Tale03
Tale:定例会議
ここは王城の地下深く、僅か27人-13人の王室専属魔術会室長
王国に4つ存在する騎士団の各団長、7人の大臣と国王とその息子2人-が知る秘密の場所
そこで彼らは4ヶ月に1度に集まって定例会議を行う
とは言え主な内容は予算の編成程度で特に切羽詰った話題や議題は持ち上がらなかった
何方かと言えばお偉方がグダグダとお茶会をする様な会合だった
前回までは
既に王室専属魔術会の第六の席は新参に変わった
騎士団長の1人は休暇で不在
大臣の何人かは若干そわそわしていた
兎も角、国王が会議の開始を宣言した
「では定例会議を始める、今回の議題はまず第六室長からの
新しい魔法の実験、その実験の許可と実験に対しての予算決議を行う」
「陛下、私の実験の提案を受けて貰い、感謝の極みですが
第十室長が不在の様ですが・・・」
「彼については第十三室長に一任している」
「老いたる月の魔法使いは己が居城を離れず、我が言の葉を届ける事になっている
気にせず談合を進めるが良い」
「・・・なるほど、今回の議題ですが私こと"K"が発案した
新しい魔法の実験、その実験の為の意見交換と予算決議となります」
「失礼、少し良いですか?」
「はい、何でしょうか第十一室長殿」
「私の記憶が確かなら第六室長はケテル室長だった筈ですが
・・・私がフィールドワークに出ている間に何か有ったのですか?」
「バッカ、報告書位読めよ、殉職だよ殉職、くたばったんだよ」
「五月蠅い、犬」
「何だと盲女」
「第三、第十一、黙れ、第六、話せ」
「ありがとうございます、第八室長殿、今回私が提案するのは
平たく言えば超巨大な異世界の門です、詳しい資料はお手元に」
「待った、えーっと"K"君だったね、私は大臣の1人ダーク
私は魔法に関して素人だが異世界の門を開く魔法の存在は知っているし
それが如何いう結果を齎してきたかは兎も角、それが機能している事も知っている
だから態々予算を使ってまでこんな大きな魔方陣を作る必要性を感じないんだよ
この資料によるとこの大型の異世界への門は町一つは
軽く呑み込んでしまいそうじゃないか
こんなバカデカい物を作るのにどれだけの予算がかかり失敗の際に一体何が起こるのか
私にしてはかなりデカいリスク背負ってリターンが少なそうに見えるよ」
「ご指摘御尤もです、しかし大臣、従来の魔方陣では色々と不都合が有るのです
例えば#225はあまりの大きさに門を通してこちらに持って来る事は叶わなかった
今後、そういう事が起こり得る可能性が有ります、更にこの魔方陣を発展させれば
魔方陣の内部の物を異世界へ飛ばす魔法に出来ると私は思います」
「こちらの物を異世界へ?それに何の意味が?」
「お分かり頂けませんか?この巨大な魔方陣で囲んで異世界へ送ってしまえば
今対処に手を拱いている#1500、#999は無力化出来ると考えて」
「それは駄目だよ、うん、良くない」
「ブマロ大臣、何が良くないんだ?俺は良いアイデアだと思うぞ」
サルメゾン第一王子がブマロ大臣へ疑問を投げかける
他の大臣はあっ、と言う表情で2人を見る
「サルメゾン王子はまだ若いですからね
僕も30過ぎ位だからお爺さんって程ではないけど
でもね、良くないよ、良くないよ、僕は異世界を神の世界だと思うんだ」
「・・・・・・・・・・は?」
「異世界からの人々や物はとても素晴らしく神のもたらした奇跡に違いない
崇拝されるべき聖遺物や使徒として崇めるべきだと思う
それを態々異世界へ戻すのは良くないよ」
「いやいやブマロ、それは無いわ、アレが神の使徒?ちょっと頭のネジ飛んだか?
