連載小説
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#005 赤い鍵
セキュリティクリアランス3以下の閲覧を禁ず

ITEM#:005
CODENAME:赤い鍵
Object Class:Euclid

取り扱い方:#005は#004の内部に保管されていますので
#004の取り扱いを厳守していれば#005は安全です

#004の警備に当たっている人員に#005の存在は隠すのは無理ですが
具体的に何かは伏せて下さい-第五室室長キーパー

概要:石造りの船にて#004と共に発見されました
#004は破壊不可能且つ魔力を通さない未知の金属で出来た宝箱です
#004には大量の鍵の機構が備わっていました
この機構自体は王室専属鍵職人曰く『鍵穴が多くて面食らったが
時間さえ有れば俺の弟子でも出来る』と言う物でした
#004の内部に#005と未知の文字で書かれた文書005-Aが入っていました
#005の実験で王室専属魔術会第六室室長、副室長、及び上級研究員7名
騎士71名、魔法使い35名が殉職となっており
これ以上の犠牲を出さない為に#005による実験は禁止になっています



以下セキュリティクリアランス5以上の方のみ閲覧可


詳しい概要:#005は掌サイズのほぼ一定の周期で色が変化する(発見当初は赤色
以後赤と青を周期的に変化し例外的に他の色に変化します)
丸い円盤状の形をした莫大な純粋な魔力の結晶体です
含有している魔力量は王国の測定法では測定出来ない程の魔力量です
もしも#005の魔力が全て解き放たれれば王国の国土■割が消失すると考えられています
しかし#005は非常に安定した物質で有り、魔力の暴走の危険は皆無です
一切の不純物が混じらず更に術式も使わずに魔力のみを固形にし
小型且つここまで安定した物体は魔術学的に有り得ない物です
#005から魔力を抽出する試みは文書005-Aに記載されていた方法を除いて
全て失敗しています


#005から魔力を移し変える方法の確立は不可能です
#005の魔力量は私達王室専属魔術会所属の魔法使い全てよりも
遙かに膨大です、そこまでの魔力コントロールは誰にも出来ません
文書005-Aを書いたタブリスとやら以外は-元王室専属魔術会第六室室長ケテルの研究日誌より抜粋


文書005-A

文書005-Aは真っ白い薄い紙に鉛筆で書かれていました
翻訳は速やかに行われ解読に成功しました
筆跡は丸っこく女性的です、以下がその内容です



最近罠が有ると警戒して宝箱を開けない連中が多い
確かに拾った宝箱を開ける開けないは 自 由 だけどさ
宝箱を置いた方としては宝箱を開けて欲しい訳だよ
そんな風潮が流行る中で開けてくれた君にプレゼントだ!!

ジャン!!赤い鍵〜、いや青い鍵〜
今何色になってる?まぁいいや
兎に角この鍵は別の世界への鍵になるのだよ
君達にはこの鍵を進呈しよう!!使い方はとても簡単!!
下に書いた説明通りに魔法陣をちょいちょいっと書いて
この鍵を指定された所に置くだけ!!それだけで別の世界への門が開くよ!!
そして退かせば別の世界の門は閉じるよ!!
やったね!!因みに門を開く時に置いた鍵の色は
門を閉じるまで変わりません
そして鍵の色毎に違う場所に行けちゃう!!
鍵が赤くなってる時に門を潜ると赤いのが
鍵が青くなっている時に門を潜ると青いのがそれぞれ出迎えてくれるよ!!
偶に紫色や桃色とか色んな色になったりするよ!!
紫のは特に凄いよ!!是非楽しんでね!!

