさんに、今しがた完成したものを渡した。
「いやあ、今日も元気だね。昔は暗かったのが嘘みたいだ」
「まあ、この村に来たばかりの時は色々と怖かったので……そういえば、血塗れの私を見つけてくれたのってトンさんでしたよね?」
「そうだね。でも、感謝はしないでね。あの時の自分は、リムちゃんが魔物と分かった瞬間に見捨てようとしたからね……というか、スノア君がいなかったらきっとリムちゃんを見捨てて逃げ帰ってたよ」
「まあ、仕方ないですよ。でも、実際には助けてくれたので感謝させてください。ありがとうございました!」
トンさんと言えば、この村の外れで血塗れになって倒れていた私を発見してくれた、いわば命の恩人の一人だ。
その事を聞いたのはつい最近だったので、ついでではないがあらためてお礼を言った。
「おやおや、懐かしい話をしておるのぉ」
「あ、お婆ちゃん! 診察終わったの?」
「ええ。今のところガネン君のお父さんが最後だからね」
お礼を言ったのとほぼ同時に、診察室からお婆ちゃんとガネンのお父さんが出てきた。
「あの頃と比べたら、リムちゃんはとっても元気で大きくなったのぉ……」
「えへへ……」
頭を撫でながらそう言うお婆ちゃん。なんだか照れくさい。
でも、たしかにこの村に来て数年は、自分でも暗かったと思う。
まあ、それは両親の死から立ち直れなかったというのが原因だから仕方ないとも思っている。
ちなみに、両親が最期に私に被せてくれた布は未だに部屋のクローゼットの奥深くに眠っている。
血塗れだし衛生上あまりよろしくないし、もう両親の匂いも残ってないが、やっぱり捨てられない。
あの布に顔を埋めて泣く事はない……というか、今となっては両親の事を思い出して、少し恋しくなっても泣く事は無くなったが、それでもやっぱり両親が私にくれた物なので、あの布は捨てられなかった。
「あ、そうだお婆ちゃん。私、午後からお休みするね」
「おや、どうかしたのかいの?」
「それは……いや、その……」
昔の事を懐かしむのはこれぐらいにして、私はついでに後で伝えようとしていた発情期に入る事をお婆ちゃんに伝えようとしたが、まだトンさん達がいたので言い止まった。
あまり人前で言う事でもないし、それに、ちょっとだけ恥ずかしい。
「ああ、自分達はお邪魔なようだね」
「みたいですね。という事で自分もスノア君から薬を受け取って帰ります。ありがとうございました。リムちゃん、これからもうちの息子と仲良くしてやってね」
「はい。それではお大事にー」
そんな私の気持ちを察してか、トンさん達は薬を受け取った後、そそくさと帰って行った。
「それで、どうしたんだい?」
「えっと……多分、明日から本格的な発情期に入ると思う。今もちょっとボーっとする一方で落ち着かない感じしてるしね。下腹部も割ときゅんとしてる」
「ああなるほど。もうそんな時期じゃったか」
二人きりになった後、改めて発情期に入る事を伝えた。
「今回も部屋に篭って一人で慰めるのかのぅ?」
「うんまあ……私だって魔物だし、恋人もいるし、それなりに男性器を入れて欲しいとは思うけど……」
発情期に入れば、私はずっと自分の部屋に篭って自慰に耽るだろう。
というか、狂ったように自慰をし続けないと身体は全く落ち着かないし、大変な事になる。
「そうじゃのう……難しい問題だねぇ……」
「うん……」
自慰中の妄想は大体がノフィと性交しているという内容だ。
見た事もないノフィのペニスが私の陰唇に挿入され、ガンガン後ろから突いてきたり、逆に私が上に乗っかり腰を打ち付ける……といった類の妄想をしながら自分の指で行うと、絶頂した時の快感も大きくなる。
だが、そうやって妄想するからこそ、本物も欲しいと考えてしまうわけで……常に自慰をし続けて身体を疲れさせておかないときっとノフィの元に無我夢中で駆けつけて犯してしまうだろう。
本当の事を言えばそうしたいのだが……この村でお婆ちゃん達と一緒に医者として働く為には、我慢しなくてはならない。それが辛いところだ。
「まあ、そういう事で明日からは部屋に篭っちゃうね。さっきもボーっとしちゃってたし念のため午後も休むね」
「まあ、仕方ないからの。当分リムちゃんとお話しできないのも寂しいのぉ……」
「うん。だから……ぎゅっ!」
という事で、明日からしばらくの間は自室に篭って乱れ続ける日々が続く。
ご飯はお婆ちゃんが持ってきてくれるものの、最初のほうはともかく本格的になると興奮してまともに考えられないのでお話もできない。下手すれば興奮したままお婆ちゃんを噛んじゃうかもしれないので、発情期中は誰にも会わないようにしている。
なんだかんだそれは寂しいので、今のうちにお婆ちゃんを堪能すべくギュッと抱き着く。
お婆ちゃんの身体はちょっと硬い感じがするが、それでも抱き着いてて一番落ち着く。
「おやおや、リムちゃんはいつまでも甘えん坊じゃのう……」
「えへへ〜」
確かに私は甘えん坊なのかもしれない。
でも、それでいい。だってお婆ちゃんの事が大好きなのだから。
「あの、すみません」
「おっと、患者さんかの?」
「みたいだね。どうかしましたかー?」
しばらくそのままでいたが、入口のほうから村の駄菓子屋さんを経営しているおじさんの声が聞こえてきた。おそらく診察を受けに来たのだろう。
まだお昼まではちょっとある。という事で、私は名残惜しみながらもお婆ちゃんから離れ、患者さんの対応に動いたのであった。
====================
「……という事で、これからリムは発情期に入るから、なるべく近寄らないようにね。ノフィ君自身が病気になったら、僕かお婆ちゃんが出張するから呼んでね」
「はい。わざわざありがとうございますスノアさん」
昼過ぎ、スノアさんが家に来てリムが発情期に入る事を教えてくれた。
時期的にもそろそろかとは思っていたが、このタイミングで来てしまったか。
「う〜ん……」
スノアさんを見送った後、俺は自室に篭り、小さな箱の上で指を転がしながら、今までの人生で一番悩む。
「どうすっかなこれ……」
今日は一日中、正確には昨日の夜からずっとこの箱の中身の事で思い悩んでいた。
俺がずっと持っていても仕方ないし、些か不安もあるが、いつ渡そうか……
……………………
…………
……
…
「それで、俺にっていうかリムのお客さんって誰なんだよ?」
「まあまあ、慌てなくてもすぐにわかりますよ。その扉の向こう側にいますから」
それは、昨日の夜の事だった。
悩み事があって月が輝く夜道を散歩していたら、ちょっとだけ正体不明の違和感を感じたネムと出会った。
そしたら、なんでもリムにお客さんがいるとかで、しかもルネ先生が怖いからと俺伝いで渡してほしいものがあるらしいので、俺はネムに連れられて教会まで来ていた。
「さあ、どうぞお入りください」
「おう……失礼します」
俺も知っている人物だというが、いったい誰がいるのだろうか……
ちょっとドキドキしながら、俺は扉を開け、客人用の部屋へと入った。
「やあ、君か」
「あ、お前達は!」
「久しぶりだね少年。元気そうで何よりだ」
そこにいたのは……まだ俺達が小さかった頃に一度この村を訪れ、勘違いからリムを襲った勇者のヤムさんと、パートナーであるヴァルキリーのアミンさんだった。
「こらこら、仮にも勇者様と天使様であるお二方に向かってお前などと言うでない」
「あ……す、すみません……」
「いやいや、いいですよ。僕達は昔彼の恋人を早とちりで襲いましたし、嫌われていても仕方ありませんからね」