もしそうだとしても俺達が成すべき事は決まっている
アレ等を売るなり何なりして商売に転用すべきだ、さすれば大金が手に入る
#447とか無限の資源だ、金は幾ら有っても良い」
「ダークは黙ってて、お金お金五月蠅いよ」
「ブマロ、てめぇ金が無ければ俺達如何しようも無い屑の集まりだろうが!!」
「二人とも黙りなさい、大臣ともあろう者が全く恥ずかしい」
「うるせぇよ嫁き遅れ!!女がしゃしゃ」
ダークは自身の同僚に鼻っ柱を圧し折られた
「・・・まぁ人の気にしている事を言ったダーク大臣も悪い
だがパトリシア大臣、手を出すのは行けないな」
「失礼しました国王陛下」
「話を戻そう、この巨大な異世界の門を開く魔方陣
私は良いアイデアと思う、さっきも言った危険なオブジェクトの遺棄が可能になるのなら
多少の出費は構わないだろう」
「で、ですが陛下・・・このサイズは余りにも予算が・・・」
「我ら王室専属魔術会室長一同全てこの議案に賛同致します」
ライト第一室長が何時になく真面目に口を開いた
「・・・何?何故だ、理由を言え」
「第十室長には前もって話した結果、賛同すると言う返答を貰いました
後、他の室長全員特に否定的な反応を示してません」
「・・・・・前もって意見統合してたとかじゃないのか」
「じゃあ反対の室長挙手」
室長から挙手される事は無かった
「意外だな、キーパーかバロワ辺りが反対するかと思ったが」
「いえいえ陛下が賛成なさっているなら私は喜んで同意しますよ」
「断る理由が有りません」
「いや予算が・・・」
「魔法のプロ達がこう言っているんだ、やっていいだろう
この議案は可決
"K"第六室長はこの魔方陣を完成させる為のプロジェクトチームを編成しろ
それから問題が起こっても良い様に何処か隔離した場所の準備も進めなければな」
「ありがとうございます」
第六室長が国王に頭を下げる、忌々しそうにそれを見るダークとブマロ両大臣
「次の議題だがバロワ、説明を」
「はい、#682の殺害の為の予算の追加を申請します」
「またか、アレまだ死んでないのか?」
「個人的に賞金をかけているのですが、また絶命させるには至りません」
「これこそ異世界に放り込めば良いんじゃないのか?#682は小太りだけど
十分既存の門に入るサイズだろう?」
「ダーク、お前は馬鹿ですか」
「何だと嫁き、じゃなかったパトリシア
あんなのに予算使い過ぎだろ、正直無視で良くないか?」
「確かに無害に見えますが、連中が痛みを堪え我々に襲い掛かってきたら・・・
あぁ想像するだけで恐ろしいですねブライス」
「・・・・・え?ぼ、私ですか!?」
突然話を振られて驚く騎士団長ブライス
「ええ、不死身の肉体なんてそれだけで脅威でしょう、例え女とて」
「え、ええ、でも不死身の仕組みを理解出来れば、凄い役に」
「不死身の肉体なんてそんな物持ってたら、ソイツは人間では有りません」
「うーん、不死身なんてまさに神だと思うし、僕は良いと思うけどね」
「ブマロ大臣、少しお休みを頂いたら如何ですか?最近の言動目に余ります」
「君こそ早く良い人見つけたら?口を開けば"殺害"一択じゃないか
イライラし過ぎだと思うね」
「喧しいぞお前達!!今は内輪揉めをしている場合か!!」
グデラス大臣が一喝する
「・・・財布役から言わせて貰うと兎も角#682の殺害の為の予算編成は
少々キツいな、別の異世界の門を開いたり、後さっきの巨大魔方陣の為の新規予算とか
色々有るし、#682に付いては後回しでも良いんじゃないか?」
ダーク大臣が口を開く
「・・・・・陛下のご意見は?」
「ダークと同じ意見だ、室長達は如何だ?」
「#682とバロワの掛け合いは面白いのでそのままで良いと思います」
「ライト、真面目にやれよ!!」
「うっせ、犬が」
「誰が犬だ!!」
かくして会議は踊り、されど進まず
人事ファイル
第三室室長バロワ
好きな物:ジャーキー、骨、酒
嫌いな物:肉を焼き焦がす奴
バロワ第三室室長は特に他を逸する魔術の才は有りません