 自 由 なタブリスより
(署名と見られる物の横にはデフォルメされた似顔絵の様な物が書かれている
特徴は角が生えているアルビノの特徴を持った少女)

以下文章に有った魔法陣の説明がなされるが省略する




#005は異世界への門を開く鍵では無く唯の莫大な魔力の塊です
しかし#005-Aで解説されている#005の魔力をコントロールし
異世界への門を開く魔法陣以外では
使用不可能です、どんな異世界に繋がるか予測も出来ませんし
使用するのは如何かと思います-#005研究チーム上級研究員ブラウン

却下する、異世界侵攻は現在の我が国の方針である
異世界侵攻での異世界の原住民による抵抗は全て打ち倒せ
その力がお前達には備わっていると強く信奉する-大臣グデラス



王国暦20■■年3月24日
王室専属魔術会の実験施設サイト093にて第六室から選出された研究チームが
文書#005-Aに書かれていた魔法陣を用いて異世界への扉を開ける実験を行いました
実験は計4回行われ以後の実験は禁止になっています

#005-1実験報告書
#005の色:青
執筆者:ケテル・ヘル
日時:3月24日〜3月29日

初めての#005の実験、魔法陣を描き指定された通りに#005を置き魔法陣が作動
我々の技術より遙かに早く滑らかに異世界への門が開く
異世界への門は丸みを帯びた青色、門の向こう側は見えない
門の向こう側へ向かう調査隊を派遣する事にした
調査隊の内訳は新人騎士5名と魔法使い1名と騎士2名
魔法使いには撮影用に映像の転送を行う水晶を持たせ騎士2人に護衛させる
新人の騎士は捨て駒として使う

映像記録
調査1日目
門の向こう側は生い茂った森の中で湿度が非常に高いと報告された
また調査中に突然雨が降ったと思ったら直ぐに止むと言う異常気象が発生した
この現象に対し魔力の探知はされず、異世界独特の気象と判断された
不思議な事に森の植物以外に動物の姿は無かった
調査隊に現地で野営を取らせ調査を続行させる

調査2日目
新人騎士の1人が何者かの視線を感じると報告
魔法使いの探査の結果は何も出ず、報告をした新人は叱られた
今日もまた異常気象が発生した、植民地化も検討していたが
こんな気候では植民地化は無理かもしれない

調査3日目
調査隊全てが謎の視線を感じると主張
また騎士の1人が森の奥へ勝手に進んだ、騎士を連れ戻しに新人3人を向かわせた
残りの調査隊は野営を撤去し帰還の準備を進める

調査4日目
新人1人だけが半裸の姿で戻って来た、行方不明の騎士と残りの新人2人は帰還を拒否
話によると原住民に篭絡されそのまま原住民の集落で夫婦になったらしい
また捕虜として奇妙な青い半透明の全裸の少女を連れて居た
少女の方は捕虜になっている自覚が有るのか不明
捕虜の少女の研究の為、帰ってきた新人と魔法使いと騎士は帰還させ
残りの新人2人は帰ってきた新人が主張する原住民の集落へと向かわせる
捕虜の少女と新人と魔法使いがこちらの世界へ帰還する
少女を置いたら直ぐに新人と魔法使いを異世界へ向かわせる予定だったが
少女が新人と離れる事を拒否、無理矢理離そうとしても暴れ回るので
新人ごと牢屋に入れ、後の事は今回の調査が終わってからでいいだろう
魔法使いと騎士は異世界へと再度向かわせる、この日はこれ以上の進展無し
野営地で休息を取る

調査5日目
夜中に2,30人の半透明の青い女性の原住民達が野営地を取り囲んでいる映像が届く
魔法使いは騎士を見捨てて飛行魔術で空を飛びながら異世界の門へ急ぐ
しかし門の周囲に100を越える大勢の原住民が取り囲みこちらに来ている映像が届く
危険と判断し#005を魔法陣から退かし門を閉じる
映像は何故か尚も続き魔法使いは怨嗟の声を上げながら
水晶を地面に叩きつけ映像は途切れる

調査終了

調査結果
#005-1実験で繋がった異世界は気候が安定せず
更に原住民が多く存在し移住には不適格であると判断し
以降#005が青の時の実験は停止する
確保した捕虜は新人と共に尋問を行った後
牢屋へ閉じ込め経過観察を行う事とする



