麗らかな春の日の朝。
　平和なこの森もいっそう穏やかで、緑の天蓋を縫って届く陽光も、目に柔らかく、肌に温かい。
　可憐な小鳥たちは笛の音でさえずり、枝々や地面で萌え立つ花たちと、その鮮やかさを競う。
　人が分け入ることのないこの森は、住処とする者達にとってまさに楽園だった。

　その楽園に、微かな不穏が混じる。

　柔らかな下草を踏み、白馬が行く。
　蹄を、緑の絨毯が優しく受け止め、音は立たない。
　雪のように白い馬体から、人間女性に酷似した上半身が生えている。

　――ユニコーン。

　異様な風体でありながらも、神秘と調和を詰め込んだ、奇跡の造形美。
　白毛と同じ純白の髪は、清浄なる瀑布の流れか。ゆるやかに波打ち、その身を飾る。
　青い瞳は一切の不純を含まぬ湖のように澄み、この世の汚れを拒む。だがその青も、柔和を象る垂れ気味の眼窩に注がれて、神殿の巫女に市井の聖母の気安さを与えている。
　ぽってりした唇は赤く色付き――熱い吐息が艶を生む。
　陰りのない肌も、薄紅を帯びている。
　端麗な顔は何かを堪えるように切なげで、ゆらり、ゆらりと首が傾げば、額の一本角も心許なげに揺れる。

　その不自然は、彼女の胸元で起こる狼藉が原因であった。

　レースをあしらったビキニドレスは、花嫁衣装の潔癖さを思わせる。が、トップスを押し上げる豊かな膨らみは、侵入者の無法で淫らなマッサージを受け続けていた。

「ゆ、ユウリ……。あの、もう……」
　吐息混じりの呼びかけは、背後へ向けてのもの。
　彼女の馬体部分、その背には、一人の男の子がまたがっていた。
　年の頃は、十をそんなに超えてはいまい。
　あどけない顔立ち、ヘーゼルブラウンの髪と瞳、華奢な体つき。そのどれもが無害そのもので――しかし、彼の小さな手は、不埒にもユニコーンの胸を揉みしだいている。
「ん？　どうしたの、アイシャお姉ちゃん？」
　しっとり汗ばんだ大きな胸を休むことなく揉み続けながら、少年――ユウリは問い返す。

『さんぽに行こう』

　そう誘ってからずっと、こうなのだ。
　背にまたがり、後ろから抱きつく。そこまでならいつものことだった。
　女性らしい柔らかな身に体全体で抱きつき、白ウサギのようなふわふわの髪に鼻を埋め、甘く、記憶に遠い母を思わせる優しい体臭を嗅ぐ。そうして、背に揺られながら素朴な歌声に耳を傾ければ、もう充分寝ていたとしても夢の世界に誘われる。
　幸せな、朝の風景。
　その平穏を、淫らな悪戯で破ったのは、ユウリ自身。

　いっぽうユニコーンのアイシャは、やわやわと胸を揉む手を許しながら、あくまでも優しくお願いをする。
「これだとお姉ちゃん、歩くのがちょっと……ね、わかるでしょう？」
　背後を振り向き、可憐に微笑む。
　だが、その碧眼は潤み、眉は切なげにたわんでいる。
「『これ』って、“これ”のこと？」
　それまでの、不埒ではあっても穏やかな手つきが一変し、強く激しく揉みしだく。
「ぅあっ？　あぁん！」
　不届きな激変についていけず、一幅の宗教画じみた風景に、淫らな声が響き渡る。
「ねぇお姉ちゃん、どう？　それとも“これ”かな？」
　乳首の周辺で慎ましく色付く、桃色の乳輪。その敏感な小円を人差し指でクルクルとなぞり、何度も周回してみせる。
「んぅぅぅんっ、そこはいけ、いけませんよ」
　ビクリと身を強ばらせ、ぶるぶると刺激に震えながらも、やはりアイシャの声はどこまでも優しい。
「そこ？　そこってどこ？　どっち？　こっち？」
　ユウリの左手が、汗ばむ白い肉丘を握り締め、右へ左へ傾け、むにゅむにゅと揉むと、
「ひっ、だ、だ、だ、だめですよ、だめぇ」
　アイシャはギュッと目を閉じてその刺激に耐え、
「それとも、こっちかな？」
　少年の右人差し指が、敏感な乳輪をしつこく何周もすれば、
「あっ、くぅ、ん〜〜〜っ、そっちもしちゃいけません」
　イヤイヤと首を振り、唇を噛んで堪える。
　だがやはり、叱ったり声を荒げたりはしない。あくまでも優しく、柔らかくたしなめるのみ。
　それを見届けたユウリは、一旦手の動きを元に戻しながら言った。
「お姉ちゃん、ボクお腹がすいちゃった。あそこの果物が食べたいな」
　はしばみ色の目が見上げるのは、枝に生る橙色の果実。柑橘類の一種で、甘酸っぱい果汁を蓄えた、ユウリの好物だ。
　はぁはぁと呼吸を荒げ、目許に涙を浮かべるアイシャは、愛する少年のお願いを叶えようと、頼りなげな足取りで樹下に歩み寄り、たおやかな手を伸ばす。