貴族出身者で威張り散らし部下からは嫌われ、上には媚びる典型的な小物です
しかし他の室長からはかなり気に入られています
極めて常識的な感性を持ち他の室長の奇行を
慌てて修正しようとする行動が滑稽に映る様です
また悪運が強く冗談半分で他の室長から殺害されかけていますが無事に生還しています
王室専属魔術会の業務は主に国王とのパイプ役として働いています
死に難い奴だよ実際、この間コイツ殺そうと部屋に行ったら
コイツ書類の山で修羅場中でさ、こっちを虚ろな目で見て来て
『殺してくれぇ』って言ってた、一頻り爆笑して直ぐに帰ったけどな-ライト第一室長
誰のせいで書類書く羽目になったと思ってやがる-バロワ第三室長
殺しに行ったっていうのはスルーなのな-サルメゾン第一王子
第十室室長ナイ
好きな物:月、星空
嫌いな物:月面、星
ナイ第十室室長は"月の魔法使い"です、比喩でも誇張でも無く彼は月に居ます
彼曰く月が彼の魔力の源であり300年は月に住んでいると主張しています
300年前に近所の世話焼き爺さんの家が
突然飛び立ったと言う証言も有りましたし間違いありません
彼は尊大で偉そうな態度を取りますが、まともに取り合わないと普通の口調になります
良く居る自分の知識を見せびらかしたいタイプの人間です
インスピレーションが湧かないから月で思案しようとジャック第十三室長が彼を発見し
彼を第十室室長の椅子と月から大地を監視する任務を与えました
また月面の環境整備を行い、特別な研究室や保養施設の建設の指揮も取っています
彼は嘗てあらゆる魔法を使いこなしていたと語っていますが長年使わなかったので
大地を観察する魔法しか使う事が出来ません、しかし精度は極めて高く月から大地に置かれた本を読む事も可能です
月にさらっと行っている様だけど簡単に行ける物なのか?-第二室長レフ
人と人との距離は月と大地は愚か大地と太陽より遥かに遠い
そして俺は人の心へ言葉を送る者・・・ならば月位簡単に行けて当然-第十三室長ジャック
確かにお前の言葉は心に残るよ、意味は分からないけど-第四室長アイク
第十一室室長アイリーン
好きな物:柑橘系の果物、生野菜
嫌いな物:肉全般
アイリーン第十一室室長は常に目を閉じている為盲人と勘違いされがちですが
実は室長の中で最も視力が良い事が判明しています
目を閉ざす理由は他の感覚の鍛錬の為です、目に頼らず感覚器官全てを総動員
更に魔術も併用する事で他者に対して限定的な読心が可能と称しています
また強化された感覚で知った事を基に様々な魔法使いその物に対する論文などの発表を行っています
現在フィールドワークで定例会議以外では王城から離れています
アイリーンが書いた『魔法使いなら知っておきたい髪の切り方』や
『体の魔力の流れを良くする食材100』とか論文書籍はベストセラーだから
個人的に我はこやつをライバル視している-ジャック第十三室長
ですが彼女の提唱する髪の毛量=魔力量と言う論理は如何でしょうか
確かに魔力が多い方に長髪が多いのは認めますが
私はあまり頭髪が無いのですがそれでも室長です-キーパー第五室長
騎士団長ブライス
好きな物:男遊び
嫌いな物:ここには書けない
騎士団長ブライスは小柄な女性で本来なら騎士団長になれる実力も家柄も有りませんが
大臣パトリシアの推薦で団長に選ばれました
騎士団長の中ではアルフレード団長に次ぐ新参で
経験はあまり有りません、孤児院で子供達と触れ合う事を男遊びと称すなど
やや背伸びをしたがる性格の様ですが、嫌いな物を言わないだけ世の中の事を分かっているようです
パトリシア大臣、部下への示しが尽きませんので
僕を見かける度にハグしようとするのを止めて下さい-ブライス団長
確かに私の方が背が高いからな私からハグするのは変か
良し、お前が私をハグする事を許可する-パトリシア大臣
大臣パトリシア
好きな物:騎士団長ブライス
嫌いな物:有り過ぎて書けない