インタビュー記録#005-1
インタビュアー:上級研究員ブラウン(ブラウンと表記)
インタビュー対象:捕虜(便宜上の為青と表記)
騎士■■■■(新人と表記)

ブラウン:では記録を始めます、まずお嬢さん、名前は?
青:ないよ?
ブラウン:・・・そうか、では■■■■君、君が彼女を捕虜にした経緯を話してくれ
新人:いや・・・気が付いたら腕にくっついてたんですよ・・・
ブラウン:・・・ではお嬢さん、君は何でこのお兄さんにくっついていたのかな?
青:はつこい
ブラウン:初恋、すなわち惚れたと
青:うん、かれとあかちゃんつくりたいです
新人:(激しく動揺しながら)赤ちゃんって・・・君ねぇまだ子供じゃないか、歳幾つだよ
青:とし?
新人:生まれてからどれ位だったかって事だよ
青:さっき
新人:は?
青:だからさっき
ブラウン:・・・・・ついさっき生まれたと言う意味かい?
青:うん
新人:・・・・・
ブラウン:・・・では彼の何処を好きになったんだい?
青:ひとをすきになるのにりゆうがいるの?
ブラウン:生後一日に満たない赤子がませてるねぇ・・・
次の質問だがね、■■■■君、君の上司だった騎士■■について聞きたいんだけど・・・
新人:はい・・・■■さんは俺達新人にも優しい良い先輩でした
青:うん、ぱぱはとってもやさしいんだよ

ブラウン、新人、共に目を見開く

新人:ぱ、パパって君は・・・
ブラウン:嬢ちゃん、アンタ明らかに人間じゃないだろ
■■■■、■■は原住民に篭絡されたと言っていたが
■■の相手は人間だったか?それともこの娘みたいなのだったか?
新人:・・・この子にそっくりな女でした
ブラウン:異種交配が可能なのか?・・・いずれにしても
青:ねーもーいいでしょーつーかーれーたー
新人:お、おい!!この人に対してそんな口の聞き方は
ブラウン:いや、彼女の意見を尊重してインタビューは中止だ
続きはまた今度にする
青:やた!!じゃだーりん[卑猥な単語]しよ!!
新人:嫁入り前以前に赤ちゃんがそんな事言っちゃいけません!!

インタビュー終了



捕虜の少女の証言が正しいのなら一日で妊娠し出産
更に少々脳内の風紀が乱れているが生まれて直ぐにこれだけの知性を有しているのは
生き物として破格の存在だ、この捕虜もナンバーを付けて
調査チームを組んで報告書を纏めるべき存在だと報告する
-#005研究チーム上級研究員ブラウン

承認した、捕虜を別のサイトへ移送し研究に当たらせる-第二室室長レフ



魔法使い1人と5日間を犠牲に収穫は原住民の少女1人
褒められた結果ではない次回からは囚人を人員を派遣する事を要請する
-第六室室長ケテル

要請を受理する、それから報告書に貴女の主観が混じっていると言う印象を受けました
騎士に対して軽視も目立ちます、報告書は騎士も読むので
報告書の改定と慎みを求めます-国王



#005-2実験報告書
#005の色:水色
執筆者:ケテル・ヘル
実験日時:4月1日

国王陛下より囚人が届き、実験を開始
囚人には実験が終わった後開放すると騙す
魔法陣は#005-1実験の物を継続して使用
#005は周期的な赤と青の色の変化から例外的に水色に変化した
色が変わったからか異世界への門は青空が見える窓の様な物に変化した
囚人には短剣1本と映像を転送する水晶を括りつけた服を着せ異世界の門を潜らせる

