第三章:終結
ソルジャービートル達の作戦は、単純明快だった。
『仲間を呼ぶ』
本当に、ただそれだけの事だった。
そんな事で本当にこの状況がひっくりかえせるのか甚だ疑問ではあったが、一度信じた以上、サップはもう後戻りする気は無かった。
ラファ達三人は腰に結わえつけていた荷物袋からいくつかの小袋を取り出した。
そして小袋の結び目を少しほどき、壁に空いた大穴から四方八方に向けて投げつけ始めた。
「何をしているんだ」
「この場所を教えるために、フェロモンを撒いている」
「この袋には、魔物娘にしか分からないフェロモンが詰め込まれているから」
なるほど、とサップは感心する。確かに、昆虫達は目に見えない何かで意思疎通をしていると聞いたこともあった。魔物娘達にも、似たような意思伝達の手段があるのだろう。
「姉さん達、あとはこれを上空に」
チェファが手渡したそれを、ラファとヘラは言われたとおりに空高くへ向かって放り投げた。
空中で袋が開き、中に詰められたものが舞い散る。それは空気に触れた途端にきらきらと煌めきながら夜空を漂った。
「あれは」
「特別製の鱗粉袋です。しばらく輝きながら空に留まるので、場所を知らせるのにはうってつけなんです」
「そうなんだ。でも、そんなすぐに来てくれるのか。こんなに夜遅くに」
「夜だからこそ、来るんですよ」
サップはわけが分からず首をかしげる。
「だってこの信号は、ここに雄が居るよ、と言うお知らせなんですから」
結論としては、チェファの言った通りになった。
フェロモンを散布してさほど時間も経たないうちに、国の上空には蜂や蠅や蛾等の魔物娘が飛び回り始め、地上にも蜘蛛や蟷螂等が集まり始めた。
程なく、小さな集落は魔物娘でいっぱいになった。
集落のそこかしこに、様子を見に家から出てきた住人と、侵略者である異国の兵士と、雄を求めてやってきた魔物娘が入り混じる。
まるで祭りの夜のように騒がしく、混沌としていた。
混乱に乗じ、サップ達は地上に降りた。そして群衆に紛れながら周りの様子を伺った。
こんな夜中に無数の魔物に集まられては、まるで夜襲を仕掛けられていると誤解されるのではないか。サップは不安に思っていたが、しかし現実は予想を遥かに上回っていた。
月が煌々と輝く夜空から、きらきらと七色に煌めく雪が降っていた。飛び回る魔物娘が羽ばたく度に振り撒かれる鱗粉が、ゆらゆらと揺らめきながら雪のように降り注いでいるのだ。
にこにこと笑顔を振りまき、人間達に対して気さくに楽しげに話しかけてくる彼女達魔物娘の姿は、多少昆虫の特徴は強いものの妖精のように見えない事も無い。
とても凶悪な化け物の強襲には見えなかった。遊び好きな妖精達が連れ立って迷い込んだようにしか思えなかった。
集落の住人たちも、異国の兵隊達も、呆然と夜空に、魔物娘達が作り出した光景に見入っていた。みんな魔物娘の姿に見惚れていた。
夜空を見上げ、通りをきょろきょろと見回す住人たちの顔に浮かんでいるものは、好奇心はあっても恐怖感は無いようだった。
兵士達でさえも、最初こそ武器を携えて居たが、おとぎ話のような風景に当てられたのか、それとも圧倒的な魔物娘の数に抵抗を諦めたのか、すぐに呆然と立ち尽くす者ばかりになっていった。
そのうち、一人の男が魔物娘と連れ立って路地裏に入っていった。そして、まるで誰かがそうするのを待っていたかのように、堰を切ったように他の独り身の男達も魔物娘に誘われるままいずこかへと消え始める。
その中には、魔物と敵対しているはずの兵士達の姿もあった。
もしかしたら、彼ら自身も実際に魔物娘の姿を見るのは初めてだったのかも知れなかった。
恐ろしい怪物だと言い聞かせられていた魔物娘。しかし実際に目の当たりにするのは、人外ではあるものの滅多にお目にかかれない程の美しい女性達でもあった。そんな彼女らに、こんな美しい情景の中誘われたら、男としては付いて行ってしまうのも理解出来ない事ではない。
「一体どうなっているんだ」
「モスマン達のおかげ」
「あの子達が、喜んで鱗粉を振りまいているから」
「モスマンの鱗粉には、思考を柔らかく単純にする効果があるんです。彼女達自身、いつも大好きな人間の事ばかり考えているのですが、鱗粉を吸った人も同じようになるんです。
いつも鱗粉が出ているわけではありませんが、今日は旦那様になってくれそうな男の方がいっぱいいて興奮しているみたいですね」
「へぇー」
空を舞う魔物娘達も、男達に目星をつけては地上に舞い降り、抱き付いて捕まえてゆく。
時折、まだ武器を携えた兵士達が襲い掛かってくる事もあったが、魔物娘達の敵では無いようだった。
サップ達に襲い掛かってきた兵士達も、そのたびラファとヘラに簡単にいなされ、その鋏と槍で摘み上げられて木の葉のように放り投げられてしまう。
そして哀れな兵士達は、地上に叩きつけられる前に空で待機している魔物娘達にお持ち帰りされていった。
抵抗を続ける兵士達は次第に数を減らし、物珍しげに通りを眺める住人達も少しずつ減ってゆく。
喧騒は次第に収まり、それにとって代わるように、街のあちこちで嬌声が上がり始める。
「みんな、始めたみたい」
「始めたって、何を」
「子作り」
「ぅ、え?」
「モスマン達は、いつだって愛しい人の子供が欲しくて堪らないんです。鱗粉を吸った者も、同じように考えるようになります。
だから、サップさん」
三匹のソルジャービートル達が、潤んだ瞳で近づいてくる。
逃げようにも、重騎兵の間には付け入る隙も無かった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。こういうのはちゃんと」
「私達、もういっぱい待ったよ」
「サップ君が戻ってくるの、ずっと待ってた」
「ちいさい頃に、次は大好きな人としかしない、気持ち良くて楽しい遊びをしましょうねって約束してから、ずっとずっと。もう、我慢なんてできません」
「俺、そんな約束までしてたのか……。って、わっ」
後ろから、チェファに抱きしめられた。
ラファとヘラの顔が近づいてきて、同時に口づけをされる。柔らかく湿った、けれど少し感触の違う二つの唇を押し付けられて、理性がとろけてゆくのが分かった。
サップは身体から力を抜いた。元々そのつもりでは居たのだ。彼女達が気にしないのならば、時間と場所なんて些細な問題だ。
集落の大通りではあったが、こちらに注目している者は誰も居ない。なぜなら通りに残っている者達も皆、人目もはばからず行為に夢中になっているからだ。
大通りから消えていった者達も、皆路地裏か自宅の寝室で同じような事をしているのだろう。だからもう、誰にも遠慮などいらなかった。
後ろからチェファに抱きかかえられたまま、服をはぎ取られた。
ラファもヘラも、いつの間にかその手の武器が消えていた。女の子の部分を守っていた鎧も薄膜も消えて、今は柔らかな肌がむき出しになっていた。
ほんのり赤みの差した、雪のように白い肌。身体のラインは女性的な曲線を描き、特にその胸元と腰元は、甲虫の身体と一つのものだとは思えないほどに艶やかだった。
手を掴まれ、ラファ、ヘラ、それぞれの乳房を掴まされる。
ラファの方は指が沈むほど柔らかく受け入れ、ヘラの方は心地よい弾力で指を楽しませる。
乳房を触らせながら、二匹の淫虫はサップの首筋に舌を這わせ始める。浮かび始めた汗を舐めながら、身体の下の方へと嘗め回してゆく。
サップは、自分の下半身に血液が集まり始めるのを自覚する。我慢できない、する気も無い、裸にされたケダモノが、夜空に向かって反り返り始める。
「サップの汗、おいしい」
「サップ君の槍、逞しい」
ラファとヘラは無表情ながらも熱っぽい目でサップの一物を凝視する。
こんなに自分のものを見つめられたことなど無かった。サップは顔を赤くしながら、身をよじろうとする。
すると、耳元を熱い吐息がくすぐった。
「……チェファ」
