おかえり
「おーっす、これから男だけでカラオケ行こうって計画なんだけど土井はどうする?」
最後のホームルームが終わると同時にクラスメイトの火野が話しかけてきた。
「悪い、今日は約束があるから」
「マジか……予定って彼女とのデートとか?」
「そんな所だ、花束をプレゼントしないといけなくてな」
「ベタなプレゼントだなぁ、やっぱりプレゼントってそういうのが喜ばれるのか?」
「さぁね、そんなことより他の男に声かけなくていいのか? すでに何人か拉致られてるぞ」
「やっべ、まだメンバーが小田切と俺しか決まってねぇのに……じゃあな土井、また明日な!!」
「……そうだな」
また明日……か、今日に限ってそんな台詞を聞くことになるなんて。
「一人でいるのは慣れたと思ってたんだけどな」
俺は彼女に向かって話しかける。
「なぁ、今の学校は楽しいよ。みんなで騒いで馬鹿なことやったりして退屈なことなんて一つもない位に、お前といた時みたいにさ」
返事は返ってこない。
「やっぱりお前がいたらもっと楽しいんだろうなって思うんだ、お前もそういうの好きだっただろ?」
返ってくるわけがない。
「そうだ、今日カラオケに誘われたんだよ。お前と会いたかったから断ったけど……」
彼女に俺の言葉が届くわけない。
「それでさ、また明日って言われたんだよ。そしたら余計にお前の事を思い出して……俺、お前がいないと寂しいよ。どんなときでもさ、もしもお前が一緒にいたらなんて考えるんだぞ」
彼女はもうとっくの昔に死んでしまっているのだから、俺は彼女が眠っている墓に話しかけているだけに過ぎないんだ。
「悪いな、なんか愚痴みたいになっちまった……でも大丈夫だ、俺はまだ自分を誤魔化して笑えるから、だから……お前が心配することなんて何にもないからな」
「そんな辛そうな作り笑いでボクが安心できるわけないでしょ」
声が聞こえた、忘れられない、俺が聞き間違えるはずない声が。
「なにビックリしてるのさ、せっかく帰ってきたのに」
「優衣なのか? 俺はついに幻聴まで聞こえるように……」
「人を幻聴扱いしないで欲しいんだけどなぁ……良太、後ろ向いて」
そう言われて俺が後ろを振り向くとそこには、羽衣を纏ったあの頃と変わらない……いや少し成長した優衣が居た。
「正確にはもう人じゃ無くなっちゃったんだけどね……でもちゃんと良太のこと天国でずっと見てたよ、キミがボクの事を想い続けてた事も知ってるから、ごめんね今まで寂しくさせて……そして、約束にはだいぶ遅れちゃったけどただいま♪」
涙が溢れてくる、ずっと会いたくて、でも会えなかった彼女がこんなに近くに居るんだ。嬉しくて感情を抑えることなんてできない。
「あぁ……おかえり、遅刻過ぎるんだよ……俺が、どれだけ待ったと思ってるんだよ」
「泣きながら言わないでよ」
「お前だって、泣いてるだろ!」
「ボクだって寂しかったんだからぁ」
二人で涙を流しながら抱き合う、お互いがちゃんとここに居ることを確かめ合うために。
「それで……優衣は幽霊になったのか?」
散々泣きあって落ち着いたところで俺は優衣に聞いた。
「幽霊というか天使になっちゃった」
「天使?」
「うん、天国に行った後にボクが良太にちゃんと伝えてないことがあったからそれで」
「じゃあそれを伝えたらお前は天国に帰るのか?」
「帰らないよ、これからはずっと良太と一緒だよ。今まで離れてた分もずぅっと♪」
「そっか、それなら良かった」
これからは優衣と一緒に居られることを知り俺は心の底から安心した。また彼女と別れなければならない悲しみを背負わなくていいんだ。
「それで、俺に伝えてないことって?」
「それは……その……ボクは良太のことが大好きなの、それで良太が善い人だからご褒美にボクが派遣されて」
優衣が恥ずかしそうにもじもじとしながら答えた。
「……それってつまり」
「ボクを良太の奥さんにして欲しいなって」
「いや、俺まだ学生」
「結婚自体は卒業してからでもいいんだよ、それでもずっとそばで愛して幸せにしてあげないといけないから」
「ありがとう、俺も優衣のこと愛してる」
口付けを交わし俺たちは手を結んだ、もう二度とお互いに離れ離れにならないように。