実験一回目
囚人に門を潜らせた

結果:異世界へ顔を出すと一面海だと主張
流石に如何にもならない為、一時帰還させる


実験二回目
小船を先行投下し、囚人に門を潜らせ調査させる

結果:船を漕いで周囲を見渡させるが周囲一面本当に全く無い大海原
1時間程船を漕がせたが何も見当たらなかった為、帰還させる

補遺
映像を見たが魚や海鳥の姿が一匹も居ない
前の#005-1実験の際の異世界にも動物が居なかった
これは何か有ると思って良いのでは?-第六室副室長ユーグリット


実験三回目
囚人にワイヤーを括りつけて異世界へ蹴り飛ばす

アホかお前-囚人

結果:1時間後、クラゲの特徴を持った半透明の少女が囚人の下へ現れる
囚人の体を掴んだ所をワイヤーを引っ張って少女ごと回収を試みるも少女は手を離し逃走

ユーグリットが勝手な実験を始めたから狂ったと思ったが
予想外に良い結果が出た-第六室室長ケテル


実験四回目
実験三回目と同じくワイヤーを括りつけて異世界へ蹴り飛ばす
しかし今度は自分を掴んだ女の手を握り続けろと命令

結果:30分後、クラゲ女が囚人を掴んだ
囚人は指示通りに女の手を掴んだが、すぐさま20体近くのクラゲ女が
囚人を掴み海に引きずり込もうとした、ワイヤーをすぐさま引っ張ったが
重みで上がらなかった、囚人が苦痛の声を上げるとクラゲ女は直ぐに離れた
その際に囚人も手を離した為収穫は無かった


実験五回目
再度、ワイヤーを括りつけた囚人を異世界へ蹴り飛ばす
囚人への指示は四回目と同じだが、こちらの世界で魔法使いの部隊を待機させ
クラゲ女が囚人を掴むのと同時に異世界へ突入、魔法攻撃を仕掛け捕縛する

結果:クラゲ女が水面に1人水面に波に揺られながら近付かず、ただ囚人を見ている
2時間後、クラゲ女の群がじょじょに囚人を取り囲み波を立て始める
波を立て始めてから20分後、ワイヤーが切断されクラゲ女は囚人を捕まえると
すぐさまその場を離れるか海面へ潜った
映像が暫く続いたが服を脱がされたのか最後の映像に全裸の囚人とクラゲ女が
離れる映像が届きそのまま海中の映像が続き3時間後に深海の水圧で水晶が破壊され映像が途切れる
映像を後に見直すと群が波を立て始めた時から小さな話し声や
ワイヤーを切っている様な音が微かに聞こえた
ワイヤーは粗雑な刃物で切られた様だ


道具を使い、更に監視されている事を把握する知識があるのか
#005-1実験で回収した捕虜が結構厄介な存在だったと言うレポートが届き
#005-2で繋がった異次元は大海原、無理して侵略する価値は無いと判断し
ここに#005-2実験の終了許可を頂きたい
幸い犠牲は水晶と短剣のみだ-第六室室長ケテル

了承した、それから#005-1で回収した捕虜の対処にレフ室長も四苦八苦している
捕虜の対処法が決まるまで#005の実験は凍結する-国王


#005-3実験報告書

注意:全体的に筆記が乱れている為この報告書は複写となります

#005の色:赤
執筆者:ケテル・ヘル
実験日時:4月20日〜4月(インクが滲んでいて判別不能)日
注釈:ブラウン上級研究員の証言で実験終了日時が27日と判明しました

失敗した、陛下から賜った人員をここまで減らしてしまうとは
如何にかして挽回しなければならない
報告書を書く手が重い、が真実を明らかにし失敗を教訓として残さなければならない
王国の為にも

#005-1実験の時の捕虜の対処は最初困難かと思われたが
あっさりと解決し上手く行った
寧ろ彼女の体の一部を半永久的に取り出す事で
半永久的な資源の獲得と言う予想以上に良い結果を齎した

#005の実験は再開された#005の色は赤
異世界への門の形はしっかりとした城門だった
囚人による初期の探査は特に問題は無かった
装備させていた水晶からの映像は掘っ立て小屋の様な家々が立ち並ぶ村が写った
#005-1捕虜と酷似し、赤い半透明な女性の姿を確認
囚人に襲わせ体の一部を採取する事に成功、女性は逃げ去った
囚人に帰還を促し、採取した体の一部を検査すると
#005-1捕虜と比べ魔力の含有量が高く
更なる効率が良い資源の発見と言う結果を齎した