「私も、サップさんの見たいのに。舐めたいのに……」
チェフェはサップを後ろから抱きしめながら、少し涙目になっていた。サップを守ろうとしているのか、まだ装甲もそのままだ。
「チェファ、君の肌にも触りたいな」
「で、ですが、まだどこから兵隊が」
「大丈夫だよ。もう危険は無いって」
チェファは躊躇いながらも頷くと、伏し目がちにサップを見る。
「あ、あの、少し目を閉じていて下さい。鎧は魔力で消せるのですが、その、恥ずかしいので」
サップは言われるままに目を閉じる。
艶っぽい吐息の後に、背中に当たる感触が明らかに変わった。
皮膜越しでもチェファの身体の柔らかさは十分に伝わってはいたが、直接触れるチェファの肌は比較にならないほどに心地よかった。
しっとりと汗ばむ肌は吸い付いてくるようで、背中に押し付けられる二つの乳房の感触もたまらなかった。必死で胸にしがみついてくる両腕も、いじらしくて仕方がない。
「サップの角、凄く大きくなった」
「チェファの肌は気持ちいいから」
「ね、姉さん達っ」
ラファとヘラは、サップの一物に顔をよせ、匂いを嗅ぐ。うっとりとした表情を浮かべると、二人はサップを見上げる。
「そろそろ始める。いいよねサップ」
「我慢しなくていい。出したかったら、いつでも出して。サップ君」
ラファとヘラは、右から左からサップの一物に頬ずりする。そして各々、口づけを始める。
ちゅ、ちゅ、と音を立てて、根元に、竿に、鈴口に、雨あられと口づけを振らせる。
もどかしい心地よさに、サップのそれが幾度も震え、跳ね上がる。
その腰の動きを抑えて固定させようとするかのように、二人は左右から片腕を回して、サップの腰を抱きしめる。
そして残った片方の手でサップの睾丸を、根元をくすぐり、愛撫を始める。
「あ、うあぁ」
サップはたまらず背を反らした。しかし愛撫が止むことは無く、雄の態度に喜んだ雌はさらに行為を加速させる。
「サップさん。私にも……」
涙目のチェファが、すぐ横にあった。
サップは顔を近づけ、その唇に唇を押し付ける。どちらからともなく舌を入れて、絡め合わせる。
野花のような匂いがした。チェファの味が蜜のように舌の上に絡みつく。
サップは急に飢餓感を覚える。その甘い蜜がもっとほしくてたまらなくなり、舌を擦りつけて夢中になってチェファの唾液を舐め取った。
チェファのほっとしたような顔を見て、サップも少し安堵する。
口づけが続く中、サップの雄自身への愛撫はさらに濃厚なものになっていった。
ラファは大きく口を開いてぱっくりとサップの亀頭部を飲み込み、ヘラも竿に、睾丸に舌を這わせえ、吸い付いてくる。
ぐちゅぐちゅと音を立てて吸い上げ、舐めしゃぶる。裏筋に、鈴口に、粘膜質が吸い付き、擦りあげる。更には二匹の淫虫は、責める場所を交代して刺激に慣れさせようともしなかった。
サップの身体が大きく跳ねるが、三匹の腕に捕まえられてはまともに動くことも出来なかった。
愛撫は舌だけにとどまらない。チェファの両手は愛おしそうにサップの胸元を、乳首を撫で、ラファとヘラの手は睾丸や付け根を弄んでは、太ももや尻にまで撫で回してくる。
こんな快楽など、当然味わったことが無かった。しかし快楽に押し流されつつも、サップは三匹への気持ちを保ち続けていた。
自分を待ち続け、命の危機に駆けつけて、二度も救ってくれた。感謝を超えて、愛しくてたまらない気持ちだった。
ラファとヘラの頭に手を伸ばして、その髪を優しく撫でる。角の付け根に指を這わせて、コリコリとひっかいてやる。
すると二匹も心地よかったのか、ぴくんと鞘羽を震わせた。
だが、未知の快楽に耐え続けるのにも限度があった。
サップはこみ上げる感覚に耐えられず、二匹の角を強く掴む。チェファの舌を強く吸いながら、激しく腰を震わせて、そして果てた。
おびただしい量の精液が飛び出し、二匹の淫虫の美しい顔を穢した。どろどろの白濁を浴びせられても、しかしラファもヘラも恍惚とした表情で目を輝かせるだけだった。
代わりばんこで射精の続く鈴口に唇を押し付けては、あふれ出る精液を舐め、啜った。
射精が収まると、お互いの顔に飛び散った白濁を舐め取り合っていた。
互いの顔を清め終わると、姉妹はサップの顔を見上げて笑った。初めて見た二人の顔は、すべてを忘れてしまうほど可愛かった。
サップはぐったりとしながらも、二匹の頭を再び優しく撫でてやった。
「ここは狭い。少し広い場所を探してくる」
「二人はここで待っていて。すぐに戻る」
行為が終わると、ラファとヘラの二人はそう言い残していずこかへと去って行ってしまった。
残されたサップは、チェファの身体に抱き付くようにして寄りかかる。先ほどの射精があまりにも心地よく激しすぎて、少々消耗してしまったのだ。
しかしサップは、まだ休むことを許されなかった。
「サップさん。私もサップさんの精液、舐めたいです」
チェファはサップの身体を支えながらも、恥じらうように頬を染めて言う。気持ちとしては期待に応えてやりたかったが、しかし身体の方が付いて行ってくれそうになかった。
「ごめん。ちょっと休ませて」
いつもは穏やかなチェファではあったが、サップの返事が気に入らなかったらしい。彼女は珍しく頬を膨らませてそっぽを向いた。
「姉さん達には、あんなに優しくしていたのに。あんなにいっぱい射精していたのに。私にはしてくれないんですね」
その瞳の端が光ったように見えて、サップは慌ててキスして取り繕った。
「ち、違うんだ。男っていうのは、なかなか連続で射精できないものなんだよ。だから」
「じゃあ、してくれる気はあるんですね。私がサップさんを蘇らせて、気持ち良くできたら、喜んで射精してくれますか?」
「そ、そりゃあ、もちろん」
チェファはにっこりと、可憐な少女のように微笑んだ。
そしてそんな可愛らしい表情を見せてすぐに、少女とはかけ離れた淫行に興じ始めた。
サップの腰を抱き上げ、自分の胸元に抱え込んだのだ。
萎えかけていたサップの一物をその豊かな乳房で包み込むと、優しく温かな官能を与えてきた。
チェファは腰元から生えた、前顎のような小さな足でサップの腰を固定すると、自由になった両手で自らの乳房に左右から圧力を加える。
両手で乳房を左右から支えて、ぎゅぅっと抱きしめるようにサップ自身を押しつぶし、乳房を不規則に動かして、滑らかでむっちりした乳房の感触を楽しませる。
サップの雄は即座に力を取り戻した。硬くそそり立ったそれは、乳房を押しのけるようにして、谷間から赤黒い頭を覗かせる。
再び涎を垂らし始めるケダモノを、チェファはうっとりと眺める。そして唾液を乳房の谷間に垂れ落として、滑りのよくなったそこでサップをもみくちゃにし始める。
「目を離さないで下さいね。サップさん」
チェファはサップを見つめながら懇願する。
「私がサップさんをどれだけ好きなのか、ずっと見ていて下さいね」
サップが生唾を飲み込みながら頷くと、チェファは微笑んで猛る雄へと向き直った。
チェファの手の動きと、サップの暴れる雄に合わせて、真っ白な雌の膨らみが淫らに揺れて形を変える。
隙間なくサップのモノを包み込んで、ねっとりと擦りあげてくる。
擦れるごとに刺激されるのか、チェファの頬もまた朱を帯び始めてゆく。
溢れる我慢汁に自制が効かなくなったかのように、チェファは獣のようにサップのそれにむしゃぶりつき、嘗め回し始める。
その口淫は、ラファとヘラのそれに比べても情熱的で荒々しかった。
整った顔が崩れてしまうのも構わず口をすぼめて男根を吸い、ひたすらに射精を促すように裏筋に舌を這わせ、鈴口をこじ開け舌を捻じ込む。
サップはたまらずチェファの頭を離そうと両手で掴むが、淫虫の首元に付いた触角のような器官でさえも腰にしがみつかれていて、どうすることも出来なかった。
チェファの顔に汗がにじむ、白銀の髪が乱れ、顔に張り付いてもなお意に介さず、彼女は雄を啜り続ける。
