旅57 膨らんでいく想い
「う〜ん……結局お姉さんの情報は無かったね……」
「ああ……何件かあったはあったけど、ロレンさんやトリーさん、それにユーリムさんの事とかもう会った人のものばかりだったな」
「ざんねん……」
現在20時。
あのセレンちゃん達と別れた小屋を出発して大体1週間、私達はロレンさんに教えてもらった親魔物領に今朝には到着していた。
「まあ、とりあえずどこかの親魔物領をまた巡っていればいいか」
「そうだね。いろんな場所を旅していればまたどこかで出会えると思うよ。ミリアさんやレミィナさんなんかは本当に偶然会ったわけだし、可能性はあるよ」
「だね〜。ちょっと前に3人もお姉ちゃんに会ったから忘れそうだったけど、お姉ちゃんっていろんな場所にいるけどそんなにいっぱいいるわけじゃないから簡単には見つからないんだよね」
そこから食料を買ったり面白そうなお店を回ったりしながらアメリちゃんのお姉さんの情報を聞いて回っていたのだが……知らないと言われたり、教えてもらっても既に知っているお姉さんの情報だったりなどして有力な情報は一切得られなかった。
まあここらで知っている人が居ればまずユーリムさんが知ってそうだし、元からそう簡単に手に入るとは思っていなかったのでそう落ち込んではいないけどね。
「さて、とりあえずキャンプ場とかいうところに向かおうか」
「そうだな。しっかしまさかどこの宿も満員だとはな〜」
「仕方ないよ。今ちょうど国全体のおまつりで他の土地からいっぱいお客さんがきてるらしいもん」
まあそんな感じでいろんな場所を回っているうちにすっかり遅くなってしまったので、私達はこの街にある大きなキャンプ場を目指して歩いていた。
何故街にいるのに宿ではなくキャンプ場なんか目指しているのかというと……アメリちゃんが言う通り、今この街が所属している国では大規模な祭りが開催されており、各地から人が押し寄せておりどこも宿が空いていなかったからだ。
いくつも宿を回った後、最後に訪れた宿の宿主さんにキャンプ場の場所を教えてもらったので、今現在向かっているところなのである。
そのキャンプ場には共用キッチンやらトイレ、更にはシャワールームなどがあるそうだが……使うテントがアメリちゃんの『テント』なのでこれらのメリットは一切無い。
でも、他にも遊具や大きな川などがあり、更には街中で一番星が綺麗に見える場所でついでにそう遠くない場所に祭りの屋台なども今の時期は並んでいるらしいので、行って損はないという事で今日はそこで寝る事にしたのだった。
それにしても、この3人だけでの旅というのは久しぶりだ……今までもずっと私とアメリちゃん、そしてユウロの3人はずっと一緒に旅していたけど、プロメやツバキと一緒になってからは誰かしら他にも一緒に旅していた人がいたからだ。
だからこそ、余計にユウロの事を意識してしまう……アメリちゃんがいるからこそ、まだ私はユウロを襲っていないと言っても過言ではないかもしれない。
「えっと……地図からすると……お、ここか」
「ここも既に結構テントが張ってあるね。とりあえず空いてるところに『テント』を立てて、あそこにみえる屋台で何か買おうか」
しばらく歩いているうちに目的の場所に辿り着いた。
たしかに近くには大きくて流れが緩やかな川が流れているし、空を見上げてみると満天の星空が広がっている。
ちょっと離れた場所には灯りの下にいくつかの屋台が並んでいるのが見える……夕飯がまだな私達は、『テント』を立てた後にその屋台で適当に各々が食べたい物を買った。
「お星さまきれいだね〜」
「そうだな。そういえばあと数分したら花火も打ち上がるみたいだぜ?」
「花火?」
「あーっと……ジパング地方の伝統芸みたいなもんだ。夜空に煌めく火の花ってところかな……説明難しいや。時期的にジパングにいる間じゃ見れなかったけど、まさかここで見れるとはな」
『テント』の中に入ってしまうと折角の夜空がほとんど見れなくなってしまうので、私達は『テント』の前にシートを敷いて外で食べる事にした。
私はジパングからはるばる来ていると言った刑部狸(当たり前ではあるがカリンの親戚ではないらしい)が経営していた屋台で購入したお好み焼きなるものを食べながら、満天の夜空を堪能していた。
「……」
「ん?どうしたサマリ?俺の食べてる贅沢バーガーが気になるのか?」
「え、あ、いや、そうでもないけど……ってよく見ると本当に贅沢ねそれ……」
「ああ。肉もパンもトマトもレタスもチーズもいっぱい挟まっててボリューム満点だよ。ポテトフライとフライドチキンも買ったけど正直食べきれねえ気がする……」
「じゃあユウロお兄ちゃん、ポテトちょっとちょうだい!」
「いいけど、アメリちゃんも結構あるよな……食べきれるのか?」
「うん!おいしいものならいっぱい食べられるよ!」
よくキャンプ場を見渡してみると……至るところに人間同士や人間と魔物のカップルや親子連れの姿があった。
互いに手を繋ぎ、仲良くお喋りをしながら空を見上げる……中にはキスをしている人達も居る……なんて羨ましいのだろうか。
私だって好きな人はすぐ近くにいるし、人によってはきっと私とユウロは恋人同士に見えているだろう……それでも、実際はそんな関係になれてないので、私はユウロとキスはおろか手を繋ぐ事さえ難しい。
今の私に出来る事はただユウロの顔を見つめる事だけだった……見つめ続けていたら気付かれてしまったので、話を逸らしたが。
「アメリちゃん……太っても知らないぞ?」
「むぐっ!?あ、アメリ太らないもん!!」
「本当か〜?たしかに魔物はスタイルいい人多いけど、そういう体質じゃないだろ?」
「まあアメリちゃんは毎日旅で身体動かしてるわけだし、成長期な事もあってこれぐらい食べても平気なんじゃない?あとは魔力の関係とか……かな?」
「そういうこと!」
それにしても……屋台で買った食べ物がやたらおいしかった。
アメリちゃんも口をいっぱいに広げて頬張っている……私より多く、ユウロと同じくらいかそれ以上の量があるのだけど、そんなにお腹が空いているのだろうか?