大臣パトリシア、通称パティは歴代騎士団長などを輩出してきた武門の家柄の生まれで
魔術に対し忌避感を持っています
騎士などに有りがちなコンプレックスの一種で特筆する事は有りません
王室専属魔術会に対しては室長等の危険人物達の収容の為に必要と割り切っています
しかし異世界の物品に対し
それが如何に有用な物であっても破壊すべきと言う理論を展開しています
騎士団長ブライスとは彼女の学生時代から目を付け
彼女の支援をしているパドロンになっています
歳は行っているが、俺は余裕で抱ける-ライト第一室長
お前確か前に凄いデブで歯が三本しかねぇブスも抱いてたけど
正直お前が抱けない女が居るのか疑問だわ-サルメゾン第一王子
大臣ダーク
好きな物:金
嫌いな物:俺から金を奪う全て
大臣ダークは王国の歴代大臣の中でも最も奇妙な男です
金に対して並外れた執着を持ち、極めて質素な家に住み
食事を抜いたり王城職員の食堂で他人が残した残飯を食い漁り
城の備品を勝手に持ち帰り
果てはカーテンを勝手に服に作り替えたりします
極めて金に執着しますが金銭に関しては並外れた才覚を発揮し
王城の財政のほぼ全ては彼の管轄になっています
税制改革を行い、無駄な部署を省きコストを無くし
彼の就任前まで有った出費の7割以上が軽減しました
凄そうに書いているが唯単に無駄だらけだったという訳だよ
それにしてもここまで私が財政を良くしたのに異世界侵攻をしなければならない程
情勢は悪かったのか?-大臣ダーク
大臣ブマロ
好きな物:愛、友情、素晴らしい物
嫌いな物:無し
大臣ブマロは人畜無害な男性で家柄で大臣になった様な方ですが
部下に優しく、民にも多くの施しを与える素晴らしい方です
ただ優し過ぎる様で異世界から来た様々なオブジェクトと交流を持ち
信心深い性格からか彼女等を神か何かだと思い込んでいる様です
危ういな、異世界の奴等を逃がし始める可能性は無いのか?-レフ第二室長
彼にはそんな度胸も技能も無いし、そもそも異世界関連の権限を与えていないから
捕えた連中と距離を離せば問題無かろう-国王
ここは王城の地下深く、僅か27人-13人の王室専属魔術会室長
王国に4つ存在する騎士団の各団長、7人の大臣と国王とその息子2人-が知る秘密の場所
そこで彼らは4ヶ月に1度に集まって定例会議を行う
とは言え主な内容は予算の編成程度で特に切羽詰った話題や議題は持ち上がらなかった
何方かと言えばお偉方がグダグダとお茶会をする様な会合だった
前回までは
既に王室専属魔術会の第六の席は新参に変わった
騎士団長の1人は休暇で不在
大臣の何人かは若干そわそわしていた
兎も角、国王が会議の開始を宣言した
「では定例会議を始める、今回の議題はまず第六室長からの
新しい魔法の実験、その実験の許可と実験に対しての予算決議を行う」
「陛下、私の実験の提案を受けて貰い、感謝の極みですが
第十室長が不在の様ですが・・・」
「彼については第十三室長に一任している」
「老いたる月の魔法使いは己が居城を離れず、我が言の葉を届ける事になっている
気にせず談合を進めるが良い」
「・・・なるほど、今回の議題ですが私こと"K"が発案した
新しい魔法の実験、その実験の為の意見交換と予算決議となります」
「失礼、少し良いですか?」
「はい、何でしょうか第十一室長殿」
「私の記憶が確かなら第六室長はケテル室長だった筈ですが
・・・私がフィールドワークに出ている間に何か有ったのですか?」
「バッカ、報告書位読めよ、殉職だよ殉職、くたばったんだよ」
「五月蠅い、犬」
「何だと盲女」
「第三、第十一、黙れ、第六、話せ」
「ありがとうございます、第八室長殿、今回私が提案するのは
平たく言えば超巨大な異世界の門です、詳しい資料はお手元に」
「待った、えーっと"K"君だったね、私は大臣の1人ダーク
私は魔法に関して素人だが異世界の門を開く魔法の存在は知っているし
それが如何いう結果を齎してきたかは兎も角、それが機能している事も知っている
