連載小説
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Phase0 -プロローグ-
寒い眠いおまけで腹が減った



彼ー八島裕(やしま ゆう)の今の心境を表したらこんな感じだろう

寒いなら暖を取ればいい、眠いなら寝ればいい、空腹なら何か食べればいい、そう思うあなたは正しい、だが今の彼にはその全てを行うことは許されない



何故なら彼は今状況中―演習に参加している自衛官だからである


静岡県、富士山が見える位地にある本州最大の演習場である東富士演習場(日本最大は北海道の矢臼別演習習場である)に彼はいた

彼が所属する部隊は2日前、状況開始(正しくは『訓練状況開始』)を言い渡され3夜4日(3泊4日という言い方はしない)の演習が始まった

11月も半ば、山から吹き下ろす冷たい風が体力を奪うなか塹壕の中に八島裕は立っていた

鉄帽(抗弾ヘルメット)の下の迷彩化粧をした顔は全体的に見ればスッキリと整った顔立ちをしているが特に目が特徴的だった

ナイフで切ったよううな細い釣り目は普通にしていても睨んでいるように見え整った顔立ちと相成って迫力のある睨み顔になっている

迷彩服に同じ柄の防弾ベストを着て小銃を構えるその姿は他の隊員と同じだが、不可解なことが一つ、この男の階級である

微かに見える階級章は長方形に一個の桜と線が一本…つまり、3等陸尉(諸外国でいう少尉に相当)の階級章をつけているのだ

本来なら小隊長として指揮所にいるはずだが何故かこの男は陸士がやるような仕事をしている、いったい何故…

「…多分、中隊長だろうな…これ…」

この男、はっきり言うと人付き合いが苦手である

感情の起伏があまり無いため良く言えば冷静、悪く言えば生意気と言われ、仕事もそつなくこなす為人相の悪さと相成って上からの覚えは良くない

その為、時々こうして地味な嫌がらせを受けている状態である

チラリと時計を見ると歩哨についてから長針が2周目に入ろうとしているが交代要員が来る気配はない

夏場は暑さの元にしかならない防弾ベストも前日に降った雨で濡れ、氷のように冷たくなり風と共に体力を奪う原因の一つにしかならずお世辞にも防寒は万全とは言えない

溜め息をつきながら小銃を構え直した

入隊して4年、部隊に配属されてからようやく2年という新米小隊長に対しても隊員達は冷たい、などとあれこれ考えていると長針がもう1周回った当たりでようやく交代要員が来た

交代に来た若い1士は八島の視線を受けただけで少し強ばりながら交代してくれた

恐らく来るのが遅いと睨まれたと思われたのだろう、と指揮所へ戻る道すがら苦笑する

嫌がらせの主に対しては文句を言いたくても、下には余程でもない限り文句を言わない、むしろ余計な作業をさせたのではと申し訳なくなる

八島は外見で判断されがちだが実際は仲間のことを第一に考える優しい男なのだ

だが、悲しいかな、人はまず外見で第一印象を決めてしまう生き物で中隊長の嫌がらせと重なって部隊では浮いた存在となっていた

あれこれと勝手に考えるだけで悲しくなり、また溜め息が出る

と、その時八島の視界の端に何かが映った

顔を上げそちらを向くと今度ははっきり見えた




―光―




凡そ50m先、何かが光っている



「敵か…?」

演習中の自衛官は基本的に自分の存在を隠すため光る物を隠す、その為一瞬敵部隊がいるのかと近くの藪に隠れて様子を伺う

しかし、光は何をする訳でもなくただ光続ける

3分程様子を伺ったが不審に思った八島は回りを警戒しながら藪を出た

伏撃の気配はない、では何だ?

そんな疑問を晴らす為光に向かって歩き出した






















「何だ…これ?」

裕は信じられない物を見ていた

何もない空間、地上から1m程の空中で発行元もないのに光が浮かんでいるのだ

寝不足からくる幻覚かと一瞬考えたがあまりにもはっきりしているためすぐに違うと判った

光との距離は凡そ3m、その距離を埋める様にふらっと1歩を踏み出した

1歩…また1歩、まるで光に吸い寄せられる様に近づき、遂に目の前まで近づきようやく歩を止める


近くで見れば見る程不可解で不思議だった

光の中心には何もない、ただ空間が光を放っているのだ

「…どういう仕組みだ?これ…?」

仄かな暖かさを出す光をしばらく見つめていた裕だが、やがてゆっくりと手を上げ光に触れようとする

科学では説明できない立派な超常現象だというのに不思議と恐怖は感じなかった

――そして光に触れた瞬間、初めて光に変化が現れた


「うわっ!!」

光が突然強くなった、まるでサーチライトの様な強い光に思わず目をそらす、そして更なる異変に気づく

「っ!? 何だ!?」

裕を中心に半径2m程の光の円が裕を被い始めた、それはまるで子供の頃漫画やアニメで見たことのある魔法陣に良く似ていた、そして光がカメラのフラッシュの様に一気に膨れ上がる…

「うあああああああぁぁぁぁっ!!!!!!」











光が裕を包んだ瞬間、裕は意識を手放した



to be a continued...
13/12/08 20:51更新 / chababa
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■作者メッセージ
初めて書いた小説ですがいきなり長編連載に挑むバカな上、不手際とは言え感想から沢山の指摘を頂きました
本当に申し訳ありませんでしたm(._.)m

編集中に停電で本文が全て消えるというアクシデントも何とか乗り越えプロローグが完成しましたが…魔物娘いない!?(゜ロ゜ノ)ノ
すいません次は出ますのでちょっとだけ構成に時間を下さい

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