この知らせは直ぐに国王陛下に知らされ
大々的な侵攻作戦が練られた
騎士100名魔法使い20名からなる部隊で
まずは#005-3異世界の入り口に当たる村の制圧を行う事となった
騎士100名はそれなりに優秀な者も含まれ
魔術の心得もある魔法騎士も存在し
魔法使い20名は私が選出したエリート部隊だった

結果は失敗、66名の騎士と12名の魔法使いを失い
残りも恐怖で精神が参ってしまっている
魔法使い達の中には重傷を負っている者も多い
重傷の理由がパニックによる同士討ちと言うのは皮肉な話だ
そして本来ならもっと多くの人員を助けられた筈だった
敗走して異世界から逃げてきた魔法使いの1人が
まだ異世界から逃げている人々が居るのに魔法陣を傷付けて
異世界への門を閉じてしまったのだ
若く軽率だったが優秀な魔法使いだった、彼は即時処分し
再度魔法陣を書こうとしたが逃げて来た部隊隊員達が口々に止める様に懇願して来た
騎士の1人の話では#005-3異世界原住民は最初
部隊を見た途端に逃走を始めた、侵攻部隊の30名で追跡部隊を編成し捕縛を試みた
原住民は村の家が密集した袋小路にまで追い込、いや誘き出された

隠れていた大量の原住民の別固体が現れ追跡に当たった部隊は壊滅的になり
僅かに数人逃げ出せたがパニック状態になった
そして本隊の方にも原住民達が襲撃をかけた
本来なら良い勝負が出来た筈だったがパニックになった魔法使いにより
魔法の乱発で同士討ちが巻き起こり、部隊は散り散り
勝手に異世界の門で帰る者も出始め、異世界の門を閉じると言う暴挙に出た

不覚だった、まさかここまでの被害が出るとは・・・
このままでは#005の実験自体出来なくなるかもしれない

研究チームの不安解消の為にも次は私が出撃しなければ



#005-4実験報告書
#005の色:紫
執筆者:ブラウン上級研究員
実験日時:4月29日

ケテル室長自ら異世界侵攻部隊を率いましたが
ケテル室長及びユークリッド副室長
上級研究員7名、部隊の魔法使い22名が殉職しました
#005の実験の無期限凍結を要請します



インタビュー記録#005-4
インタビュアー:第五室室長キーパー(キーパーと表記)
インタビュー対象:上級研究員ブラウン(ブラウンと表記)

キーパー:こんにちわ、ブラウン上級研究員、どうぞ、座って
ブラウン:・・・・・

席に着く上級研究員ブラウン

キーパー:今回君を呼んだ訳はこの報告書です
結果は分かりましたが過程が無いじゃないですか
ブラウン:・・・記録が無いので報告書に書けなかったのです
キーパー:記録が無い?君は確か侵攻部隊では記録係だったと記憶していますが・・・
ブラウン:#005-4の異世界は魔力が強すぎて映像水晶が作動せず
記録は出来なかった、俺の証言だけが証拠ですが・・・
キーパー:信じますよ、私は物事の真贋を見極めるのは得意だと自負しております
人に対しての共感能力は低いですが観察力は高いです
ブラウン:・・・#005-4の異世界、つまり#005が紫になった時に繋がる世界は洞窟だった
キーパー:それで?
ブラウン:俺は部隊での役目は記録係だった
俺は#005-4異世界が魔力がとても強く記録が取れないと
ケテル室長に近付いて言った、ケテル室長は大して気にも留めてなかったが・・・
キーパー:部隊の編成はどうなっていましたか?
ブラウン:俺と6人の上級研究員、後20人の魔法使いと室長と副室長
キーパー:魔法使いだけの部隊ですか?
ブラウン:ケテル室長が典型的な魔術至上主義者なのは知っているだろう
キーパー:確かに、ですが可笑しいですね
報告書では犠牲者の数はもっと多かった筈・・・
ブラウン:これから説明する、ケテル室長が俺の報告を聞いて暫く歩いた時
#005-4の原住民と出遭った・・・直ぐに危険な奴だと察知したよ
#005-1異世界の奴と似ていたが色が紫で触手の様に体を変形させたり
魔力が桁違いだった、洞窟の中のほんの少しの隙間から突然にゅるっと出て来て
ケテル室長に襲い掛かった、室長は迎撃したんだが・・・