荒々しいチェファの想いに応えるように、サップは彼女の髪を強くかき回した。彼女はそれすら楽しむ様に唇をゆがめる。
もう、限界だった。
サップは掴んだ女の頭を引き寄せる。女がむせるのにも構わず、その喉奥に直接精液を流し込んだ。
呼吸すら難しいにも関わらず、チェファはさらにサップを求めようとするかのように強く男の身体を抱き寄せた。
一度目と大差ないほどの量の白濁がチェファの奥深くへ流し込まれ、口から溢れたそれが唇の端から伝い落ちた。
射精が終わっても、チェファは余韻を楽しもうかとするかのようにしばらくサップを離そうとはしなかった。サップが力を失い始めてようやく、舌先で柔らかくなり始めたそれを弄んでからやっと、チェファは彼を解放した。
「美味しかった。それにいっぱい出してくれて……。サップさん、大好き」
涙と涎と精液で顔をぐちゃぐちゃにしてはいたが、彼女の笑顔は他に並ぶものが無いほどに美しかった。
どこかに行っていたラファとヘラが戻って来るなり、サップはまた否応なく三匹のソルジャービートルに抱きしめられ、彼女達が選んだ地へと連れて行かれた。
辿り着いた先は集落の外れの原っぱだった。
周りには誰も居なかった。鱗粉に彩られた銀色の月だけが、これから始まる睦み合いを見下ろしていた。
「ここならだれにも邪魔されず出来る」
「サップ君。みんなで気持ち良くなろう」
「周りもとても綺麗だし、素敵ですね」
ラファが正面から近づいてくる。サップは冷や汗をかきながら後ずさろうとしたが、後ろにはヘラとチェファが控えているため、逃げる事も出来ない。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、流石にこんな連続では」
「大丈夫。元気にしてあげる」
ラファはサップににじり寄ると、いとも簡単にその身体を抱き上げてしまう。
両腕をその背に回し、前顎のような肢で腰をがっちりと挟み込み、ぴったりとその肌を寄り添わせる。
唇同士が触れ合い、重なる。舌がサップの中に侵入してきて、荒々しくかき回してくる。
舌を伝って、ラファの唾液が流れ込んでくる。ほのかに甘いそれを、サップは喉を鳴らして飲み干してゆく。
体がかぁっと熱くなる。沸き立った血液が、下腹部に再び集まり始める。
紫色の瞳には、サップだけが映っていた。サップは押し付けられる肌の心地よさに戸惑いながらも、その背に腕を回してしまう。
ラファはサップを見つめたまま、彼の一物へと指を伸ばした。柔らかなお腹を圧迫する硬いそれを、自分の雌の穴の入口へと導く。
ねっとりとした粘液が溢れ出しているラファの柔らかな"うろ"へと、サップは自らの肉棒を沈めてゆく。
「んぁ、ああぁっ」
あらゆる苦痛を耐えて前進する屈強な重騎士も、内側を抉られる苦痛には耐えられなかったらしい。ラファな唇を離して、背をそらして悲鳴を上げた。
「ごめんラファ。痛かったか」
少女の身体が震えていた。サップはいたわるように、その背をさする。
「だい、じょうぶ。思ったより、気持ち良かっただけ。
サップの手も、気持ちいい。もっと触って」
ラファは涙目で懇願してくる。サップは困惑しながらも、指先で少女の顎を撫で、もう片方の手で肋骨に指を添わせる。脇腹をくすぐり、甲殻との付け根を指の腹で擦り、外殻の部分にカリカリと爪を立てる。
ラファはそれだけで蜜を溢れさせた。サップの指が動くたびに膣を蠕動させ、サップを愉しませる。
そのうちに、ラファの方から腰を振り始める。サップの腰に絡めた前足と腕に力を込めて、より強く自らの奥へと潜り込ませ、えぐらせるように。
きゅうきゅうと締め付けてくるラファの身体の良さに、サップは次第に余裕を失ってゆく。呼吸は早まってゆき、鼓動は強くなってゆく。
サップはたまらずラファの身体をかき抱いた。
「このまま、奥に出して。いっぱい出して」
掠れるような切ない声がとどめになった。サップはそのまま、ラファの最奥へ向かって放精した。
脈動するたび、精液が吐き出されて雌の身体を内側から汚していくのが分かった。
ラファは、じっとサップを見つめ続けていた。サップもそんないじらしい姿から目を離せなかった。
やがて射精が収まると、ラファはサップの身体を解放した。下腹部を撫でて、ラファは満足そうに微笑んだ。
「さぁ、次はヘラの番。行ってあげて、サップ」
ラファから解放されたサップは、朦朧としながらふらふらと振り返った。
地面に腰を下ろして、ヘラが待っていた。手招きして、雄を誘ってくる。
サップはよろよろとしながらも、誘われるままに彼女に近づいてゆく。頭に霞がかかったかのように、意識がはっきりとしなかった。
ただ目の前の雌と交尾をして孕ませたい。そんな獣のような本能だけが下腹の奥から込み上げて止まらなかった。
「好きにしていいよ、サップ君」
ヘラは首をかしげて、しなを作る。
サップは欲望のままに彼女の身体を押し倒した。屈強なはずの突撃兵が、よろめく男の手で簡単に押し倒される。
男に向けて腹を曝して、ヘラは服従の姿勢を取る。
サップは甘い匂いに引き寄せられるように、その儚げな少女と武骨な甲虫の境目にある潤んだ裂け目に口をつける。
亀裂から溢れる蜜を舐め取るべく、昆虫のように舌を上下させ始める。
ヘラの強い味がした。口に、鼻腔に、ヘラの匂いが広がった。癖になる、雄を虜にして止まない雌の蜜。サップは音を立てて啜り、夢中になって舌を動かし続けた。
「アッ、アッ、そんなに、吸ったら」
緩んだ裂け目に舌を捻じ込む。ぷっくりし始めた淫らな蕾の皮を剥き、優しく舌先で転がす。
ヘラの身体が大きく跳ねた。少女の肌は紅潮し、びくん、びくんと痙攣していた。
サップは彼女の上を這い進み、視線を合わせる。どこか遠くを見るようで、しかしサップを捕えて離さないその目に。
「サップの槍、突き刺して。私を、滅茶苦茶にして」
剥き出しの欲棒は、既に力を取り戻していた。その力強さは、当初よりもさらに力を溢れさせている程だった。
サップはヘラの雌の亀裂へと己を押し付ける。先っちょを押し込むが、彼女の肉襞は侵入者を阻もうとするかのようにきつく締まっていた。
蕩けきったヘラの肉体の、最後の防壁。サップはその守りを突き崩すべく、勢いをつけて一本槍を突き立てた。
ヘラの口から甘い喘ぎが漏れる。それさえ飲み込もうとするかのように、サップはヘラの口を唇で塞いだ。
両手も指を絡めて握りしめて、地面へと押し付ける。
そして女を拘束したまま、サップは激しく腰を振り始めた。
魔物娘随一の、剣も矢も通さない鎧を纏った重騎兵。けれどもその貞操の守りは、愛しい雄の槍を前にしてはあってないようなものだった。
そして一度侵入されたが最期、攻め落とされた女の身体は、愛しい男の侵略を喜んで受け入れ、奉仕し始める。
ヘラは槍を突き刺されれば喜んでそれを受け入れ、抜こうとすれば嫌がるように襞を締め付け、絡みついてサップの槍へとしがみつく。
たおやかな指先が男の背中に食い込み、爪を立てる。
極上の女体へ、これは自分の攻め落とした、自分の所有物なのだと証を刻みこもうとするかのように、サップは幾度も幾度も抜き差しを続けた。
身体中の血液が沸騰し、めまいがするほどの興奮の中、サップは自分でも気づかぬうちに射精していた。
「サップ、君っ。せーし、あっ、しきゅうに、まで、入っ、あっあっ」
射精をしながらも、腰の動きを止められなかった。雌の甘い声も届いていなかった。
裂け目からは白濁と愛液が混じり合った粘液が溢れ、腰の動きにかき回されて白く泡立っていった。
「さっぷ、くんの、やり、しゅごい、の。わた、し、……あっ。しんりゃく、されつく、されちゃった」
うわ言のようにつぶやきながら、ヘラはただただサップを受け入れ続けた。
やがて疲れて動けなくなってようやく、サップは腰を動かすのをやめた。
ヘラの上から転げるようにして身を退けると、草原の上に仰向けに横になった。