その場にいた、なんだか久しぶりに見たからかちょっとだけ雰囲気が変わったような気がする神父様に注意されたので謝ったが、たしかに俺はこの二人は嫌いとまではいかないものの、そんなに好きではなかった。
もちろん、今本人達に言われた通りの理由でだ。それ以外にもリムと付き合っていく中で魔物の実態を知った俺は、魔物というだけで傷付ける勇者といった類の人間に良い印象を持っていない。
「それで、何の用ですか?」
「君の彼女へお届け物があってね。でもそうだね……良ければ、少し話をしていかないかい?」
「え? まあ別にいいですけど……」
「ではノフィ君はこちらへ。シスターネムはお茶を持ってきてください。その後は私の隣へ」
「わかりましたリーパ様。折角ですのでお茶菓子も用意します」
なので、早く用事を済ませて帰ろうとしたが、話をしないかと誘われてしまった。
特に断る理由もないし、リーパ様や神父様、ネム達の前で断るのも失礼かなと思い、俺は話をしていく事にした。
という事で、他の二人と違い特に変わった様子がなさそうなリーパ様に案内された席に座った。
「それで話とは?」
「そうだね……君達の話を聞かせてほしいなと思ってね」
「君達……?」
「勿論、君とリムちゃんの話だ。シスターネムから二人が恋仲だとは聞いたが、本人の口からも聞きたいからね」
「そうですか……確かに俺とリムは付き合ってます」
そして、ヤムさん達と話をし始めた。
「お二人でデートとかよく行ってるよね?」
「はい。あまり遠くまでは行ってませんが、二人でよく出掛けていますね」
「ほお……どんな場所に行っているんだい?」
「まあ、そこの森とか、ヤムさん達に襲われた山とか……あと、隣町にも行ったりしますね」
「隣町? たしかこの村の隣町はどこも反魔物領だったような……」
「ああ、えっと……リムは人化の術を使えるので。勿論それを使って悪さなんてしてませんからね!」
「え、ああ。別に疑ってはないよ。なるほど、彼女は人化の術を使えるようになったんだね」
自然な流れで隣町にもデートに行っている事を言ってしまったが、リムが人化の術を使える事を言ってしまうのはマズい気がした。
それを理由に何か良からぬ事を企んでいるみたいな言い掛かりを付けられるのではないか……そう思ったが、特にそれといった事はなく、少し安心した。
「私達はリーパや神父から事前にあれから一人としてワーウルフにされた人は居ないと聞いたからね。そこまで大人しければ、出会った当初であれ魔物とはいえ悪い事をしているなどと疑う事はないよ」
「そうですか。それは良かったです」
「実際爪も傷付けないようにと未だにきちんと丸くしてますからね。はいノフィ君。お茶とお茶菓子」
「おう、サンキューネム」
話をしていると、ネムが温かい紅茶と白いソースが掛かった小さいカステラ状のケーキを持ってきた。
少し喉が渇いていた俺は、早速お茶を口に含んだ。
「ところで、もう君達は子作りしたのかい?」
「ぶ〜っ!?」
「わっ!? ちょっとノフィ君! 汚いじゃないですか!」
そのタイミングで、予想外かつ変な事を聞かれたので、つい口の中に入れたお茶を全部吹き出してしまった。
咄嗟に誰もいない方を向いたので誰にも掛かってはいないが、教会の床が濡れてしまった。
「まあ、いきなりそんな事聞かれたら驚いちゃうのも無理ないよね。床は私が拭いておくね」
「げほっ、げほっ……あ、ありがとうございますリーパ様……」
咳き込みながら、床を拭いてくれたリーパ様にお礼を言う。
「い、いきなり何を言い出すのですか!?」
「いやごめんごめん。魔物と付き合っているのならば避け続けられるとは思えないからね。それで、実際どうなんだい?」
それにしたって、まさか勇者から魔物と子作りしたかどうかを聞かれるだなんて思わなかった。
先程ネムに相談したばかりというタイミングだったし、いくらなんでも不意打ち過ぎる。
「いや、流石にしてませんよ。魔物との性行為は許されない事って言われてますし……」
「でもしようか迷っているのですよね? ついさっきその事で相談されましたし」
「あっこの野郎。しれっと言うんじゃねえ」
相手は勇者だし、それ以前に実際に子作りなどした事ないので、素直にしていないと伝える。
そしたら、すかさずネムにするかどうか迷っているというさっきした相談事をさらっと暴露されてしまった。
「成る程。まだシていないが、いつかはシたいと考えていると……」
「まあそりゃあ……魔物だからって、子供を産んではいけないってのは、やっぱり酷いと思うから……勇者としては、許せない事でしょうけどね」
「そうだね。『勇者としては』到底許可できるような事ではないね」
話し相手は勇者だ。魔物との子作りを考えているだなんて気軽に言っていいものではないので黙っていたかったのだが、ネムに言われてしまったので観念して正直に話した。
やはり、良い顔はされない。
「だけど、『僕個人としては』そう考えるのはいい事だと思うよ」
「え?」
……と思ったが、どうやらそうでもないらしい。
「それは相手の……恋人の事をきちんと考えているからこその悩みだ。大切にしているとは良い男じゃないか。何も恥ずべきことではない」
「アミンに言われちゃったけど、そういう事だよ」
「そ、それはどうも……」
たしかに、彼等の言う通り、この悩みはリムの事を思っての事だ。
自分の子供を欲しがるリムに、お前は魔物だから駄目だなんて言うのはあまりにも酷い話だ。
ただ、倫理的な問題もあるので、思い立ったら吉日だなんて安直な事はできない。だから悩んでいるのだ。
「まあ、まだシてないにしても、考えているのだったら丁度良かったかな」
「えっ、何が……?」
「何って、今日の本題さ」
そう言って、ヤムさんは自分の鞄らしき袋をガサゴソと探り始めた。
そういえば、元々リムに渡したい物があるとかで呼ばれたという事を忘れていた。その渡したい物を探しているのだろう。
「あった。これを君に持っていてもらいたい」
「これ……?」
そして、袋から取り出し渡された物は……手のひらサイズの小さな箱だった。
「これはいったい……開けてもいいですか?」
「勿論構わない。知っておいたほうがいいだろうからね」
中に何かが入っていそうだったので、俺は慎重にこの箱を開けて中身を確認した。
「これは……?」
「まあ、綺麗な宝石の付いた指輪ですね」
「本当に綺麗……」
その中身は……月のように丸くて黄色い宝石が付いた指輪だった。
「これをリムに……?」
「ああ。前にこの村に来た時、私がしているこの指輪とそっくりな指輪を売っている商人を見掛けたという話をしたら、是非欲しいと言われたものでね。見つけ出して買い取ったというわけさ」
「なんでも、彼女の母親の形見らしい」
「なっ!? これがリムの……」
どうしてヤムさん達がリムに指輪なんてと思ったら、どうやら、リムが昔依頼していたらしい。
しかもこれは、リムの母の形見だと言われた。
「失礼ですが、これがその形見だとどうして言えるのですか?」
「まあ、正直な話をすると確証はない。ただ、その指輪の外見は彼女の言っていた形見と一致していたし、それにその指輪にはワーウルフの魔力が高濃度で込められているからね」
「確かに魔物の魔力を感じるわ……人間女性がこの指輪を嵌めて数日過ごすだけであっという間にワーウルフに成れる呪いの装備品ね」
「ワーウルフの……」
正確には絶対形見とは言い切れないらしい。