まあでも普段からアメリちゃんのご飯の量は多めにしてあるけどきちんと全部食べるし、これぐらいは食べられるのだろう。
「ん〜……でもやっぱ俺はちょっと多かったかな……そうだサマリ、このバーガーちょっと食べるか?」
「え……」
そんな話をしていると、ユウロが自分の食べている贅沢バーガーを食べないかと私に言ってきた。
「べ、別にいいよ。私もこのお好み焼きあるし……」
「まあまあそう言わずに。さっきから見てるし本当は気になってるんだろ?それに腹も膨れてきたから俺としても少し食べるの手伝ってほしいしな」
「あ……ま、まあいいのなら貰うね」
気にならないと言えば嘘になるが、それよりも気になっているのはもちろんユウロ自身だ。
しかしそれを軽い調子で言って距離を置かれる……なんて事になるのは想像もしたくない程嫌なので、食べ物のほうが気になっている体で話を進めた。
そして渡された贅沢バーガー。しっかりと焼けたお肉にシャキッとしたレタス、とろけるチーズと、たしかに凄くおいしそうである。
ジューシーな匂いが漂ってくる……たとえそれがユウロの食べ掛けであったとしてもおいしそ……あ。
「……はむ……」
「どうだサマリ?美味くないか?」
「……うん……おいしいね……」
よく考えてみればこれはユウロが口をつけて食べていたものだ……つまり、これを食べればユウロと間接的なキスをしたのと同じではないか。
そんな変態じみた考えを思い浮かべながら、私はユウロが食べた場所に口をつけて一口齧った。
匂いの通りたしかにジューシーだし、新鮮な野菜の触感が絶妙に口の中で混ざりあっておいしい。
でも……それらと比べると本当に微かにだけど……それでもたしかに感じるユウロの精の味に、私は心が高鳴った。
食べた時に付着した唾液からの精なので相当薄いだろうけど……それでも、好きな人の精はとてもおいしく、幸せな気分になる。
今までは旦那さんの精が一番って言われてもよくわかってなかったけど……これは納得だ。
「あ、ユウロもお好み焼き一口食べる?」
「いやいいよ。さっきも言ったけどお腹が膨れてきてるんだよ。美味そうだけどこれ以上は食えねえよ」
「そう。じゃあいいか」
ユウロの味を頭と舌に覚えさせるようにしながら、ユウロに贅沢バーガーを返して、自分が勝ったものを再び食べた。
どれもこれもおいしいのだけど……やっぱりちょっと物足りなく感じる。
「はぐはぐ……んにゅ?」
「ん?このドーンって音は……!?」
「お。花火が始まったみたいだな。綺麗だと思わないか?」
「わあ〜!」
「綺麗……!」
そんな中、突然どこかから大きな音が聞こえてきた。
いったい何が起きたのかと思ったら、空に光の花が咲き、夜空を照らした。
赤、緑、黄色と、いろんな色の炎が中心から広がるように咲き誇る……なんと美しく綺麗なんだろうか。
「すっごーい!」
「これぞ夏の風物詩ってやつだな。俺のいた世界でも夏によくやってたぜ」
「へぇ……これは凄いねホント……」
綺麗に彩る火の花の下で、私達3人は目を輝かせながら楽しんだのだった……
====================
「すぅ〜……むにゃ……」
「……」
現在23時。
花火を堪能した後、私達は『テント』に入って寝る事にした。
もちろんお風呂や寝る準備をしてから、いつものように私はアメリちゃんを抱きながら寝始めた。
「……はぁ……」
しかし、今日も私は眠る事ができずにいた。
理由は明白……下腹部で疼く熱のせいだ。
あれから……ユウロへの想いに気付いた日から、私は毎日この熱に悩まされている。
「……」
私はアメリちゃんを起こさないように、そーっと手を離して、布団から離れた。
そして、私はそのままユウロの寝ているベッドへ近付いた。
もう慣れたものだ……最初は起こさないようにびくびくしながら動いていたが、いまはもうスムーズに動ける。
「……はぁ……ん……♪」
ユウロを起こさないように慎重に近付き……私は寝ているユウロの胸元に顔を近付け、頬を擦り寄せた。
私はワーシープ……その毛皮には眠りの魔術が込められている……しかもそれは布団にも使われている……つまり、よほど激しく動かさなければ、ちょっとやそっとの事じゃ相手を起こしてしまう事はない。
その事に気付いてからは、私はこうして寝ているユウロに密着して、その匂いや身体つきを堪能していた。
一度だけ服を剥いで直接身体に触れた事もあるが、堪能し終え着せる時に危うく起こしてしまいそうになったため、少し物足りないが服の上から感じる事にしている。
「はぁ……ユウロ……♪」
これ以上の事をやると起こしてしまうかもしれない……でも、もっとユウロを感じていたい……いろいろと考えながらも、私はユウロに軽く抱き付きながら、左手でそっとユウロの股間を触った。
そこには、私には付いていない柔らかなモノがあった。
そこに顔を近付けると、蕩けてしまいそうなほどユウロを強く感じられた。
でも、それを撫でまわしたりはしない……刺激してユウロが起きてしまえば、もう二度とこんな事をユウロが寝ているうちにしている私の事を信用してくれなくなるだろうから……
「ん……んん……」
疼き続ける下腹部に、私は太ももをもじもじと擦り合わせていた。
しかし、そこは既に濡れている……下着はもはや機能しておらず、太ももに愛液が垂れてきているのを感じる。
「ん〜……行くか……」
こうなってしまってはもう抑えられない。
最後に私はユウロの匂いを鼻腔に沁み込ませるように大きく息を吸って、名残惜しみながらユウロから離れ、やはり毎日している自慰をする為、そっとお風呂場に向かった……
「……」
「……サマリお姉ちゃん……」
…………
………
……
…
「んっ……ひぅっ!」
お風呂場に来た私は、下着を全部脱ぎ去ってから浴槽にもたれ掛り、自身の性欲を抑える為に一心不乱に自慰を始めた。
最初の頃はただ外性器を撫でているだけでも気持ち良く、簡単に熱が引いてたのだが……日が経つにつれて性欲は大きくなっていき、結果自慰も激しいものとなっていた。
「ああっ……ん、はぅぅ……」
右手は自分の股間に持って行き、割れ目の中に指を一本入れて、膣内の感触を感じながら指を動かす。
初めて指を挿れた時はちょっと怖かったけれど、挿れた後の異物感や圧迫感が心地良く、また指先に力を入れ擦るだけで痺れるような快感を得られた。
その時よりも速く、激しく掻き回している私……お風呂場にぐちゅぐちゅと淫猥な音が鳴り響く。
「あ、ふぁぁ、ひゃうぅ……」
このお風呂場の防音は完璧なので、私は喘いでしまう声を抑える事無く、もう片方の手を自分の胸に持っていっていた。