もう指一本動かせない。そんなサップの上に、覆いかぶさる影があった。
最後の彼女はやっぱり涙目でサップの事を見下ろした。
「私の事、忘れてないですよね。私とも交わってくれますよね」
「当然だろ。チェファ」
チェファは表情を緩めて、サップに唇を重ねた。
「やっぱりサップさんとのキス、気持ちいい。それだけで濡れちゃうくらい」
チェファはサップの手を取り、自らの雌の花を触らせる。
指先にしとどに濡れた花弁の感触が触れた。指を曲げると、チェファのそこはもう十二分に潤みきり、簡単にサップを受け入れてくれた。
「まだ勃起していますね。よかった」
チェファのひんやりとした指が、熱を失わないサップの肉棒へと絡みつく。ヘラとの粘液でてらてらと光るそれを少し扱くと、すぐさまびくんと跳ねて我慢汁を滴らせた。
「うっ」
「動けますか」
「腰を少し動かすくらいは」
「じゃあ、私が上になります」
チェファは雄の剛直の上に、自分の腰が来るように位置を合わせる。
そして雌の花の入口にサップの欲棒の先端を押し当てると、少しずつ腰を落としていった。
蜜の溢れるねっとりとした雌の中に、雄の欲棒が飲み込まれてゆく。チェファはサップを優しく包み込み、労わるように蜜を塗して、揉みほぐすような蠕動を繰り返した。
その表情は平静を装いつつも、少しずつ頬が赤く染まってゆく。性感を得ているのは明らかだった。
「気持ちいいよ。チェファ」
「サップさん……。嬉しい」
チェファは全身を使ってサップと肌を重ね合わせる。
両腕をその背に回し、前顎で腰を寄せて、四本の脚でさえもサップの脚へと絡ませるようにしてしがみつく。首筋にある触角までも首に絡ませ、まるで一つの生き物のようにぴったりとくっつきあった。
「無理に動かなくていいですからね。気持ち良くなって、出したくなった時に出してくれればいいですから」
「でも、それじゃあ」
「いいんです。私はこうして、ちゃんとサップさんと抱き合って、くっついていられるだけで気持ち良くて、幸せですから」
サップは力を振り絞って、チェファの背中へと腕を回した。力はろくに入らなかったが、彼女の身体を抱きしめていたかった。
肌を通して、チェファの体温が伝わってくる。少し早目の鼓動が、緊張気味の息遣いが、サップの身体に染み渡る。
首筋に浮かんだ汗を舐めると、チェファは小さく声を上げた。汗の味と同じくらい、甘く鼓膜を揺らした。
ただ繋がって肌を重ねているだけでも心地よかった。チェファはサップの抑えきれない熱をただ柔らかく包み込んで、時折優しく蠕動するだけだった。
お互いの肌を触り合った。時につながっているところをくすぐったり、キスしたり、汗を舐め合った。
もどかしい快楽ではあったが、そんなわずかな刺激でも、積み重なるうちに確実に性感は高まり続けていた。サップとチェファは、ゆっくりと、しかし確実に絶頂への道を登り続けていた。
そしてその頂上へと、ようやく足がかかった。
二人とも欲望に濁った瞳で、お互いの事だけを見つめ合う。
「覚えていますか。初めて会ったあの日の事」
「ごめん。忘れていたんだ。でもついさっき思い出した。迷子になった俺を、みんなが助けてくれたんだよね」
「あの日、虫取りに来たあなたは、結局捕まえた虫を全部逃がして帰ったんですよね」
「そうだった、かな」
朦朧とした頭で思い返す。確かに、そんな気がした。
「虫の魔物のみんなに助けられたから、僕も虫を助けなきゃって。その時、私達はあなたの事を好きになったんです。だから、逃がしてくれた虫の代わりに、私達があなたのものになるよって、約束したんです」
「そっか。そうだったね」
何だ。あの時の勝負は自分の勝ちだったんじゃないか。だってこんなに大きい恋人を、三人も捕まえられたんだから。
サップは身も心も満たされて、チェファの身体を抱きしめ、口づけする。
愛しいものに全てを包まれ、かつてないほどの多幸感に包まれながら、サップはチェファの一番敏感なところに向かって、自らの全てを解放した。
空には大きな月が浮かんでいた。
煌めく鱗粉が風に流れて、星がゆったりと流れているようだった。まるで夜空が海のように見えた。
集落の方からは響く嬌声は、絶える気配を見せてはいなかった。
サップは満足感と倦怠感に浸りながら、ほうっと息を吐く。
このまま目を閉じれば、きっと幸せな夢を見られそうだった。この現実以上の幸せがあるかどうかは、疑問ではあったが。
「サップ、寝ちゃだめだよ」
横になるサップの身体の上に、重量感のある身体が覆いかぶさる。
「あー、えっと」
ラファだった。その左右には、ヘラとチェファも控えている。
「一回だけじゃ、足りない。もっとしたい」
「俺、もう何回も搾られてるんだけど」
「でもまだ勃起してる。出来るでしょ」
「いや、でも、中身は空っぽで」
「疲れちゃっても、私達が一生懸命元気にしますから、ね」
「あー……」
サップは溜息を吐く。命を救われた以上、この命の使い道も彼女達に委ねる、と言うのが筋と言えば筋になる。
まぁ、殺されるわけでは無い。それで彼女達が幸せになれるのなら。
「いいよ、一晩中でも、相手をするよ」
翌日から、集落の様子は一変した。突然の魔物の脅威を告げられて、教会派に傾きかけた田舎の小国。しかしその国はその日のうちに、一夜にして無数の魔物娘達を受け入れ、新魔物派へと傾ききった。
ソルジャービートル達は、ひとまず報告をしてくると言って自分達の里に戻って行った。サップは後から自分も里へ行くからと彼女らを見送ると、国の防衛隊の詰所へと向かった。
街を歩けば、魔物娘と腕を絡めて歩くカップルが目に付いた。苦笑いして見送る人間同士の夫婦も居たが、それを拒絶する者は誰も居なかった。
詰所で話を聞くと、ソルジャービートル達の作戦通り、死傷者は一人も出ていなかった。他国の兵達は魔物娘に惚れ込んだ者を除いて、皆撤退したとの事だった。転移魔法陣はそのまま機能していたが、魔物娘達の監視下にあるため特に脅威にはならないだろうとの事だった。
すべての黒幕であった件の魔術師も、森に居るところを発見されたとの事だった。発見された時には既に魔物化していて、元より懇意にしていたらしい兵士の一人とまぐわいの真っ最中だったという話だ。
防衛隊長も正気を取り戻していた。最近は夫婦仲が冷め切っていたにも関わらず、昨晩は久しぶりに燃え上がってしまったと照れ笑いを浮かべていた。なんだか嫁が綺麗になった気がするなどと惚気話さえするほどだった。
サップは防衛隊の会議室で今後の話をした後、再び魔物達の里の方へと足を向けた。
この集落の脅威は去ったが、攻め込んできた国の貧困は未だに解決していないのだ。問題の根本が解決しない限り、彼らは再びどこかへ戦争を仕掛けようとするかもしれない。
新たなる争いを避けるために、魔物娘達の力を借りたかった。魔物娘の多く住む土地は、例外なく豊かになるという噂を聞いたことがあったのだ。
森を抜け、魔物の里へとたどり着くと、すぐに三匹のソルジャービートル達が迎えてくれた。
「サップ!」
「おはよう、ラファ、ヘラ、チェファ」
「待ってたよ」
「あぁ今度はちゃんと会いに来れたな」
「お待ちしてました。この隠れ里の頭役であるアルラウネとハニービーの元にご案内します。……けれど、その前に」
いくら可愛らしい少女の顔をしていても、その実態は魔物の隠れ里を守る屈強な戦士達だ。サップの身体はいとも簡単に持ち上げられてしまった。
「まずは一度、交尾してから」
「もう、私達みんなお腹ぺこぺこ」
「いいですよねサップさん。私達、サップさんに会えなくて凄く寂しかったんですから」
朝までまぐわい続けた後なのだが……。とは、サップは言えなかった。全ての問題が解決したら、ここに移住してずっと一緒に居よう。
そう決意しながら、サップはソルジャービートル達に身をゆだねた。
『仲間を呼ぶ』
本当に、ただそれだけの事だった。
