採取活動
何も無い部屋に、少女が一人佇んでいた。
むき出しの地面の床に脚を投げ出し、昏い瞳で小さな天窓を見上げながら、何をするでもなく朽ちかけた土壁にその背を預けていた。
四方は壁に囲われ、唯一外と繋がっている鉄扉は固く重かった。鍵は付いていなかったが、非力な少女の細腕では僅かに動かすことも叶わないだろう。それも、少女が動くことが出来ればの話だった。
少女の脚は地面に繋がれていた。そして繋がれているのは、何も目に見えているものだけでは無かった。
少女は裸だった。人間らしい衣服を着ることを許されず、身体のあちこちが土や老廃物で汚れていた。
その身にただ一つ、頭に添え物のように生花が飾られていたが、長い間そのままにされていたのか既に萎れかけている。肌も土気色をしており、人間というよりもむしろ植物という言葉が似合うようだった。
部屋に満ちる淀んだ空気は揺らぐこともなく、細い呼吸音に合わせて少女の僅かに膨らみかけた胸が上下する以外、全てのものが静止していた。
そんな部屋の空気が僅かに震えるのを感じて、少女はびくりと身をすくませる。
遠くから錠が外れる音が響いてくる。続いて、錆びた鉄が軋みを上げる音。
耐えることも逃げることもままならない、ただ諦めて受け入れるしかない、快楽に満ちた陵辱の始まりを告げる音が。
近づいてくる足音から、少女は彼の機嫌を察っしてほっとする。これならば、今日はまだ酷いことにはならないかもしれない、と。
扉の前で立ち止まる。
少女は、いつの間にか自分の息が上がっていたことに気が付く。心臓も壊れかけたおもちゃのようになっていた。
少女は深呼吸し、気持ちを落ち着ける。これから何をされるかは分かっている。分かっているのならば、何だって受け入れられる。
これまで、いつだってそうしてきたように。
ドアノブが回り、ゆっくりと重たい鉄の扉が開いていく。
のっそりと大柄な男が顔を覗かせた。髪は金色に染められ短く刈り込まれ、目つきは鋭く、欲望の光でギラギラと輝いていた。
咥えた煙草から煙が揺れる。その匂いは、明らかに普通のそれでは無かった。
「おとなしくしていたのか。いい子だ」
少女は怯えるような視線を男に向ける。
男の身体は全身が鍛え上げられており、誰の目から見ても筋肉質なのが見て取れた。褐色の肌には、入れ墨が幾つも彫られていた。
肉体を誇示しようとするかのように上着は纏っておらず、下半身も衣服が筋肉に押し上げられて今にも裂けてしまいそうな程だった。
唯一、外の世界からこの部屋の中に入ってくる男。あらゆる手練手管を用いて少女を縛り、弄ぶ彼女の主人。少女の所有者と言ってはばからない程、男は少女の全てを支配していた。
森の奥で不用意に出会ってしまったときから二人の関係は始まった。
その美しく可憐な姿を目にし、声を聞くなり、男は獣のように襲いかかり、少女を自分のものにした。
人気のない森深く、少女の叫び声は誰にも届かず、ただ男を喜ばせるだけだった。
男は気の済むまで少女を貪り、そしてそれだけでは飽き足らずこの部屋に連れ帰って少女を飼育し始めたのだった。
担いでいた荷物を下ろし、男は少女の前に仁王立ちになる。
「待ちきれず一人で始めているかと思ったが、何だ、ずっと俺のことを待っていたのか」
少女はかぁっと顔を紅潮させ、顔を背ける。
「馬鹿にしないで。一人でなんて、するわけ無いでしょう。……あなたにされるんじゃなきゃ、誰があんなこと」
声を震わせる少女に、男は顔を近づけて笑う。
「だが、実際お前のほうが楽しんでいるんだろう? ん?」
少女はそれには答えず、意を決して男をまっすぐ見上げる。
「……私の身体をオモチャみたいに扱って、あまつさえ売り物にしているくせに」
男の瞳の奥に鈍い光が揺らめく、その目が合った瞬間、少女の細い体が震えだす。
男は、そんな少女の肩を力強く掴んだ。
「そうだな。今日もたっぷり楽しませてもらおうか」
男の身体から漂う強い煙草の匂いに、少女は眉を寄せた。
男は大きな布を広げると、荷物の中からさらに幾つかの道具を取り出し、布の上に手際よく並べていく。
「今日はそんなに珍しい道具は無いぞ。まぁ、お前から希望があれば何だって用意するがな。くくく」
「へ、変なこと言わないでよ。私を何だと思っているの」
「そうか? 同業者から聞いたが、お前のお友達は、みんな色んな道具を使って楽しんでいるらしいぜ」
好色そうな笑みを浮かべ、男は少女のつま先から頭の先まで舐めるように眺める。
少女は居心地の悪さを感じつつも、何も隠そうとはしなかった。これまで何度となく辱められてきていた。今更隠そうという気にもなれなかった。
男は手早く少女の脚を地面から開放すると、用意していた背の高い椅子に座らせる。つま先は地についておらず、少女の体は宙に浮く形になる。
そして専用の薄手の手袋を嵌め、何度か握りしめるようにして手のひらにフィットするよう調整する。その指の動きがこれからの行為を連想させ、少女は目をそらして身を縮ませる。
「さて、始めるぞ」
男は少女の後ろに回り、その肩に手を置く。
「期待してるのか?」
「や、やめてよ」
「ふふ、身体を楽にしろよ。抵抗すると、更に激しくなるぞ」
男はゆったりとした手の動きで、少女の肩を撫でてゆく。首筋から耳の後ろ、うなじ、そして顔をゆったりと撫でる。
「やはりお前は美しいな。手の入れがいがある」
「あなたの、目は、おかしいわ。私みたいなのを、美しいなんて」
男は笑いながら手を滑らせてゆく。首元へ、そしてしなやかな背中を両手で優しく撫でてゆく。肩甲骨の上から背中全体を撫で、脇腹へ回ったかと思えばその背に戻って背筋につうっと指を走らせる。
触れるか触れないかというこそばゆい感触に、少女は身体を震わせる。
「こんなに丁寧に扱ってもらえて、本当は嬉しいんだろう。素直になれよ」
「う、嬉しくなんて……はぅ、んっ」
おもむろに胸の僅かな膨らみを包み込むようになで上げられ、少女は声を上げ身をよじる。
「声が出ているぞ。ほら、ちゃんと言ってみろよ、嬉しいですって」