最後のホームルームが終わると同時にクラスメイトの火野が話しかけてきた。
「悪い、今日は約束があるから」
「マジか……予定って彼女とのデートとか?」
「そんな所だ、花束をプレゼントしないといけなくてな」
「ベタなプレゼントだなぁ、やっぱりプレゼントってそういうのが喜ばれるのか?」
「さぁね、そんなことより他の男に声かけなくていいのか? すでに何人か拉致られてるぞ」
「やっべ、まだメンバーが小田切と俺しか決まってねぇのに……じゃあな土井、また明日な!!」
「……そうだな」
また明日……か、今日に限ってそんな台詞を聞くことになるなんて。
「一人でいるのは慣れたと思ってたんだけどな」
俺は彼女に向かって話しかける。
「なぁ、今の学校は楽しいよ。みんなで騒いで馬鹿なことやったりして退屈なことなんて一つもない位に、お前といた時みたいにさ」
返事は返ってこない。
「やっぱりお前がいたらもっと楽しいんだろうなって思うんだ、お前もそういうの好きだっただろ?」
返ってくるわけがない。
「そうだ、今日カラオケに誘われたんだよ。お前と会いたかったから断ったけど……」
彼女に俺の言葉が届くわけない。
「それでさ、また明日って言われたんだよ。そしたら余計にお前の事を思い出して……俺、お前がいないと寂しいよ。どんなときでもさ、もしもお前が一緒にいたらなんて考えるんだぞ」
彼女はもうとっくの昔に死んでしまっているのだから、俺は彼女が眠っている墓に話しかけているだけに過ぎないんだ。
「悪いな、なんか愚痴みたいになっちまった……でも大丈夫だ、俺はまだ自分を誤魔化して笑えるから、だから……お前が心配することなんて何にもないからな」
「そんな辛そうな作り笑いでボクが安心できるわけないでしょ」
声が聞こえた、忘れられない、俺が聞き間違えるはずない声が。
「なにビックリしてるのさ、せっかく帰ってきたのに」
「優衣なのか? 俺はついに幻聴まで聞こえるように……」
「人を幻聴扱いしないで欲しいんだけどなぁ……良太、後ろ向いて」
そう言われて俺が後ろを振り向くとそこには、羽衣を纏ったあの頃と変わらない……いや少し成長した優衣が居た。
「正確にはもう人じゃ無くなっちゃったんだけどね……でもちゃんと良太のこと天国でずっと見てたよ、キミがボクの事を想い続けてた事も知ってるから、ごめんね今まで寂しくさせて……そして、約束にはだいぶ遅れちゃったけどただいま♪」
涙が溢れてくる、ずっと会いたくて、でも会えなかった彼女がこんなに近くに居るんだ。嬉しくて感情を抑えることなんてできない。
「あぁ……おかえり、遅刻過ぎるんだよ……俺が、どれだけ待ったと思ってるんだよ」
「泣きながら言わないでよ」
「お前だって、泣いてるだろ!」
「ボクだって寂しかったんだからぁ」
二人で涙を流しながら抱き合う、お互いがちゃんとここに居ることを確かめ合うために。
「それで……優衣は幽霊になったのか?」
散々泣きあって落ち着いたところで俺は優衣に聞いた。
「幽霊というか天使になっちゃった」
「天使?」
「うん、天国に行った後にボクが良太にちゃんと伝えてないことがあったからそれで」
「じゃあそれを伝えたらお前は天国に帰るのか?」
「帰らないよ、これからはずっと良太と一緒だよ。今まで離れてた分もずぅっと♪」
「そっか、それなら良かった」
これからは優衣と一緒に居られることを知り俺は心の底から安心した。また彼女と別れなければならない悲しみを背負わなくていいんだ。
「それで、俺に伝えてないことって?」
「それは……その……ボクは良太のことが大好きなの、それで良太が善い人だからご褒美にボクが派遣されて」
優衣が恥ずかしそうにもじもじとしながら答えた。
「……それってつまり」
「ボクを良太の奥さんにして欲しいなって」
「いや、俺まだ学生」
「結婚自体は卒業してからでもいいんだよ、それでもずっとそばで愛して幸せにしてあげないといけないから」
「ありがとう、俺も優衣のこと愛してる」
口付けを交わし俺たちは手を結んだ、もう二度とお互いに離れ離れにならないように。
15/04/25 05:38更新 / アンノウン