読切小説
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羊の睡眠講習
 僕は生まれつき上手く眠る事が出来ない。そう言う体質だった。だから上手に眠るために、眠りの先生に色んな事を教えてもらっている。
 その先生は、実は人間では無かったりする。僕と対照的に眠りに落ちやすい体質を持っている彼女は、ワーシープと言う種族の魔物娘なのだった。
 先生はその名の通り羊の特徴を持っている魔物娘で、羊のような巻角や、ふさふさの尻尾、小さな蹄に、もこもこした羊毛を生やした可愛い女の子と言った姿をしている。
 先生が眠りやすい体質を持っているのはこの毛皮の為だった。ワーシープの毛皮には強力な眠りの魔力が込められていて、その魔力の強さは触っているだけでも心地よい眠りに落ちてしまう程だ。
 眠りづらい体質の僕も、先生の毛皮に包まれていると本当にすぐに深い眠りに落ちてしまう。けれど、先生はあまりそれを良くは思ってはいない。
 毛皮を使えば何もしなくても眠れてしまう。それでは僕の成長にはならないからと、先生はなるべく自然に眠れるためのコツを教えてくれる。
 だけど、先生が魔物娘だからなのだろうか。その教えの中には、ちょっと変わったところもあって……。


 一日を終えた僕と先生は、同じベッドの上に居た。これから眠りについて教えてもらって、それから一緒に眠る……のだけれど。
「それじゃあ、そろそろ眠るための準備を始めましょうね」
「は、はい」
 僕は先生の方を見ずに答える。声が上ずってしまうけれど、どうしようもなかった。
 今、ベッドの上の先生の身体の上には毛並みのいい羊毛は生えていなかった。魔法を使って消しているのだ。
 理由は、僕が毛皮に触れないように。と言うわけでは無い。それだったら何も服まで脱いでいなくてもいいからだ。
 目の前にいる先生は毛皮だけでなく、寝間着も下着ですら身に付けていなかった。一糸まとわぬ、生まれたままの姿だった。
 ……とは言っても人間と違って獣毛の生えた耳や尻尾、蹄は付いているのだけれど、……でも、そこが逆に僕にはいやらしく見えてしまって、目のやり場に困ってしまっていた。
 先生が裸である理由は簡単に想像がつく。それは、先生が魔物娘だからだ。
 魔物娘達は魔物の頂点に位置する魔王のサキュバスの影響を受けているので、みんなとんでもない程の美人で、体つきもとっても色っぽくて、そして何より彼女達はえっちな事が大好きだ。
 先生の身体も、おっぱいは片手では覆えない程大きいし、その柔らかさも手の平がとろけてしまうくらいだ。
 お尻もきゅっと吊り上っていて綺麗な丸みを帯びていて、見ているだけでもどきどきしてしまう。
 肌はどこも艶やかですべすべしていて、いい匂いがする。
 でも、だからこそ、僕は裸の先生を前にしてしまうと、恥ずかしくって先生の身体をまともに見られなくなってしまうのだ。
 だって先生の身体をまともに見たら、その先の事を想像してしまうから。そうしたら、僕は自分を抑えられなくなってしまうから……。
「ほら、旦那様。ちゃんと私を見てください。眠る準備を始めますよ?」
「で、でも先生……、裸だし」
「旦那様にだったらどこを見られても恥ずかしくありません。逆に、目を逸らされる方が悲しくなります。さぁ、旦那様」
 頬に先生の柔らかい手が添えられる。
 促されるまま、僕は先生の方に振り向かされる。
 蝋燭の幽かな明かりに照らされて、先生の肌が妖しく浮かび上がっていた。暗い橙色の明かりを照り返す傷一つない曲線美に、僕は胸がぞくぞくしてきて、先生の身体しか見えなくなってしまう。
 生唾を飲んで見上げると、先生の深い翠色の瞳に、先生と同じように素っ裸になった僕が映っていた。
 先生が笑う。瞳の中の僕の姿も、歪んで見えた。