そんな事で本当にこの状況がひっくりかえせるのか甚だ疑問ではあったが、一度信じた以上、サップはもう後戻りする気は無かった。
ラファ達三人は腰に結わえつけていた荷物袋からいくつかの小袋を取り出した。
そして小袋の結び目を少しほどき、壁に空いた大穴から四方八方に向けて投げつけ始めた。
「何をしているんだ」
「この場所を教えるために、フェロモンを撒いている」
「この袋には、魔物娘にしか分からないフェロモンが詰め込まれているから」
なるほど、とサップは感心する。確かに、昆虫達は目に見えない何かで意思疎通をしていると聞いたこともあった。魔物娘達にも、似たような意思伝達の手段があるのだろう。
「姉さん達、あとはこれを上空に」
チェファが手渡したそれを、ラファとヘラは言われたとおりに空高くへ向かって放り投げた。
空中で袋が開き、中に詰められたものが舞い散る。それは空気に触れた途端にきらきらと煌めきながら夜空を漂った。
「あれは」
「特別製の鱗粉袋です。しばらく輝きながら空に留まるので、場所を知らせるのにはうってつけなんです」
「そうなんだ。でも、そんなすぐに来てくれるのか。こんなに夜遅くに」
「夜だからこそ、来るんですよ」
サップはわけが分からず首をかしげる。
「だってこの信号は、ここに雄が居るよ、と言うお知らせなんですから」
結論としては、チェファの言った通りになった。
フェロモンを散布してさほど時間も経たないうちに、国の上空には蜂や蠅や蛾等の魔物娘が飛び回り始め、地上にも蜘蛛や蟷螂等が集まり始めた。
程なく、小さな集落は魔物娘でいっぱいになった。
集落のそこかしこに、様子を見に家から出てきた住人と、侵略者である異国の兵士と、雄を求めてやってきた魔物娘が入り混じる。
まるで祭りの夜のように騒がしく、混沌としていた。
混乱に乗じ、サップ達は地上に降りた。そして群衆に紛れながら周りの様子を伺った。
こんな夜中に無数の魔物に集まられては、まるで夜襲を仕掛けられていると誤解されるのではないか。サップは不安に思っていたが、しかし現実は予想を遥かに上回っていた。
月が煌々と輝く夜空から、きらきらと七色に煌めく雪が降っていた。飛び回る魔物娘が羽ばたく度に振り撒かれる鱗粉が、ゆらゆらと揺らめきながら雪のように降り注いでいるのだ。
にこにこと笑顔を振りまき、人間達に対して気さくに楽しげに話しかけてくる彼女達魔物娘の姿は、多少昆虫の特徴は強いものの妖精のように見えない事も無い。
とても凶悪な化け物の強襲には見えなかった。遊び好きな妖精達が連れ立って迷い込んだようにしか思えなかった。
集落の住人たちも、異国の兵隊達も、呆然と夜空に、魔物娘達が作り出した光景に見入っていた。みんな魔物娘の姿に見惚れていた。
夜空を見上げ、通りをきょろきょろと見回す住人たちの顔に浮かんでいるものは、好奇心はあっても恐怖感は無いようだった。
兵士達でさえも、最初こそ武器を携えて居たが、おとぎ話のような風景に当てられたのか、それとも圧倒的な魔物娘の数に抵抗を諦めたのか、すぐに呆然と立ち尽くす者ばかりになっていった。
そのうち、一人の男が魔物娘と連れ立って路地裏に入っていった。そして、まるで誰かがそうするのを待っていたかのように、堰を切ったように他の独り身の男達も魔物娘に誘われるままいずこかへと消え始める。
その中には、魔物と敵対しているはずの兵士達の姿もあった。
もしかしたら、彼ら自身も実際に魔物娘の姿を見るのは初めてだったのかも知れなかった。
恐ろしい怪物だと言い聞かせられていた魔物娘。しかし実際に目の当たりにするのは、人外ではあるものの滅多にお目にかかれない程の美しい女性達でもあった。そんな彼女らに、こんな美しい情景の中誘われたら、男としては付いて行ってしまうのも理解出来ない事ではない。
「一体どうなっているんだ」
「モスマン達のおかげ」
「あの子達が、喜んで鱗粉を振りまいているから」
「モスマンの鱗粉には、思考を柔らかく単純にする効果があるんです。彼女達自身、いつも大好きな人間の事ばかり考えているのですが、鱗粉を吸った人も同じようになるんです。
いつも鱗粉が出ているわけではありませんが、今日は旦那様になってくれそうな男の方がいっぱいいて興奮しているみたいですね」
「へぇー」
空を舞う魔物娘達も、男達に目星をつけては地上に舞い降り、抱き付いて捕まえてゆく。
時折、まだ武器を携えた兵士達が襲い掛かってくる事もあったが、魔物娘達の敵では無いようだった。
サップ達に襲い掛かってきた兵士達も、そのたびラファとヘラに簡単にいなされ、その鋏と槍で摘み上げられて木の葉のように放り投げられてしまう。
そして哀れな兵士達は、地上に叩きつけられる前に空で待機している魔物娘達にお持ち帰りされていった。
抵抗を続ける兵士達は次第に数を減らし、物珍しげに通りを眺める住人達も少しずつ減ってゆく。
喧騒は次第に収まり、それにとって代わるように、街のあちこちで嬌声が上がり始める。
「みんな、始めたみたい」
「始めたって、何を」
「子作り」
「ぅ、え?」
「モスマン達は、いつだって愛しい人の子供が欲しくて堪らないんです。鱗粉を吸った者も、同じように考えるようになります。
だから、サップさん」
三匹のソルジャービートル達が、潤んだ瞳で近づいてくる。
逃げようにも、重騎兵の間には付け入る隙も無かった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。こういうのはちゃんと」
「私達、もういっぱい待ったよ」
「サップ君が戻ってくるの、ずっと待ってた」
「ちいさい頃に、次は大好きな人としかしない、気持ち良くて楽しい遊びをしましょうねって約束してから、ずっとずっと。もう、我慢なんてできません」
「俺、そんな約束までしてたのか……。って、わっ」
後ろから、チェファに抱きしめられた。
ラファとヘラの顔が近づいてきて、同時に口づけをされる。柔らかく湿った、けれど少し感触の違う二つの唇を押し付けられて、理性がとろけてゆくのが分かった。
サップは身体から力を抜いた。元々そのつもりでは居たのだ。彼女達が気にしないのならば、時間と場所なんて些細な問題だ。
集落の大通りではあったが、こちらに注目している者は誰も居ない。なぜなら通りに残っている者達も皆、人目もはばからず行為に夢中になっているからだ。
大通りから消えていった者達も、皆路地裏か自宅の寝室で同じような事をしているのだろう。だからもう、誰にも遠慮などいらなかった。
後ろからチェファに抱きかかえられたまま、服をはぎ取られた。
ラファもヘラも、いつの間にかその手の武器が消えていた。女の子の部分を守っていた鎧も薄膜も消えて、今は柔らかな肌がむき出しになっていた。
ほんのり赤みの差した、雪のように白い肌。身体のラインは女性的な曲線を描き、特にその胸元と腰元は、甲虫の身体と一つのものだとは思えないほどに艶やかだった。
手を掴まれ、ラファ、ヘラ、それぞれの乳房を掴まされる。
ラファの方は指が沈むほど柔らかく受け入れ、ヘラの方は心地よい弾力で指を楽しませる。
乳房を触らせながら、二匹の淫虫はサップの首筋に舌を這わせ始める。浮かび始めた汗を舐めながら、身体の下の方へと嘗め回してゆく。
サップは、自分の下半身に血液が集まり始めるのを自覚する。我慢できない、する気も無い、裸にされたケダモノが、夜空に向かって反り返り始める。
「サップの汗、おいしい」
「サップ君の槍、逞しい」
ラファとヘラは無表情ながらも熱っぽい目でサップの一物を凝視する。
こんなに自分のものを見つめられたことなど無かった。サップは顔を赤くしながら、身をよじろうとする。
すると、耳元を熱い吐息がくすぐった。
「……チェファ」
「私も、サップさんの見たいのに。舐めたいのに……」