　だが、それは罠だった。

　ユウリは、淫らな肉丘の中でも最も敏感な部分を敢えて避けていた。
　左右の人差し指で、既にしこりきっている乳首を、プニィっと押す。スイッチでも押すみたいに、豊かな乳房にめり込めと押し込んでやる。
「ッきゃあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっっっ？♥」
　思わず竿立ちになる馬体。
「わわぁっ？」
　背のユウリは振り落とされまいと、手綱代わりの乳房をしっかりと握り締め、杭を打ち込むように人差し指を肉丘に突き刺す。
「おぉッ？　くあぁぁぁぁぁぁんンッ♥」
　その騒動に、暢気に歌っていた小鳥たちは一斉に羽ばたき、痴態を晒すユニコーンから逃げ去っていく。
「アイシャお姉ちゃん！　おっこちちゃうよぉ」
「ああ、だって、だって！　ユウリがぁ！」
「ボク？　ボクが、なぁに？」
　さすがに語調が強くなったアイシャに、反省の色など一切窺えない少年は無邪気に問い返す。
「それよりも、早くあれ食べたい。とって、早くとってよぉ」
　言葉で急かし、
　どっと汗ばんで手にピッタリ吸い付くおっぱいをモミモミし、
　ピンクの乳輪をくるぅりクルクルなぞり回し、
　淫らな刺激に晒されてカチカチに勃起しきった肉の粒を、きゅ♪　きゅ♪　と摘まんで催促する。
「んヒッ？　ひぃぃぃぃぃぃん！！♥　それダメ！　おねっ、お姉ちゃんっ、『めっ』しますよ！？　くォん♥」
　身をピーンと反らし、顎を仰け反らせ、ブルブルと痙攣するアイシャは、旦那様である男の子を諫めるために、心を鬼にして叱る。
　だが、
「だってぇ……」
　年下ご主人様に潤んだ目で見上げられると、何をされても許してしまう彼女がいた。
　甘すぎると言わざるを得ないが、惚れた弱みというやつだ。もともと気性も穏やかで、何より母性本能が強い。
「あぁ……いけない子です……」
　母乳は出ないが、乳腺が刺激され胸が張ってくる。子宮も反応し、愛情と情欲が燃え上がる。
「ね、アイシャお姉ちゃん、あれ、早くぅ」
「わ、わかりましヒッ？　て、手をうごかしてはッはんッ♥　……くぅ……悪いお手々うン♥　なんですからぁ」
　目に愛欲の火を灯し、全身に汗を滲ませ、魔物の、牝馬の、何より女のフェロモンを振りまきながら、旦那様の言う通りに動く。
　勿論、黙って見ているユウリではない。
　しなやかな手が伸びるのを何とか邪魔しようと、熱くほぐれた胸を揉み、汗で滑りの良くなった乳輪を何度も何度も擦り回し、性感帯の集中する発情スイッチを押し、摘まみ、捻り、指で弾き、爪で引っ掻く。
「ぃひぃッ♥　くおっ？　アン♥　あッ、あッ、あッ、はぁん♥　ダメ！♥　はげしッいン♥　とれないっいん♥　とれないのぉ！　とるまで、うん♥　とるまで待って、いやぁん♥」
　腕を伸ばしては快感に身を竦ませ、気を取り直し決死の思いで再挑戦しても、旦那様のスケベな妨害を受け、それでも健気に手を伸ばし――。