「旦那様。良い睡眠のためには何が必要だと思いますか?」
「えっと、昼間ちゃんと運動したり……」
「今日は一緒に畑仕事をしましたね」
「……先生は木陰で居眠りしてたけど……」
「ほ、他には?」
「ぬるめのお湯に浸かったり」
「一緒にお風呂に入りましたね。背中の流し合いっこしましたね」
「……先生は背中だけじゃなくて強引に僕の全身を洗って来たけど……」
「あらぁ、旦那様だって私の全身を念入りに洗って下さったじゃないですか。おっぱいとか、あんなところにまで指を」
「っ! あ、あとはホットミルクとかを飲むとかかな」
「ふふふ。そうですね、一緒にハニービーの蜂蜜入りのホルスタウロスミルクを飲みましたね(本当は、私のミルクを飲んで頂きたいのだけれど……)」
「何か言った?」
「いいえ。何でもありませんわ」
「そう、ならいいや。教えてもらった事は全部したし、これで良く眠れるはずだよね?」
「でも、旦那様は今眠たいですか? 私には、とてもそんな風には見えませんよ? だって、ほら……」


 先生達の種族、ワーシープは、本来はおっとりとしていてぼんやりと眠たそうにしている事の方が多い種族だ。僕が先生に初めて会った時も、先生は木陰の野原で気持ちよさそうに微睡んでいた。
 今も昼間の間なんかは、一緒に畑仕事をしていたはずが、いつの間にか舟をこいでいる事もあるくらいだ。
 これは羊毛の眠気の魔力が本人達にも効いてしまっているかららしいのだけれど、でもだからこそ羊毛を剃ってしまった時や、今みたいに羊毛を魔力で消している時に、普段は隠されているワーシープの本来の姿が現れる。
 サキュバスの魔王に影響を受けた、淫魔としての魔物娘の本当の姿が顔をのぞかせる。
「こぉんなに硬くして、興奮されているのに、すぐに眠れるわけありません。気持ちを鎮めなければ……」
 先生はほぼ一日毛皮を出して過ごしているのだけれど、お風呂の時だけは話が違った。流石に羊毛を出したままだとびしょびしょになって後が大変なので、この時ばかりは毛皮を魔法で消してしまうのだ。
 けれどこれをすると、当然彼女は淫魔としての本性を取り戻してしまう。身体を洗っている間に完全に眠りから覚めた彼女は、お風呂から上がっても羊毛を戻さず、今のようなベッドの上での"先生"に変貌してしまう。
 先生は僕と話している間、ずっと僕のおちんちんを触り続けていた。皮をめくったり戻したり、つついたり、尿道の上を指でなぞってみたり。
 せっかく風呂上りでぽかぽかしてぼんやりしていた気分も、そんな事をされたら吹き飛んでしまう。背筋がぞくぞくして、視線がどうしても、先生の胸の谷間や、脚の付け根に行ってしまう。先生の綺麗な肌を見ていると、胸の中に熱が込み上げて、息苦しくなってくる。
「そんなに、触られたら、気持ちなんて、落ち着けられないよ」
「でも、私だって魔物娘なんです。愛する旦那様がこんなになっていたら、自分を抑えられません……。そうだ、一度出したらすっきりするかもしれません。そうと分かれば、善は急げです」
 先生はにたりと笑うと、優しく僕の身体を押し倒してきた。
 もう、僕の顔は見ていない。見えているのは天井に向かって勃起している僕のおちんちんだけのようだった。
「ちょっと、先生」
「こうして、挟んで、はむっ」
 先生は僕の下半身の上にのしかかると、その真っ白なパン生地みたいなおっぱいで僕の硬いモノを包み込んでしまう。
 そして左右から手を添えて、不規則に揉みしだきながら、胸の谷間からちょこんと頭を出した亀頭部をぱくりと口の中に咥えてしまう。
「じゅぶ、じゅじゅじゅ、じゅるる」
 皮の間に器用に舌を入れてあそこを剥いて、先生は下品な音を立てて僕のモノを啜り上げる。
「最初から、こうするつもりだってくせに」
「んふふ。おいひいれふよ? じゅぶ、じゅるる」
 抵抗する事は出来ない。だって僕も凄く気持ちいいから。
 眠れなくても、意識が飛んでしまいそうだ。柔らかく滑らかな肌に僕自身を覆われて、汁気を帯びたほっぺたの肉に包み込まれて、亀頭をじっくりと丁寧に舌で舐められて。
 全身がぞくぞくしてしまう。身体がかってにびくびく動いてしまう。
 腰から熱い物がせり上がってくる。
 僕の変化が分かった彼女は、おっぱいの動かし方を変えてくる。僕を根元から搾り取るような動きに変えて、口での吸引もさらに強くなった。
「もう、でちゃうよぉっ。あぁっ」
 熱いのと気持ちいいのが、下っ腹からおちんちんまで一気に走り抜けていく。先生の口の中に入ったままなのに、僕は我慢できず射精してしまう。
 先生は一度びくんと身体を震わせて、それからとろけるような表情で、ゆっくりと僕の放ったモノを啜り始める。
 口の中に一度溜め、舌の上で転がし、そして最後に僕の目を見ながら、音を立てて飲み干す。
「おいしぃ」
 先生にこうされた時、僕は我慢できたことが無い。
 毎回、されるがままだ。
 全部いつも通りの事で、だからこれからどうなるのかも、大体もう分かっている。
