読切小説
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甘い香りは恋の匂い
「おっはよー、今日も温かいねー」

ボヨン、ボヨンと自分の下半身が埋もれている果肉を弾ませて俺の幼馴染は挨拶をしてきた。

「たぶんだな温かいのは優の頭の中だけだ」

冷たくあしらっている様にも思えるが、現在の気温は3度である。どう考えても温かいとは俺には思えない。

「あっれー? もしかしてワタちゃん寒いの? だったらボクの綿毛を触ってみる? 温かいぞー」
「マジで!? いやー前からそれ温かそうだと思ってたんだよなぁ」

そんな甘い誘いに俺はまんまと引っかかり優のプルンとした果肉の上に乗りかかった。

「確かに温かいなこの綿毛、ふわふわしててなんかずっと触っていたくなるな」
「でしょー、ボクの自慢なんだから……ってそこはくすぐったいってば♪」

優の腕や肩、耳の綿毛を撫でている時だった。突然、俺の座っていた果肉が溶けるように沈んでいく。

「あのー、優さん? 何をされたのでしょうか? 勘違いでなければ俺は沈んでません?」
「ふっふーん、引っかかったな! ワタちゃんを捕まえたぞ」
「所でこれ出れるの?」
「まぁ、ボクの意思で自由に硬さを変えられるからね。出れるよ」
「じゃあ、出して」
「やーだ♪ ボクが満足するまで出させてあげないんだから」

いや、その出してもらえないと俺が優の甘い香りでなんと言うか我慢できなくなりそうなんだけど。

「どうしたら満足してくれる?」
「そうだなぁ……ワタちゃんがボクの恋人になってくれるなら満足するかも」
「えっそれでいいの? 俺は前から優のこと好きなんだけどそれなら抜け出すのは惜しいかもしれないなぁ」
「なーんて……えっなっ」
「優、どうした?顔が赤いぞ」

出された条件が俺にとってもいいものだったから二つ返事でOKを出したらなぜか優は顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

「だって、ワタちゃんのこと困らせようと思ってたのにぃ……」

ついには泣き出してしまった。

「あっ悪い悪い、恋人ってのは冗談だったわけか……ごめんな」
「ううん、ボクもワタちゃんのこと好きだよ……でもさっきみたいなこと言えばワタちゃんが恥ずかしがると思って」
「あー、俺が恥ずかしがらずに普通に喜んだから予想外のことで逆に恥ずかしくなったわけか」
「うん」

冷静に対処してるつもりだけど優の涙も甘い香りがして舐めたいという衝動に駆られる、だが流石に我慢せねば。
あやすように抱きしめながら彼女の背中をぽんぽんと叩く。

「んっもう大丈夫だよ、逆に人目のつく所で抱きしめられてるとそっちが恥ずかしいよ」

落ち着いてきたのか優は自分達がどんなところで何をしているのかに気づいたようだった。

「いいじゃん、俺たちもう恋人だろ? 近所で噂になるぐらいだって」
「それが恥ずかしいんだって! あっそれより学校」
「もう完全に遅刻だな、よしサボって優の家に行こう改めて挨拶しなきゃ」
「駄目だってば、ほら。ちゃんとボクに捕まってて全速力で跳ねていくんだから!」
「捕まってなくてももう離さないだろ?」
「まぁね♪」

どうやら俺たちにとって今年はいい年になりそうだ。
15/01/13 02:04更新 / アンノウン

■作者メッセージ
「二人で一緒に遅刻なんて仲がいいわねぇ」

「「あははは……すみません」」

俺と優は担任であるメロウ先生に遅刻届けを貰いにきていた。

「まぁ放課後に空いてる教室の掃除を『二人っきりで』掃除してくれるなら別にいいわよ、最初は私の授業だったからね」

「「ありがとうございます!!」」

俺と優は恩赦が出たことに二人で喜びながら一緒に職員室から出て行った。

「カップルになりたての生徒が二人っきりで……録画の準備しとかなくっちゃ♪」

それがメロウ先生の計画だとも知らずに。

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