だから態々予算を使ってまでこんな大きな魔方陣を作る必要性を感じないんだよ
この資料によるとこの大型の異世界への門は町一つは
軽く呑み込んでしまいそうじゃないか
こんなバカデカい物を作るのにどれだけの予算がかかり失敗の際に一体何が起こるのか
私にしてはかなりデカいリスク背負ってリターンが少なそうに見えるよ」
「ご指摘御尤もです、しかし大臣、従来の魔方陣では色々と不都合が有るのです
例えば#225はあまりの大きさに門を通してこちらに持って来る事は叶わなかった
今後、そういう事が起こり得る可能性が有ります、更にこの魔方陣を発展させれば
魔方陣の内部の物を異世界へ飛ばす魔法に出来ると私は思います」
「こちらの物を異世界へ?それに何の意味が?」
「お分かり頂けませんか?この巨大な魔方陣で囲んで異世界へ送ってしまえば
今対処に手を拱いている#1500、#999は無力化出来ると考えて」
「それは駄目だよ、うん、良くない」
「ブマロ大臣、何が良くないんだ?俺は良いアイデアだと思うぞ」
サルメゾン第一王子がブマロ大臣へ疑問を投げかける
他の大臣はあっ、と言う表情で2人を見る
「サルメゾン王子はまだ若いですからね
僕も30過ぎ位だからお爺さんって程ではないけど
でもね、良くないよ、良くないよ、僕は異世界を神の世界だと思うんだ」
「・・・・・・・・・・は?」
「異世界からの人々や物はとても素晴らしく神のもたらした奇跡に違いない
崇拝されるべき聖遺物や使徒として崇めるべきだと思う
それを態々異世界へ戻すのは良くないよ」
「いやいやブマロ、それは無いわ、アレが神の使徒?ちょっと頭のネジ飛んだか?
もしそうだとしても俺達が成すべき事は決まっている
アレ等を売るなり何なりして商売に転用すべきだ、さすれば大金が手に入る
#447とか無限の資源だ、金は幾ら有っても良い」
「ダークは黙ってて、お金お金五月蠅いよ」
「ブマロ、てめぇ金が無ければ俺達如何しようも無い屑の集まりだろうが!!」
「二人とも黙りなさい、大臣ともあろう者が全く恥ずかしい」
「うるせぇよ嫁き遅れ!!女がしゃしゃ」
ダークは自身の同僚に鼻っ柱を圧し折られた
「・・・まぁ人の気にしている事を言ったダーク大臣も悪い
だがパトリシア大臣、手を出すのは行けないな」
「失礼しました国王陛下」
「話を戻そう、この巨大な異世界の門を開く魔方陣
私は良いアイデアと思う、さっきも言った危険なオブジェクトの遺棄が可能になるのなら
多少の出費は構わないだろう」
「で、ですが陛下・・・このサイズは余りにも予算が・・・」
「我ら王室専属魔術会室長一同全てこの議案に賛同致します」
ライト第一室長が何時になく真面目に口を開いた
「・・・何?何故だ、理由を言え」
「第十室長には前もって話した結果、賛同すると言う返答を貰いました
後、他の室長全員特に否定的な反応を示してません」
「・・・・・前もって意見統合してたとかじゃないのか」
「じゃあ反対の室長挙手」
室長から挙手される事は無かった
「意外だな、キーパーかバロワ辺りが反対するかと思ったが」
「いえいえ陛下が賛成なさっているなら私は喜んで同意しますよ」
「断る理由が有りません」
「いや予算が・・・」
「魔法のプロ達がこう言っているんだ、やっていいだろう
この議案は可決
"K"第六室長はこの魔方陣を完成させる為のプロジェクトチームを編成しろ
それから問題が起こっても良い様に何処か隔離した場所の準備も進めなければな」
「ありがとうございます」
第六室長が国王に頭を下げる、忌々しそうにそれを見るダークとブマロ両大臣
「次の議題だがバロワ、説明を」
「はい、#682の殺害の為の予算の追加を申請します」
「またか、アレまだ死んでないのか?」
「個人的に賞金をかけているのですが、また絶命させるには至りません」
「これこそ異世界に放り込めば良いんじゃないのか?#682は小太りだけど
十分既存の門に入るサイズだろう?」