「あれぇ? おかしいですねぇ。こんなにいっぱい出したのに、まだまだこぉんなに元気なんて。
 こうなったら、心地よい疲れを感じるくらいの軽い運動をした方がいいかもしれないですね」
 魔物娘は、どうやらみんなサキュバスの魔力も持っているらしい。だからアソコを口に含まれてあんな事をされたら、落ち着くどころか興奮してしまうのは本当は当たり前の事なのだ。
 けど、僕は何も言えなかった。
 ただ先生の肌に、身体に目を奪われて、息を荒くすることしか出来ない。
「一緒に、運動しましょう? 旦那様?」
 そう耳元で囁くと、彼女は僕の上から一度離れ、僕の目の前に身を横たえて身体を開く。
「ベッドの上で、二人でする運動。気持ちいいですよ? ふふ、もう十分ご存知ですよね」
 彼女は片方の手で自分の乳房を揉みあげ、そしてもう片方の手を足の付け根に持って行く。
 指をかぎ状に折り曲げて、そこにあてがい、そして。
 くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ。
「ほら、私はもう、準備できています。……旦那様、来て?」
 ずるいと思う。けど、それに乗ってしまう僕だって悪いんだから、何も言えない。
 僕は手を引かれて、彼女の、女の子の穴の中に指を入れる。
 彼女自身の言うとおりだった。そこでは、愛の蜜が静かに煮えたぎっていた。
 口でしている時から、ベッドの上で裸で向き合っていた時から、もしかしたら二人でお風呂に入った時から、先生はこの愛の蜜を性欲と言う火にかけていたのかもしれない。
 女の人の匂いが香る。先生の、甘酸っぱい体臭が立ち昇る。
 僕はたまらず先生の首筋にキスをする。匂いをかいで、噛んで、舐めて、唇を求めて彼女の肌の上を冒険してゆく。
「あぁ、旦那様ぁ」
 いい匂いがする。先生の肌も、髪も、とってもいい匂いだ。
「旦那様ぁ、好きぃ。大好きぃ」
 唇を重ねる。何度も触れ合せ、唇同士でついばみあい、十分感触を楽しんでから、お互い舌を絡ませ合う。
 先生に会った頃はキスだって知らなかったのに、今ではこんな事さえ当たり前だった。もしかしたら、そのうちキスだけでも気持ち良くさせられるようになれるのかもしれない。
 唾液が流れ込んでくる。僕も唾液を流し込む。ぴちゃぴちゃ音を立てながら、背筋をぞくぞくさせながら、僕はもう夢中だった。
 彼女の手が、僕を掴む。
 僕を中へと、誘い込む。
 僕の先っちょが、柔らかくじっとりと濡れた先生に触れる。僕はゆっくりと腰を落として、先生の中に入ってゆく。
 蜜にまみれた細かなひだひだが、粘膜が、絡み付いてくる。先生は隙間なくしっかりと僕を包み込んで、締め上げてくる。何度も繰り返しているうちに、僕の形はもう覚え込まれてしまったみたいだ。
 気持ちが良すぎて、身体に力が入ってしまう。
 気が付けば、柔らかな乳房を握りしめていた。先生は頬を染めて涙目になっていたけれど、その顔は気持ち良くて気持ち良くてたまらない時の顔だった。
 柔らかいおっぱい。いつも気持ち良くしてくれるおっぱい。僕は先生のおっぱいが大好きだ。
 僕は口づけを中断して、その大好きなおっぱいの先端にむしゃぶりつく。先生の舌が僕の唇を求めるように動いていて、ちょっと切なそうだったけど、でも今はこっちに赤ん坊のように吸い付きたかった。
 甘い匂いがして、先生の汗の味がした。
「もう。旦那様は、まだまだ、乳離れ出来ないンッ、ですからぁ」
 舌で転がして、甘噛みして、吸い付いても何も出ないけれど、先生の味がする。
「でも、いいです。私からは、私のおっぱいにだったら、死ぬまで乳離れなんてしなくても、あ、ああっ」
 腰の方も、動かさずにはいられない。
 腰を引き、突き込む。先生の腰も自然と動いて、僕を求めてくれている。そのうち動きが合って来て、僕達は深くまで繋がり合う。奥に触れるたびに粘液が溢れて来て、さらに滑りが良くなって、密着度が上がってゆく。
 すぐにでも出ちゃいそうだった。でも、僕だって先生を気持ち良くしてあげたかった。その一心で、僕は先生の中心に向かって腰を振り続けた。奥の奥を擦り続けた。何度も、何度も。
「あ、あ、あ、あ。ダメ、もう、旦那、さまぁっ」
 中がきゅぅっと締まって、先生が僕の身体を強く抱き締めてくる。
 その瞬間、僕の中でも何かが切れる。
 僕は先生の一番奥に向かって射精した。せき止められていた感情と熱が解放されて、大きく脈打ちながら、先生の身体の奥へと放射されてゆく感じだった。まるでおちんちんから、下半身の全てを吐き出しているみたいだった。
 先生も負けていなかった。魔物娘の膣は、口のそれとは比べ物にならなかった。ひだひだの一枚一枚が精子を求めているみたいに、細やかに蠢いて、絡み付いて、搾り上げて、僕の放ったモノを吸い上げてゆく。
「だんな、さまぁ」
 とろけた先生が、僕を真っ直ぐに見ていた。
 唇にキスされて、柔らかく微笑んで、そして先生は。