　いったい何分……あるいは何十分と繰り返したのだろう？

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
　美しい髪はほつれ、全身汗びっしょりにしながらも、アイシャの手には橙色の果実が握られていた。
「お姉ちゃん、ありがとう！　ねえ、たべさせて？」
　背の小悪魔は、息も絶え絶えの年上妻にそう宣った。
　普通ならば怒り狂って張り倒すものだろうが、そこは魔物娘のユニコーン。可愛い男の子に、それも愛しい旦那様に言われてしまえば、愛情にほだされてしまうものだ。
「はぁ……はぁ……、もう、甘えん坊なんですから、ふぅ……」
　言葉では仕方がない風を装いながらも、実際は満更でもない――どころか、いそいそと外果皮をむいてやる。
　当然、その間もユウリの手が休むことはなく、

　もみもみ♪　たっぷりした胸肉を揉み、
「あん♥」

　クルクルくるぅり♪　乳輪をくすぐり、
「やぁぁん♥」

　ぷにぃ♪　乳首を押し込み、
「う、うぅぅぅんッ♥」

　コリコリ♪　コリコリ♪　更に硬さと体積を増し、肉粒から肉柱へと淫らに育った欲情ボタンを、しきりにこね回す。
「あ♥　ひ♥　いひッ♥　らめッ♥　イクっ♥」
　ビクビクと破廉恥な絶頂痙攣に見舞われながらも、驚異的な精神力と、それ以上の愛情とで手の果実は落とさず、皮をむききる。
「あ♥　は♥　はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ……。んく、……はい、あ〜ん♪」
　オレンジ色の果肉から一房取り分けて差し出せば、背の少年は雛鳥みたいに「あーん」と口を開け、口に含んだ。
　口内でじゅわりと果汁が染み出し、甘酸っぱい味と爽やかな香りを届ける。
「お姉ちゃん、もっと」
　ユウリは胸をいじって急かし、
「うん♥　はい、あ〜ん♪」
　とっくに濡れそぼっている二つの淫裂から、淫らな果汁を滴らせ、年上女房は甲斐甲斐しくお世話をするのであった。



　――朝の散歩は、まだ続いていた。

「く、ふ、う、はぁ、アン♥　あうぅ、んひん♥　ゆ、ユウリぃ……、もう……もうお家に、ひッ♥　お家に帰りましょう？　ね？　あひッ？♥」
「お家に？　帰ってどうするの？」
「ああ……、それはぁ……」
　セックスしたい。
　わたくしの可愛いユウリと、身も世もなく乱れ、あられもない声を張り上げ、ケダモノみたいな交わりに興じたい。汗と、精液と、愛液と、涎と、色んな体液でぐちゃぐちゃになりながら、ヨガリ狂いたい。
　なのにこの子は。
「お家に帰ってもつまんない。まだおさんぽする」
　あぁ……。まだ足りないんだ。
　まだ、わたくしを嬲り、弄び、散々にじらし、お預けするつもりなんだ。
　腹ペコの野良犬みたいになってるわたくしを、まだまだ徹底的に責め抜くつもりなんだわ。

（少し前まで素直で良い子だったのに）

　勿論、今でもとっても素直で良い子だ。
　けれど、森にあの女が住み着いてから、この子は少し変わってしまった。
　何というか……イジワルになった。
　こんな風にエッチなイタズラしたり。
　激しく責めたり。
　かと思えばじらしたり。
　急にお尻を叩いたり……児戯のような軽いものだが。
　そして、下品な言葉を使ったり。
「もしかして……おまんこグショグショで、早くお家に帰ってハメハメしたくなっちゃった？」
「なっ！？」
　これだ。
　こういう事を言うようになった。
　わたくしの可愛いユウリが。
　穢れなく、何も知らなかったユウリが。
　精通もまだで、女を知らない皮かむりおちんちんを、口の中で優しく丁寧にむいてあげて。そのまま初お射精をゴックンしてあげて。
　一皮むけたユウリを、騎乗位で一人前の立派な男子にしてあげて。童貞卒業おちんちんを、何度も何度も膣内で鍛えて。
　最後には、後ろから雄々しく突いてくれるくらいに育て上げた、手塩にかけたわたくしの子供のような旦那様が。
「い、いけませんよ、そんなエッチなことを言っては！　めっ、ですよ！」
　心を鬼にして叱る。
　旦那様に従うだけが良き妻ではない。夫を育てるのも、賢き妻の務めだ。
　なのに。
「え〜、でもぉ」
　それに気付くのが遅れてしまって。