円を描くようにねちっこく念入りに。その先端は指先で転がすように。そしてようやくみぞおちやおへそを弄りだせば、思い出したかのように再び胸元へ戻ってくる。
「嬉しく、なんて……。やっ、あっあっ」
「身体は素直だな」
男の手は少女の体を下ってゆく。少女はその事にホッとしながらも、しかしどこかで満たされぬものを感じていた。
おへその下が、熱を持ち始めていた。
だが男はそのことには気づかぬふりで、今度は脚を撫で回し始める。
むっちりと肉付きのいい太ももを、形の良い膝小僧を、くるぶしやつま先の先まで丁寧に、まんべんなく撫でてゆく。
「気持ちいいか?」
少女は何も言えない。だが時折跳ねる肌が、言葉以上に雄弁に返事を返していた。
「くくっ。さて、これで第一の工程はおしまいだ」
男の手が離れてゆき、少女は息を吐く。その身体には満たされぬ熱が残っていた。あれだけ執拗に撫で回しながら、男は少女の足の付け根にだけは触れなかった。
男は手袋にこびりついた少女の老廃物を、専用の薬液を使って丁寧に濾し取って容器に移していく。
鼻歌交じりに作業する男の背中を見て、少女は眉をひそめる。
「そんなもの集めてどうするの」
「分かってるだろう? 売り払うのさ。世の中にはこういうものを買い求めるような好事家ってやつがいてな。そういう奴等は、いくらでも金を出すんだよ」
作業を終えて容器を片付けてから、男は外した手袋を舐めしゃぶる。
「かくいう俺もその一人だけどな。……んん、これは質がいい。きっと高く売れるぞ。
お前も嬉しいだろう。自分の身体に高値がついて」
少女は真っ赤になりながら顔を伏せる。
「さて次の採取……。の前に、お前のつま先のそれ、伸びてきたな。ちょっと手入れをしてやろう」
男はナイフを手に取り、少女の足元にひざまずく。
じっくりとその脚を鑑賞しながら、直に手のひらで肌の感触を堪能する。
「やるなら早くして」
「分かった分かった。暴れるなよ」
男はようやくつま先を手に取る。
そしてつま先の先、必要以上に伸び放題になりつつあるそこにナイフをあてがい、削り取っていく
「ふあぁ、ぁああぁ……。あ」
「声が抑えられないか? くくっ」
少女は男を蹴り飛ばしたい気持ちを抑える。相手は刃物を持っているのだ。
軽口を叩きながらも、男の目は真剣だった。そして幾度かナイフが滑っていったあとには、見違えるほどきれいになった足の指先がそこにあった。
男は削り取ったそれを一切れつまみ上げると、おもむろに口の中に放り込んだ。
「な、何してるの」
「んっんー。いい味だ。煙草なんかよりやっぱりこれくらいのほうが刺激が強くていい」
音がするほどに強く、男はそれを何度も何度も噛みしめる。
少女は自分の身体の扱われ方に、涙目になって顔を伏せた。
「さて、ではお待ちかねの第二工程だ」
男は少女を椅子に浅く座らせ、その股ぐらの下と、つま先の先に新しい容器を用意する。
「何をするかは分かっているよな。くくく、もう準備万端じゃないか。お前も堪え性の無い女だな」
少女の体を後ろから抱き締め、おもむろに少女のみずみずしい肌に大きな手を這わせて、まさぐり始める。
先程までのような繊細な手つきとはうって変わって、指の動きに合わせて肌の形が変わるほどに強く、荒々しく。
少女は呼吸を乱して身をよじる。けれどもその息遣いには隠しようもなく艶が混じっていた。優しく扱われていたとき以上に、下腹の奥が熱を持ち始めていた。
「古くなった肌を落として、全身が新しい敏感な肌になってる。身体のどこを触られても感じるだろ」
「こんな、こんなことで、感じてなんて……」
「それだけじゃない。さっきの手袋には仕掛けがしてあってな、アレで撫でておくと、肌の感度をより高めることが出来るんだ。
言わば、今のお前は全身が性感帯みたいなもんなんだよ。
……ほら、遠慮なく声を出しな。悲鳴を上げたっていいんだぜ。どうせ誰も聞いちゃいないんだ」
男は少女の身体を強く掻き抱き、その首元に顔をうずめて首筋に舌を這わせてゆく。
少女は男の身体から抜け出そうともがくが、細い少女の身体では、鍛え上げられた男の腕には歯が立たなかった。
「そうだったな。声を出すより、こっちの方がお好みだったな」
男は少女の顎を掴み自分の方を向かせる。そしてその可憐な唇を己の唇で覆い、煙草の味の染み付いた舌を捩じ込む。
「ん、んんんっ」
小ぶりな膨らみを揉みしだき、熟れ始めたばかりの若い果実をつまみ上げる。
少女の身体が大きく震える。
水が垂れる音が小さく響く。
男は少女の口を開放し、唇の端を釣り上げる。
「あ……。いやぁ……」
ぽたり、ぽたりという水音は、少女のまたぐらの下の器から聞こえていた。
固く閉じていた少女の秘裂が僅かにほぐれて、蜜を滴らせ始めていた。
「そうだ。いつもみたいに、素直に自分を開放しろよ」
溢れたそれが脚を伝ってゆく感触に、少女は股を閉じようとするが。
「おっとそのままだ。脚は伸ばしたまま、器の上につま先を置いたまま動かすなよ」
男の手がそれを防ぐ。そのまま太ももを撫でられ、揉まれ、少女はとうとう子猫のような声を上げ始める。
「可愛い声だ。たまらねぇな」
「お願い……。ぉ願ぃ、もう……」
つま先からもぽた、ぽたと水音が聞こえ始める。
「あぁ、分かってるよ」
男は片腕で少女の体を抱き抱えて胸元を弄りつつ、もう片方の手を緩み始めた足の付け根へと忍び込ませる。
「ああ、あああっ」
しとどに濡れたそこを手のひらで刺激する。水音が更に激しくなり、少女の体がまた震えた。
「お願い、だから……」
節くれた指が、少女の一番敏感な、固く小さな蕾を擦る。少女は大きく弓なりに背を反らせ、そして。
「ふあぁ……。あ、え?」
男の手が離れ、刺激が止む。戸惑う少女の耳元に口を寄せ、男は囁いた。
「どうした、そんな顔して」
「え、だって……」
戸惑う少女の頬を、目尻から一筋こぼれた涙を舐め取り、男はほくそ笑む。
「期待したようにイけなくて、がっかりしたか?」