過去に何度か誰かしら胸の大きい人のを揉んで喘がせた事もあるし、自身も以前カリンに揉まれたので、胸を弄ると気持ちいいのは知っていたが……実際にやってみると、声を漏らしてしまう程気持ちいい。
さほど大きくない私の胸だが、それでも力を入れて揉むと電気が走るし、硬く勃った乳首を掌で転がしたり指で弾く度に声は漏れ性器から粘液が垂れ落ちていく。
「ひあっ、は、ああ、ユウロぉ……んああっ!!」
ユウロの名前を言いながら弄ると、普通にシている時よりも快楽が大きくなる。
ユウロに私の胸を揉まれ、ユウロの指が私の中に入っている……そう想像するだけで、私の身体は歓喜に震え、更に秘部を濡らす。
先程いっぱい嗅いだユウロの匂いを思い出しながら、私はさらに激しく指を動かす。
それと、今日のユウロの唾液から感じた精の味を思い出すと口の中もどこか満足感が増す……反芻しているわけではないが、無意識にユウロの精の味を何度も噛みしめているように口を動かしている。
「あっ、ああっ、ユウロ、ユウロぉ!い、イク!ふああああああああっ!!」
高まり続ける快感に、とうとう限界が近づいてきたようだ。
私は数日前に見つけた、自分が膣内で敏感に感じる場所を指で強く擦った。
姿どおりに獣のような声を上げながら、私は絶頂に達した。
身体が大きく震え、腰がビクッビクッと痙攣する。
膣が中に挿入されている指をぎゅうっと締め付ける。いくら締め付けても、これはユウロのペニスでは無く自分の指なので、射精する事はない……
「ふぁ……あぅ……あ……ん……」
力無く倒れ込み息を整えながら、私は落ち着きを取り戻していく。
強くなる性欲と同じように、日に日に絶頂時の激しさが増していく……それに、一回イッたのにそこまで満足感は無い。
このままではいつか我慢の限界が訪れ、ユウロを襲ってしまうかもしれない……冷静になった頭が考えた事で、私は恐怖に悩まされる。
「はぁ……片付けないと……」
いつも自慰をした後は急激に眠気に襲われてしまうが、ここで寝たら取り返しがつかなくなるため頬を叩いてでも目を覚まさせて起きあがる。
未だ疼いている子宮をどうにかして落ち着かせながら、私はシャワーで身体や床を洗い、タオルできちんと水分を拭い取り、下着を着直して布団に戻った。
「よかった……」
音を立てないようにお風呂場からでて、誰も起きていないか確認したところ、アメリちゃんもユウロもぐっすりと寝ていた。
私がしていた痴態がばれていない事にホッと胸を撫で下ろし、再びアメリちゃんを起こさないように抱き寄せながら、私は眠りに着いたのだった……
====================
「んん〜っと……さて、これからどうしようか」
「そうだね……結局お姉さんの情報は得られなかったし、どこかの親魔物領に向けて旅するしかないか……」
現在10時。
私の夜の行動に誰も気付く事が無いまま無事に朝を迎え、朝食を食べてから『テント』を出た私達。
とりあえず必要な物は昨日の内に買いそろえたので、あとこの街でする事はまだ見ていない場所に回る事ぐらいだ。
「えっと……隣町は近く……は無いようだな」
「ドイコサルアってとこ?そうだね……この距離なら数日から1週間は掛かるか……まあ食料はそれぐらいなら持つと思うから大丈夫でしょ」
「じゃあいいね!今日はどこ行く?」
次に行く場所は、この街から一番近くにある親魔物領『ドイコサルア』に決まった。
特に何かがあるから……という事ではないが、そこそこ大きな町みたいだから何か観光スポットもあるかもしれない。
「そうだね……とりあえずこの北区の広場に行ってみる?なんかお祭りのイベントもあるみたいだしさ」
「そうだな。行ってみるか!」
「さんせー!!」
ともかく、次に向かう町はあっさりと決まったので、とりあえずこの街でまだ行ってない地区の観光をしようとゆっくりと歩いていた時だった。
「すみませーん!ちょっとそこの人達〜!」
「ん?」
突然後ろから大きな声が聞こえてきた。
どうやら私達を呼び止めているようなので、とりあえず足を止めて振り向いてみた。
「あのー、確か昨日キャンプ場で泊まってましたよね?」
「え、はい……」
「そのキャンプ場で紅い宝石が付いた指輪が落ちているのを見ませんでしたか?」
そこに居たのは、鍵付きの宝箱を腰にぶら下げリボンのようなものを纏った女の子……つまりミミックだった。
どうやら昨日私達が泊まったキャンプ場で指輪を落としてしまったらしい……そういえば屋台で夜ご飯を買ってる時にミミックを見た気がしないでもない。
「私は見てないですね……二人は?」
「俺も知らないな……流石に指輪なんて落ちてるの見つけたら拾ってどこかに届けるだろうし」
「アメリも見てない……」
「そうですか……はぁ……」
その指輪を見てないかと聞かれたが……私達は誰も見ていないようだ。
まあ落とし物が無いか注意しながら歩いていたわけじゃないし、見つけていたら既にどこか預かってくれるところへ持って行っているだろう。
私達が見てないと伝えたらあからさまにがっかりとし始めたミミックさん……無くした指輪はそんなに大切なものなのだろうか?
「ミミックのお姉ちゃんにとって大切な指輪なの?」
「あ、うん……好きな人から貰った大切な婚約指輪なんだ……」
「そうなんだ〜」
どうやらミミックさんが好きな人から貰った婚約指輪らしい。
そんな大切な物を無くしてしまうとは……必死になって探すのもわかる。
というか宝箱みたいな魔物が宝とも言えるものを無くすとか……まあそれは言わない事にしよう。
「ねえサマリお姉ちゃん……」
「何アメリちゃん?」
「アメリたちも探してあげようよ!急ぐ旅じゃないからいいでしょ?」
「え……?」
まあ私達は見てないし、そろそろ立ち去ろうとしたところで、アメリちゃんが落し物探しを手伝ってあげようと提案してきた。
「まあ……たしかに急ぐようでも無いしな」
「そうだね。私達でよければ手伝いましょうか?」
「え、本当にいいのですか!?」
「いいよ!」
たしかに急ぐ旅でもないし、放っておくのもなんだかなと思うので、私達はその指輪探しを手伝う事にした。
その趣旨を伝えたら、ミミックさんは嬉しそうに目を輝かせながら……
「あ、ありがとうございます!!」
「うわっと!」
「……」
あろうことかユウロの手をガシッと握った。
まあ目の前に居たのはユウロだし、そもそもこの人には婚約してる相手がいるのだから代表してお礼を言っただけだろうけど……
「……」
「あいたっ!」
「いてっ!な、何すんだよサマリ!」
私が握れなくてやきもきしてるユウロの手をこうも簡単に手を繋ぎやがってふざけるなという気持ちが湧きだしてくる。
イラッとした私は……ほぼ意識しないまま二人の手を叩いて手を離させた。
「ふぇ?あ、ご、ごめん。なんかボーっとしてて腕振り下ろしちゃった」