「ダーク、お前は馬鹿ですか」
「何だと嫁き、じゃなかったパトリシア
あんなのに予算使い過ぎだろ、正直無視で良くないか?」
「確かに無害に見えますが、連中が痛みを堪え我々に襲い掛かってきたら・・・
あぁ想像するだけで恐ろしいですねブライス」
「・・・・・え?ぼ、私ですか!?」
突然話を振られて驚く騎士団長ブライス
「ええ、不死身の肉体なんてそれだけで脅威でしょう、例え女とて」
「え、ええ、でも不死身の仕組みを理解出来れば、凄い役に」
「不死身の肉体なんてそんな物持ってたら、ソイツは人間では有りません」
「うーん、不死身なんてまさに神だと思うし、僕は良いと思うけどね」
「ブマロ大臣、少しお休みを頂いたら如何ですか?最近の言動目に余ります」
「君こそ早く良い人見つけたら?口を開けば"殺害"一択じゃないか
イライラし過ぎだと思うね」
「喧しいぞお前達!!今は内輪揉めをしている場合か!!」
グデラス大臣が一喝する
「・・・財布役から言わせて貰うと兎も角#682の殺害の為の予算編成は
少々キツいな、別の異世界の門を開いたり、後さっきの巨大魔方陣の為の新規予算とか
色々有るし、#682に付いては後回しでも良いんじゃないか?」
ダーク大臣が口を開く
「・・・・・陛下のご意見は?」
「ダークと同じ意見だ、室長達は如何だ?」
「#682とバロワの掛け合いは面白いのでそのままで良いと思います」
「ライト、真面目にやれよ!!」
「うっせ、犬が」
「誰が犬だ!!」
かくして会議は踊り、されど進まず
人事ファイル
第三室室長バロワ
好きな物:ジャーキー、骨、酒
嫌いな物:肉を焼き焦がす奴
バロワ第三室室長は特に他を逸する魔術の才は有りません
貴族出身者で威張り散らし部下からは嫌われ、上には媚びる典型的な小物です
しかし他の室長からはかなり気に入られています
極めて常識的な感性を持ち他の室長の奇行を
慌てて修正しようとする行動が滑稽に映る様です
また悪運が強く冗談半分で他の室長から殺害されかけていますが無事に生還しています
王室専属魔術会の業務は主に国王とのパイプ役として働いています
死に難い奴だよ実際、この間コイツ殺そうと部屋に行ったら
コイツ書類の山で修羅場中でさ、こっちを虚ろな目で見て来て
『殺してくれぇ』って言ってた、一頻り爆笑して直ぐに帰ったけどな-ライト第一室長
誰のせいで書類書く羽目になったと思ってやがる-バロワ第三室長
殺しに行ったっていうのはスルーなのな-サルメゾン第一王子
第十室室長ナイ
好きな物:月、星空
嫌いな物:月面、星
ナイ第十室室長は"月の魔法使い"です、比喩でも誇張でも無く彼は月に居ます
彼曰く月が彼の魔力の源であり300年は月に住んでいると主張しています
300年前に近所の世話焼き爺さんの家が
突然飛び立ったと言う証言も有りましたし間違いありません
彼は尊大で偉そうな態度を取りますが、まともに取り合わないと普通の口調になります
良く居る自分の知識を見せびらかしたいタイプの人間です
インスピレーションが湧かないから月で思案しようとジャック第十三室長が彼を発見し
彼を第十室室長の椅子と月から大地を監視する任務を与えました
また月面の環境整備を行い、特別な研究室や保養施設の建設の指揮も取っています
彼は嘗てあらゆる魔法を使いこなしていたと語っていますが長年使わなかったので
大地を観察する魔法しか使う事が出来ません、しかし精度は極めて高く月から大地に置かれた本を読む事も可能です
月にさらっと行っている様だけど簡単に行ける物なのか?-第二室長レフ
人と人との距離は月と大地は愚か大地と太陽より遥かに遠い
そして俺は人の心へ言葉を送る者・・・ならば月位簡単に行けて当然-第十三室長ジャック
確かにお前の言葉は心に残るよ、意味は分からないけど-第四室長アイク
第十一室室長アイリーン
好きな物:柑橘系の果物、生野菜
嫌いな物:肉全般
アイリーン第十一室室長は常に目を閉じている為盲人と勘違いされがちですが
