読切小説
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楽しいことはいいことだ!
「ねぇねぇ、かずま! あれ楽しそう!」

俺の幼馴染が大好きな笹をかじるのも止めて目をキラキラさせながら見ている先には体育教師の頭を抱えた火鼠を肩車したまま全力で走っているコカトリス、さらにそれを追いかけている男が二人。

「後でお説教されるのが嫌じゃなければ真央も混ざってきてもいいと思うぞ、ただし絶対に俺は混ざらないからな」
「うーん……かずまが一緒じゃないなら我慢する」

真央は残念そうにしながら再び笹をかじり始める。まあ、俺は参加しなくても真央が参加した時点で保護者認定されている俺は一緒に怒られるはめになるからな。まずは真央が諦めてくれて良かった。
そもそもあれに一緒になったところで追いかけられる側に参加するであろう真央は楽しいかもしれないが、俺は間違いなく追いかける側になる。追いかけているあの二人には悪いが、俺は絶対にそんな厄介ごとはごめんだ。


「うぅー、やっぱり我慢できない、ボクも混ざってくる! 順子ちゃんパース!!」

笹を放り投げて、さっきの厄介ごとの群に飛び込んでいく真央、そしてさよなら俺の平穏。

「まて、真央お前が行ったら連帯責任で俺も怒られるんだよ!」





「いやー、楽しかったね」
「お前らタフすぎるんだよ、何で授業終了まで走り続けられるんだよ。まだ初回の授業だからって先生は何とか許してくれたけど、次は絶対に許してくれねえぞ」

結局、体育の授業は一部のイチャついていたクラスメイトを除くクラス全体を巻き込んだ女子VS男子の壮絶な追いかけっこ大会となっていた。
まぁ、そのおかげでクラスの男子のほとんどが苦労人だということが分かり絆は深められたけど。

「終わりよければ全てよしだよ、楽しければそれでいいんだよ」
「言っとくが真央お前が受け取ったパスをさらに他のクラスメイトに回さなければあんな大事にはなってなかったはずなんだけどな」
「面白いことは独り占めしちゃいけないんだよ、だから皆も混ぜてあげたの」

その考えは良いことだけど、厄介ごとまで共有させる必要は無いだろうに。

「あのなぁ、真央。お前にとっては楽しいことでも他の人には楽しくなかったりすることだって……」
「さぁて、ごっはん♪ ごっはん♪」
「人の話を聞けよ!!」
「ん? かずまどうしたの?」

可愛らしく笹に食べ始める真央はたぶん自分の魔物娘としての武器が何であるかを本能的に知っているのであろう。
その愛くるしい姿を見ているとこっちの説教しようと思う気持ちも自然とそがれてしまう。ここで心を鬼にしてでも注意しない俺も十分悪いのだが。

「いや、もういい。なんていうか疲れたわ」
「やっぱり楽しいね、この学校は」

確かに追いかけっこをしてる間も楽しくなかったと言えば嘘になる、真央の楽しいことセンサーに間違いはなく。彼女のおかげでクラスが一つに纏まったのも事実だ。

「でも、やっぱりボクはかずまと一緒にいるときが一番楽しいなぁ。だからボクはかずまと同じクラスになれて幸せだよ♪」

飛び切りの笑顔で語りかけてくる真央、この笑顔を見るとなんだかそれ以外のことがどうでもいいと思えてしまうほどの反則技だ。

「ったく、俺も真央と一緒にいるときが一番楽しいよ」

ありきたりだけど、こんな言葉しか返せない。でもこれでいいんだ俺と真央の関係はそれだけでも十分に分かり合えるんだから。

「かずま、大好きだよ」
「俺も真央のこと大好きだ」

この後もまた真央の楽しいことでいろんなことが起こるんだろう、それでもって俺も厄介ごとに巻き込まれて。
でも、いいんだ俺は彼女の一番のお気に入りなんだから。
14/11/16 18:03更新 / アンノウン

■作者メッセージ
「はーい、パンダちゃんたちがいい空気だから撤収ー各自昼食はこの教室以外の場所で相方と食べておくように」
「絹江、何で俺まで手伝わされてんだよ」
「そりゃもちろんキミがボクの相方だからさ」
「だと思ったよ畜生」
「所で、だ。ボクは決めたよこの学園の生徒会長になってこのクラス並みに学園を盛り上げるんだ、そのときはキミに副会長になってもらおう。ついでに生徒会役員にパンダちゃんカップルを組み入れて支持率も上げておく」
「俺はまず絹江が生徒会長になれないように反対票入れておかなくちゃいけないな」
「はっはっは、ボクがそんなことさせるとでも? キミの投票用紙はボクが代わりに書いておくに決まってるじゃないか」
これは、生徒会室がお茶会室になることが決まった日でもあった。

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