「いやそれはなんかおかしく……まあいいか……」
「あ、すみません!無遠慮に旦那さんの手を握ってしまって……」
「あ、いや、旦那とかじゃないですから……本当にボーっとしてただけですので。すみません……」
流石に不審に思ったユウロがしかめ面して文句を言ってきたが……素直に言うわけにもいかないので無理があるが一応誤魔化した。
「それで手伝うのはいいんですけど、大体どこら辺で落としたとかの検討ってついてます?」
「はい。昨日花火を見る為にここの屋台でいろいろ買ってた時までは身に着けてたのでおそらくキャンプ場のどこかにあるかと……」
「じゃあキャンプ場をくまなく探そう!赤い宝石が付いてる指輪だったよね?」
「うん。ありがとうね!では皆さんお願いします」
「よし。じゃあ探してみますか!」
いつまでも今の行動に突っ込まれても困るので、私は早く落し物探しに移る事にした。
どうやらキャンプ場で落とした事は確実らしいので、隅から隅まで隈なく探せば見つかる可能性が高い。
という事で、私達は二人一組に別れて探し始める事にしたのだった。
……………………
「ん〜……それっぽいものある?」
「いや、見つからないな……地面に落ちて、誰かが気付かず踏んで埋もれてるとか?」
「あー……整備されてるし、流石に無いんじゃないかな」
現在12時。
キャンプ場に戻った後、西側と東側で別れた私達。
ちなみに組み合わせは私とユウロ、それとアメリちゃんとミミックさんだ。
偶然なのか、それともあの行動でなんとなく察して気を回してくれたのか、ミミックさんがアメリちゃんと組むと言ったのでこの組み合わせだ。
ユウロと二人きりなのでドキドキして探しものどころじゃない……とまでは言わないが、なかなか集中できないでいた。
それでも、私が見落としたせいであのミミックさんを困らせるのは良くないので、きちんと草木を分けながら隈なく探す。
「実物を見た事無くてイメージだけっていうのが余計探しづらいんだよな〜」
「まあでも指輪っていうのは固定されてるんだし、それっぽいものがあったらとりあえずミミックさんのところに持って行けばいいんじゃない?」
「まあな。あ、サマリ、トイレの中って探した?」
「ううんまだ。もし置きっぱなしなら誰か持って行ってそうだけど……一応探してみるよ」
探してはいるのだが……なかなか見つからない。
ところどころマナーが悪い人が捨てたのか偶然落としたのかはわからないが屋台で買ったものについてるゴミが落ちていたりするのは見掛けるが、肝心の指輪は影も形も無い。
ユウロに言われてトイレの中も探してみたのだが、やはりそれらしき物はなかった。
「やっぱ無かったよ」
「そうか……それじゃあもっと東に向かうか……」
ここら辺はもう大体調べ終えたので、アメリちゃん達がいる東側に近付きながら探す。
「しかし婚約指輪か……この世界にもそんな風習あるんだな」
「地域によるんじゃない?トリスにもあったし」
「ふ〜ん……そういえばサマリって結婚とか憧れてるの?」
「え!?あ、うん。まあ女の子だしね」
もちろん歩いている間も落ちていないか探しながら、私はユウロと楽しくお喋りをする。
「そっか……いつか叶うといいな!」
「……ばか……」
「ん?なんか言った?」
「いや別に。そうだね……いつか叶えたいな……」
私だって女の子だし結婚願望はある。
ただ、それは少し前までは漠然とした、いつかはしたいという感じだった。
でも今は……今私の隣にいる男性と……ユウロと結婚したい。そうハッキリと思っている。
それなのに肝心のユウロは他人事のように言ってくる……仕方ないとはいえ、文句の一つや二つ呟きたくなるものだ。
「しかしまあそれっぽいものは落ちてねえな」
「そうだよね……大切な物だから見つけてあげたいけど……」
こんな感じで地面を見ながら歩き続けていたのだが、落し物は見つかりそうもない。
気が付けばいつの間にかキャンプ場の真ん中辺りまで来てしまった……向こうの方からアメリちゃん達が歩いてくるのが見えるが、とぼとぼと歩いているようなのでおそらく見つかっていないのだろう。
「はぁ……そちらはどうでしたか?」
「残念ながら見つかりませんでした……その様子ですとそちらもみたいですね」
「アメリいっしょうけんめい探したけど指輪なかった……」
やはり探しても見つからなかったらしい。
こうなると誰かが発見して持って行った可能性が出てくる……そうなるともはや見つけるのは困難であろう。
そう考えているからか、ガックリと膝をついているミミックさんは今にも泣きだしそうだ……
「うぅ……どうしよう……婚約指輪なくしたからって嫌われたら……」
どうすればいいか途方に暮れているミミックさん……
「はぁ……朝からなんか様子がおかしいと思ったら……そういう事ね……」
「え?あ……」
そんな中、突然見知らぬ男の人がミミックさんに声を掛けてきた。
二人の様子からして、この男性はおそらく……
「ん?お姉ちゃんのだんなさん?」
「そうだよ。君達、彼女の落とし物探しの手伝いをしてくれてありがとう」
やはり、ミミックさんの婚約者だった。
「な、なんでここに……」
「そりゃあ気にしないでとかいって特に目的も告げずにこっそりと出て行った君が気になったからこっそり様子を見ていたんだよ。普段は隠し事をしない君が僕に隠し事だなんて怪し過ぎるからね」
どうやら様子がおかしかったミミックさんをずっと見ていたらしい。
全然気付かなかったけど……ずっと近くにいたという事か。
「それで、婚約指輪を無くしたらしいけど」
「ひっ……」
「必死に探しても見つからなかったようだね……」
「ご、ごめんなさい……嫌いにならないで……」
本題に入った婚約者さんは、涙を浮かべて宝箱に潜っているミミックさんに向かって……
「馬鹿だなぁ……そんな事で嫌いになるわけないだろ」
「あ……」
ひょいっと身体を持ち上げ、力強く抱きしめた。
「ほ、ほんと……?」
「当たり前だろ?それとも僕は婚約指輪を無くしたから婚約破棄だなんて言うような人間に思われてるの?」
「う、ううん!違うよ!!」
どうやら婚約者さんは指輪を無くした事なんて気にしていないらしい。
優しい頬笑みを浮かべながら、ミミックさんの頭を撫で……軽いキスをした。
「……さて、俺達は邪魔者みたいだし、そろそろ祭り会場の方に行くか」
「そうだね」
もう二人きりの空間になりつつあるので、私達はこっそりと立ち去り、当初の目的通り北区の広場へ向かう事にした。
「はぁ……でも羨ましいな……」
「ん?お姉ちゃん今何か言った?」
「独り言。気にしなくていいよアメリちゃん」
「ふーん……」
好きな人に抱きしめられ、頭を撫でられ、キスをする……どれ一つとっても、私には出来ない事だ。