若々しい肌に朱が差す。男は声を殺して笑いながら、再びその肌を楽しみ始める。
少女は抵抗しようとする。しかしそれは、ただ単純に男の腕の中から逃れたいというだけのものではなかった。
「くくく。いけそうでいけないのは苦しいよな。中途半端な気持ちよさだけがずっと続いて、いつまでも生殺しなのは辛いよな。
悪いが、しばらくこのまま天国にいけないままの地獄を味わい続けてもらうぜ」
「何が、何がしたいのよ。いつも私を、こんな風にっ」
「この状態のほうが蜜の質がいいって評判なんだよ。快楽に果てた、全てが開放された時よりも、絶頂直前の快楽への期待や予感、不安、興奮、苦痛、背徳感で滅茶苦茶になっている時の蜜のほうが、ずぅっと濃厚だってな。
たくさん集めれば、まとまった金になる。悪いが付き合ってもらうぜ。
……それにお前だって、長く気持ちいいほうがいいだろう?」
指が割れ目の上を行ったり来たりするたび、少女はがくがくと体を震わせる。けれども頂点に至るまでには何かが少し足りないまま、刺激はまた弱まっていってしまう。
それに慣れて諦めてしまうと、今度は指がほじくるように動いてくるのだ。更には入口あたりに指を押し付けてきて、しかし入ってくるかと思えば力を抜いてくる。
男の指で、身体は否応なしに期待してしまう。けれども男は肝心なところまで踏み込んでは来ない。
「どれどれ、そろそろ良さそうか」
ようやく指先が入ってくる。少女は声を上げる。
しかし挨拶も早々に、男は出ていってしまった。それどころか、あっけなく少女の身体を開放し、身体の下に置かれていた容器の回収作業を始めてしまう。
「ふふ。十分な量が溜まったな」
結局少女は絶頂には至れなかった。やり場のない熱に身体の内側から焦がされながら、少女は濡れた瞳で作業する男の背を眺め続けた。
「さて、と。これで予定していた工程は終わりだが……」
道具を一通り片付け終えて男は立ち上がり、少女の方へと向き直る。
「そんな目で見るなよ。好き放題させてもらったんだ、それ相応のご褒美をあげなきゃな」
カチャカチャ音を立てて、ベルトが外される。ジッパーが降りていくのを、地面に座り込んだ少女はのぼせたような瞳で見つめていた。
拘束から開放され、バネ仕掛けのように勢い良くそれが跳ね上がった。
天井に向かって反り返る、幾筋もの血管を脈打たせるそれ。赤黒く充血した歪なそれを、男は少女の眼前へ突きつける。
「あ、あ……」
少女の瞳が潤み始める。男のそれと、顔を交互に見て問いかけるような視線を送る。
「どうした。いつもみたいに早くしゃぶれよ」
男は自身のそれを少女の頬にこすり付け、唇に押し付ける。
潤んでいた目が、濁っていく。昏い沼のような瞳で、少女は男のそれに口づけする。
小さな舌で先端を、くびれを舐める。
膨らんだ先端を咥え込み、じゅぶ、じゅぶと音を立てて頭を上下に振って男のそれを吸う。
男の足にしがみつき、丹念に舌で愛撫し、口全体で啜り上げる。
「う……。今日は、また随分と熱心じゃねぇか。欲求不満だったか」
男は少女の頬を撫で、その髪に指を絡める。
少女はうっとりと目を細めながら、今度はぶら下がった男の二つのそれに唇を押し付け、舌で転がし、甘噛みする。屹立したそれを大切そうに両手で扱いながら、何も言わず行為に夢中になる。
「そんなに俺のこれが好きなのか?」
「あ……」
少女は我に返ったかのように男の顔を見上げ、泣きそうになりながら顔を真赤にして俯く。
男は声を殺して笑う。そしてその大きな手を、握りつぶせてさえしまいそうな少女の細い肩に置いた。
「やめないでくれよ。な。もうちょっとで出そうなんだ」
少女は今一度男を見上げ、そして再び男のそれを咥え込む。
喉元まで咥えても、口の中には半分入る程度。少女は男のそれを限界まで頬張り、頬の内側にこすり付け、舌で舐め上げる。
「あぁ、いいぞ。そら、出すぞっ」
男が腰を震わせて、少女の口の中で果てる。喉に叩きつけられるそれに涙目になりながらも、少女は舌で、口全体で受け止めていく。
「ほら、見せてみろ」
「うう、ううう」
少女は口を開けて、男が放ったものを見せる。
男は満足げに笑い、そして言った。
「飲んでいいぞ」
少女は口を閉じ、それを嚥下していく。一度だけでは飲み干せずに、二度、三度と喉を鳴らして。
「なかなか良かったぞ」
男は少女の頭を撫でる。
少女は大きく息を吐いて、濡れた瞳で男を見上げた。
少女は壁に背を預けてくたりと脱力する。上気したようにその頬は赤みを帯びて、頭に飾られたその花も、心なしか生気を取り戻し始めているように見えた。
男に手入れされた肌を恥じらうようにその手で隠しながら、気弱気な視線で男を見上げる。
「ご褒美の時間も終わりだ」
少女は目を閉じ、ほぅっと息を吐く。
緩んだその手からこぼれる少女の肌を眺めながら、男は口の端を上げる。その脚の付け根が湿っているのを、男は見逃していなかった。
「……だが、たまにはもうちょっと愉しむのもいいかな」
「え」
「お前も、もっと愉しみたいんだろ」
男の言葉が理解出来ず、少女は呆然と男を見上げ続ける。
荷物の中から桶のような容器を取り出し、男は少女を立ち上がらせる。
「ほら、ここに座るんだ」
「え、いやっ。何するの」
桶の上に、用を足させるように足を広げて座らせる。そして男は後ろから少女の身体を抱きかかえながら、その太ももをさすり始める。
「さっきは満足させてやれなかったしな。それに、少し余計に稼ぎも欲しかったんだ」
「あっ。やだ、やめて」
太ももが、少女の細い体が震える。その言葉とは裏腹に、肌は上気し、眉は悩ましげに寄り、その唇からは熱い吐息が漏れ始める。
濡れた少女の中に、男の指が無遠慮に入ってくる。勝手知ったる他人の身体とばかりに、男は少女の中を引っ掻き回す。
少女は両手で口をふさぐが、指の間からは抑えきれない喘ぎがこぼれてしまっていた。
足の間から滴る水音が混じる。
立ち上る甘い匂いも、部屋の中に充満していく。
「あ、あ、あ、いやいやいや」