実は室長の中で最も視力が良い事が判明しています
目を閉ざす理由は他の感覚の鍛錬の為です、目に頼らず感覚器官全てを総動員
更に魔術も併用する事で他者に対して限定的な読心が可能と称しています
また強化された感覚で知った事を基に様々な魔法使いその物に対する論文などの発表を行っています
現在フィールドワークで定例会議以外では王城から離れています
アイリーンが書いた『魔法使いなら知っておきたい髪の切り方』や
『体の魔力の流れを良くする食材100』とか論文書籍はベストセラーだから
個人的に我はこやつをライバル視している-ジャック第十三室長
ですが彼女の提唱する髪の毛量=魔力量と言う論理は如何でしょうか
確かに魔力が多い方に長髪が多いのは認めますが
私はあまり頭髪が無いのですがそれでも室長です-キーパー第五室長
騎士団長ブライス
好きな物:男遊び
嫌いな物:ここには書けない
騎士団長ブライスは小柄な女性で本来なら騎士団長になれる実力も家柄も有りませんが
大臣パトリシアの推薦で団長に選ばれました
騎士団長の中ではアルフレード団長に次ぐ新参で
経験はあまり有りません、孤児院で子供達と触れ合う事を男遊びと称すなど
やや背伸びをしたがる性格の様ですが、嫌いな物を言わないだけ世の中の事を分かっているようです
パトリシア大臣、部下への示しが尽きませんので
僕を見かける度にハグしようとするのを止めて下さい-ブライス団長
確かに私の方が背が高いからな私からハグするのは変か
良し、お前が私をハグする事を許可する-パトリシア大臣
大臣パトリシア
好きな物:騎士団長ブライス
嫌いな物:有り過ぎて書けない
大臣パトリシア、通称パティは歴代騎士団長などを輩出してきた武門の家柄の生まれで
魔術に対し忌避感を持っています
騎士などに有りがちなコンプレックスの一種で特筆する事は有りません
王室専属魔術会に対しては室長等の危険人物達の収容の為に必要と割り切っています
しかし異世界の物品に対し
それが如何に有用な物であっても破壊すべきと言う理論を展開しています
騎士団長ブライスとは彼女の学生時代から目を付け
彼女の支援をしているパドロンになっています
歳は行っているが、俺は余裕で抱ける-ライト第一室長
お前確か前に凄いデブで歯が三本しかねぇブスも抱いてたけど
正直お前が抱けない女が居るのか疑問だわ-サルメゾン第一王子
大臣ダーク
好きな物:金
嫌いな物:俺から金を奪う全て
大臣ダークは王国の歴代大臣の中でも最も奇妙な男です
金に対して並外れた執着を持ち、極めて質素な家に住み
食事を抜いたり王城職員の食堂で他人が残した残飯を食い漁り
城の備品を勝手に持ち帰り
果てはカーテンを勝手に服に作り替えたりします
極めて金に執着しますが金銭に関しては並外れた才覚を発揮し
王城の財政のほぼ全ては彼の管轄になっています
税制改革を行い、無駄な部署を省きコストを無くし
彼の就任前まで有った出費の7割以上が軽減しました
凄そうに書いているが唯単に無駄だらけだったという訳だよ
それにしてもここまで私が財政を良くしたのに異世界侵攻をしなければならない程
情勢は悪かったのか?-大臣ダーク
大臣ブマロ
好きな物:愛、友情、素晴らしい物
嫌いな物:無し
大臣ブマロは人畜無害な男性で家柄で大臣になった様な方ですが
部下に優しく、民にも多くの施しを与える素晴らしい方です
ただ優し過ぎる様で異世界から来た様々なオブジェクトと交流を持ち
信心深い性格からか彼女等を神か何かだと思い込んでいる様です
危ういな、異世界の奴等を逃がし始める可能性は無いのか?-レフ第二室長
彼にはそんな度胸も技能も無いし、そもそも異世界関連の権限を与えていないから
捕えた連中と距離を離せば問題無かろう-国王
15/08/01 02:39更新 / Mr.後困る
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