そんな光景を見せられたら……羨ましくて溜息も出てしまう。
「もうお昼だし、会場に着いたら何か買って食べようか!」
「うん!アメリおなか空いてきた!!」
「やっぱりアメリちゃんは食いしん坊だなぁ……」
「ちがう!アメリくいしんぼうじゃないもん!!おいしいごはんをいっぱい食べたいだけだもん!!」
「ははっそういう事にしておくよ」
「むぅ〜!!」
でも、だからと言って今ここでユウロに告白しても……きっとユウロを困らせてしまう。
だから私はこの気持ちを抑え、いつか自分もユウロにそうしてもらえたらなんて考えながら、今は純粋に祭りを楽しむ事にしたのだった。
「ああ……何件かあったはあったけど、ロレンさんやトリーさん、それにユーリムさんの事とかもう会った人のものばかりだったな」
「ざんねん……」
現在20時。
あのセレンちゃん達と別れた小屋を出発して大体1週間、私達はロレンさんに教えてもらった親魔物領に今朝には到着していた。
「まあ、とりあえずどこかの親魔物領をまた巡っていればいいか」
「そうだね。いろんな場所を旅していればまたどこかで出会えると思うよ。ミリアさんやレミィナさんなんかは本当に偶然会ったわけだし、可能性はあるよ」
「だね〜。ちょっと前に3人もお姉ちゃんに会ったから忘れそうだったけど、お姉ちゃんっていろんな場所にいるけどそんなにいっぱいいるわけじゃないから簡単には見つからないんだよね」
そこから食料を買ったり面白そうなお店を回ったりしながらアメリちゃんのお姉さんの情報を聞いて回っていたのだが……知らないと言われたり、教えてもらっても既に知っているお姉さんの情報だったりなどして有力な情報は一切得られなかった。
まあここらで知っている人が居ればまずユーリムさんが知ってそうだし、元からそう簡単に手に入るとは思っていなかったのでそう落ち込んではいないけどね。
「さて、とりあえずキャンプ場とかいうところに向かおうか」
「そうだな。しっかしまさかどこの宿も満員だとはな〜」
「仕方ないよ。今ちょうど国全体のおまつりで他の土地からいっぱいお客さんがきてるらしいもん」
まあそんな感じでいろんな場所を回っているうちにすっかり遅くなってしまったので、私達はこの街にある大きなキャンプ場を目指して歩いていた。
何故街にいるのに宿ではなくキャンプ場なんか目指しているのかというと……アメリちゃんが言う通り、今この街が所属している国では大規模な祭りが開催されており、各地から人が押し寄せておりどこも宿が空いていなかったからだ。
いくつも宿を回った後、最後に訪れた宿の宿主さんにキャンプ場の場所を教えてもらったので、今現在向かっているところなのである。
そのキャンプ場には共用キッチンやらトイレ、更にはシャワールームなどがあるそうだが……使うテントがアメリちゃんの『テント』なのでこれらのメリットは一切無い。
でも、他にも遊具や大きな川などがあり、更には街中で一番星が綺麗に見える場所でついでにそう遠くない場所に祭りの屋台なども今の時期は並んでいるらしいので、行って損はないという事で今日はそこで寝る事にしたのだった。
それにしても、この3人だけでの旅というのは久しぶりだ……今までもずっと私とアメリちゃん、そしてユウロの3人はずっと一緒に旅していたけど、プロメやツバキと一緒になってからは誰かしら他にも一緒に旅していた人がいたからだ。
だからこそ、余計にユウロの事を意識してしまう……アメリちゃんがいるからこそ、まだ私はユウロを襲っていないと言っても過言ではないかもしれない。
「えっと……地図からすると……お、ここか」
「ここも既に結構テントが張ってあるね。とりあえず空いてるところに『テント』を立てて、あそこにみえる屋台で何か買おうか」
しばらく歩いているうちに目的の場所に辿り着いた。
たしかに近くには大きくて流れが緩やかな川が流れているし、空を見上げてみると満天の星空が広がっている。
ちょっと離れた場所には灯りの下にいくつかの屋台が並んでいるのが見える……夕飯がまだな私達は、『テント』を立てた後にその屋台で適当に各々が食べたい物を買った。
「お星さまきれいだね〜」
「そうだな。そういえばあと数分したら花火も打ち上がるみたいだぜ?」
「花火?」
「あーっと……ジパング地方の伝統芸みたいなもんだ。夜空に煌めく火の花ってところかな……説明難しいや。時期的にジパングにいる間じゃ見れなかったけど、まさかここで見れるとはな」
『テント』の中に入ってしまうと折角の夜空がほとんど見れなくなってしまうので、私達は『テント』の前にシートを敷いて外で食べる事にした。
私はジパングからはるばる来ていると言った刑部狸(当たり前ではあるがカリンの親戚ではないらしい)が経営していた屋台で購入したお好み焼きなるものを食べながら、満天の夜空を堪能していた。
「……」
「ん?どうしたサマリ?俺の食べてる贅沢バーガーが気になるのか?」
「え、あ、いや、そうでもないけど……ってよく見ると本当に贅沢ねそれ……」
「ああ。肉もパンもトマトもレタスもチーズもいっぱい挟まっててボリューム満点だよ。ポテトフライとフライドチキンも買ったけど正直食べきれねえ気がする……」
「じゃあユウロお兄ちゃん、ポテトちょっとちょうだい!」
「いいけど、アメリちゃんも結構あるよな……食べきれるのか?」
「うん!おいしいものならいっぱい食べられるよ!」
よくキャンプ場を見渡してみると……至るところに人間同士や人間と魔物のカップルや親子連れの姿があった。
互いに手を繋ぎ、仲良くお喋りをしながら空を見上げる……中にはキスをしている人達も居る……なんて羨ましいのだろうか。
私だって好きな人はすぐ近くにいるし、人によってはきっと私とユウロは恋人同士に見えているだろう……それでも、実際はそんな関係になれてないので、私はユウロとキスはおろか手を繋ぐ事さえ難しい。
今の私に出来る事はただユウロの顔を見つめる事だけだった……見つめ続けていたら気付かれてしまったので、話を逸らしたが。
「アメリちゃん……太っても知らないぞ?」
「むぐっ!?あ、アメリ太らないもん!!」
「本当か〜?たしかに魔物はスタイルいい人多いけど、そういう体質じゃないだろ?」
「まあアメリちゃんは毎日旅で身体動かしてるわけだし、成長期な事もあってこれぐらい食べても平気なんじゃない?あとは魔力の関係とか……かな?」
「そういうこと!」
それにしても……屋台で買った食べ物がやたらおいしかった。
アメリちゃんも口をいっぱいに広げて頬張っている……私より多く、ユウロと同じくらいかそれ以上の量があるのだけど、そんなにお腹が空いているのだろうか?
