読切小説
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思えば思わるる
「ねぇ〜エッチ遊ぼうよぉ〜」

俺の部屋で綾子は暇そうに俺にしなだれかかりながら甘えてくる。

「そのあだ名で呼ぶな、それ言われるたびに俺がむっつりスケベだと思われるんだよ」

俺の名前が鋭一(えいいち)だからと言う単純な理由で綾子がつけたあだ名は友人同士ではいじられネタとして定着している。濁点がつくだけで多少は扱いがマシになったはずなのに。

「だからボクだって学校では鋭一って呼ぶようにしてるじゃんか。だから気が抜ける場所でくらいエッチって呼んでも良いでしょ」

俺だってエッチを連呼して学校でのクールで格好良い綾子のイメージを崩されたくない。ってか崩されると俺が綾子のファンクラブの皆さんにボコボコにされそうで怖い。

「わかった、あだ名で呼ぶのは良いとして。お前さ、何で学校だとキリッとしてるのに俺と二人きりだとそんなに甘えたがりなの?」

彼女は学校では頼れる風紀委員長との評判でファンクラブもあるぐらいだ、それなのに俺と二人きりだと学校での威厳はどこへ行ったのかというぐらい甘えてくるが。まぁ、たぶん俺といる時の方が素の彼女なんだろうけど。

「そりゃボクだって学校だと立場があるし、エッチと二人きりだと甘えたがるのはメストカゲの本能かな?」
「メストカゲって、俺はお前に惚れられるようなことしたっけ?」
「子供の頃に大きくなったら結婚しようって言ってくれたでしょ、その時にこの人が将来の番いになってくれるオスなんだなって子宮が疼いちゃって」
「あぁ、そんなこともあったな」

本当に小さい頃の約束だ、結婚式の真似事で綾子の頭に花で作った冠を載せながらそんな約束をした記憶がある。

「で、どうなのさエッチはボクの事どう思ってるの?」
「んー好きだよ」

そもそも俺が綾子を嫌いになる要素がない、小さい頃にそんな約束するくらい好きだし。甘えられるのも悪い気はしない、むしろ甘えてくる綾子は可愛くてしょうがない。

「じゃあさ交尾しようよ、ボクの体は頑丈だからね結構過激なプレイでも大丈夫だよ」
「それとこれとは話が別な」
「なんでだよ、ボクはエッチが大好きなんだぞ、二つの意味で」
「こう恋愛ってのはさ、少しずつ育んでくのがいいと思うんだよ俺はね」

まぁ本気で襲われたら俺は綾子に絶対に勝てないから、そこらへんは冗談半分で言ってるのだと思いたい。もし本当にメストカゲとして屈服していてお預けプレイを楽しんでるとしたら……大変なことになりそうだから考えないでおこう。

「少しずつって、つまりデートしたりと言うことだよね?」
「あぁそうだな」
「ボクとエッチは休日はよく二人で出かけたりするよね?」
「お前が駄々こねたりするから手を繋いだりしてな」
「一般的にはそれがデートだよ」
「えっ」

そんな馬鹿な、俺は幼馴染とショッピングモールとか映画とか遊園地に行ってただけだぞ。

「ついでに言うと店員さんにはボク達のことカップルにしか見えてなかったと思うよ、デザートの食べさせあいとかもしてたし」
「食べさせあい自体は俺とお前なら昔からやってたろ?あれってカップルがやることなの?」
「カップルの中でもバカップルがやるものだね。あとボクもエッチとのお出かけをデートだと思ってドキドキしてた」
「もしかして俺が気づいてなかっただけ?」
「たぶん周りからはモゲロとか思われただろうね」

もしかして俺が綾子との距離が近すぎて麻痺してただけなのか。

「あっそうだお前と付き合うとお前のファンクラブの連中に何されるかわからないから」
「あーアレね問題ないよ、ファンクラブって名目の魔物娘による男の狩場だから」
「なにそれ怖い」

狩場ってなに、何でそんな物騒な表現なの?

「まぁボクのファンクラブって男子よりも女子の比率が高いんだよ」
「何でそんな事知ってるの?」
「管理してるのボクだし、でファンクラブの会員同士の交流とかあるわけよ」
「お、おう」

あのファンクラブって公式だったんだ。

「共通の話題があるってことはその場にいる人たちが仲良くなりやすいよね」
「そうだな」
「独り身の魔物娘が男と仲良くなるとどうなると思う?」
「まぁ好きになるんじゃないかな」
「そうだね、じゃあ魔物娘に好きになられた男はどうなる?」
「大抵の場合はお持ち帰りされる」
「その通り、魔物娘とカップルになった男は他の女性に対してどう思う?」
「普通は彼女一筋で見向きもしないだろうな」
「そうなった男性の管理は彼女がしてくれるでしょ? そうするとファンクラブもカップルになって、ついでにボクも風紀委員の仕事が楽になる、さらにカップルが増えると先生方も喜ぶ、一石三鳥というわけだよ」

何で綾子は頭の良さを変なところに使うのかなぁ。

「そういうわけでボクのファンクラブは一切問題ないから大丈夫だよ」
「もしかして、俺って逃げ場なくなってる?」
「ボクがエッチを逃すわけないでしょ、お互いの両親もほとんど公認なんだから」
「まって、俺初めてだからそういうのよくわかんないかなぁって」
「大丈夫だよボクも始めてだし、それにボクはエッチが望むならペットみたいな扱いをされても、どんな変態的なプレイでも嬉しいから。でもよく覚えておいてね、あんまりお預けされてるとペットでも我慢できなくなるんだから」



その夜は『楽しく過ごし』弾道が上がった。



朝、雀がチュンチュンと鳴くころにようやく綾子は満足した。

「激しかったね」
「もう何も出ません、勘弁してください」

本当に何もでなくなるまで絞りとられた。これが魔物娘の性欲なのか。

「途中からノリノリだったくせに」
「そりゃ好きな人が自分の上で乱れてれば男として反応せずにはいられないと言うか」
「やっぱりエッチなんだね」
「はいはい、俺はエッチですよ」

なんというか名実ともにエッチという認識をされてしまった、でも相手が綾子なら別に良いかもしれないかなぁ。

「これで風紀委員の見回り中に無断で空き教室を使ってる生徒を発見してムラムラしても先生に報告した後エッチを呼べば解決だね」
「えっと、もしかして俺も風紀委員に入るのが決まってたりするの?」
「んー正確にはボクが届出出してあるから幽霊風紀委員なんだよねエッチは」
「そんなの聞いてないんだけど」
「まぁ学校でもボクと一緒にいられるんだから良いでしょ?」
「そう、だけどさぁ」

俺がインキュバスになる日は近いかもしれない。
14/09/17 08:38更新 / アンノウン

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