読切小説
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蟹鍋
「沙弥、流石にちょっとくっつきすぎ」

手と下半身にあるハサミを使って離さないようにギュっと抱きしめてくる幼馴染にそう言いながら俺は彼女を引き剥がそうとする。

「だって……こうしてないとコウちゃんにボクの匂いが染み付かないよ?」

何で剥がそうとするの? とでも言いたげな表情をしながら沙弥は離れようともしない。

「いや、お前がこれ以上俺に匂いを染み付ける理由がわからんのだが」
「他の子にコウちゃんをとられたくないんだもん」

そう言って、沙弥はブクブクと甲殻の隙間から泡を出しながら頬を膨らます。あんまり表情を顔に出さない彼女のこういう表情は結構貴重だ。それほど彼女にとって俺は大切な存在なのだろう。

「とられるもなにも、一緒に風呂に入ってる時点でもう俺にお前の匂いは充分に染み付いてると思うんだけど」

そう、今俺と沙弥は一緒に風呂に入りながら話してる。そもそも恋人がいる男を好き好んで狙う魔物娘なんていないだろうし。

「それでもコウちゃんはボクが惚れるくらいいい男なんだよ! 絶対に他の子に狙われるよ」

なんというかそれは俺のことを過大評価しすぎなんじゃないのか?

「沙弥だってこんなに可愛いんだから他の奴にナンパとかされそうで」
「大丈夫だよ、ボクはコウちゃん一筋だから他の人なんか目に映らないもん」
「俺だって沙弥以外の女なんて興味ないさ」

じっと見つめあうと沙弥の綺麗なオレンジ色の瞳に吸い込まれそうになる。

「コウちゃん……愛してる」
「沙弥……俺も愛してる」

お互いの顔の距離がだんだんと近くなっていく、吐息が感じられるほどに、そして……。





「んっ……これだけシたらコウちゃんからボクの匂いしかしないよね♥ボクもコウちゃんの匂いが染み付いてしあわせぇ♥」

幸せそうにおなかを撫でる沙弥の秘所からは俺が注いだ精液がトロトロと流れ出ている。なんというか沙弥の外見の幼さで背徳感と征服感がものすごい。

「そうだな」

沙弥を抱きしめながら頭を撫でてやる。

「ふわっ、どうしたのコウちゃん?」
「いや、沙弥が彼女でよかったなぁって思ってさ」
「ボクは彼女だけで収まるつもりはないからね、コウちゃんの奥さんになって子供を授かってずっと一緒に暮らすんだから」

おっと、もっと先のことまで考えていたか。

「沙弥ならいいお母さんになれそうだな」
「コウちゃんだっていいお父さんになれるよ」
「沙弥、大好きだよ」
「ボクもコウちゃんのこと大好きだよ」

こうやって俺たち二人の甘い時間は過ぎてゆく。
14/09/17 08:37更新 / アンノウン

■作者メッセージ
オマケ 風紀委員のお仕事



「あー……木谷と沢蟹、ピロートーク中に悪いが失礼するぞ」

いつの間に風紀委員長でジャバウォックの論田さんが入ってきていた。

「あれ綾ちゃん、どうしたの?いくら風紀委員だからってノックもせずに入るのはよくないと思うんだけど、コウちゃんの裸を他の人には見せたくないんだから」

「ノックなら何回もした、お前らが気付かなかっただけだろうが」

どうやら俺と沙弥はお互いに夢中でノックの音に一切気付かなかったらしい。

「ボクだって校内でヤるなとは言わないんだが、お前ら部屋の使用許可は貰ったのか?」

「「あっ」」

俺と沙弥は同時にしまったと声を出してしまう。そういえばお互いに我慢できなくなって学園設備の風呂でいたしていたんだ。

「一応、風紀委員の見回りで発見したから友達のよしみでボクが使用許可を貰っておいたけど今度から気をつけるように。無断使用だと集会時にみんなの前でヤってる所が放送されるんだからボクに見られるだけじゃすまないぞ」

「「すみません」」

「ってことでボクは鋭一とこれから『空き教室の見まわり』をするから使用後の報告はしておくようにね」

そう言いながら論田さんは嬉しそうに去っていく。

「コウちゃん、どうする?」

「まぁもうちょっと温まってから出ればいいんじゃないかな?」

やらかしてしまったことは仕方がない、今はもうちょっと沙弥のぬくもりを感じていよう。

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