まあでも普段からアメリちゃんのご飯の量は多めにしてあるけどきちんと全部食べるし、これぐらいは食べられるのだろう。
「ん〜……でもやっぱ俺はちょっと多かったかな……そうだサマリ、このバーガーちょっと食べるか?」
「え……」
そんな話をしていると、ユウロが自分の食べている贅沢バーガーを食べないかと私に言ってきた。
「べ、別にいいよ。私もこのお好み焼きあるし……」
「まあまあそう言わずに。さっきから見てるし本当は気になってるんだろ?それに腹も膨れてきたから俺としても少し食べるの手伝ってほしいしな」
「あ……ま、まあいいのなら貰うね」
気にならないと言えば嘘になるが、それよりも気になっているのはもちろんユウロ自身だ。
しかしそれを軽い調子で言って距離を置かれる……なんて事になるのは想像もしたくない程嫌なので、食べ物のほうが気になっている体で話を進めた。
そして渡された贅沢バーガー。しっかりと焼けたお肉にシャキッとしたレタス、とろけるチーズと、たしかに凄くおいしそうである。
ジューシーな匂いが漂ってくる……たとえそれがユウロの食べ掛けであったとしてもおいしそ……あ。
「……はむ……」
「どうだサマリ?美味くないか?」
「……うん……おいしいね……」
よく考えてみればこれはユウロが口をつけて食べていたものだ……つまり、これを食べればユウロと間接的なキスをしたのと同じではないか。
そんな変態じみた考えを思い浮かべながら、私はユウロが食べた場所に口をつけて一口齧った。
匂いの通りたしかにジューシーだし、新鮮な野菜の触感が絶妙に口の中で混ざりあっておいしい。
でも……それらと比べると本当に微かにだけど……それでもたしかに感じるユウロの精の味に、私は心が高鳴った。
食べた時に付着した唾液からの精なので相当薄いだろうけど……それでも、好きな人の精はとてもおいしく、幸せな気分になる。
今までは旦那さんの精が一番って言われてもよくわかってなかったけど……これは納得だ。
「あ、ユウロもお好み焼き一口食べる?」
「いやいいよ。さっきも言ったけどお腹が膨れてきてるんだよ。美味そうだけどこれ以上は食えねえよ」
「そう。じゃあいいか」
ユウロの味を頭と舌に覚えさせるようにしながら、ユウロに贅沢バーガーを返して、自分が勝ったものを再び食べた。
どれもこれもおいしいのだけど……やっぱりちょっと物足りなく感じる。
「はぐはぐ……んにゅ?」
「ん?このドーンって音は……!?」
「お。花火が始まったみたいだな。綺麗だと思わないか?」
「わあ〜!」
「綺麗……!」
そんな中、突然どこかから大きな音が聞こえてきた。
いったい何が起きたのかと思ったら、空に光の花が咲き、夜空を照らした。
赤、緑、黄色と、いろんな色の炎が中心から広がるように咲き誇る……なんと美しく綺麗なんだろうか。
「すっごーい!」
「これぞ夏の風物詩ってやつだな。俺のいた世界でも夏によくやってたぜ」
「へぇ……これは凄いねホント……」
綺麗に彩る火の花の下で、私達3人は目を輝かせながら楽しんだのだった……
====================
「すぅ〜……むにゃ……」
「……」
現在23時。
花火を堪能した後、私達は『テント』に入って寝る事にした。
もちろんお風呂や寝る準備をしてから、いつものように私はアメリちゃんを抱きながら寝始めた。
「……はぁ……」
しかし、今日も私は眠る事ができずにいた。
理由は明白……下腹部で疼く熱のせいだ。
あれから……ユウロへの想いに気付いた日から、私は毎日この熱に悩まされている。
「……」
私はアメリちゃんを起こさないように、そーっと手を離して、布団から離れた。
そして、私はそのままユウロの寝ているベッドへ近付いた。
もう慣れたものだ……最初は起こさないようにびくびくしながら動いていたが、いまはもうスムーズに動ける。
「……はぁ……ん……♪」
ユウロを起こさないように慎重に近付き……私は寝ているユウロの胸元に顔を近付け、頬を擦り寄せた。
私はワーシープ……その毛皮には眠りの魔術が込められている……しかもそれは布団にも使われている……つまり、よほど激しく動かさなければ、ちょっとやそっとの事じゃ相手を起こしてしまう事はない。
その事に気付いてからは、私はこうして寝ているユウロに密着して、その匂いや身体つきを堪能していた。
一度だけ服を剥いで直接身体に触れた事もあるが、堪能し終え着せる時に危うく起こしてしまいそうになったため、少し物足りないが服の上から感じる事にしている。
「はぁ……ユウロ……♪」
これ以上の事をやると起こしてしまうかもしれない……でも、もっとユウロを感じていたい……いろいろと考えながらも、私はユウロに軽く抱き付きながら、左手でそっとユウロの股間を触った。
そこには、私には付いていない柔らかなモノがあった。
そこに顔を近付けると、蕩けてしまいそうなほどユウロを強く感じられた。
でも、それを撫でまわしたりはしない……刺激してユウロが起きてしまえば、もう二度とこんな事をユウロが寝ているうちにしている私の事を信用してくれなくなるだろうから……
「ん……んん……」
疼き続ける下腹部に、私は太ももをもじもじと擦り合わせていた。
しかし、そこは既に濡れている……下着はもはや機能しておらず、太ももに愛液が垂れてきているのを感じる。
「ん〜……行くか……」
こうなってしまってはもう抑えられない。
最後に私はユウロの匂いを鼻腔に沁み込ませるように大きく息を吸って、名残惜しみながらユウロから離れ、やはり毎日している自慰をする為、そっとお風呂場に向かった……
「……」
「……サマリお姉ちゃん……」
…………
………
……
…
「んっ……ひぅっ!」
お風呂場に来た私は、下着を全部脱ぎ去ってから浴槽にもたれ掛り、自身の性欲を抑える為に一心不乱に自慰を始めた。
最初の頃はただ外性器を撫でているだけでも気持ち良く、簡単に熱が引いてたのだが……日が経つにつれて性欲は大きくなっていき、結果自慰も激しいものとなっていた。
「ああっ……ん、はぅぅ……」
右手は自分の股間に持って行き、割れ目の中に指を一本入れて、膣内の感触を感じながら指を動かす。
初めて指を挿れた時はちょっと怖かったけれど、挿れた後の異物感や圧迫感が心地良く、また指先に力を入れ擦るだけで痺れるような快感を得られた。
その時よりも速く、激しく掻き回している私……お風呂場にぐちゅぐちゅと淫猥な音が鳴り響く。
「あ、ふぁぁ、ひゃうぅ……」
このお風呂場の防音は完璧なので、私は喘いでしまう声を抑える事無く、もう片方の手を自分の胸に持っていっていた。
過去に何度か誰かしら胸の大きい人のを揉んで喘がせた事もあるし、自身も以前カリンに揉まれたので、胸を弄ると気持ちいいのは知っていたが……実際にやってみると、声を漏らしてしまう程気持ちいい。
さほど大きくない私の胸だが、それでも力を入れて揉むと電気が走るし、硬く勃った乳首を掌で転がしたり指で弾く度に声は漏れ性器から粘液が垂れ落ちていく。