それでも外見は一致しているし、ワーウルフの魔力が込められている呪いの装備品とかいうものだから、可能性が高いとの事。
「呪いの装備品を女性が所持した場合はその魔物になるが、男性が所持した場合はその魔力に対応した種族に好かれるようになる……というか、襲われやすくなると言われている」
「という事は……ワーウルフであるリムちゃんの恋人であるノフィ君なら問題ありませんね」
「そう……なるのか?」
呪いの装備品の効果が本当にそれだけならば、たしかにリムの恋人である俺ならば持っていても問題はないのだろう。
そう考えれば、この形見らしき指輪を渡すのは俺が適任なのかもしれない。
「そう、だからこれを君に渡してほしいんだ。なんなら、婚約指輪としてね」
「こっ!? そ、それはまだ気が早いですよ!」
「あら? でも最終的にはそうするつもりじゃないの?」
「ま、まあ……許されるならそうしたいですけど……」
流石に今すぐは気が早いが……たしかに、将来的にはリムと結婚して夫婦になりたいとは思っている。
リム以外に好きになった女はいないし、リム以上の女がいるとも思わない。だから、リムとは結婚したいと思っている。
「私は許さないとは言わないよ。君達の事は小さい時から知っているからね」
「私も、この地に降りたばかりの頃であれば反対したと思うけど、今となっては絶対にそんな事しないよ」
「勿論わたしは友人の幸せは祝福しますよ」
「ほら、この村の神父様や天使様、シスターだって祝福してくれるんだ。何も障害はないだろ?」
「ま、まあそうですけど……」
しかも、ここにきて何故か教会の人達が満場一致で賛成してくれている。
この前までは仕方ないな感が満載だったのにこの心変わり様はいったい何だろうか。
ちょっと奇妙に思いつつも、それは自分にとっては良い状況なので、その思いは口には出さず、お茶菓子と一緒に飲み込んだ。
「どちらにせよまだ早いですし、それに婚約指輪は自分でちゃんと用意したいのでこれは普通に渡す事にします」
「まあ、それならそれで構わないよ。確かに君に預けたから、きちんとリムちゃんに渡してほしい」
「了解です。明日、もしくは数日以内には渡します」
とりあえず渡す事を誓いながら、俺は指輪の入った箱を強く握りしめたのであった。
…
……
…………
……………………
「と、言ったはいいけど、こりゃあ渡すのは2週間後になるかな……」
指で転がしている箱の事を思い出しながら、俺はそう呟いた。
リムが発情期に入ってしまったのであれば、落ち着いて渡す事はできないと考えたからだ。
「でも、ワーウルフの魔力が篭っているなら他の家族が触らないようにしないといけないしなぁ……」
かといって、いつまでも自分で所持しておくのも些か不安が残る。
俺自身がワーウルフの魔力に侵食されるのは、リムと付き合う過程で遅かれ早かれそうなるのだから良いとしても、親や弟妹が侵されてしまうのは困る。
単純に魔物化したり他のワーウルフに襲われるのも困るが、そのワーウルフを呼び寄せたりワーウルフ化させたのがリムというあらぬ噂を立てられてしまう可能性があるのがもっと困る。
リム自身が受け入れられているといえども、それはリムが村人に考えられている魔物らしい行動を起こしていない事も大きい。そんな事になったら、リム自身に問題がなくとも信頼なんて一気に失ってしまうだろう。
「と言っても、発情期に会うのはなぁ……」
だが、発情期に会ってしまえば、確実に襲われる形で身体を交える事になるだろう。
まあ、この先のどこかで、子供を作るためにも身体を交えたいと悩んでいるわけではあるが……この村で医者になるという事を考えると今はまだしないほうが良いような気がするし、何より本人がわざわざスノアさんを使ってまで近寄らないように言うのだから、気持ちを汲めば近寄らないほうが良いのかもしれない。
だが、リムも相当我慢してそんな事を言っていると、パンさんやその知り合いなどいろんな魔物関係者から聞く。だから、踏ん切りがつかない状態が続いているのだから、いっそ襲われに行くのもありかもしれない。
他の村人には多少非難されるかもしれないが、昨日の様子からして教会の人達は多分文句を言ってこないだろうし、案外なんとかなるかもしれない。
「うむむ……どうしようかな……」
とはいえ、気楽に考え過ぎると悪い方向に進んだ時が怖い。
ここはやはり機会を待つべきかもしれない。でもそれはそれで怖いし、リムにまた我慢を強いてしまう事になる。
「う〜む……」
今までの人生の中で一番の悩みを浮かべ、結局解決しないまま、今日という日が過ぎていくのであった。
====================
「わふぅ……くぅ……ん♪」
ほとんど欠けた月が村を仄かに照らす夜。
私はベッドの上にうつ伏せで乗って、顔を枕に埋め、腰を少し浮かせた姿勢で、自分の指を陰唇に出し入れする。
既に濡れている膣襞を指で激しく擦る度に、くちゅくちゅと厭らしい水音が部屋に響く。
「んあっ、はっはっ、くぅ〜ん♪」
まるで犬のようにだらしなく舌を出し、上下の口から涎を垂らす。
火照った身体は少しの刺激で身体を震わせ、白く泡立った粘液を股間から溢れ出す。
「ふあ……あ……ぁ……❤」
膣内の少し感覚が違う場所……Gスポットを爪先で刺激し続けて……快感が爆発した。
がくがくと一際大きく腰が震え、頭が真っ白になる。
「はぁ……はぁ……♪」
身体の痙攣が収まり、呼吸が荒れる。
視界はまだぼやけているが、すとんと絶頂から落ちてきて、少しだけ落ち着く。
「ふぅ……はぁ……ご飯にしよ……」
発情期に入ってからおよそ2週間。ピークも過ぎ、少しずつ落ち着いていられる時間が増えてきた頃だ。
用意されている夜ご飯をゆっくりと食べる余裕は出てきた。だが、まだまだ子宮は疼き続けているような状態だ。
「はむはむ……」
乱れた服を着直してもどうせまた乱れるので、私はいろんな体液で濡れた身体をタオルで拭いた後、全裸のままご飯を食べる。
この姿を誰かに見られたら恥ずかしいが、まずスノア兄ちゃんとお婆ちゃんは入ってこない。外からもカーテンはきちんと閉めてあるし、流石に覗く人は居ないと思いたい。
「……ん?」
美味しいご飯をもぐもぐと食べていると、鼻先にある匂いが掠めた。
「ノフィ……?」
間違えようがない。その匂いは、ノフィの匂いだった。
「いやまさか……」
ノフィの匂いは、段々と強くなる。この家に近づいてきているのだろうか。
発情期中は近付かないように伝えてあったはずだが……まさかもう発情期が過ぎたと思っているのだろうか。
時期的にはそう思われても仕方ない時期ではある。実際後2,3日したら完全に落ち着くだろうけど……今までは発情期が終わってこちらから会いに行くまで会っていなかったので、あっちから会いに来るのは珍しい。
そうでもしないと、発情期の途中で会ってしまう可能性がある。というか、今まさにそうなりそうだ。
「……」
とりあえず本当に近付いてきているのかを確認するため、少しだけカーテンを開けて玄関のほうを覗いてみた。
「あっ……♪」
そこには、予想通りノフィがいた。
しかも、玄関から家の中に入ってきた。
「ノフィ……いったい何の用だろう?」
ある程度落ち着いてはいるので、窓ガラスをぶち破ってまでノフィに抱き付きに行きたいという衝動は抑えられている。
「……んん……」
とはいえ、突然現れた恋人に、私の子宮は一旦の落ち着きを完全に吹き飛ばし、激しく疼いている。