少女の蜜は絶え間なくこぼれ、そしてついには。
「だめ、やなのに、指でなんて……。あっ」
細い体が弓なりにのけぞり、緩んだ股ぐらからは大量の蜜が吹き出した。
甘く淫らな匂いを漂わせる桶の横に少女の細い体が横たえられる。
その目は虚ろで、どこか遠くを見つめていた。
無理矢理に快楽に塗りつぶされていた意識は、しかし休む間もなく現実に引き戻される。
「おいおい。まだ終わってないぞ」
濃い雄の匂いだった。むせ返るほどのそれが少女を足元から包み込み、そしてそれを追いかけるように匂いの発生源が、男の筋肉質な身体が少女に覆い被さってきた。
「だ、だめ」
「お楽しみはこれから、だろ」
「い、今いったばかりだから。お願い、ちょっと休ませて」
「俺だってお前にいかされたばかりだよ。大丈夫だ、ほら」
男の切っ先が少女の潤んだそこにあてがわれる。そして少女の返事を待つこともなく、男は腰を沈ませる。
「あ、ああああっ」
少女はのけぞり、そしてまた蜜を溢れさせる。
男は少女の肌を撫で回しながら、腰を振り始める。
その度に少女の体がびくん、びくんと震えた。
「だめ、だめなのっ、でき、できちゃうよぉ」
「責任はっ、全部俺がっ、取ってやるよっ。ほらっ、遠慮なくっ、気持ちよくなってっ、いけっ」
少女は両手で男の腕を、身体を叩いて抵抗するが、しかしその手も男に掴まれ地面に押し付けられてしまう。
指を絡め、恋人のように固くつなぐと、男は一層深く少女の身体をえぐる。
「ふああぁぁっ」
少女の身体がきゅぅっとすぼまり、そしてそれ以降、少女は抵抗するのを止めた。
「だめ、だめ、そこきもちいいの、おかしくなっちゃう。頭おかしくなっちゃうよぉ」
胸板で柔らかな小さな膨らみを押しつぶすように、男は少女と全身を重ねる。
二人の頭上で、花が開き始めていた。少女の頭の上に飾られていた花が朝露に濡れて咲く花のようにみずみずしく、花開いていた。
男は首を伸ばし、その花弁の中の蜜を舐める。
「やっぱ甘いなぁ。これだけは、誰にも渡せねぇよなぁ」
「あふれちゃうよぉ。きもちいいのが、いっぱいで、ああぁあぁっ」
男は少女の口を、己の唇で覆う。
舌を絡めると、少女は自ら己の脚を男の腰に絡みつかせた。
そして男は、少女の一番奥深く敏感なところを貫きながら、命ごと吐き出すかのように己の全てを少女の中に注ぎ込んだ。
………………
…………
……
二人揃って意識が飛ぶまで愛し合ったあと。少女より先に目を覚ました男は、隣の可愛らしい寝顔をしばらく微笑んで見守って、それから道具を漁って作業を始めた。
乾かした少女の髪、植物の葉のようなそれに、少女の脚から伸びた根っこを削って細かく砕いたものと、新陳代謝で排出された老廃物を混ぜた物を乗せ、細長く巻いていく。
そしてそれを咥えると、先端に火をつけて大きく吸った。
「それ、そんなに美味しいの?」
座って作業していた男の、その背に後ろから抱きつきながら、少女は不思議そうな顔で覗き込む。
「お前も吸ってみるか」
男に勧められ、少女も一口吸ってみる。しかし少女は美味いとも不味いとも言わず、咳き込むでもなく首を傾げるだけだった。
「よく分かんない。マンドラゴラの私としては、こっちのが好き」
煙草を取り上げたまま、少女は煙の匂いの残る唇を男の口へと押し付ける。
煙よりも更に濃厚な少女の"成分"を摂取し、男の体は反応する。
「あ、また……」
「お前が急にキスなんてするからだろ。あ、おい」
少女は男の腕をするりと逃れ、男の前に、股ぐらに顔を埋める。
「んっ。ちゅっ」
「くっ。……ったく、ようやく調子を取り戻してきたか」
少女は上目遣いで見上げ、こくんと頷く。
「全く、お前の匂いは相変わらずやばいな。ようやく耐性が付いてきたつもりだが、今日も部屋に入った途端変な気分になっちまった。
全身にルーン刻んで色々強化してるのに。まったく、魔物娘ってのは色々と規格外だなほんと」
「んちゅっ。魔術師の癖に、耐性が低いあなたが悪い」
「へっ。お前だって、えらく被虐的に誘ってきたじゃないか。自分の媚薬成分にやられたんじゃないのか……。エロすぎだろ」
「あれは栄養不足だったせいもあるけど……。じゃあ、二人で耐性を高めよっか」
少女は股ぐらから顔を上げ、男の肌を舐め上げながらその身体を這い上がる。
そして目線が合う位置まで登ると、子猫のような甘い声をあげながら腰を重ねて男を飲み込んだ。
「お、おいっ、やめっ。さっきあんなに出したばかりで」
「あなただって、敏感になってる私にしたでしょ? 大丈夫だよ。……あぁ、これ大好きぃ」
少女は体重を預けてくる。男は腕を衝立のようにして、何とか身体を支える。
身体を揺すって少女が与えてる快楽に歯を食いしばって耐えながら、男は息も絶え絶えに問いかける。
「な、なぁ、いい加減一緒に住もうぜ。ここ、うちの敷地内とは言え、別居みたいで寂しいだろ。煙草でお前の成分を補うのも虚しいし。……柄じゃねぇけど、俺だって普通の夫婦みたいに一緒に寝起きとかしたいんだよ」
「でも、土の質はこっちのがすごくいいんだよねぇ」
「それは土から抜いたばかりのお前がこのままじゃ萎れちゃうって言うから、マナが豊富な場所探して、その上薬とか儀式とかで俺が頑張って土壌を改良したからだろうが。お前も元気そうだし、そろそろ場所を移ったって」
「えー。あなたがこっちに住めばいいじゃない」
「正直、土の質が良すぎるから催淫成分がやばい事になってると思うんだよ。今の俺がここに住んだんら、毎日獣みたいに盛っちまうよきっと」
「いいじゃない。それで」
「いやだめだろ。これでも新しく生えてくる子供の事とか考えて、稼ぎの計算とか増築とか土地の改造とかだな」
「じゃあここでも考えられるように、やっぱり耐性をつけなきゃね」
口の中に無理矢理ねじ込まれた少女の舌から、ねっとりとした甘い液体を流し込まれる。
それ以降、二人の間に言葉は無かった。男は耐えることも逃げることも出来ないまま、陵辱じみた快楽を、ただ諦めて受け入れるしかなかった。