チェフェはサップを後ろから抱きしめながら、少し涙目になっていた。サップを守ろうとしているのか、まだ装甲もそのままだ。
「チェファ、君の肌にも触りたいな」
「で、ですが、まだどこから兵隊が」
「大丈夫だよ。もう危険は無いって」
チェファは躊躇いながらも頷くと、伏し目がちにサップを見る。
「あ、あの、少し目を閉じていて下さい。鎧は魔力で消せるのですが、その、恥ずかしいので」
サップは言われるままに目を閉じる。
艶っぽい吐息の後に、背中に当たる感触が明らかに変わった。
皮膜越しでもチェファの身体の柔らかさは十分に伝わってはいたが、直接触れるチェファの肌は比較にならないほどに心地よかった。
しっとりと汗ばむ肌は吸い付いてくるようで、背中に押し付けられる二つの乳房の感触もたまらなかった。必死で胸にしがみついてくる両腕も、いじらしくて仕方がない。
「サップの角、凄く大きくなった」
「チェファの肌は気持ちいいから」
「ね、姉さん達っ」
ラファとヘラは、サップの一物に顔をよせ、匂いを嗅ぐ。うっとりとした表情を浮かべると、二人はサップを見上げる。
「そろそろ始める。いいよねサップ」
「我慢しなくていい。出したかったら、いつでも出して。サップ君」
ラファとヘラは、右から左からサップの一物に頬ずりする。そして各々、口づけを始める。
ちゅ、ちゅ、と音を立てて、根元に、竿に、鈴口に、雨あられと口づけを振らせる。
もどかしい心地よさに、サップのそれが幾度も震え、跳ね上がる。
その腰の動きを抑えて固定させようとするかのように、二人は左右から片腕を回して、サップの腰を抱きしめる。
そして残った片方の手でサップの睾丸を、根元をくすぐり、愛撫を始める。
「あ、うあぁ」
サップはたまらず背を反らした。しかし愛撫が止むことは無く、雄の態度に喜んだ雌はさらに行為を加速させる。
「サップさん。私にも……」
涙目のチェファが、すぐ横にあった。
サップは顔を近づけ、その唇に唇を押し付ける。どちらからともなく舌を入れて、絡め合わせる。
野花のような匂いがした。チェファの味が蜜のように舌の上に絡みつく。
サップは急に飢餓感を覚える。その甘い蜜がもっとほしくてたまらなくなり、舌を擦りつけて夢中になってチェファの唾液を舐め取った。
チェファのほっとしたような顔を見て、サップも少し安堵する。
口づけが続く中、サップの雄自身への愛撫はさらに濃厚なものになっていった。
ラファは大きく口を開いてぱっくりとサップの亀頭部を飲み込み、ヘラも竿に、睾丸に舌を這わせえ、吸い付いてくる。
ぐちゅぐちゅと音を立てて吸い上げ、舐めしゃぶる。裏筋に、鈴口に、粘膜質が吸い付き、擦りあげる。更には二匹の淫虫は、責める場所を交代して刺激に慣れさせようともしなかった。
サップの身体が大きく跳ねるが、三匹の腕に捕まえられてはまともに動くことも出来なかった。
愛撫は舌だけにとどまらない。チェファの両手は愛おしそうにサップの胸元を、乳首を撫で、ラファとヘラの手は睾丸や付け根を弄んでは、太ももや尻にまで撫で回してくる。
こんな快楽など、当然味わったことが無かった。しかし快楽に押し流されつつも、サップは三匹への気持ちを保ち続けていた。
自分を待ち続け、命の危機に駆けつけて、二度も救ってくれた。感謝を超えて、愛しくてたまらない気持ちだった。
ラファとヘラの頭に手を伸ばして、その髪を優しく撫でる。角の付け根に指を這わせて、コリコリとひっかいてやる。
すると二匹も心地よかったのか、ぴくんと鞘羽を震わせた。
だが、未知の快楽に耐え続けるのにも限度があった。
サップはこみ上げる感覚に耐えられず、二匹の角を強く掴む。チェファの舌を強く吸いながら、激しく腰を震わせて、そして果てた。
おびただしい量の精液が飛び出し、二匹の淫虫の美しい顔を穢した。どろどろの白濁を浴びせられても、しかしラファもヘラも恍惚とした表情で目を輝かせるだけだった。
代わりばんこで射精の続く鈴口に唇を押し付けては、あふれ出る精液を舐め、啜った。
射精が収まると、お互いの顔に飛び散った白濁を舐め取り合っていた。
互いの顔を清め終わると、姉妹はサップの顔を見上げて笑った。初めて見た二人の顔は、すべてを忘れてしまうほど可愛かった。
サップはぐったりとしながらも、二匹の頭を再び優しく撫でてやった。
「ここは狭い。少し広い場所を探してくる」
「二人はここで待っていて。すぐに戻る」
行為が終わると、ラファとヘラの二人はそう言い残していずこかへと去って行ってしまった。
残されたサップは、チェファの身体に抱き付くようにして寄りかかる。先ほどの射精があまりにも心地よく激しすぎて、少々消耗してしまったのだ。
しかしサップは、まだ休むことを許されなかった。
「サップさん。私もサップさんの精液、舐めたいです」
チェファはサップの身体を支えながらも、恥じらうように頬を染めて言う。気持ちとしては期待に応えてやりたかったが、しかし身体の方が付いて行ってくれそうになかった。
「ごめん。ちょっと休ませて」
いつもは穏やかなチェファではあったが、サップの返事が気に入らなかったらしい。彼女は珍しく頬を膨らませてそっぽを向いた。
「姉さん達には、あんなに優しくしていたのに。あんなにいっぱい射精していたのに。私にはしてくれないんですね」
その瞳の端が光ったように見えて、サップは慌ててキスして取り繕った。
「ち、違うんだ。男っていうのは、なかなか連続で射精できないものなんだよ。だから」
「じゃあ、してくれる気はあるんですね。私がサップさんを蘇らせて、気持ち良くできたら、喜んで射精してくれますか?」
「そ、そりゃあ、もちろん」
チェファはにっこりと、可憐な少女のように微笑んだ。
そしてそんな可愛らしい表情を見せてすぐに、少女とはかけ離れた淫行に興じ始めた。
サップの腰を抱き上げ、自分の胸元に抱え込んだのだ。
萎えかけていたサップの一物をその豊かな乳房で包み込むと、優しく温かな官能を与えてきた。
チェファは腰元から生えた、前顎のような小さな足でサップの腰を固定すると、自由になった両手で自らの乳房に左右から圧力を加える。
両手で乳房を左右から支えて、ぎゅぅっと抱きしめるようにサップ自身を押しつぶし、乳房を不規則に動かして、滑らかでむっちりした乳房の感触を楽しませる。
サップの雄は即座に力を取り戻した。硬くそそり立ったそれは、乳房を押しのけるようにして、谷間から赤黒い頭を覗かせる。
再び涎を垂らし始めるケダモノを、チェファはうっとりと眺める。そして唾液を乳房の谷間に垂れ落として、滑りのよくなったそこでサップをもみくちゃにし始める。
「目を離さないで下さいね。サップさん」
チェファはサップを見つめながら懇願する。
「私がサップさんをどれだけ好きなのか、ずっと見ていて下さいね」
サップが生唾を飲み込みながら頷くと、チェファは微笑んで猛る雄へと向き直った。
チェファの手の動きと、サップの暴れる雄に合わせて、真っ白な雌の膨らみが淫らに揺れて形を変える。
隙間なくサップのモノを包み込んで、ねっとりと擦りあげてくる。
擦れるごとに刺激されるのか、チェファの頬もまた朱を帯び始めてゆく。
溢れる我慢汁に自制が効かなくなったかのように、チェファは獣のようにサップのそれにむしゃぶりつき、嘗め回し始める。
その口淫は、ラファとヘラのそれに比べても情熱的で荒々しかった。
整った顔が崩れてしまうのも構わず口をすぼめて男根を吸い、ひたすらに射精を促すように裏筋に舌を這わせ、鈴口をこじ開け舌を捻じ込む。
サップはたまらずチェファの頭を離そうと両手で掴むが、淫虫の首元に付いた触角のような器官でさえも腰にしがみつかれていて、どうすることも出来なかった。
チェファの顔に汗がにじむ、白銀の髪が乱れ、顔に張り付いてもなお意に介さず、彼女は雄を啜り続ける。
荒々しいチェファの想いに応えるように、サップは彼女の髪を強くかき回した。彼女はそれすら楽しむ様に唇をゆがめる。