「なんか私、今ので旦那様の全てが欲しくなっちゃいましたぁ」

 そんな事を口にする。
 いつもならここで終わりだった。先生が頭を撫でてくれて、先生の柔らかな身体に包まれて、気怠い身体を眠気に委ねて朝までぐっすり眠ってしまう。
 けれど今日はいつもと違った。僕の全てが欲しくなったというのは、どういう意味なんだろう。先生の本意を確認したかったのだけれど、話している余裕は無かった。口を開こうとする前に、気が付いたら身体が一回転していて、ベッドに仰向けにされていた。
 先生の身体は当然のように僕に馬乗りになっていた。繋がった部分もそのままだ。
 先生の様子が、何だかいつもと違った。夜に普段見せている、えっちな事をしたがっている時の顔をしていたけれど、見方によっては飢えた獣みたいにも見えた。
「せ、先生?」
「旦那様が、悪いんですよぉ。私を、こんなに気持ち良くしちゃうから。……こんな嬉しい事されたら、私だって本気にならざるを得ないですよぉ」
「本気って、どういう意味なの? ……今までは遊びだったってこと?」
 僕にとっては、女の人と言ったら先生が全てなのに。先生が教えてくれる色んな事が嬉しくて、気持ち良くて、先生の事が本気で大好きだったのに。
 でも先生にとっては、僕はたくさんいる男の中の一人で、遊びだったって事なのだろうか。そう考えると、寂しくて堪らなかった。
「遊びじゃこんな事しませんよ。私が愛しているのは旦那様ただ一人です。……これは、初めて言いますけど、旦那様と初めて会った時の、あの木陰での営みが、私にとっての初めてだったんですよ? それから先はずっと一緒にいるんですから、分かりますよね?」
「あ……」
 何だか自己嫌悪だ。ずっとそばに居たって分かっていたのに。常に目の届くところに居てくれたというのに。僕と来たらこんな事で不安になってしまって……。
「本気って言うのは、淫魔としての本性をもう抑えられないって言う事なんです。今までは、旦那様は夜は眠りたそうにしていたから、我慢していたんですけど……」
 先生は優しく、それこそ怖いくらいに優しく笑うと、息が届きそうなくらいに顔を寄せて、こうささやいた。
「もう、我慢出来ない。旦那様に、私の知る限りの一番気持ちの良い眠りを教えさせて下さい」
「一番、気持ちの良い眠り?」
「そう。それは、くたくたになるまで、それこそ気絶するまで愛し合った後の眠りです。愛する人と、身体が動かなくなるまで本能的に求め合った後の、限界を迎えた後の眠り。それを以上に心地よい眠りはありません」
 彼女はそう言って、僕の耳に口づけし、舌を入れてくる。
「あ、あああっ」
 全身がぞくぞくする。頭の中を直接愛撫されているような、舐められているような、気持ち良さを直接流し込まれたような感覚になる。
 ゆっくりと、しかし大きく先生の腰が動き始める。水音と、荒い吐息が部屋の中に響き始める。
 眠れない、長い夜の始まりだった。


 その日の夜は、これまでした事が無かったたくさんの事をした。
 犬みたいに四つん這いになった先生を後ろから抱きしめながら繋がったり、うつぶせに寝転んだ先生に覆い被さったり、横に並んで正面から、後ろから抱き合って一つになったり、お互いの大切な部分を舐め合ったり、一晩中繋がり合って、たくさんたくさん、色んな事を知った。