むき出しの地面の床に脚を投げ出し、昏い瞳で小さな天窓を見上げながら、何をするでもなく朽ちかけた土壁にその背を預けていた。
四方は壁に囲われ、唯一外と繋がっている鉄扉は固く重かった。鍵は付いていなかったが、非力な少女の細腕では僅かに動かすことも叶わないだろう。それも、少女が動くことが出来ればの話だった。
少女の脚は地面に繋がれていた。そして繋がれているのは、何も目に見えているものだけでは無かった。
少女は裸だった。人間らしい衣服を着ることを許されず、身体のあちこちが土や老廃物で汚れていた。
その身にただ一つ、頭に添え物のように生花が飾られていたが、長い間そのままにされていたのか既に萎れかけている。肌も土気色をしており、人間というよりもむしろ植物という言葉が似合うようだった。
部屋に満ちる淀んだ空気は揺らぐこともなく、細い呼吸音に合わせて少女の僅かに膨らみかけた胸が上下する以外、全てのものが静止していた。
そんな部屋の空気が僅かに震えるのを感じて、少女はびくりと身をすくませる。
遠くから錠が外れる音が響いてくる。続いて、錆びた鉄が軋みを上げる音。
耐えることも逃げることもままならない、ただ諦めて受け入れるしかない、快楽に満ちた陵辱の始まりを告げる音が。
近づいてくる足音から、少女は彼の機嫌を察っしてほっとする。これならば、今日はまだ酷いことにはならないかもしれない、と。
扉の前で立ち止まる。
少女は、いつの間にか自分の息が上がっていたことに気が付く。心臓も壊れかけたおもちゃのようになっていた。
少女は深呼吸し、気持ちを落ち着ける。これから何をされるかは分かっている。分かっているのならば、何だって受け入れられる。
これまで、いつだってそうしてきたように。
ドアノブが回り、ゆっくりと重たい鉄の扉が開いていく。
のっそりと大柄な男が顔を覗かせた。髪は金色に染められ短く刈り込まれ、目つきは鋭く、欲望の光でギラギラと輝いていた。
咥えた煙草から煙が揺れる。その匂いは、明らかに普通のそれでは無かった。
「おとなしくしていたのか。いい子だ」
少女は怯えるような視線を男に向ける。
男の身体は全身が鍛え上げられており、誰の目から見ても筋肉質なのが見て取れた。褐色の肌には、入れ墨が幾つも彫られていた。
肉体を誇示しようとするかのように上着は纏っておらず、下半身も衣服が筋肉に押し上げられて今にも裂けてしまいそうな程だった。
唯一、外の世界からこの部屋の中に入ってくる男。あらゆる手練手管を用いて少女を縛り、弄ぶ彼女の主人。少女の所有者と言ってはばからない程、男は少女の全てを支配していた。
森の奥で不用意に出会ってしまったときから二人の関係は始まった。
その美しく可憐な姿を目にし、声を聞くなり、男は獣のように襲いかかり、少女を自分のものにした。
人気のない森深く、少女の叫び声は誰にも届かず、ただ男を喜ばせるだけだった。
男は気の済むまで少女を貪り、そしてそれだけでは飽き足らずこの部屋に連れ帰って少女を飼育し始めたのだった。
担いでいた荷物を下ろし、男は少女の前に仁王立ちになる。
「待ちきれず一人で始めているかと思ったが、何だ、ずっと俺のことを待っていたのか」
少女はかぁっと顔を紅潮させ、顔を背ける。
「馬鹿にしないで。一人でなんて、するわけ無いでしょう。……あなたにされるんじゃなきゃ、誰があんなこと」
声を震わせる少女に、男は顔を近づけて笑う。
「だが、実際お前のほうが楽しんでいるんだろう? ん?」
少女はそれには答えず、意を決して男をまっすぐ見上げる。
「……私の身体をオモチャみたいに扱って、あまつさえ売り物にしているくせに」
男の瞳の奥に鈍い光が揺らめく、その目が合った瞬間、少女の細い体が震えだす。
男は、そんな少女の肩を力強く掴んだ。
「そうだな。今日もたっぷり楽しませてもらおうか」
男の身体から漂う強い煙草の匂いに、少女は眉を寄せた。
男は大きな布を広げると、荷物の中からさらに幾つかの道具を取り出し、布の上に手際よく並べていく。
「今日はそんなに珍しい道具は無いぞ。まぁ、お前から希望があれば何だって用意するがな。くくく」
「へ、変なこと言わないでよ。私を何だと思っているの」
「そうか? 同業者から聞いたが、お前のお友達は、みんな色んな道具を使って楽しんでいるらしいぜ」
好色そうな笑みを浮かべ、男は少女のつま先から頭の先まで舐めるように眺める。
少女は居心地の悪さを感じつつも、何も隠そうとはしなかった。これまで何度となく辱められてきていた。今更隠そうという気にもなれなかった。
男は手早く少女の脚を地面から開放すると、用意していた背の高い椅子に座らせる。つま先は地についておらず、少女の体は宙に浮く形になる。
そして専用の薄手の手袋を嵌め、何度か握りしめるようにして手のひらにフィットするよう調整する。その指の動きがこれからの行為を連想させ、少女は目をそらして身を縮ませる。
「さて、始めるぞ」
男は少女の後ろに回り、その肩に手を置く。
「期待してるのか?」
「や、やめてよ」
「ふふ、身体を楽にしろよ。抵抗すると、更に激しくなるぞ」
男はゆったりとした手の動きで、少女の肩を撫でてゆく。首筋から耳の後ろ、うなじ、そして顔をゆったりと撫でる。
「やはりお前は美しいな。手の入れがいがある」
「あなたの、目は、おかしいわ。私みたいなのを、美しいなんて」
男は笑いながら手を滑らせてゆく。首元へ、そしてしなやかな背中を両手で優しく撫でてゆく。肩甲骨の上から背中全体を撫で、脇腹へ回ったかと思えばその背に戻って背筋につうっと指を走らせる。
触れるか触れないかというこそばゆい感触に、少女は身体を震わせる。
「こんなに丁寧に扱ってもらえて、本当は嬉しいんだろう。素直になれよ」
「う、嬉しくなんて……はぅ、んっ」
おもむろに胸の僅かな膨らみを包み込むようになで上げられ、少女は声を上げ身をよじる。
「声が出ているぞ。ほら、ちゃんと言ってみろよ、嬉しいですって」