まったく触れていないのに、愛液が滴り落ちて太腿を濡らしている。
今すぐ部屋を飛び出してノフィを犯したい、いや後ろからノフィに犯されたい……そんな衝動を、理性でぎりぎり抑えられている状態だ。
「ん……ふ……」
それにしても、本当に何をしに来たのだろうか。
今はもう夜遅い。本来のノフィなら寝ている時間であり、また診療所もとうに閉まっている時間だ。
もしかしたらノフィ本人、もしくは家族に何か急患だろうか。
それとも、私と性行為をする事を覚悟で会いに来てくれたのだろうか。
そんな事を考えながらも、再び火照り始めた身体を鎮めるために私は指を下腹部に伸ばし始めた。
「おいリム、居るか?」
「の、ノフィ!?」
それとほぼ同時に、扉の前からノフィの声が聞こえてきた。
勿論幻聴じゃない。匂いも気配も、扉の前にノフィがいる事を示している。
「ど、どうして来たの?」
「んーまあ直接渡したい物があってな。まだ発情期の最中だってさっきルネ先生に聞いたけど、まともに会話できる程度には落ち着いてるみたいだな」
「う、うん……でも……」
どうやら、私に何か渡したい物があってわざわざ発情期の最中かもしれないのに来てくれたらしい。
今すぐ扉を開けてノフィを部屋の中に引き摺り入れて交尾したい。そんな考えが頭を占めているが、どうにか押し出して会話を続ける。
「まだ身体はむずむずしてるし、今入ってくると絶対我慢できずにノフィの事襲っちゃうよ? お互いのためにも、今日は帰ったほうが……」
「そうか……」
なるべく冷静を装い、今日は引き返すようにとノフィに言う。
もちろん、入ってきてほしい、私のあられもない姿を見て興奮してほしい、子作りしてほしいと、本心では帰ってほしくないと考えている。
でも、この村で過ごすには、これ以上踏み込んではいけない。絶対取り返しがつかなくなるから、今日は帰ってほしい。
そう思っていたのに……
「まあ、入るぞ」
「え……!?」
そう思っていたのに、私の制止も聞かず、ノフィは堂々と扉を開けて部屋に入ってきたのであった。
====================
「おいリム、居るか?」
「の、ノフィ!?」
あれから約2週間。そろそろ発情期も終わりかなと思いながら、リムに会いに診療所までやってきた。
勿論あの指輪も、ズボンのポケットに箱ごと入れて持ってきてある。今日は、一応これを渡すために来たのだ。
「ど、どうして来たの?」
「んーまあ直接渡したい物があってな。まだ発情期の最中だってさっきルネ先生に聞いたけど、まともに会話できる程度には落ち着いてるみたいだな」
「う、うん……でも……」
診療所に来た時に対応してくれたルネ先生に先程告げられたが、どうやらまだ完全には発情期は過ぎていないようだ。
それでも落ち着きはあるようで、俺の発する言葉にきちんと返答してくれる。
「まだ身体はむずむずしてるし、今入ってくると絶対我慢できずにノフィの事襲っちゃうよ? お互いのためにも、今日は帰ったほうが……」
「そうか……」
予想通りではあるが、まだ発情期が過ぎ去っていないリムは俺に帰れと言ってきた。
それはそうだ。これからの事を考えると、ここで俺を襲うのはリム的にも困ってしまう事になるのだから。
だが、俺はここに来た時から覚悟を決めていた。いや、来る前から決めていた。
今日既に発情期が終わっていたら、普通に指輪を渡して、これから村の外へ出ていく時、俺も一緒に行こうかと考えている事を告げ、そのまま帰ろうと。
「まあ、入るぞ」
「え……!?」
そして、発情期の最中であれば……今日こそ、身体を交わらせようと。もう、我慢させるのはやめようと。
だから俺は、リムの制止を聞かずに……リムの部屋の扉を開け、ゆっくりと部屋の中に入った。
「うわ、すごい恰好のわっ!?」
「はっ、はっ……ノフィのばかぁ……❤」
ランプの炎が揺らめく部屋に入ってまず目に入ったのは、一糸纏わぬ姿で座っていたリムの姿だった。
まったく予想できていなかったわけではないものの、今まで見た事ない全裸姿に思わず怯む。
そして、次の瞬間……目の前からリムが消えたと思ったら、気付けば目の前には天井が広がっていた。それと同時に、背中に少しの痛みを感じた。
「いたたた……」
「あんなに言ったのにぃ……入ってくるなんてぇ……もう我慢なんてしないんだからね♪」
腹の上に重みを感じ、顔を向けると……そこには、顔を赤らめ、今まで見た事のない表情を浮かべたリムが乗っていた。どうやら俺はリムに押し倒されたようだ。
息は荒く、眼光は鋭く光り、舐め回すように全身を見てくる……まさに、獲物を追い詰めた獣のような顔を浮かべていた。
「ちょ、ちょっと落ちつんぶっ!?」
「んじゅ、んっ、んんっ♪」
まずは指輪を渡したかったこともあるし、何よりも慌てて制止しようとしたが、リムの顔が近づいてきて……唇で塞ぎ止められた。
そのまま舌で唇を割り、口内に舌が侵入してきて、俺の舌を絡める。軽いものは幾度となくしてきたが、ここまでのものは初めてであった。
くちゅくちゅと互いの唾液が混ざり合い、舐め取り、飲み込まされる。唾液なんてあまり綺麗なものというイメージはないが、リムの唾液は、どこか甘い蜜のように感じた。
「ぷはっ、はぁ……はぁ……❤」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
長い長いキスの後、惜しむように舌を絡ませたまま唇を離す。
互いの舌同士に透明な橋が架かり……やがて顔の上に滴り落ちた。
荒い呼吸を何とか落ち着かせようとするが……興奮が勝っているのか、なかなか落ち着けない。
「はぁ……はぁ……うっ!」
「わふ……ノフィのおちんちん、おっきぃ❤」
「うぅっ、だ、だから少し落ち着けって……」
「無理だよぉ……これがずっと欲しかったんだもん。何年もお預け食らってたものが目の前にあって、我慢なんてむりぃ……❤」
それに、リムはおもむろに俺の性器を下履きの上から撫でてきた。
裸のリムが俺に馬乗りになり、ディープな接吻までした。そしてその前からリムの意外と柔らかいお尻が押し付けられていたのだ。撫でられた陰茎は、既にガチガチに膨らんでいた。
あまり知識はないものの、一通りの性教育は年齢が2桁になった辺りで習っている。とはいえ、流石にこの状況はどうしたらいいかわからなかった。
「それじゃあ脱がしちゃうよ」
「ちょ……うわ!」
こちらが慌てふためいている隙に、リムは体の向きを変えて、お尻を俺の顔のほうへと向けた。
目の前には激しく動く銀毛の尻尾。そして、リムの丸いお尻。思わず凝視してしまう。
そのため抵抗する動きが止まってしまったので、リムはその隙を逃がさずに今度は下履きを引き摺り下ろした。
スースーとした感覚から、おそらく下着ごと剥ぎ取られ、俺の下半身は丸出し状態になってしまったみたいだ。
「わふぅ❤ やっぱり大きい……❤」
「うっ……」
まじまじと俺の股間をもの欲しそうに凝視するリム。恋人とはいえ異性に自分の恥部を見られ、恥ずかしさが込み上がる。
だが、そんな恥ずかしさも、不意に襲った陰茎への刺激で吹き飛ぶ。
リムの肉球だと思われる柔らかなものが、ペニスの竿部分をぷにぷにと触ってくる。柔らかな獣毛が亀頭に触れ、弱めの快感が与えられる。
そのどちらもがくすぐったくも、たしかに俺の快感を強めていく。
「くんくん……きゅーん……♪」
しばらくはそのまま手で弄っていたが、何を思ったのか俺の上に乗ったまま身体をスライドさせ、お尻を顔の上まで移動させた。
