読切小説
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よい仲の小いさかい
「なぁ、渚ちょっといいか?」

ボクが漫画を読みながらベッドで寝そべっていると、輝クンが話しかけてきた。

「なんだい?」
「お前、女なのになんで俺とばっかり一緒にいるんだ?」
「……そうだね、輝クンと一緒にいるのが一番楽だからかな。そもそもキミと仲良くするのって性別が関係してるのかい?」
「いや、関係ないけど。年頃の女の子が、暇があれば野郎の部屋に入り浸ってるのは変な勘違いされるんじゃないか」

くつろぎ過ぎていて忘れてたけど輝クンの部屋だったなここ。

「勘違いされたらされたでその時考えるからいいよ、ところで輝クンこの漫画の次の巻は?」
「それが最新巻だよ、俺だってまだ読んでないのに勝手に読みやがって」

ふむ、どうしようか。暇つぶしできるものが無くなってしまった。輝クンの持ってる他の漫画は全部読んであるし。
……待てよ、男なら誰でも持っていると言われるあれでも探してみようか。
そう思ってボクは寝そべっていたベッドの下を探ってみることにした。

「おい、渚なにやってるんだよ」
「エロ本探しだよ、ほらよく漫画とかだとベッドの下とかに隠してあるじゃん」
「なんだエロ本か……ってちょっと待て」

輝クンが慌ててボクを止めようとするがもう遅い、ボクは過激な表紙の雑誌を発見していた。

「なになに『こんなに可愛い子が男の子のはずが無い! アルプ特集』ねぇ」
「お前、マジでふざけるなって」

恥ずかしいのか顔を真っ赤にした輝クンがボクの手から雑誌を取り上げる。
意外だな、輝クンがアルプに興味があっただなんて。

「輝クンはアルプが好きなのかなぁ?」
「……アルプが好きで悪いかよ」

おぉ、認めた。これならちょっとからかってもいいかな?

「じゃあ、ボクで妄想とかしたことあるの?」
「あー、渚でか……あるにはあるかな」

あるんだ……輝クンがボクで妄想して、オナニーしたりしてるんだ……もう少しだけ意地悪してもいいよね。

「へぇ、輝クンの妄想ではボクはどんなことされてたのかな?」
「それは、流石に言えないっての」
「言わないと……襲っちゃうぞ♪」

そう言いながらボクは恥ずかしがっている輝クンに抱きついて、彼の耳たぶを甘噛みする。

「わかった、言う。言うから一旦離れろ」
「わかればよろしい、だけど素直に言わなかった罰として抱きついたままだからね」
「その、だな……渚に口でしてもらったりとかだ」
「他には?」
「えっと、言わなきゃダメ?」
「襲われてもいいなら言わなくてもいいけど」

あれ? おかしいな、最初はちょっと意地悪したらそれで終わりにするつもりだったのに。

「わかったよ、渚とセックスしてる妄想もした。これでいいだろ」
「よくできました、ご褒美に輝クンがボクで妄想してたことをやってあげるよ」

輝クンがボクでエッチな妄想してるってわかったら、なんか胸が熱くなって離れたくなくなっちゃった。

「ちょっと待てよ、話が違うぞ」
「魔物に向かって貴女で妄想してます、なんて言って逃げられると思ってるのかい?」

あぁ、そっか……ごめんね、輝クン。ボクは素直じゃないから面と向かって言えないけど。

「マジで止めろって。待て、ズボンを脱がすな」
「いっただきまーす」

ボクは輝クンのこと、愛してるよ。

――――――――――――

――――――――

――――

「ご馳走様でした」
「逆レイプとかなんなんだよ、エロ本の中だけでよかったのに」
「輝クンの童貞はボクが食べちゃったけど、ほらボクの処女を輝クンにあげたんだから機嫌直してよ、それに気持ちよかったでしょ?」
「そういう問題じゃねえっての」

怒られた、でも仕方ないよねボクが無理やり襲ったのは事実だし。輝クンに嫌われてもおかしくない事をボクはしてしまったんだから。

「本当にごめんなさい、輝クンがもう近寄るなって言うならもう二度と近寄らないから」
「だから、そうじゃないって。本当なら、俺が渚に格好良く告白してこういうことしたかったのに」
「……はい?」
「そもそもね、好きでもない奴で妄想してオナニーなんかするわけないだろ。俺が渚をリードしてエッチする予定だったのに」

つまり、輝クンは自分優位じゃなかったのが悔しいだけだと。

「ボクの輝クンに嫌われたかもしれないって気持ちを返せよ」
「いやぁ、さっきの渚の泣きそうな顔も可愛かったけどな」
「もう一回搾り取ってやろうか?」
「もう何もでないんで勘弁してください、本当に」

よかった、輝クンに嫌われたわけじゃないんだ。ほっと安心すると同時にやっぱりボクは輝クンが好きなんだと再確認する。

「まぁあれだな、順番が逆になった上に格好良くもないけど……渚、聞いてくれるか」
「うん」
「俺は渚のことが好きだ、絶対に幸せにするから……俺と付き合ってください」

そんな事を言われたらボクが言える事なんて一つしかないじゃないか。

「喜んで」

ボクは飛び切りの笑顔で再び彼に抱きついた。
14/09/17 08:36更新 / アンノウン

■作者メッセージ
「そういえば輝クン」
「ん?」
「ボクが輝クンの部屋に入り浸っても堂々と彼女ですって言えるね」
「あー、一日経たずに正当な理由ができちまったな」
「いいじゃない、ボクも輝クンも幸せなんだから」
「あっデレた」
「うるさいな……ところで輝クンはやっぱりボクが女の子っぽい格好をしてた方がいいのかな?」
「んーたまにはそういう格好もして欲しいけど、やっぱりお前は普段のボーイッシュな感じが一番可愛いとおもうぞ」
「そっか、わかった」

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