円を描くようにねちっこく念入りに。その先端は指先で転がすように。そしてようやくみぞおちやおへそを弄りだせば、思い出したかのように再び胸元へ戻ってくる。
「嬉しく、なんて……。やっ、あっあっ」
「身体は素直だな」
男の手は少女の体を下ってゆく。少女はその事にホッとしながらも、しかしどこかで満たされぬものを感じていた。
おへその下が、熱を持ち始めていた。
だが男はそのことには気づかぬふりで、今度は脚を撫で回し始める。
むっちりと肉付きのいい太ももを、形の良い膝小僧を、くるぶしやつま先の先まで丁寧に、まんべんなく撫でてゆく。
「気持ちいいか?」
少女は何も言えない。だが時折跳ねる肌が、言葉以上に雄弁に返事を返していた。
「くくっ。さて、これで第一の工程はおしまいだ」
男の手が離れてゆき、少女は息を吐く。その身体には満たされぬ熱が残っていた。あれだけ執拗に撫で回しながら、男は少女の足の付け根にだけは触れなかった。
男は手袋にこびりついた少女の老廃物を、専用の薬液を使って丁寧に濾し取って容器に移していく。
鼻歌交じりに作業する男の背中を見て、少女は眉をひそめる。
「そんなもの集めてどうするの」
「分かってるだろう? 売り払うのさ。世の中にはこういうものを買い求めるような好事家ってやつがいてな。そういう奴等は、いくらでも金を出すんだよ」
作業を終えて容器を片付けてから、男は外した手袋を舐めしゃぶる。
「かくいう俺もその一人だけどな。……んん、これは質がいい。きっと高く売れるぞ。
お前も嬉しいだろう。自分の身体に高値がついて」
少女は真っ赤になりながら顔を伏せる。
「さて次の採取……。の前に、お前のつま先のそれ、伸びてきたな。ちょっと手入れをしてやろう」
男はナイフを手に取り、少女の足元にひざまずく。
じっくりとその脚を鑑賞しながら、直に手のひらで肌の感触を堪能する。
「やるなら早くして」
「分かった分かった。暴れるなよ」
男はようやくつま先を手に取る。
そしてつま先の先、必要以上に伸び放題になりつつあるそこにナイフをあてがい、削り取っていく
「ふあぁ、ぁああぁ……。あ」
「声が抑えられないか? くくっ」
少女は男を蹴り飛ばしたい気持ちを抑える。相手は刃物を持っているのだ。
軽口を叩きながらも、男の目は真剣だった。そして幾度かナイフが滑っていったあとには、見違えるほどきれいになった足の指先がそこにあった。
男は削り取ったそれを一切れつまみ上げると、おもむろに口の中に放り込んだ。
「な、何してるの」
「んっんー。いい味だ。煙草なんかよりやっぱりこれくらいのほうが刺激が強くていい」
音がするほどに強く、男はそれを何度も何度も噛みしめる。
少女は自分の身体の扱われ方に、涙目になって顔を伏せた。
「さて、ではお待ちかねの第二工程だ」
男は少女を椅子に浅く座らせ、その股ぐらの下と、つま先の先に新しい容器を用意する。
「何をするかは分かっているよな。くくく、もう準備万端じゃないか。お前も堪え性の無い女だな」
少女の体を後ろから抱き締め、おもむろに少女のみずみずしい肌に大きな手を這わせて、まさぐり始める。
先程までのような繊細な手つきとはうって変わって、指の動きに合わせて肌の形が変わるほどに強く、荒々しく。
少女は呼吸を乱して身をよじる。けれどもその息遣いには隠しようもなく艶が混じっていた。優しく扱われていたとき以上に、下腹の奥が熱を持ち始めていた。
「古くなった肌を落として、全身が新しい敏感な肌になってる。身体のどこを触られても感じるだろ」
「こんな、こんなことで、感じてなんて……」
「それだけじゃない。さっきの手袋には仕掛けがしてあってな、アレで撫でておくと、肌の感度をより高めることが出来るんだ。
言わば、今のお前は全身が性感帯みたいなもんなんだよ。
……ほら、遠慮なく声を出しな。悲鳴を上げたっていいんだぜ。どうせ誰も聞いちゃいないんだ」
男は少女の身体を強く掻き抱き、その首元に顔をうずめて首筋に舌を這わせてゆく。
少女は男の身体から抜け出そうともがくが、細い少女の身体では、鍛え上げられた男の腕には歯が立たなかった。
「そうだったな。声を出すより、こっちの方がお好みだったな」
男は少女の顎を掴み自分の方を向かせる。そしてその可憐な唇を己の唇で覆い、煙草の味の染み付いた舌を捩じ込む。
「ん、んんんっ」
小ぶりな膨らみを揉みしだき、熟れ始めたばかりの若い果実をつまみ上げる。
少女の身体が大きく震える。
水が垂れる音が小さく響く。
男は少女の口を開放し、唇の端を釣り上げる。
「あ……。いやぁ……」
ぽたり、ぽたりという水音は、少女のまたぐらの下の器から聞こえていた。
固く閉じていた少女の秘裂が僅かにほぐれて、蜜を滴らせ始めていた。
「そうだ。いつもみたいに、素直に自分を開放しろよ」
溢れたそれが脚を伝ってゆく感触に、少女は股を閉じようとするが。
「おっとそのままだ。脚は伸ばしたまま、器の上につま先を置いたまま動かすなよ」
男の手がそれを防ぐ。そのまま太ももを撫でられ、揉まれ、少女はとうとう子猫のような声を上げ始める。
「可愛い声だ。たまらねぇな」
「お願い……。ぉ願ぃ、もう……」
つま先からもぽた、ぽたと水音が聞こえ始める。
「あぁ、分かってるよ」
男は片腕で少女の体を抱き抱えて胸元を弄りつつ、もう片方の手を緩み始めた足の付け根へと忍び込ませる。
「ああ、あああっ」
しとどに濡れたそこを手のひらで刺激する。水音が更に激しくなり、少女の体がまた震えた。
「お願い、だから……」
節くれた指が、少女の一番敏感な、固く小さな蕾を擦る。少女は大きく弓なりに背を反らせ、そして。
「ふあぁ……。あ、え?」
男の手が離れ、刺激が止む。戸惑う少女の耳元に口を寄せ、男は囁いた。
「どうした、そんな顔して」
「え、だって……」
戸惑う少女の頬を、目尻から一筋こぼれた涙を舐め取り、男はほくそ笑む。
「期待したようにイけなくて、がっかりしたか?」
若々しい肌に朱が差す。男は声を殺して笑いながら、再びその肌を楽しみ始める。