「ひあっ、は、ああ、ユウロぉ……んああっ!!」
ユウロの名前を言いながら弄ると、普通にシている時よりも快楽が大きくなる。
ユウロに私の胸を揉まれ、ユウロの指が私の中に入っている……そう想像するだけで、私の身体は歓喜に震え、更に秘部を濡らす。
先程いっぱい嗅いだユウロの匂いを思い出しながら、私はさらに激しく指を動かす。
それと、今日のユウロの唾液から感じた精の味を思い出すと口の中もどこか満足感が増す……反芻しているわけではないが、無意識にユウロの精の味を何度も噛みしめているように口を動かしている。
「あっ、ああっ、ユウロ、ユウロぉ!い、イク!ふああああああああっ!!」
高まり続ける快感に、とうとう限界が近づいてきたようだ。
私は数日前に見つけた、自分が膣内で敏感に感じる場所を指で強く擦った。
姿どおりに獣のような声を上げながら、私は絶頂に達した。
身体が大きく震え、腰がビクッビクッと痙攣する。
膣が中に挿入されている指をぎゅうっと締め付ける。いくら締め付けても、これはユウロのペニスでは無く自分の指なので、射精する事はない……
「ふぁ……あぅ……あ……ん……」
力無く倒れ込み息を整えながら、私は落ち着きを取り戻していく。
強くなる性欲と同じように、日に日に絶頂時の激しさが増していく……それに、一回イッたのにそこまで満足感は無い。
このままではいつか我慢の限界が訪れ、ユウロを襲ってしまうかもしれない……冷静になった頭が考えた事で、私は恐怖に悩まされる。
「はぁ……片付けないと……」
いつも自慰をした後は急激に眠気に襲われてしまうが、ここで寝たら取り返しがつかなくなるため頬を叩いてでも目を覚まさせて起きあがる。
未だ疼いている子宮をどうにかして落ち着かせながら、私はシャワーで身体や床を洗い、タオルできちんと水分を拭い取り、下着を着直して布団に戻った。
「よかった……」
音を立てないようにお風呂場からでて、誰も起きていないか確認したところ、アメリちゃんもユウロもぐっすりと寝ていた。
私がしていた痴態がばれていない事にホッと胸を撫で下ろし、再びアメリちゃんを起こさないように抱き寄せながら、私は眠りに着いたのだった……
====================
「んん〜っと……さて、これからどうしようか」
「そうだね……結局お姉さんの情報は得られなかったし、どこかの親魔物領に向けて旅するしかないか……」
現在10時。
私の夜の行動に誰も気付く事が無いまま無事に朝を迎え、朝食を食べてから『テント』を出た私達。
とりあえず必要な物は昨日の内に買いそろえたので、あとこの街でする事はまだ見ていない場所に回る事ぐらいだ。
「えっと……隣町は近く……は無いようだな」
「ドイコサルアってとこ?そうだね……この距離なら数日から1週間は掛かるか……まあ食料はそれぐらいなら持つと思うから大丈夫でしょ」
「じゃあいいね!今日はどこ行く?」
次に行く場所は、この街から一番近くにある親魔物領『ドイコサルア』に決まった。
特に何かがあるから……という事ではないが、そこそこ大きな町みたいだから何か観光スポットもあるかもしれない。
「そうだね……とりあえずこの北区の広場に行ってみる?なんかお祭りのイベントもあるみたいだしさ」
「そうだな。行ってみるか!」
「さんせー!!」
ともかく、次に向かう町はあっさりと決まったので、とりあえずこの街でまだ行ってない地区の観光をしようとゆっくりと歩いていた時だった。
「すみませーん!ちょっとそこの人達〜!」
「ん?」
突然後ろから大きな声が聞こえてきた。
どうやら私達を呼び止めているようなので、とりあえず足を止めて振り向いてみた。
「あのー、確か昨日キャンプ場で泊まってましたよね?」
「え、はい……」
「そのキャンプ場で紅い宝石が付いた指輪が落ちているのを見ませんでしたか?」
そこに居たのは、鍵付きの宝箱を腰にぶら下げリボンのようなものを纏った女の子……つまりミミックだった。
どうやら昨日私達が泊まったキャンプ場で指輪を落としてしまったらしい……そういえば屋台で夜ご飯を買ってる時にミミックを見た気がしないでもない。
「私は見てないですね……二人は?」
「俺も知らないな……流石に指輪なんて落ちてるの見つけたら拾ってどこかに届けるだろうし」
「アメリも見てない……」
「そうですか……はぁ……」
その指輪を見てないかと聞かれたが……私達は誰も見ていないようだ。
まあ落とし物が無いか注意しながら歩いていたわけじゃないし、見つけていたら既にどこか預かってくれるところへ持って行っているだろう。
私達が見てないと伝えたらあからさまにがっかりとし始めたミミックさん……無くした指輪はそんなに大切なものなのだろうか?
「ミミックのお姉ちゃんにとって大切な指輪なの?」
「あ、うん……好きな人から貰った大切な婚約指輪なんだ……」
「そうなんだ〜」
どうやらミミックさんが好きな人から貰った婚約指輪らしい。
そんな大切な物を無くしてしまうとは……必死になって探すのもわかる。
というか宝箱みたいな魔物が宝とも言えるものを無くすとか……まあそれは言わない事にしよう。
「ねえサマリお姉ちゃん……」
「何アメリちゃん?」
「アメリたちも探してあげようよ!急ぐ旅じゃないからいいでしょ?」
「え……?」
まあ私達は見てないし、そろそろ立ち去ろうとしたところで、アメリちゃんが落し物探しを手伝ってあげようと提案してきた。
「まあ……たしかに急ぐようでも無いしな」
「そうだね。私達でよければ手伝いましょうか?」
「え、本当にいいのですか!?」
「いいよ!」
たしかに急ぐ旅でもないし、放っておくのもなんだかなと思うので、私達はその指輪探しを手伝う事にした。
その趣旨を伝えたら、ミミックさんは嬉しそうに目を輝かせながら……
「あ、ありがとうございます!!」
「うわっと!」
「……」
あろうことかユウロの手をガシッと握った。
まあ目の前に居たのはユウロだし、そもそもこの人には婚約してる相手がいるのだから代表してお礼を言っただけだろうけど……
「……」
「あいたっ!」
「いてっ!な、何すんだよサマリ!」
私が握れなくてやきもきしてるユウロの手をこうも簡単に手を繋ぎやがってふざけるなという気持ちが湧きだしてくる。
イラッとした私は……ほぼ意識しないまま二人の手を叩いて手を離させた。
「ふぇ?あ、ご、ごめん。なんかボーっとしてて腕振り下ろしちゃった」
「いやそれはなんかおかしく……まあいいか……」
「あ、すみません!無遠慮に旦那さんの手を握ってしまって……」
「あ、いや、旦那とかじゃないですから……本当にボーっとしてただけですので。すみません……」
流石に不審に思ったユウロがしかめ面して文句を言ってきたが……素直に言うわけにもいかないので無理があるが一応誤魔化した。
「それで手伝うのはいいんですけど、大体どこら辺で落としたとかの検討ってついてます?」
「はい。昨日花火を見る為にここの屋台でいろいろ買ってた時までは身に着けてたのでおそらくキャンプ場のどこかにあるかと……」