ブラウンが目に見えて動揺し始めた

キーパー:迎撃してそれから?
ブラウン:・・・最初に攻撃して来た奴は囮だったんだ
上から別の固体がケテル室長の腕目掛けて体の一部を垂らして来た
そしてケテル室長の腕が・・・溶けた
キーパー:溶けた、ですって?
ブラウン:ああ、室長は上を見上げたが四方八方から更に別固体が攻撃をし始め
全身を奴等が覆い・・・ああ、神様・・・

ブラウンは顔を覆った

キーパー:ユーグリット副室長はどうしました?
ブラウン:ケテル室長に駆け寄って一緒に溶けたよ
他2,3人の上級研究員も同様だ
キーパー:流石に些か軽率じゃ有りませんか?
ケテル室長が不意を打たれた相手なのにそんなに直ぐに近付いて
ブラウン:俺は・・・元々別の室からこっちに来て
上級研究員の中でも新参だった、だからケテル室長の事は噂で聞いている位だったが
他の連中はケテル室長の近くに居て彼女の実力に絶対の信頼を置いていた、んだと思う
だから彼女が居なくなれば敗北必死と考え何が何でも早急に何とかしなければならないと言う
考えに思考が支配されていた、と思う、俺は速攻で逃げたが
キーパー:部隊の中で逃げたのは貴方1人だけでしたが、それは何故ですか?
他の魔法使いの方々も精鋭揃いでは無いかと推測しますが
ブラウン:簡単だ、俺は室長がやられたと叫びながら逃げて行ったが
誰一人その事を信じる者は居なかった
『新参が勘違い起こしてパニックしている』程度の認識だろう
そして原住民の集団が後ろから迫って来ていた
俺は走ったが他の連中は戦い始めたよ
室長が居るから負けは無いとでも思っていたんだろう
室長は溶けたのに・・・
キーパー:良く逃げられましたね
ブラウン:幸運だったよ、俺は撮影の為の光源を得る為に光の魔法を
専修して取得した、目くらましだったが奴等にはドンピシャで効果が有った
何でか理由は知らないが・・・
キーパー:#005-1で捕獲した捕虜は中枢や内臓が確認されていません
目の様な器官は有りますが恐らく飾りで全身で物を見ているのではないかと推測します
全身感覚器官なので過剰な光に怯んだのでしょう
ブラウン:いや、連中の体には丸い球の様な器官が有った
キーパー:興味深い話ですが・・・報告を続けて頂いても?
ブラウン:すまない・・・俺は何とかこっちの世界へ戻って来れた
室長がやられたからこっちの門を閉じる様に言ったが
やはり信じて貰えなかった、そして奴等の一部がこっちに来て
上級研究員1人を溶かし魔法使い2人を連れ去った
キーパー:魔法使い2人は溶かされなかったのですか?
ブラウン:ああ、何故かは知らないが・・・流石にこっちに待機していた連中も
只事ではないと判断した、それでも閉じるか閉じないかで揉めたが
最後にはこっちに残っていたブロンド上級研究員が強行して閉じる事になった
キーパー:ブロンド上級研究員がですか?
ブラウン:ああ、こっちに来てた紫の奴を向こうに押し戻して
#005を魔法陣から外したんだ、そして直ぐに退職願いを出してしまったから
第六室で残った唯一の上級研究員の俺が報告書を出して提出したんだ
キーパー:そうですか、ではインタビューを終了します