足は顔の横に移動し、ネムやアルモ程ではないが膨らみ柔らかさのある胸で俺の身体を押さえつけている。
目の前には、透明な液体を滴らせている、男の俺にはついていない割れ目があった。
これがリムの女性器……初めて見るそれから目を離せないでいると、不意に先程までとは異質な刺激が亀頭を襲った。
「くんくん……ペロッ♪」
「ふあっ、お、おいリムグッ!?」
「ぺちゃ、じゅる……はぅっ♪」
あろう事か、リムは俺の陰茎を、嬉しそうに舐め始めたのだ。
俺からは見えないが、この柔らかくて自由に蠢くこれはどう考えてもリムの舌だ。その舌が、亀頭や雁首、竿、挙句の果てに陰嚢まで舐め始める。
舌の柔らかく少しざらついた感触が気持ちいいし、それ以上に、リムが俺の醜く汚い部位を夢中で舐めているという事実が、より一層興奮剤となる。
それと同時に、顔を足で挟み固定し、分泌液を漏らす秘所を口や鼻に押し付けられた。それはまるで口のように激しく俺の唇を奪い、ぬめぬめとした体液を顔面に塗りたくる。
「じゅぷ、じゅる、じゅずずぅぅ……」
「ぶわっ、り、リム、やめろ、出ちまう……!」
「んふふぅ……❤」
舐めているだけでは飽き足らず、その口いっぱいに頬張り、顔を上下に動かし始めたリム。
舌の上で筋が撫でられ、時々痛くない程度に噛まれる。その度に陰茎は勝手に震え、腰に何かジワリとする。そして、竿の中を駆け上がり、尿意にも似たものが込みあがってきた。
おそらくだが、これが赤ちゃんの素……精子を射精する準備段階なのだろう。
その精子とやらを口の中に出すのは良くない気がした。だからこそ、何かが漏れそうなのを必死に耐えていたのだが……
「ちゅぽん……うわあっ!?」
「うあっ、あっ、あぁ〜……!」
じゅうっと吸い付きながら口を離そうとしたとき、リムの犬歯らしき歯が雁首に引っかかった。
その刺激が引き金となり、俺はリムの顔に向けて射精してしまった。
腰が勝手にがくがくと跳ね、ペニスから迸る液をリムの前面に万遍なくぶっ掛ける。
「ふあぁぁ……❤」
「はぁ……ぁ……わ、わるいリム……ぶわっ!?」
こちらの射精が落ち着き始めたタイミングで、顔の上にある陰唇からポタタ……と愛液が降り注いだ。
呼吸を整えるために開いていた口の中に注がれ、思わず飲み込んでしまったが……不思議と不快感もなく、それこそジュースのように、もっと欲しいと少し考えてしまったほどだ。
「ん……ペロ……♪」
「お、おい……そんなもの舐めて大丈夫なのか?」
「うん。美味しいよ。だってノフィのだもん❤」
お尻を顔から離し、立ち上がったリム。想像通り、顔や胸、お腹には白い粘液がべっとりと張り付いており、ゆっくりと垂れ流れていた。
そして、頬に掛かっていた垂れ流れてきた精液をペロリと舐める。そんな事は無いと本能でわかる精液を、美味しい、美味しいと呟きながら猫のように身体中を舐めて取る。
俺は射精後のけだるさを感じながらも、身体を少し起こす。まだ硬さを保っているペニスが、自分の体液とリムの唾液でテカっている。
「でもぉ……今度こそこっちに出してぇ❤」
「ごくっ……」
身体に付着した精液を全て舐め取った後、そんな事をいつになく甘い声で囁きながらベッドの上に乗り、お尻を見せつけるように四つん這いになり、後ろに回した手で秘所をくぱぁと広げた。
暗い部屋の中でも綺麗なピンク色だと分かるその割れ目は、ぬちゃぁと糸を引いて、もの欲しそうに蠢いている。
男としての本能か、初めて見たはずのその穴の中に、自分の醜悪な肉棒を突き入れたいと考え始めた自分。
既に忘れかけていた指輪の事を完全に思考の外に追いやり、目の前のメスと交わる事しか考えられなくなっていく。
「ほら、後ろから挿れてぇ……❤」
「お、おう……わかった」
ギンギンになり少し痛く感じるほどになったペニスをぶら下げ、ふらふらと立ち上がる。
他人の性行為など見た事ないが、犬の交尾であれば過去に偶然見た事がある。今のリムは、その犬のメスと同じような姿をしていた。つまり雄である俺は、後ろから抱き着くようにこの男根を入れればいいのだろう。
四つん這いになっているリムの後ろに立った俺は、手を腰に添え、もう一方の手でペニスの位置を広げている穴に入るように調整し始めた。
「ほら、早くぅ……❤」
「あ、ああ……行くぞ」
とはいえ、初めてだから手間取ってしまう。焦らされているとでも思ったのか、急かされてしまった。
長い間意図的に避けてきた子作りを、今ようやくしてあげることができるのだ。尻尾がこれまでにないほど激しく揺れ動き続けているので、リムも喜んでくれている事がわかる。
もちろん、俺だって嬉しい。今まで我慢させてきたリムを、ようやく喜ばす事ができるのだから。
「こ、これでいいのか……くぅっ……」
「あ、ああ……きたぁ……♪」
そして、とうとうその時が来た。
ようやく入口を捉えられたペニスの先端が、ゆっくりとリムの膣内へと沈んでいく。
「す、すげぇ……なんか、絡みついてくる……これが、子作り……」
「きゃうぅん♪ しゅごいぃぃ……指なんかと全然違ぁう❤」
本当にゆっくりと、進んでいないんじゃないかと思うほどゆっくりと腰を前に進めていく。
そうでもしないと、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる膣肉や、絡みついてくる愛液や襞による刺激で、すぐにまた射精を始めかねないからだ。それだけ、リムの中は気持ちが良かった。
ようやく手に入った望んでいたものをもう離すまいとしているのか、沈むごとに膣はギュッと窄まる。
途中で引っかかるものを感じながらも、射精を堪えながら腰を前に押し付けていき……とうとう根本まで沈み込んだ。
「ふぅ……は、挿入ったぞ……って、これ血……?」
全部入れられた事に一息ついていたら、結合部から愛液と共に赤い液体が流れているのが見えた。
ランプの光だけが光源なのでわかりにくいが、おそらくこれは……血。
「わうぅん……の、ノフィに処女膜破られちゃった……❤」
「えっ!? わ、わるい! 痛かったか!?」
「謝らなくていいよ。痛くなかったし、それに……嬉しいからぁ❤」
処女膜というものはよくわからないが、途中で感じた引っ掛かりを突き破ったから流血してしまった事はわかった。
だから俺は慌てて謝ったが、本人曰く痛くないから構わないとの事。こちらに向けた蕩け切った表情が、痛くないことを如実に示している。
「うぅ……それにしてもこれ、どうしたら……うっ」
「動いてぇ……激しく、腰をぉ……あっ❤」
とにかく地の事は心配ないのでもういいとして、これからどうすればいいかわからず、俺は動けないでいた。
性行為は勿論の事、そういう性の知識を基本中の基本しか持ち合わせてない。だから、子作りのためにどうすればいいかもよくわかっていない。犬の交尾では腰を振っていたが、それでいいのかも自信がなかった。
そんな俺の様子を察してか、激しく腰を振ってと言いながらゆさゆさと自分で腰を軽く揺らしたリム。この小さな動きだけでも気持ち良く、中に沈むペニスをより一層膨らまさせる。
「う……あっ、こ、こう、か?」
「わっ、あっ、ふぁっ、う、うんっ♪ ぁあっ、ひあっ!」
そして俺は、ゆっくりと、ぎこちない動きだが腰を動かし始めた。
まずはゆっくりと引き抜く。逃さまいとするように、強く窄められ膣肉が引っかかる。