「じゃあキャンプ場をくまなく探そう!赤い宝石が付いてる指輪だったよね?」
「うん。ありがとうね!では皆さんお願いします」
「よし。じゃあ探してみますか!」
いつまでも今の行動に突っ込まれても困るので、私は早く落し物探しに移る事にした。
どうやらキャンプ場で落とした事は確実らしいので、隅から隅まで隈なく探せば見つかる可能性が高い。
という事で、私達は二人一組に別れて探し始める事にしたのだった。
……………………
「ん〜……それっぽいものある?」
「いや、見つからないな……地面に落ちて、誰かが気付かず踏んで埋もれてるとか?」
「あー……整備されてるし、流石に無いんじゃないかな」
現在12時。
キャンプ場に戻った後、西側と東側で別れた私達。
ちなみに組み合わせは私とユウロ、それとアメリちゃんとミミックさんだ。
偶然なのか、それともあの行動でなんとなく察して気を回してくれたのか、ミミックさんがアメリちゃんと組むと言ったのでこの組み合わせだ。
ユウロと二人きりなのでドキドキして探しものどころじゃない……とまでは言わないが、なかなか集中できないでいた。
それでも、私が見落としたせいであのミミックさんを困らせるのは良くないので、きちんと草木を分けながら隈なく探す。
「実物を見た事無くてイメージだけっていうのが余計探しづらいんだよな〜」
「まあでも指輪っていうのは固定されてるんだし、それっぽいものがあったらとりあえずミミックさんのところに持って行けばいいんじゃない?」
「まあな。あ、サマリ、トイレの中って探した?」
「ううんまだ。もし置きっぱなしなら誰か持って行ってそうだけど……一応探してみるよ」
探してはいるのだが……なかなか見つからない。
ところどころマナーが悪い人が捨てたのか偶然落としたのかはわからないが屋台で買ったものについてるゴミが落ちていたりするのは見掛けるが、肝心の指輪は影も形も無い。
ユウロに言われてトイレの中も探してみたのだが、やはりそれらしき物はなかった。
「やっぱ無かったよ」
「そうか……それじゃあもっと東に向かうか……」
ここら辺はもう大体調べ終えたので、アメリちゃん達がいる東側に近付きながら探す。
「しかし婚約指輪か……この世界にもそんな風習あるんだな」
「地域によるんじゃない?トリスにもあったし」
「ふ〜ん……そういえばサマリって結婚とか憧れてるの?」
「え!?あ、うん。まあ女の子だしね」
もちろん歩いている間も落ちていないか探しながら、私はユウロと楽しくお喋りをする。
「そっか……いつか叶うといいな!」
「……ばか……」
「ん?なんか言った?」
「いや別に。そうだね……いつか叶えたいな……」
私だって女の子だし結婚願望はある。
ただ、それは少し前までは漠然とした、いつかはしたいという感じだった。
でも今は……今私の隣にいる男性と……ユウロと結婚したい。そうハッキリと思っている。
それなのに肝心のユウロは他人事のように言ってくる……仕方ないとはいえ、文句の一つや二つ呟きたくなるものだ。
「しかしまあそれっぽいものは落ちてねえな」
「そうだよね……大切な物だから見つけてあげたいけど……」
こんな感じで地面を見ながら歩き続けていたのだが、落し物は見つかりそうもない。
気が付けばいつの間にかキャンプ場の真ん中辺りまで来てしまった……向こうの方からアメリちゃん達が歩いてくるのが見えるが、とぼとぼと歩いているようなのでおそらく見つかっていないのだろう。
「はぁ……そちらはどうでしたか?」
「残念ながら見つかりませんでした……その様子ですとそちらもみたいですね」
「アメリいっしょうけんめい探したけど指輪なかった……」
やはり探しても見つからなかったらしい。
こうなると誰かが発見して持って行った可能性が出てくる……そうなるともはや見つけるのは困難であろう。
そう考えているからか、ガックリと膝をついているミミックさんは今にも泣きだしそうだ……
「うぅ……どうしよう……婚約指輪なくしたからって嫌われたら……」
どうすればいいか途方に暮れているミミックさん……
「はぁ……朝からなんか様子がおかしいと思ったら……そういう事ね……」
「え?あ……」
そんな中、突然見知らぬ男の人がミミックさんに声を掛けてきた。
二人の様子からして、この男性はおそらく……
「ん?お姉ちゃんのだんなさん?」
「そうだよ。君達、彼女の落とし物探しの手伝いをしてくれてありがとう」
やはり、ミミックさんの婚約者だった。
「な、なんでここに……」
「そりゃあ気にしないでとかいって特に目的も告げずにこっそりと出て行った君が気になったからこっそり様子を見ていたんだよ。普段は隠し事をしない君が僕に隠し事だなんて怪し過ぎるからね」
どうやら様子がおかしかったミミックさんをずっと見ていたらしい。
全然気付かなかったけど……ずっと近くにいたという事か。
「それで、婚約指輪を無くしたらしいけど」
「ひっ……」
「必死に探しても見つからなかったようだね……」
「ご、ごめんなさい……嫌いにならないで……」
本題に入った婚約者さんは、涙を浮かべて宝箱に潜っているミミックさんに向かって……
「馬鹿だなぁ……そんな事で嫌いになるわけないだろ」
「あ……」
ひょいっと身体を持ち上げ、力強く抱きしめた。
「ほ、ほんと……?」
「当たり前だろ?それとも僕は婚約指輪を無くしたから婚約破棄だなんて言うような人間に思われてるの?」
「う、ううん!違うよ!!」
どうやら婚約者さんは指輪を無くした事なんて気にしていないらしい。
優しい頬笑みを浮かべながら、ミミックさんの頭を撫で……軽いキスをした。
「……さて、俺達は邪魔者みたいだし、そろそろ祭り会場の方に行くか」
「そうだね」
もう二人きりの空間になりつつあるので、私達はこっそりと立ち去り、当初の目的通り北区の広場へ向かう事にした。
「はぁ……でも羨ましいな……」
「ん?お姉ちゃん今何か言った?」
「独り言。気にしなくていいよアメリちゃん」
「ふーん……」
好きな人に抱きしめられ、頭を撫でられ、キスをする……どれ一つとっても、私には出来ない事だ。
そんな光景を見せられたら……羨ましくて溜息も出てしまう。
「もうお昼だし、会場に着いたら何か買って食べようか!」
「うん!アメリおなか空いてきた!!」
「やっぱりアメリちゃんは食いしん坊だなぁ……」
「ちがう!アメリくいしんぼうじゃないもん!!おいしいごはんをいっぱい食べたいだけだもん!!」
「ははっそういう事にしておくよ」
「むぅ〜!!」
でも、だからと言って今ここでユウロに告白しても……きっとユウロを困らせてしまう。
だから私はこの気持ちを抑え、いつか自分もユウロにそうしてもらえたらなんて考えながら、今は純粋に祭りを楽しむ事にしたのだった。
13/08/14 18:35更新 / マイクロミー
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