少女は抵抗しようとする。しかしそれは、ただ単純に男の腕の中から逃れたいというだけのものではなかった。
「くくく。いけそうでいけないのは苦しいよな。中途半端な気持ちよさだけがずっと続いて、いつまでも生殺しなのは辛いよな。
悪いが、しばらくこのまま天国にいけないままの地獄を味わい続けてもらうぜ」
「何が、何がしたいのよ。いつも私を、こんな風にっ」
「この状態のほうが蜜の質がいいって評判なんだよ。快楽に果てた、全てが開放された時よりも、絶頂直前の快楽への期待や予感、不安、興奮、苦痛、背徳感で滅茶苦茶になっている時の蜜のほうが、ずぅっと濃厚だってな。
たくさん集めれば、まとまった金になる。悪いが付き合ってもらうぜ。
……それにお前だって、長く気持ちいいほうがいいだろう?」
指が割れ目の上を行ったり来たりするたび、少女はがくがくと体を震わせる。けれども頂点に至るまでには何かが少し足りないまま、刺激はまた弱まっていってしまう。
それに慣れて諦めてしまうと、今度は指がほじくるように動いてくるのだ。更には入口あたりに指を押し付けてきて、しかし入ってくるかと思えば力を抜いてくる。
男の指で、身体は否応なしに期待してしまう。けれども男は肝心なところまで踏み込んでは来ない。
「どれどれ、そろそろ良さそうか」
ようやく指先が入ってくる。少女は声を上げる。
しかし挨拶も早々に、男は出ていってしまった。それどころか、あっけなく少女の身体を開放し、身体の下に置かれていた容器の回収作業を始めてしまう。
「ふふ。十分な量が溜まったな」
結局少女は絶頂には至れなかった。やり場のない熱に身体の内側から焦がされながら、少女は濡れた瞳で作業する男の背を眺め続けた。
「さて、と。これで予定していた工程は終わりだが……」
道具を一通り片付け終えて男は立ち上がり、少女の方へと向き直る。
「そんな目で見るなよ。好き放題させてもらったんだ、それ相応のご褒美をあげなきゃな」
カチャカチャ音を立てて、ベルトが外される。ジッパーが降りていくのを、地面に座り込んだ少女はのぼせたような瞳で見つめていた。
拘束から開放され、バネ仕掛けのように勢い良くそれが跳ね上がった。
天井に向かって反り返る、幾筋もの血管を脈打たせるそれ。赤黒く充血した歪なそれを、男は少女の眼前へ突きつける。
「あ、あ……」
少女の瞳が潤み始める。男のそれと、顔を交互に見て問いかけるような視線を送る。
「どうした。いつもみたいに早くしゃぶれよ」
男は自身のそれを少女の頬にこすり付け、唇に押し付ける。
潤んでいた目が、濁っていく。昏い沼のような瞳で、少女は男のそれに口づけする。
小さな舌で先端を、くびれを舐める。
膨らんだ先端を咥え込み、じゅぶ、じゅぶと音を立てて頭を上下に振って男のそれを吸う。
男の足にしがみつき、丹念に舌で愛撫し、口全体で啜り上げる。
「う……。今日は、また随分と熱心じゃねぇか。欲求不満だったか」
男は少女の頬を撫で、その髪に指を絡める。
少女はうっとりと目を細めながら、今度はぶら下がった男の二つのそれに唇を押し付け、舌で転がし、甘噛みする。屹立したそれを大切そうに両手で扱いながら、何も言わず行為に夢中になる。
「そんなに俺のこれが好きなのか?」
「あ……」
少女は我に返ったかのように男の顔を見上げ、泣きそうになりながら顔を真赤にして俯く。
男は声を殺して笑う。そしてその大きな手を、握りつぶせてさえしまいそうな少女の細い肩に置いた。
「やめないでくれよ。な。もうちょっとで出そうなんだ」
少女は今一度男を見上げ、そして再び男のそれを咥え込む。
喉元まで咥えても、口の中には半分入る程度。少女は男のそれを限界まで頬張り、頬の内側にこすり付け、舌で舐め上げる。
「あぁ、いいぞ。そら、出すぞっ」
男が腰を震わせて、少女の口の中で果てる。喉に叩きつけられるそれに涙目になりながらも、少女は舌で、口全体で受け止めていく。
「ほら、見せてみろ」
「うう、ううう」
少女は口を開けて、男が放ったものを見せる。
男は満足げに笑い、そして言った。
「飲んでいいぞ」
少女は口を閉じ、それを嚥下していく。一度だけでは飲み干せずに、二度、三度と喉を鳴らして。
「なかなか良かったぞ」
男は少女の頭を撫でる。
少女は大きく息を吐いて、濡れた瞳で男を見上げた。
少女は壁に背を預けてくたりと脱力する。上気したようにその頬は赤みを帯びて、頭に飾られたその花も、心なしか生気を取り戻し始めているように見えた。
男に手入れされた肌を恥じらうようにその手で隠しながら、気弱気な視線で男を見上げる。
「ご褒美の時間も終わりだ」
少女は目を閉じ、ほぅっと息を吐く。
緩んだその手からこぼれる少女の肌を眺めながら、男は口の端を上げる。その脚の付け根が湿っているのを、男は見逃していなかった。
「……だが、たまにはもうちょっと愉しむのもいいかな」
「え」
「お前も、もっと愉しみたいんだろ」
男の言葉が理解出来ず、少女は呆然と男を見上げ続ける。
荷物の中から桶のような容器を取り出し、男は少女を立ち上がらせる。
「ほら、ここに座るんだ」
「え、いやっ。何するの」
桶の上に、用を足させるように足を広げて座らせる。そして男は後ろから少女の身体を抱きかかえながら、その太ももをさすり始める。
「さっきは満足させてやれなかったしな。それに、少し余計に稼ぎも欲しかったんだ」
「あっ。やだ、やめて」
太ももが、少女の細い体が震える。その言葉とは裏腹に、肌は上気し、眉は悩ましげに寄り、その唇からは熱い吐息が漏れ始める。
濡れた少女の中に、男の指が無遠慮に入ってくる。勝手知ったる他人の身体とばかりに、男は少女の中を引っ掻き回す。
少女は両手で口をふさぐが、指の間からは抑えきれない喘ぎがこぼれてしまっていた。
足の間から滴る水音が混じる。
立ち上る甘い匂いも、部屋の中に充満していく。
「あ、あ、あ、いやいやいや」
少女の蜜は絶え間なくこぼれ、そしてついには。