　くちゅり♪

　ユウリの可愛らしいお手々が、わたくしの下腹部に伸び……しとどに濡れそぼったぐしょ濡れおまんこを、軽く触った。
「あッひゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん！！？♥」
　完全に不意打ちで、心積もりができていなかった。
　恥ずかしい悲鳴が上がるのを、とっさには止められず。嬌声は、木々の間をこだまし、わたくしの耳を打った。
　『この淫乱女が』と、思い知らせるように。
「わぁ、すごいこえ。……気持ち良かった？　でもまだダメ。もう少しおさんぽしたいから。ね、向こうの泉まで行ってみようよ。ね、いいでしょう？」
　耳元で囁かれる声に、ぞわぞわと背筋を粟立たせながら。砕けそうな膝をぐっと踏ん張り、わたくしは、無体な旦那様に従うしかなかった――。



　森の中、少し開けた場所に、透き通った水をたたえた湖がある。
　普段は森の動物たちが憩うその場所は、先客に占拠されていた。

　一人は筋骨逞しい大男。
　だが彼は奇妙なことに、泉のほとりに生えた木に縛り付けられている。それも、全裸で。更には目隠しのおまけ付きで。

　もう一人は、褐色の肌をレザー・ボンデージで包んだ女。銀髪紅眼、それにあの尖った耳は――ダークエルフ。
　卑猥な体を、隠すどころか見せつけるように破廉恥な衣装で誇示している。
　何より、あの、いかにも好色そうな顔つき。

　あの女だ。
　シィルとか言う、痴女。
　あの女が住み着くようになってから、ユウリに悪い変化が起こった気がする。

（ここに居てはいけないわ）

　わたくしは、静かに、しかし急いで踵を返そうとした。
　けれど。
「だめ」
　むぎゅう♪
「んひッ？♥　〜〜〜ッ」
　ユウリにおっぱいをわっしと掴まれ、その場に足止めされてしまう。
　幸い、あの女はこちらには気付いていないようだけれど。
「ボク、しばらくここにいる。シィルお姉さんたちがなにしてるのか、見たい」
　耳元で囁かれると、背筋がゾクゾクし、膝が砕けそうになる。
　でも、あの女はいけないの。
「ユウリ、ダークエルフはとっても好色で、男に見境がなく、しかも性根がねじ曲がっています。あんな連中と付き合いを持っては、あなたの教育に良くありません」
「え〜。じゃ、ここで隠れてみてるだけならいいでしょ？　近付いたり、話しかけたりしなければ。ね？　いいでしょう？　おねがい」
　潤んだお目々でわたくしを見上げるユウリ。
　か、可愛すぎるぅ！
　でも、可愛いからこそ、あんなあばずれ女から少しでも遠ざけなければいけない。大切な旦那様の妻として。幼い夫を守る母として。

　心に愛の炎を燃え盛らせながら決意した時だった。

　ユウリの左右の指が閃き、わたくしの胸の先端で、小刻みに動き始めた。
　通過点には硬さを維持したままの乳首があり、それが、何度も何度も指で弾かれ、薙ぎ倒される。まるで、往復ビンタのように。しかも、その度に皮膚が薄くか弱い乳輪も擦られるものだから、たまらない。
「ンッ♥　ふっ、ん〜〜〜〜〜〜ッッッ」
　とっさに口を手で覆ったから、悲鳴は最小限で抑えられた。
　なのに、そんなわたくしの努力を嘲るように、ユウリの淫らな指遊びは終わらない。
「ね？　アイシャお姉ちゃん。みるだけ。みるだけだからさ。ここでかくれてみてるだけ。それならいいでしょ？　おねがい」
　ああ〜〜〜、ダメダメ！　指とめて！　お姉ちゃん、声が出ちゃうから！
　必死に首を振って声を我慢するわたくしを、お願いを拒否されたと勘違いしたのか、指の速さが更に増した。
「ッッッ！？　〜〜〜ッ、〜〜〜ッ、〜〜〜ッ！！」
　もう、立っていられない！
　高熱を出した人間よりもひどく、ガクガクと全身が震える。
　人体の下腹部と、馬体の股間から、我慢し損ねたお小水のように愛液が滴り、足と下草を濡らす。
　倒れるように近くの木にしがみつき、崩れる体を支える。
「お姉ちゃ〜〜〜ん♪」
　甘えた声と、頬に感じる柔らかな唇。

　わたくしは――――――力の源が愛ならば、愛する人には、屈するしかなかった……。