 先生は底なしに僕を求めて来て、そして僕も、何回しても先生が欲しいという気持ちがおさまらなかった。
 気が付いたら朝になっていて、結局その日は一睡もしなかった。
 だけど、先生の胸の中で感じる朝日はいつもと同じように清々しくて、何だか不思議な気持ちだった。
「気持ち良かったです。旦那様」
「僕も。先生に色んな事を教えてもらっちゃった」
 僕がそう言うと、先生は珍しく顔を真っ赤にして、おまけに目まで逸らされてしまった。
 昨日は色んな格好で抱き合って、中にはとんでもない姿で絡み合う物もあって、やっぱり先生も恥ずかしかったのかもしれない。そう思ったのだけれど。
「……昼間は名前で呼んで下さい。先生は、夜の間だけで」
 どうやら恥ずかしかったのは呼び方の方だったらしい。昨日の夜あんなに乱れていた先生の言葉とは思え無くて、でも恥じらう姿がとっても可愛くて、僕は胸がきゅんとしてしまう。
 でも、確かに昼間の彼女は羊毛に覆われておっとりとしているから、夜のように"先生"と呼んだ事など無かったんだったっけ。
「旦那様には、全部知られてしまいましたね。……おしりの奥まで、全部……」
 その言葉に僕は昨夜の先生の姿を思い出して、顔がかぁっと熱くなる。先生は普段使わない所でも僕を感じたいからと言って、誘って来て、凄く気持ちが良くて、先生も、大きな声を上げていて。
「また、しましょうね」
「うん」
 色んな事が思い出されて、僕はどうしても生返事になってしまう。
 だって、本当にたくさんの事をして、そのどれもが信じられない程気持ち良かったから。その一つ一つを思い出してしまったら、もう考える事なんてほとんどできなかった。
「絶対ですよ?」
「うん」
「近いうちにしましょうね?」
「うん」
「今晩とか」
「うん。……うん?」
「なんなら今からでも……私はいいですけど」
 僕は先生が大好きだ。可愛くて優しくて、先生とえっちな事をするのも、本音のところを言えば、朝から楽しみにしているって言ってもいい。
 でも今は流石にもう動けなかった。一晩中繋がって、それだけでも人間の身体としては驚くべき事なのだけれど、でも淫魔の魔力を持ってしても、僕の身体は限界らしかった。
「……冗談です。そんな顔しないで下さい。ゆっくり眠りましょう? 一番気持ちの良い眠りが待っていますよ?」
「でも、畑仕事、しないと」
「大丈夫です。魔界原産の植物は、交合による魔力も栄養源ですから。あれだけ激しく濃密に交わったんですもの、一週間くらい面倒を見なくても平気なくらいですよ」
「そう、なんだ。じゃあ、安心して……」
 僕は彼女の名前を呼んで、その柔らかくて温かな身体にしがみつく。
 羊毛があっても無くても、彼女とこうしていると、彼女の匂いに包まれていると、安心して上手く眠れるような気がするから。
「こうしていると、いつだって気持ち良く眠れるんだ。いつもありがとうね」
「だ、旦那様ったら……。気にしないで下さい。私は、旦那様のそばに居られたらそれで幸せなんですから」
「うん。僕も、幸せ……。それじゃあ、おやす、みぃ」
「おやすみなさい旦那様。目が覚めたら、またいっぱいしましょうね。私も、そろそろ、ねむ……」
 身体から力が抜けてゆく。彼女の身体は柔らかくて、温かくて、いい匂いがして。それだけで僕の意識は、少しずつ穏やかな暗闇の底へと沈んでいった……。