それでもどうにか抜ける直前まで引いた後、次はまたゆっくりと中に割り入れる。先程とは逆に押し出されそうになりつつも、それとは逆に貪欲に呑み込んでいく。
初めてだから決して上手いものではなく、一つ一つの動きは大雑把だが、すっかり興奮しきったリムは、それだけでも顔が蕩け、口からは涎と喘ぎ声が漏れだしている。
「ぐ、う、こ、これ凄いな……!」
「わぅんっ、あっ、はっ、くゎあっ❤」
顔の半分をベッドに埋め、目はあらぬ方向を向き、口から舌と涎を垂らし、言葉になっていない声を漏らし続けるリム。その表情は、まさしく悦び狂っているといえる。
そして、リムの膣からもたらされる快感に、いつしか俺もこの性行為……いや、交尾に夢中になっていた。
もっと気持ち良くなりたい。もっとリムの悦び崩れる顔を見たい。そう思ううちに、気付けば俺は腰の動きを自然と速くしていた。
「ふっ、くっ、り、リム……も、もう……!」
「わおぉんっ、だしてぇ……❤ しょっ、そのまま、わふっ、私のなかにぃ……ふぁ、子供作るのぉ……ふぁあっ❤」
リムの部屋の中は、パンッパンッとオスとメスの肉がぶつかり合う音と、互いの漏らす息と喘ぎ声だけが響く。
リムの腰を持ってただ抽挿を繰り返し続けるうちに、先程以上の射精感が込みあがってきた。
ビクビクと腰が痙攣し、男根がリムの膣内で跳ねる。その度に甘い声を漏らすリムを見て、さらに高鳴る。
そして、大きく腰を打ち付けた際、亀頭の先端に何か壁みたいなものにぶつかり……その衝撃で、とうとうペニスは暴発した。
「っ……!」
「わおおぉぉぉぉぉぉんっ❤ きたぁぁぁっ❤」
射精し始めたのとほぼ同時に、リムの膣が一際ギュッと締まり、がくがくと大きく震えた。
その刺激もあるのか、ビュルルル……と、口でされた時とは比較にならない程強い勢いでリムの子宮へと精液を注ぎ入れる。
今まで感じた事のない強い快感に、俺の足も震え、腰の力が抜けて、結合したままリムの背中の上に覆いかぶさる形に倒れる。
「ぐっ、うっ……はぁ……はぁ……ふぅ……」
「ふぁっ……ぁっ……わふ……ぅ……はぁ……♪」
しばらく射精し続けたが、2,30秒経った辺りで止まった。
射精したためか少し柔らかくなり萎んだペニスをリムから引き抜き、そのまままだ力なく沈んでいるリムの隣に寝転ぶ。
まだまだ興奮しているが、それ以上の、立つ事もできない程の疲れが押し寄せた。
まさか性行為が、子供を作る行為がここまで疲れるとは思わなかった。普段跳ねている時間にこの疲れもあり、自然と瞼が閉まっていく。
服着て自分の家に帰るとか、そもそも例の指輪を渡さないととか、いろいろとやらなきゃいけない事はあるが……それはもうできそうにない。
「あふぅ……ノフィのせーし、いっぱぁい……❤ ノフィとの子供……わふぅ❤」
そんな事を呟くリムの声を遠くに聞きながら、俺はそのまま寝てしまった……
====================
「ふぁ〜……く……ん……」
朝、鳥の鳴き声で目が覚めた私。
「ん……?」
どうやらいつもと違う姿勢で寝たらしく、足の先がベッドからはみ出していた。
そして、鼻先に掠める、私以外の人の匂い。
「あ……♪」
開けた目には、私の横で寝ているノフィの顔が映された。
「そっか……昨日私はノフィと……」
そして思い出す、昨日の出来事。
ノフィを見て完全に発情しきった私は、四つん這いになって後背位で性行為を行ったのであった。
「わふぅ……❤」
下腹部を撫でると、そこに感じたノフィの精液。
そこそこ時間が経っているので少ないとは思うものの、ようやく手に入ったノフィの精に、私は顔を綻ばせる。
「あれ? あっ……」
寝息を立てているので、まだノフィは寝ているようだ。そう思いながらノフィのほうを見たら……視界に入った、半勃ちのペニス。
どうやらノフィは下履きも履かずに寝てしまったようだ。乾いた液体が付着している肉棒が、呼吸に合わせて少し揺れている。
「んふ……♪」
まだ発情期だからだろうか、ペニスを見た私の子宮は、またもや疼き始めた。
目の前にある男根が欲しくてたまらない。陰唇がジワリと湿り気を帯びていく。
「わふぅ♪」
ノフィを起こさないようにゆっくりと近づき、丸出しのペニスに両手を伸ばし、挟むように優しく握る。
肉球で刺激しながら、両手を交互に上下させるとむくりと膨らんでいく。
寝たままであるが、私の手淫で感じてくれているのだろう。あっという間に昨日と同じぐらい大きくなった。
「それじゃあ、入れちゃうよ……❤」
普段の私とノフィの立場は対等で、主従関係などは特にない。憶測ではあるが、ノフィ自身が同い年にそういう関係を持ちたくないと考えており、私もその考えに賛同したからだろう。
だが、私が普段自慰をする時の妄想では、私が攻めている時もあるにはあるが、どちらかと言えば受け身な事が多い。
特に絶頂に達しやすく、またその快感が大きいものは、後背位で後ろからガンガン突かれるものであった。
この村に来てからずっと持っていた私の人間に対する不安を完全に取り除いてくれたのはノフィだ。心の奥底ではノフィを強く慕っているところもあるのだろう。
だから、昨夜もノフィを押し倒してその気にさせた後、自ら四つん這いになって後ろから犯されることを望んだのだ。実際、後ろからガンガン突かれて気持ちよく、頭が真っ白になり、今まで経験した事もないぐらい大きくイッたのだ。
しかし、今ノフィは寝ている。ノフィから動く事は無いので、今度は私が上になろうと、ノフィの股間の上に跨った。
「ん……くぅ……んっ♪」
片手でペニスの位置を調整し、ゆっくりと腰を下ろす。
既に受け入れる準備ができていた秘所は、何の抵抗もなくノフィのペニスを埋めていく。
下腹部に広がる嬉しい圧迫感。全て入った時には、私の頭は幸せ一色だった。
「んっ、んっ、あっ、あふっ、んんっ♪」
昨夜も私の膣内を擦ったペニス。私の膣が形を覚えたのか、ただ腰を振っているだけなのに特に感じる部分を的確に攻めてくる。
お尻が腰に当たる度に、子宮口を先端が突き、電流のように快感が全身を流れる。
「ん、んん……リム……?」
「あっ、ふっ、お、おはよっ、ノフィ!」
「ああ……っておい!? な、何を……はうっ!」
激しく動いていたからか、ぐっすり寝ていたはずのノフィが目を覚ました。
最初は寝ぼけていたのか状況がわかっていなかったみたいだが、しばらくして意識が覚醒したのか、会館で顔を歪めた。
「ら、らってぇ、ノフィのおちんちんがあったんだもん♪ ずぽずぽしたかったんだもん♪」
「ふっ、ふぅぅっ、ぅあっ!」
「もっとノフィの精液欲しい! 好きな人の子供、欲しい! わおおぉぉぉんっ❤」
ぞくぞくと快楽で包まれた身体を震わせながら、目を覚ましたノフィにもっと種付けしてと告げる。
その言葉が聞いたのか、ノフィのペニスがぐんと大きくなり、強く痙攣する。もうすぐ射精する合図だ。
「ふっ、ぐぅ……り、リム……」
「わふっ、な、なにぃ?」
「あぁっ、お、俺達の子供、う、産んでくれっ」
ラストスパートと言わんばかりに腰の動きを速めたところで、ノフィが私にそう囁いた。
「わふっ!? くうぅぅぅぅぅぅうんっ❤」
その言葉を聞いた私は、一直線に絶頂へと上り詰めた。
ノフィに抱き付き、肩を甘噛みする。そうでもしないと、私の身体が飛んでしまうような錯覚に陥った。
膣肉がキュンキュンと痙攣し、頭の中がパチパチとスパークしたかのように真っ白になる。
「うあっ、ああぁぁ……!」
絶頂の最中に、子宮内に入ってくる熱を感じた。