「だめ、やなのに、指でなんて……。あっ」
細い体が弓なりにのけぞり、緩んだ股ぐらからは大量の蜜が吹き出した。
甘く淫らな匂いを漂わせる桶の横に少女の細い体が横たえられる。
その目は虚ろで、どこか遠くを見つめていた。
無理矢理に快楽に塗りつぶされていた意識は、しかし休む間もなく現実に引き戻される。
「おいおい。まだ終わってないぞ」
濃い雄の匂いだった。むせ返るほどのそれが少女を足元から包み込み、そしてそれを追いかけるように匂いの発生源が、男の筋肉質な身体が少女に覆い被さってきた。
「だ、だめ」
「お楽しみはこれから、だろ」
「い、今いったばかりだから。お願い、ちょっと休ませて」
「俺だってお前にいかされたばかりだよ。大丈夫だ、ほら」
男の切っ先が少女の潤んだそこにあてがわれる。そして少女の返事を待つこともなく、男は腰を沈ませる。
「あ、ああああっ」
少女はのけぞり、そしてまた蜜を溢れさせる。
男は少女の肌を撫で回しながら、腰を振り始める。
その度に少女の体がびくん、びくんと震えた。
「だめ、だめなのっ、でき、できちゃうよぉ」
「責任はっ、全部俺がっ、取ってやるよっ。ほらっ、遠慮なくっ、気持ちよくなってっ、いけっ」
少女は両手で男の腕を、身体を叩いて抵抗するが、しかしその手も男に掴まれ地面に押し付けられてしまう。
指を絡め、恋人のように固くつなぐと、男は一層深く少女の身体をえぐる。
「ふああぁぁっ」
少女の身体がきゅぅっとすぼまり、そしてそれ以降、少女は抵抗するのを止めた。
「だめ、だめ、そこきもちいいの、おかしくなっちゃう。頭おかしくなっちゃうよぉ」
胸板で柔らかな小さな膨らみを押しつぶすように、男は少女と全身を重ねる。
二人の頭上で、花が開き始めていた。少女の頭の上に飾られていた花が朝露に濡れて咲く花のようにみずみずしく、花開いていた。
男は首を伸ばし、その花弁の中の蜜を舐める。
「やっぱ甘いなぁ。これだけは、誰にも渡せねぇよなぁ」
「あふれちゃうよぉ。きもちいいのが、いっぱいで、ああぁあぁっ」
男は少女の口を、己の唇で覆う。
舌を絡めると、少女は自ら己の脚を男の腰に絡みつかせた。
そして男は、少女の一番奥深く敏感なところを貫きながら、命ごと吐き出すかのように己の全てを少女の中に注ぎ込んだ。
………………
…………
……
二人揃って意識が飛ぶまで愛し合ったあと。少女より先に目を覚ました男は、隣の可愛らしい寝顔をしばらく微笑んで見守って、それから道具を漁って作業を始めた。
乾かした少女の髪、植物の葉のようなそれに、少女の脚から伸びた根っこを削って細かく砕いたものと、新陳代謝で排出された老廃物を混ぜた物を乗せ、細長く巻いていく。
そしてそれを咥えると、先端に火をつけて大きく吸った。
「それ、そんなに美味しいの?」
座って作業していた男の、その背に後ろから抱きつきながら、少女は不思議そうな顔で覗き込む。
「お前も吸ってみるか」
男に勧められ、少女も一口吸ってみる。しかし少女は美味いとも不味いとも言わず、咳き込むでもなく首を傾げるだけだった。
「よく分かんない。マンドラゴラの私としては、こっちのが好き」
煙草を取り上げたまま、少女は煙の匂いの残る唇を男の口へと押し付ける。
煙よりも更に濃厚な少女の"成分"を摂取し、男の体は反応する。
「あ、また……」
「お前が急にキスなんてするからだろ。あ、おい」
少女は男の腕をするりと逃れ、男の前に、股ぐらに顔を埋める。
「んっ。ちゅっ」
「くっ。……ったく、ようやく調子を取り戻してきたか」
少女は上目遣いで見上げ、こくんと頷く。
「全く、お前の匂いは相変わらずやばいな。ようやく耐性が付いてきたつもりだが、今日も部屋に入った途端変な気分になっちまった。
全身にルーン刻んで色々強化してるのに。まったく、魔物娘ってのは色々と規格外だなほんと」
「んちゅっ。魔術師の癖に、耐性が低いあなたが悪い」
「へっ。お前だって、えらく被虐的に誘ってきたじゃないか。自分の媚薬成分にやられたんじゃないのか……。エロすぎだろ」
「あれは栄養不足だったせいもあるけど……。じゃあ、二人で耐性を高めよっか」
少女は股ぐらから顔を上げ、男の肌を舐め上げながらその身体を這い上がる。
そして目線が合う位置まで登ると、子猫のような甘い声をあげながら腰を重ねて男を飲み込んだ。
「お、おいっ、やめっ。さっきあんなに出したばかりで」
「あなただって、敏感になってる私にしたでしょ? 大丈夫だよ。……あぁ、これ大好きぃ」
少女は体重を預けてくる。男は腕を衝立のようにして、何とか身体を支える。
身体を揺すって少女が与えてる快楽に歯を食いしばって耐えながら、男は息も絶え絶えに問いかける。
「な、なぁ、いい加減一緒に住もうぜ。ここ、うちの敷地内とは言え、別居みたいで寂しいだろ。煙草でお前の成分を補うのも虚しいし。……柄じゃねぇけど、俺だって普通の夫婦みたいに一緒に寝起きとかしたいんだよ」
「でも、土の質はこっちのがすごくいいんだよねぇ」
「それは土から抜いたばかりのお前がこのままじゃ萎れちゃうって言うから、マナが豊富な場所探して、その上薬とか儀式とかで俺が頑張って土壌を改良したからだろうが。お前も元気そうだし、そろそろ場所を移ったって」
「えー。あなたがこっちに住めばいいじゃない」
「正直、土の質が良すぎるから催淫成分がやばい事になってると思うんだよ。今の俺がここに住んだんら、毎日獣みたいに盛っちまうよきっと」
「いいじゃない。それで」
「いやだめだろ。これでも新しく生えてくる子供の事とか考えて、稼ぎの計算とか増築とか土地の改造とかだな」
「じゃあここでも考えられるように、やっぱり耐性をつけなきゃね」
口の中に無理矢理ねじ込まれた少女の舌から、ねっとりとした甘い液体を流し込まれる。
それ以降、二人の間に言葉は無かった。男は耐えることも逃げることも出来ないまま、陵辱じみた快楽を、ただ諦めて受け入れるしかなかった。
17/08/19 23:18更新 / 玉虫色