もう、限界だった。
サップは掴んだ女の頭を引き寄せる。女がむせるのにも構わず、その喉奥に直接精液を流し込んだ。
呼吸すら難しいにも関わらず、チェファはさらにサップを求めようとするかのように強く男の身体を抱き寄せた。
一度目と大差ないほどの量の白濁がチェファの奥深くへ流し込まれ、口から溢れたそれが唇の端から伝い落ちた。
射精が終わっても、チェファは余韻を楽しもうかとするかのようにしばらくサップを離そうとはしなかった。サップが力を失い始めてようやく、舌先で柔らかくなり始めたそれを弄んでからやっと、チェファは彼を解放した。
「美味しかった。それにいっぱい出してくれて……。サップさん、大好き」
涙と涎と精液で顔をぐちゃぐちゃにしてはいたが、彼女の笑顔は他に並ぶものが無いほどに美しかった。
どこかに行っていたラファとヘラが戻って来るなり、サップはまた否応なく三匹のソルジャービートルに抱きしめられ、彼女達が選んだ地へと連れて行かれた。
辿り着いた先は集落の外れの原っぱだった。
周りには誰も居なかった。鱗粉に彩られた銀色の月だけが、これから始まる睦み合いを見下ろしていた。
「ここならだれにも邪魔されず出来る」
「サップ君。みんなで気持ち良くなろう」
「周りもとても綺麗だし、素敵ですね」
ラファが正面から近づいてくる。サップは冷や汗をかきながら後ずさろうとしたが、後ろにはヘラとチェファが控えているため、逃げる事も出来ない。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、流石にこんな連続では」
「大丈夫。元気にしてあげる」
ラファはサップににじり寄ると、いとも簡単にその身体を抱き上げてしまう。
両腕をその背に回し、前顎のような肢で腰をがっちりと挟み込み、ぴったりとその肌を寄り添わせる。
唇同士が触れ合い、重なる。舌がサップの中に侵入してきて、荒々しくかき回してくる。
舌を伝って、ラファの唾液が流れ込んでくる。ほのかに甘いそれを、サップは喉を鳴らして飲み干してゆく。
体がかぁっと熱くなる。沸き立った血液が、下腹部に再び集まり始める。
紫色の瞳には、サップだけが映っていた。サップは押し付けられる肌の心地よさに戸惑いながらも、その背に腕を回してしまう。
ラファはサップを見つめたまま、彼の一物へと指を伸ばした。柔らかなお腹を圧迫する硬いそれを、自分の雌の穴の入口へと導く。
ねっとりとした粘液が溢れ出しているラファの柔らかな"うろ"へと、サップは自らの肉棒を沈めてゆく。
「んぁ、ああぁっ」
あらゆる苦痛を耐えて前進する屈強な重騎士も、内側を抉られる苦痛には耐えられなかったらしい。ラファな唇を離して、背をそらして悲鳴を上げた。
「ごめんラファ。痛かったか」
少女の身体が震えていた。サップはいたわるように、その背をさする。
「だい、じょうぶ。思ったより、気持ち良かっただけ。
サップの手も、気持ちいい。もっと触って」
ラファは涙目で懇願してくる。サップは困惑しながらも、指先で少女の顎を撫で、もう片方の手で肋骨に指を添わせる。脇腹をくすぐり、甲殻との付け根を指の腹で擦り、外殻の部分にカリカリと爪を立てる。
ラファはそれだけで蜜を溢れさせた。サップの指が動くたびに膣を蠕動させ、サップを愉しませる。
そのうちに、ラファの方から腰を振り始める。サップの腰に絡めた前足と腕に力を込めて、より強く自らの奥へと潜り込ませ、えぐらせるように。
きゅうきゅうと締め付けてくるラファの身体の良さに、サップは次第に余裕を失ってゆく。呼吸は早まってゆき、鼓動は強くなってゆく。
サップはたまらずラファの身体をかき抱いた。
「このまま、奥に出して。いっぱい出して」
掠れるような切ない声がとどめになった。サップはそのまま、ラファの最奥へ向かって放精した。
脈動するたび、精液が吐き出されて雌の身体を内側から汚していくのが分かった。
ラファは、じっとサップを見つめ続けていた。サップもそんないじらしい姿から目を離せなかった。
やがて射精が収まると、ラファはサップの身体を解放した。下腹部を撫でて、ラファは満足そうに微笑んだ。
「さぁ、次はヘラの番。行ってあげて、サップ」
ラファから解放されたサップは、朦朧としながらふらふらと振り返った。
地面に腰を下ろして、ヘラが待っていた。手招きして、雄を誘ってくる。
サップはよろよろとしながらも、誘われるままに彼女に近づいてゆく。頭に霞がかかったかのように、意識がはっきりとしなかった。
ただ目の前の雌と交尾をして孕ませたい。そんな獣のような本能だけが下腹の奥から込み上げて止まらなかった。
「好きにしていいよ、サップ君」
ヘラは首をかしげて、しなを作る。
サップは欲望のままに彼女の身体を押し倒した。屈強なはずの突撃兵が、よろめく男の手で簡単に押し倒される。
男に向けて腹を曝して、ヘラは服従の姿勢を取る。
サップは甘い匂いに引き寄せられるように、その儚げな少女と武骨な甲虫の境目にある潤んだ裂け目に口をつける。
亀裂から溢れる蜜を舐め取るべく、昆虫のように舌を上下させ始める。
ヘラの強い味がした。口に、鼻腔に、ヘラの匂いが広がった。癖になる、雄を虜にして止まない雌の蜜。サップは音を立てて啜り、夢中になって舌を動かし続けた。
「アッ、アッ、そんなに、吸ったら」
緩んだ裂け目に舌を捻じ込む。ぷっくりし始めた淫らな蕾の皮を剥き、優しく舌先で転がす。
ヘラの身体が大きく跳ねた。少女の肌は紅潮し、びくん、びくんと痙攣していた。
サップは彼女の上を這い進み、視線を合わせる。どこか遠くを見るようで、しかしサップを捕えて離さないその目に。
「サップの槍、突き刺して。私を、滅茶苦茶にして」
剥き出しの欲棒は、既に力を取り戻していた。その力強さは、当初よりもさらに力を溢れさせている程だった。
サップはヘラの雌の亀裂へと己を押し付ける。先っちょを押し込むが、彼女の肉襞は侵入者を阻もうとするかのようにきつく締まっていた。
蕩けきったヘラの肉体の、最後の防壁。サップはその守りを突き崩すべく、勢いをつけて一本槍を突き立てた。
ヘラの口から甘い喘ぎが漏れる。それさえ飲み込もうとするかのように、サップはヘラの口を唇で塞いだ。
両手も指を絡めて握りしめて、地面へと押し付ける。
そして女を拘束したまま、サップは激しく腰を振り始めた。
魔物娘随一の、剣も矢も通さない鎧を纏った重騎兵。けれどもその貞操の守りは、愛しい雄の槍を前にしてはあってないようなものだった。
そして一度侵入されたが最期、攻め落とされた女の身体は、愛しい男の侵略を喜んで受け入れ、奉仕し始める。
ヘラは槍を突き刺されれば喜んでそれを受け入れ、抜こうとすれば嫌がるように襞を締め付け、絡みついてサップの槍へとしがみつく。
たおやかな指先が男の背中に食い込み、爪を立てる。
極上の女体へ、これは自分の攻め落とした、自分の所有物なのだと証を刻みこもうとするかのように、サップは幾度も幾度も抜き差しを続けた。
身体中の血液が沸騰し、めまいがするほどの興奮の中、サップは自分でも気づかぬうちに射精していた。
「サップ、君っ。せーし、あっ、しきゅうに、まで、入っ、あっあっ」
射精をしながらも、腰の動きを止められなかった。雌の甘い声も届いていなかった。
裂け目からは白濁と愛液が混じり合った粘液が溢れ、腰の動きにかき回されて白く泡立っていった。
「さっぷ、くんの、やり、しゅごい、の。わた、し、……あっ。しんりゃく、されつく、されちゃった」
うわ言のようにつぶやきながら、ヘラはただただサップを受け入れ続けた。
やがて疲れて動けなくなってようやく、サップは腰を動かすのをやめた。
ヘラの上から転げるようにして身を退けると、草原の上に仰向けに横になった。
もう指一本動かせない。そんなサップの上に、覆いかぶさる影があった。
最後の彼女はやっぱり涙目でサップの事を見下ろした。
