読切小説
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キミの香り
「んーやっぱり音弥ちゃんの香りって美味しいなぁ」

朝起きてすぐに俺は幼馴染である香音に抱きつかれた。香音の胸が思いっきり当たっているがまぁ役得だろう。

「なんで朝っぱらから幼馴染の朝飯にならなきゃいけないんですかねぇ?」
「なんでって、音弥ちゃんはボクの主食だからね〜」
「ってかな、匂いならお前のほうがよっぽど良い匂いだと俺は思うんだけど」
「そうかなぁ?ボクは音弥ちゃんの香りが一番いいと思うよ、というか音弥ちゃん以外の香りは食べるつもりないし」
「なんで俺限定なんだよ!」
「だって、ボクは音弥ちゃんが好きなんだよ?」

恥ずかしげも無く当たり前のように俺の事が好きだと告げる香音。
俺はコイツのこう言うところが苦手なんだよ、俺には出来ないことを簡単に出来るんだから。

「あっ好きと言えばこれ渡すんだった!」

香音が渡してきたのは可愛いラッピングがされた袋だった。

「今日はバレンタインでしょ?だから音弥ちゃんに作ってきたの♪」
「あーそうか、ありがとう」

俺はそう言って香音が持っているチョコレートを受け取ろうとするがヒョイと遠ざけられてしまう。

「だーめ、このチョコはちゃんとした食べ方があるんだから!」
「どんな食べ方だよ?」
「それはねー♪」

楽しそうに言いながら香音は袋を開けるとチョコを一つ口に入れてしまった。

「お前が食べてどうすんだっんむ!」

香音は俺に口付けをすると、そのまま口の中で溶けたチョコを舌を使い俺の口内へと運んでいく。
甘いチョコレートが香音の芳しい香りによってより一層甘さが引き立てられる。それに何よりも香音の舌使いのせいで俺自身もチョコレートのように溶けてしまうような錯覚まで感じてしまった。

「どう?音弥ちゃん美味しい?」
「……えっ!?あっあぁおいしかったよ」
「良かったーこの食べ方って魔界の方だと流行ってるんだって」
「そうなのか、魔界でか」

なんだか頭がボーっとしてくる。

「うん!このチョコもね材料にこだわって作ってみたんだ、音弥ちゃんが美味しいって言ってくれてボク良かったよ」
「……なぁ、もう一個食べないか?」

それに香音のことしか考えられなくなってきた。

「いいよ♪じゃあ……」

そう言ってチョコレートを口に入れている香音を俺は押し倒す。

「おろやひゃん、ろうしたの?」
「なぁ香音、俺はお前も食べたくなっちゃった」
「……おろやひゃんなら、いいよ」

恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうな香音のチョコレートまみれの口内を俺は舐めとるようにキスをした。





俺がはっきりと覚えてるのはここまでだ。
だからこそ、今日起きたときに自分と香音が裸で抱き合うように寝ていたことに驚いたのだ。

「あれ?どうしたの音弥ちゃん?」

俺が起きた事に気づいたのか、香音も翼で目を擦りながら起きたようだ。

「なぁ香音、もしかして昨日って」
「昨日?激しかったね♥ボクの初めてを音弥ちゃんにあげられてとっても嬉しいなぁ」

愛おしそうに下腹部をなでる香音、それを見て俺もだんだんと思い出してきた。昨日はチョコレートを食べた勢いで香音に襲い掛かって……繋がってしまったんだ。

「そういえばボク音弥ちゃんから聞いてないよ」
「な、何を!?」
「音弥ちゃんボクに好きって言ってくれてない!」

いまさら顔を真っ赤にして焦ってしまう俺に香音は頬を膨れさせながら言った。
答える必要も無いと思ってたんだけどなぁ、俺の答えはもちろん決まっている。

「香音好きだよ、愛してる」
「ボクも音弥ちゃんの事、大好き♪」

俺は顔をほころばせながら抱きついてくる香音の頭をなでる。順番は変わってしまったけどもとても幸せだ。

まだまだ寒さは続いているが、俺と香音のように春は近づいている。
15/02/03 04:14更新 / アンノウン

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