インタビュー終了



インタビュー記録#005-4-2
インタビュアー:第五室室長キーパー(キーパーと表記)
インタビュー対象:上級研究員ブロンド(ブロンドと表記)

キーパー:こんにちわブロンド女史
ブロンド:キーパー室長・・・私に聞きたい事は何ですか?
キーパー:ええ、実はブラウン上級研究員が異世界への門を閉じたのは貴女が強行したからだと
証言をしているのですが、何故ですか?
ブロンド:・・・何か問題でも?
キーパー:貴女はケテル室長の実力を良く知っていて且つ
それに全幅の信頼を置いている、そんな貴女がケテル室長が敗北した事を信じ
すぐさま異世界への門を閉じるとは考え難いのです
そしてその後に退職届けを出すのは、余りに不自然です
ブロンド:・・・・・・・・・・私見たんです
キーパー:何をですか?
ブロンド:#005-4の異世界の紫のゲル状の生き物が
私の同僚の上級研究員ポニテと魔法使い2人を襲う所を
キーパー:それだけでは無いでしょう
その理由でここを辞めるなら貴女はとっくの昔に辞めている
ブロンド:・・・・・彼女・・・そのゲル状の生き物・・・と目が合ったんです
キーパー:それが?
ブロンド:私は彼女とは長い付き合いでした
キーパー:彼女?何故初めて行った異世界に貴女の知り合いが
ブロンド:その紫の・・・ゲル状の生き物は・・・ケテル室長でした

ここで一気に泣き崩れるブロンド
インタビューは終了しブロンド上級研究員は記憶処理の後
一般研究員に降格し第五室へ異動させられた





#004が素材は特別なのに普通に開錠出来る鍵が備わった宝箱である事
同封されていたご丁寧な取り扱い説明書
これらから推測するにタブリスとやらは異世界へと俺達を誘う為に
宝箱に置いて放置していたと推測される
俺達は大した疑いもせずに、いや疑いはしたのか
しかし上が俺達の疑いを無視して異世界へ強行した結果
まんまとタブリスの思惑に乗せられ優秀な人材を失ったと言う訳だ-第二室長レフ

#005の使用を止めてクリアランスレベル5として扱う事を提案する
繋がる異世界は危険過ぎるし何よりも
こんな莫大な魔力を運用出来る奴が我々に害意を持ってこんな罠を仕掛けたと言う事実は
余りにも絶望的過ぎる、異世界の侵攻自体止めたら如何か-第四室長アイク

アイク室長の一つ目の提案は呑むが二つ目は却下する
異世界侵攻は国民の不満や資源不足など困窮した現状打破の手段であり
更にもう我々は異世界侵攻の為に莫大な予算を投じ過ぎている
もう後戻りは不可能だ-国王
15/05/27 21:36更新 / Mr.後困る
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■作者メッセージ
参考にしたSCP
SCP-093 紅海の円盤
執筆者:far2様
http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-093

19日に投稿するつもりだったのですが間に合いませんでした
何だか体調が良くなくて・・・季節の変わり目だからでしょうか
とりあえず2週間に1度の更新を心掛けたいです

今回かなりの長文になってしまいましたが大丈夫でしょうか?
独自の設定も多くなってしまったので他の人が分かるか不安です
分かり易く表現したつもりですが、如何でしょうか?

今回は名前はSCP-005、効果はSCP-093をイメージした物です
SCP-093は実験内容含めるとかなり長く洗練されたSCPなので
今回は再現率はかなり低いですね、SCP思いつく方々は凄いなぁとつくづく思います
SCP-093の様に色が変化する事から色毎にスライム達に対応させてみました
スライム、レッドスライム、シースライム、ダークスライムの四種以外はまた別の機会にご紹介します
思えばさ わ や か とかくすぐりお化けとかスライムのSCPって結構あるんじゃないのでしょうか?

今回は長いので1つだけですが次回は短い物2つの予定です
ご意見、ご感想をお待ちしています
ではまた次回

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