 次に目が覚めた時には、もう日が沈んだあとだった。
 僕達の身体はお互いの色々な汁や汗でべとべとになっていて、まずはご飯より先に一緒にお風呂に入る事になったのだけれど……。
 それが間違いだった。
 お風呂に入ってさっぱりした僕達だったのだけど、先生の方はそれでまた、色々と"本気"になってしまったらしく……。
「旦那様。もう夜も遅いですし、こんな時間にご飯を食べるのは身体によくありません。それよりもぉ……もうベッドに入って、眠る準備をしましょう? ね? ね?」
「でも、今日は一日中寝ていたわけだし、まだ眠く無いよ」
「そうです! 一日中寝ていた私達は、まず眠る前に沢山身体を動かさなければなりません。外は暗いですし、ベッドの上で激しく運動しましょう!」
 激しく動いたら興奮して眠く無くなると思うんだけどなぁ。
 けれど、思ってはいてもそれを口に出す事は出来なかった。
 だって、やっぱり僕は先生の事が大好きで、先生とえっちな事をするのも同じくらいに好きだから。
 僕はベッドの上に横になっている先生の上に覆い被さって、抱きしめて。
 そこから先は、大体昨日の夜と同じだった。
14/08/02 23:16更新 / 玉虫色

■作者メッセージ
ここまでお読みいただきありがとうございました。

最近は夜も熱くて、寝苦しい夜が続いていますね。この話を思い付いた、と言うか妄想したのも、そんな寝苦しい夜の事でした。
それで、寝不足気味のテンションに任せて書き殴った結果がこれとなります。(おかしなところがあったらスミマセン)

いつもより主人公の年齢を低めに考えて書いてみたのですが、上手く書けているのかどうなのか、自分では何とも言えない所ですが……。ともあれ、楽しんで頂けていたら何よりでございます。

(なんと言うか、朝まで愛し合って、それが作物の栄養になって、昼間っから疲れて寝てしまっても大丈夫とか……、やっぱり魔界のスローライフは憧れすぎますね。早く図鑑世界に行けないかなぁー)

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