子宮口をこじ開け、空気に触れていない新鮮な精液が、私の卵子を犯そうと注がれる。
濃厚な精液の味は、昨日と変わらず甘美なものだった。愛しい人の精の味は、飽きるわけがないし、もっと欲しい。
ノフィの言葉通り、子供を産むためにも、もっと搾り取らなければ。
「あふ、ふぁ、ノフィ、もっとぉ❤」
まだイッている最中というのに、理性を吹き飛ばし、また朝になり体力も完全回復した私は、さらに気持ちよくなろうと腰を大きく振る。
上下だけでなく、前後に動かしたり、円を描くように動くと、また違った快楽が身体を駆け巡る。
「ふわぁっ、あふぅ、好きぃ……!」
互いの手の指を絡め、ギュッと繋ぎながら腰を振り、ひたすらに快感を貪る。
ノフィのほうも慣れたのか、それとも本能で動いているのか、私の動きに合わせて腰を突き動かす。
膨らんだ亀頭が膣肉を広げ、雁首が襞を引っ掻きまわす。ガツンと子宮口を叩き続ける。
もう何も考えられない程、思考という思考が快楽一色に染まっている。締まりのない顔を浮かべ、涎をぼたぼたとノフィの胸の上に垂らす。
「わぅ、んはぁっ、ふぁ、しゅきぃ……子供、作るのぉ❤」
互いの汗や唾液、愛液や精液が飛び跳ね、身体を汚していく。
それも気にせず、何も考えず、悦びと幸福感だけが身体を支配する。
「リム、射精る……!!」
「私も、イク、イクぅぅっ! あおぉぉぉぉぉぉおおんっ❤」
そして、激しく達した私。背中を反らせ、全身ががくがくと震え、ノフィのペニスを強く絞る。ノフィも耐え切れず、腰を高く突き上げて射精した。
本日2度目、昨日から合わせて4回目の射精だというのに、その勢いは衰えない。私の子宮内を大量の精液で白く染めんばかりに出す。
「く……う……はぁ……」
「はぁ……はぁ……わふぅ……」
ノフィの身体に体重を預け、ゆったりと寝ころぶ。
繋がったままのペニスはまだ硬さを保っている。若者とはいえ、人間にしては精力がありすぎるが、そんな疑問も思い浮かばないほど、私はノフィのおちんちんに夢中になっていた。
「リムちゃん、そろそろええかね?」
「はぁ……うえっ!? お婆ちゃん!?」
「朝ご飯持ってきたよ。入るよ」
「ま、待っておばあ……」
しかし、もう一度シようとする前に、扉の向こうから元気なお婆ちゃんの声が聞こえてきて、身体の動きを止めた。
どうやら朝ご飯を持ってきてくれたらしい。たしかに、今は丁度朝食の時間ではある。だから持ってきてくれたことはわかる。発情期の時は毎度自室に持ってきてくれていたので、部屋に入ろうとしているのもおかしくはない。
だが、今の私達は一糸纏わぬ姿をしている。いや、それどころか繋がったままだ。流石に見られると恥ずかしいので慌てて制止しようとしたが……
「おやおや、ひ孫作りのお邪魔だったかのぅ……」
「あうぅ……」
特に気にする事なく、朝ご飯を持ったお婆ちゃんが入ってきた。
そして、私達の姿を見て……顔をほんのりと赤らめながら、そんな事を言ってきた。
慌てて尻尾で隠したが、その視線や言動から、性器同士が結合しているのをバッチリ見られただろう……恥ずかしさのあまり、身体を縮こませる。
「うわっ!? る、ルネ先生、これは……」
「慌てなくてもええ。ノフィちゃんの分もちゃんとある」
「い、いや、そうじゃなくて……その……うわあ……」
しばらく息絶え絶えにしてボーっとなっていたノフィもお婆ちゃんに気付き、慌てて散らかっていた布団を私ごと被せる。
それでもやっぱり恥ずかしいようで、顔だけではなく全身が赤く染まる。
「盛ってても良いが、ご飯はきちんと食べるんじゃよ?」
「う、うん……」
「それと、もう少ししたら開業時間になるから、声は抑えるんじゃよ。狼の遠吠えみたいな声が家中に響いとったからのぅ……」
「うそっ!? わうぅ……」
「二人が性交しておるのは私らだけの秘密じゃからの。庇い切れんで、自分達でバラすんでねえぞ」
「は、はい……」
そう言い残して、お婆ちゃんは部屋から出ていった。
まさか私の叫び声がそんなに聞こえていたとは……気を付けるとか以前に、物凄く恥ずかしい。
「じゃ、じゃあ飯にしようぜ……」
「う、うん。そうだね」
お婆ちゃん襲撃で流石に気分も落ち着いた。膣内に入れっぱなしのノフィのペニスも、完全に縮こまっている。という事で、ご飯を食べるために一旦結合を解いた。触れていた熱がなくなり、ちょっとだけ寂しい。
つう……と陰唇から太腿を垂れ流れる精液。漏れ出る程には子宮いっぱいノフィの精で満たされているが、用意されたご飯も食べる。
とりあえず裸のままなのもどうかと思ったので、床に置きっぱなしだったバスタオルを身体に巻いて、胸から股下まで隠す。
「お、おい、服着ないのかよ」
「うん。だって、ご飯の後はまたやるつもりだしね♪」
「お、おう……そうかい……」
「それに、集落にいた頃はこんな感じの格好してたしね。お腹が出てないから今のほうが隠れてるよ」
「へぇ……随分ハレンチな恰好してたんだな」
「人間にとってはそうかもね。ほら、私達には毛皮もあるし、魔力の関係かそんな格好でも寒くないしね」
ノフィのほうも、私が脱がした下着やズボンを履き直す。
まだ疼きは止まっていないし、一度知ってしまったノフィの精を我慢なんてできない。だからまたご飯を食べた後、性行為をしようとは思っている。
とはいえ、ご飯はゆっくりと食べたいので、わざわざ裸を隠す。興奮してご飯も食べずにというのは、作ってくれたスノア兄ちゃんや持ってきてくれたお婆ちゃんに悪い。
「ほら、ご飯食べよ」
「おう」
ノフィの着替えが終わったので、早速ご飯を食べ始める。
「もぐもぐ……スノアさんの飯は美味いなぁ……」
「こっちも作れるように教えてもらってるけど、薬の調合のように上手くいかないんだよなぁ……」
「薬の調合のほうが難しそうなもんだけどなぁ……」
さっきまでの激しい行為が嘘かのように、ゆっくりとした雰囲気でノフィとお話ししながら朝ご飯の目玉焼きを頬張る。
「そういえばノフィ、なんか渡したい物があったとか言ってなかった?」
「あ……ああっ! そうだ!!」
そういえば、どうしてノフィが来たんだろう。
そう思ったところで、そういえばノフィは何か渡したい物があって私に会いに来たという事を思い出した。
「そうそう、これこれ」
「これ? 何?」
いったい何だろうと思ったら、ノフィはズボンのポケットに手を突っ込んで、小さな箱を取り出した。
そしてその箱を私に手渡してきた。いったい何が入っているのだろうか。
「まあいいや。ありがとうねノフィ」
「おう。と言ってもまあ、俺からじゃないんだけどな」
「え? じゃあ誰から?」
しかもノフィからのプレゼントじゃないらしい。
益々何かわからない。だから、とりあえず開ける事にした。
「それな……この村に来てたヤムさん、いつぞやの勇者からだ。2週間ほど前に渡されたから、昨日渡しに来たんだよ」
「え……じゃあまさか……!?」
開けようとしたところで、この箱がヤムさんからのものだとノフィが言った。
ヤムさんと言えば、7年ぐらい前に来た時に私は頼み事をしていた。
お母さんの指輪らしきものを見たと言ったから、それを探してきてほしいと。
もしかしてこの箱の中身は……そう思いながら、私は緊張した手つきで箱を開けた。
「こ、これは……」
その箱の中身は……キラキラした石が付いている指輪が出てきた。丸くて黄色い宝石が付いた指輪だった。
「なんか、リムの母親の形見だとかなんとか……っておい!?」