「私の事、忘れてないですよね。私とも交わってくれますよね」
「当然だろ。チェファ」
チェファは表情を緩めて、サップに唇を重ねた。
「やっぱりサップさんとのキス、気持ちいい。それだけで濡れちゃうくらい」
チェファはサップの手を取り、自らの雌の花を触らせる。
指先にしとどに濡れた花弁の感触が触れた。指を曲げると、チェファのそこはもう十二分に潤みきり、簡単にサップを受け入れてくれた。
「まだ勃起していますね。よかった」
チェファのひんやりとした指が、熱を失わないサップの肉棒へと絡みつく。ヘラとの粘液でてらてらと光るそれを少し扱くと、すぐさまびくんと跳ねて我慢汁を滴らせた。
「うっ」
「動けますか」
「腰を少し動かすくらいは」
「じゃあ、私が上になります」
チェファは雄の剛直の上に、自分の腰が来るように位置を合わせる。
そして雌の花の入口にサップの欲棒の先端を押し当てると、少しずつ腰を落としていった。
蜜の溢れるねっとりとした雌の中に、雄の欲棒が飲み込まれてゆく。チェファはサップを優しく包み込み、労わるように蜜を塗して、揉みほぐすような蠕動を繰り返した。
その表情は平静を装いつつも、少しずつ頬が赤く染まってゆく。性感を得ているのは明らかだった。
「気持ちいいよ。チェファ」
「サップさん……。嬉しい」
チェファは全身を使ってサップと肌を重ね合わせる。
両腕をその背に回し、前顎で腰を寄せて、四本の脚でさえもサップの脚へと絡ませるようにしてしがみつく。首筋にある触角までも首に絡ませ、まるで一つの生き物のようにぴったりとくっつきあった。
「無理に動かなくていいですからね。気持ち良くなって、出したくなった時に出してくれればいいですから」
「でも、それじゃあ」
「いいんです。私はこうして、ちゃんとサップさんと抱き合って、くっついていられるだけで気持ち良くて、幸せですから」
サップは力を振り絞って、チェファの背中へと腕を回した。力はろくに入らなかったが、彼女の身体を抱きしめていたかった。
肌を通して、チェファの体温が伝わってくる。少し早目の鼓動が、緊張気味の息遣いが、サップの身体に染み渡る。
首筋に浮かんだ汗を舐めると、チェファは小さく声を上げた。汗の味と同じくらい、甘く鼓膜を揺らした。
ただ繋がって肌を重ねているだけでも心地よかった。チェファはサップの抑えきれない熱をただ柔らかく包み込んで、時折優しく蠕動するだけだった。
お互いの肌を触り合った。時につながっているところをくすぐったり、キスしたり、汗を舐め合った。
もどかしい快楽ではあったが、そんなわずかな刺激でも、積み重なるうちに確実に性感は高まり続けていた。サップとチェファは、ゆっくりと、しかし確実に絶頂への道を登り続けていた。
そしてその頂上へと、ようやく足がかかった。
二人とも欲望に濁った瞳で、お互いの事だけを見つめ合う。
「覚えていますか。初めて会ったあの日の事」
「ごめん。忘れていたんだ。でもついさっき思い出した。迷子になった俺を、みんなが助けてくれたんだよね」
「あの日、虫取りに来たあなたは、結局捕まえた虫を全部逃がして帰ったんですよね」
「そうだった、かな」
朦朧とした頭で思い返す。確かに、そんな気がした。
「虫の魔物のみんなに助けられたから、僕も虫を助けなきゃって。その時、私達はあなたの事を好きになったんです。だから、逃がしてくれた虫の代わりに、私達があなたのものになるよって、約束したんです」
「そっか。そうだったね」
何だ。あの時の勝負は自分の勝ちだったんじゃないか。だってこんなに大きい恋人を、三人も捕まえられたんだから。
サップは身も心も満たされて、チェファの身体を抱きしめ、口づけする。
愛しいものに全てを包まれ、かつてないほどの多幸感に包まれながら、サップはチェファの一番敏感なところに向かって、自らの全てを解放した。
空には大きな月が浮かんでいた。
煌めく鱗粉が風に流れて、星がゆったりと流れているようだった。まるで夜空が海のように見えた。
集落の方からは響く嬌声は、絶える気配を見せてはいなかった。
サップは満足感と倦怠感に浸りながら、ほうっと息を吐く。
このまま目を閉じれば、きっと幸せな夢を見られそうだった。この現実以上の幸せがあるかどうかは、疑問ではあったが。
「サップ、寝ちゃだめだよ」
横になるサップの身体の上に、重量感のある身体が覆いかぶさる。
「あー、えっと」
ラファだった。その左右には、ヘラとチェファも控えている。
「一回だけじゃ、足りない。もっとしたい」
「俺、もう何回も搾られてるんだけど」
「でもまだ勃起してる。出来るでしょ」
「いや、でも、中身は空っぽで」
「疲れちゃっても、私達が一生懸命元気にしますから、ね」
「あー……」
サップは溜息を吐く。命を救われた以上、この命の使い道も彼女達に委ねる、と言うのが筋と言えば筋になる。
まぁ、殺されるわけでは無い。それで彼女達が幸せになれるのなら。
「いいよ、一晩中でも、相手をするよ」
翌日から、集落の様子は一変した。突然の魔物の脅威を告げられて、教会派に傾きかけた田舎の小国。しかしその国はその日のうちに、一夜にして無数の魔物娘達を受け入れ、新魔物派へと傾ききった。
ソルジャービートル達は、ひとまず報告をしてくると言って自分達の里に戻って行った。サップは後から自分も里へ行くからと彼女らを見送ると、国の防衛隊の詰所へと向かった。
街を歩けば、魔物娘と腕を絡めて歩くカップルが目に付いた。苦笑いして見送る人間同士の夫婦も居たが、それを拒絶する者は誰も居なかった。
詰所で話を聞くと、ソルジャービートル達の作戦通り、死傷者は一人も出ていなかった。他国の兵達は魔物娘に惚れ込んだ者を除いて、皆撤退したとの事だった。転移魔法陣はそのまま機能していたが、魔物娘達の監視下にあるため特に脅威にはならないだろうとの事だった。
すべての黒幕であった件の魔術師も、森に居るところを発見されたとの事だった。発見された時には既に魔物化していて、元より懇意にしていたらしい兵士の一人とまぐわいの真っ最中だったという話だ。
防衛隊長も正気を取り戻していた。最近は夫婦仲が冷め切っていたにも関わらず、昨晩は久しぶりに燃え上がってしまったと照れ笑いを浮かべていた。なんだか嫁が綺麗になった気がするなどと惚気話さえするほどだった。
サップは防衛隊の会議室で今後の話をした後、再び魔物達の里の方へと足を向けた。
この集落の脅威は去ったが、攻め込んできた国の貧困は未だに解決していないのだ。問題の根本が解決しない限り、彼らは再びどこかへ戦争を仕掛けようとするかもしれない。
新たなる争いを避けるために、魔物娘達の力を借りたかった。魔物娘の多く住む土地は、例外なく豊かになるという噂を聞いたことがあったのだ。
森を抜け、魔物の里へとたどり着くと、すぐに三匹のソルジャービートル達が迎えてくれた。
「サップ!」
「おはよう、ラファ、ヘラ、チェファ」
「待ってたよ」
「あぁ今度はちゃんと会いに来れたな」
「お待ちしてました。この隠れ里の頭役であるアルラウネとハニービーの元にご案内します。……けれど、その前に」
いくら可愛らしい少女の顔をしていても、その実態は魔物の隠れ里を守る屈強な戦士達だ。サップの身体はいとも簡単に持ち上げられてしまった。
「まずは一度、交尾してから」
「もう、私達みんなお腹ぺこぺこ」
「いいですよねサップさん。私達、サップさんに会えなくて凄く寂しかったんですから」
朝までまぐわい続けた後なのだが……。とは、サップは言えなかった。全ての問題が解決したら、ここに移住してずっと一緒に居よう。
そう決意しながら、サップはソルジャービートル達に身をゆだねた。
15/10/03 20:47更新 / 玉虫色
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