幼い頃に見たお母さんの宝物。それが、目の前にある。
同じ形の指輪……ではない。
「う……うぅ……おかあさぁん……わあああああっ!」
指輪からは……忘れられない、お母さんの匂いがした。
これはあの、大きくなったら私にくれると言った、お母さんの指輪だ。
「わああんっ! おかあさぁぁん!!」
「お、おい! 大丈夫か?」
「うっひっく……ふわああああんっ!」
久々に感じたお母さんの気配に、懐かしさや嬉しさ、寂しさなんかが混ざって、私は久々に泣いてしまった。
指輪をぎゅっと握りしめながら、両親の笑顔を思い出し、大粒の涙を流した。
「うぅ……ひっく……」
「落ち着いたか?」
「ひっく……うん……大丈夫……」
ようやく手にしたお母さんの宝物。
お母さんがもうこの世にいないのはわかっているけど……それでも、すぐに行くと言っていたお母さんが、指輪という形でようやく来てくれた気がした。
「ノフィ……」
「わっと。まだご飯食ってるからそういうのは……」
「そうじゃないから……ちょっとの間こうさせて……」
それでも残る寂しさに、私はノフィにギュッと抱き着いて誤魔化す。
お母さんが言っていた、この指輪よりも大切な宝物……今の私には、それが何だったのかはなんとなくわかる。
きっと、今私が抱き着いている相手と、いつかできるであろうその子供、それと同じ物だろう、と……
「まあ、良かったな。お袋さんの形見が無事届いて……」
「うん……まだこの村にいてくれるんだったら、お礼言わないとね……」
ある程度落ち着いたので、ノフィから離れて食事を再開した。
お母さんの指輪は、中指に填めた。大事に仕舞っておこうと思っているが、お婆ちゃん達にも報告したいし、しばらくは身に着けておく。
「でもよくわかったな。それがリムのお袋さんの物だって」
「うん。お母さんの匂いがするから……」
「匂いか……魔力が篭ってるからかな?」
「魔力?」
「ああ。なんでもリーパ様曰くワーウルフの魔力がたっぷりと込められてるらしい。なんでも呪いの装備品だとよ」
「へぇ……」
お母さんの強い匂いが残っているのは、お母さんの魔力が込められているから。
その話を聞いて納得した。たしかにこの指輪は、物の中ではお母さんの一番の宝物だ。それだけ思い入れもあるし、呪いの装備品みたいになっていてもおかしくはない。
「なるほどねぇ……」
「あん? どうかしたか?」
「いやあ、だからノフィの精力も強いのかと思ってね。ノフィも人間辞め始めたんだなと」
「うえっ!? そうなのか?」
そんな呪いの装備品を、口ぶりからして2週間もずっと持っていたノフィ。
これだけ強く込められている魔力がある。ずっとその手に持っていたノフィは既にインキュバス化が始まっているのだろう。
どうりで何回射精しても元気なわけだ。いくら若者といえど、普通の人間なら昨日と合わせて4回も射精していたらそろそろ打ち止めになるのだが、インキュバスなら問題ない。ちょっとだけ引っかかっていた疑問も解消した。
「ど、どう変わるんだ?」
「姿は変わらないって。ほら、インキュバス化だよ」
「あ、ああ。そういえば魔物と交わった男はインキュバスってのになるんだっけか」
「そうそう、見た目は変わらないよ。ただ精力がついて長生きになるだけだからね。多分だけど、ノフィもこの先ずっとその姿のまま60とか70歳になるんじゃないかな」
「そっかあ……」
指輪の事は一段落ついたので、他愛のないお話をしながら食事を進めていたのだが……
「長生きと言えば、ルネ先生ってすっごく長生きだよな」
「え? あ、うん。言われてみればそうだね」
話は突然、お婆ちゃんの事になった。
「俺達が生まれた頃からお婆さんなのにまだ元気だよな。俺の爺ちゃん婆ちゃんなんてもう死んだのにさ。本当に長生きだよな」
「んーまあ……この前倒れたりしてたから、結構足腰には来てたりするのかもしれないけど……」
確かに、お婆ちゃんはやたらと長生きだ。
私がこの村に来た時から既にお婆ちゃんは結構な歳だったと思う。なのにまだ生きているのは、たしかにちょっと不思議に思う事もある。
「というかルネ先生って今何歳だ?」
「え……さあ?」
「さあ……って、リムも知らないのかよ」
「うん。言われてみれば、なんだかんだ教えてもらった事ないよ」
というか、私はお婆ちゃんの年齢を知らない。
今まで幾度も聞いた事があったけど、その度に誤魔化されている気がする。
「でも、スノア兄ちゃんの年齢からして80歳以上、下手すれば100歳近いとは思うけど……」
「凄い長生きだな……それであの元気って、やっぱ医者だからか?」
「う〜ん……」
スノア兄ちゃんが30代後半な事を考えると、祖母であるお婆ちゃんはそれに約50歳ほど足した年齢だろう。若くても40歳は離れているだろうから、この年齢予想もあながち間違ってはないはずだ。
それにしては、今のお婆ちゃんは元気すぎる。医者だからと言っても、特にこれと言って長生きのためにやっている事は無いし、それに……
「というか、俺の気のせいかもしれないけど……ルネ先生って、全然変わらないよな。老けも感じないっていうか……」
「うん……」
「なんちうか、まるでインキュバスみたいだな」
「いや、流石にインキュバスは無いよ。お婆ちゃんは女だからね」
「わかってるよ、例えだよ」
ノフィの言う通り、お婆ちゃんは全然姿が変わらない。
本当に初めてお婆ちゃんと出会った時から全く変わらない。スノア兄ちゃんなんかは白髪があったり目尻に皺ができていたりしているが、お婆ちゃんは見た目が何一つ変わってないのだ。
「あと……」
「なんかあったんか?」
「あ、うん……まあ……気のせいだと思うけど……」
あと、私の脳裏を掠めた記憶がある。
ハッキリと思い出せないし、現実だったかどうかは曖昧だけど……私はお婆ちゃんの手を思いっきり噛んだことがあったような気がする。
それは、この村に流れ着いた直後の事だ。目の前にいた人間に、怖かった私は敵意をむき出しにして、手の甲を噛み千切った。
意識が朦朧としていたのでハッキリとは思い出せないが、それが現実ならば相手はお婆ちゃんだったはずだ。
ただ、それだとお婆ちゃんがワーウルフに成っていない事がおかしい。
それに……その時口に入った液体が、血とはかけ離れた臭いや味だったような、そんな記憶があるのだ。
流石に気のせいだと思いたいけど……この記憶が、間違った記憶とはどうしてか思えなかった。
「まあ、お婆ちゃんの事は置いといて……」
「ん? ああ、もう飯食い終わったんか……って、おい、何を……」
「何って……そんなの子作りの続きに決まってるじゃん♪ ほら、今度は昨日みたいに後ろからガンガン来てよ♪」
「ごく……お、おう……まあちょっと待て。まだちょっと飯残ってるから……」
とはいえ、今の私はその疑問を深くは考えなかった。
何故ならば、まだ発情している私は、ご飯を食べ終わり早速ノフィのおちんちんが欲しくなったからだ。
バスタオルを剥ぎ取り、疼いている秘裂をノフィのほうに見せ、交尾に誘う。
ノフィもすっかり交尾の虜になったのか、視線を私から動かさず、生唾を飲みながら、その股間を勃たせている。
だからこの後は、また快楽の渦に飲まれるのであった。
私がお婆ちゃんの秘密を知るのは、この日からすぐ先の未来の話であった。
15/03/10 21:53更新 / マイクロミー
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