好き 好き 大好き
気がついたら俺は見知らぬ……いや、多少は知っている部屋でベッドに寝ていた。漫画やゲームばっかりで女の部屋とはあんまり思えないような部屋。
気を失う前もこの部屋にいたのは覚えている、そしてこの部屋の主とジュースを飲みながら雑談していたのも。
問題は俺の手足が縛られていることだ。まぁおそらく彼女の性格からして好奇心で俺が縛られた反応を見たいからか、もしくは誘拐犯ごっこでもしたいんじゃなかろうか。どっちにしろ彼女が戻ってきたら話を聞けばいいか。
そう思っているうちにガチャリとドアが開き、問題の彼女が顔を伏せながら入ってきた。
コバルトブルーの翼に若葉色をしたショートの髪の毛、それでもって今は俯いてるから見えないが整ったかわいい顔をしているセイレーン。これでもって性格は大人しけりゃ文句なしで誰もが惚れてただろうに。男勝りで勝気な性格で損をしている、と幼馴染で悪友の俺の個人的な感想ではそう思う。
「なぁ、動きづらいからこの縄を解いてくれよ」
俺は上半身を起こしてから腕を彼女に突き出しながら言った。
「……ヤダ」
小さくつぶやいた彼女の声が震えている、今までの経験からしてヤバイと思わざるを得なかった。俺は彼女の震えた声なんて怒った時意外聞いてないからだ。
だとしたら縛られてるのは明らかに俺を容赦なくボコボコにするためだ。俺はできる限り記憶の中を探す、今までの経験からして彼女が怒る理由は俺の行動にあるはず。
だとすると今回思い当たるのは雑談か?
いや、雑談もゲームについてたわいもない話をしてただけだ。もしくはそのゲームで彼女が好きなキャラの悪口言ったとか?
でも、それだったら声が震えるほど怒らないだろ。
いくら探しても思い当たるものが見つからない、これは鉄拳制裁を回避できない、最悪のパターンだ。
「すまん、怒ってるなら訳を言ってくれ。わけも分からず殴られるのは御免だから、それに次は怒らせないようにするからな」
なんともヘタレた台詞だろう、自分でもそう思う。だが危険を回避するにはこれ以外思いつかなかった。それに素直に謝ったら加減ぐらいしてくれるだろう、多分。
「言えないよ、こんなこと」
伏せていた頭を上げた彼女の瞳には零れそうな程に涙が溜まっていた。
……涙?
ありえない、俺は彼女の家族以外で一番長い付き合いだけど見たことないぞ。むしろ昔は俺がよく泣き虫と馬鹿にされてるくらいだったはずだ。
どんなに痛くたって、どんなに辛くたって泣いた事のない彼女が涙を流す?
どれほどの事をしでかしたんだ俺は?
まさか、彼女の昔からの俺への恨みが爆発したとか……そうだとしたら殺されても文句言えないな、彼女に迷惑をかなりかけてるし。
「もう、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。お前が泣くほどのことをしでかしてたんだろ? 俺は何も文句なんて言えないからな」
俺は諦めてベッドに仰向けになって次に襲い掛かってくる衝撃に耐えるように目を閉じた。
ゆっくりと彼女が近づいてきて俺の腹の上に馬乗りになる、反射的に歯を食いしばる。
でも俺が想像するような痛みも衝撃も襲い掛かってこなかった、その代わりに感じたのはやさしく頭を撫でられる感覚と俺の頬に落ちてきた涙だけだった。
「ごめんなさい」
そう呟いて彼女は俺を抱きしめた。殴られると思っていた俺にはもはや訳がわからなかった。
「とりあえず俺の縄を解いてしっかり話し合おう、逃げたりしないからさ」
さすがに幼馴染の悪友だからといって女性に目の前で泣かれたままでいるのは正直困る。
彼女はコクリと頷くと息を整えながらしゃべり始めた。
「あのね、変かもしれないけどボク最近君キミの事考えてると、胸の奥がギュッと締め付けられるように痛いんだ、苦しくて苦しくてどうしていいか分からなくて」
おいおい、待てよ。何だよそれ、そんなのどう考えたって……お願いだからそれ以上は言わないでくれ。
だけど、俺の思いは泣きながら喋ってくれる彼女に向けての言葉にはできなかった。
「そのうちキミだって誰かと結婚するのかなって考えてたら誰にも奪われたくなくて、だから」
俺は何も言えなかった、彼女の気持ちは俺にだって分かるさ。でも俺にはそれが分かっても、何も……できることなんて無い。
「悪いことだと分かってたよ、でもキミを誰にも渡したくなかった。そう……決めたはずだった、キミが謝ってくるのを見たら……やっぱりボクがキミを縛り付けちゃいけないんだって分かったんだ。だから、ごめんね」
そして、また彼女の瞳から涙が零れ落ちた。彼女は何も悪くないんだ、今まで恋も知らなくて好きって気持ちが分からなくて。だから、自分の気持ちを伝える術が分からないから自分なりに伝えようとしただけなんだ。
そう理解したときには俺は……彼女を抱きしめてキスをしていた。
「正直、お前を異性としてみた事は今まで無かったよ。でも今お前の弱い部分を見て、すごく繊細で一途なお前を見て、俺はお前を好きになりたいと思った。そんな…そんな俺でよければ」
彼女は返事をする代わりにそっと抱きしめてくれた。
気を失う前もこの部屋にいたのは覚えている、そしてこの部屋の主とジュースを飲みながら雑談していたのも。
問題は俺の手足が縛られていることだ。まぁおそらく彼女の性格からして好奇心で俺が縛られた反応を見たいからか、もしくは誘拐犯ごっこでもしたいんじゃなかろうか。どっちにしろ彼女が戻ってきたら話を聞けばいいか。
そう思っているうちにガチャリとドアが開き、問題の彼女が顔を伏せながら入ってきた。
コバルトブルーの翼に若葉色をしたショートの髪の毛、それでもって今は俯いてるから見えないが整ったかわいい顔をしているセイレーン。これでもって性格は大人しけりゃ文句なしで誰もが惚れてただろうに。男勝りで勝気な性格で損をしている、と幼馴染で悪友の俺の個人的な感想ではそう思う。
「なぁ、動きづらいからこの縄を解いてくれよ」
俺は上半身を起こしてから腕を彼女に突き出しながら言った。
「……ヤダ」
小さくつぶやいた彼女の声が震えている、今までの経験からしてヤバイと思わざるを得なかった。俺は彼女の震えた声なんて怒った時意外聞いてないからだ。
だとしたら縛られてるのは明らかに俺を容赦なくボコボコにするためだ。俺はできる限り記憶の中を探す、今までの経験からして彼女が怒る理由は俺の行動にあるはず。
だとすると今回思い当たるのは雑談か?
いや、雑談もゲームについてたわいもない話をしてただけだ。もしくはそのゲームで彼女が好きなキャラの悪口言ったとか?
でも、それだったら声が震えるほど怒らないだろ。
いくら探しても思い当たるものが見つからない、これは鉄拳制裁を回避できない、最悪のパターンだ。
「すまん、怒ってるなら訳を言ってくれ。わけも分からず殴られるのは御免だから、それに次は怒らせないようにするからな」
なんともヘタレた台詞だろう、自分でもそう思う。だが危険を回避するにはこれ以外思いつかなかった。それに素直に謝ったら加減ぐらいしてくれるだろう、多分。
「言えないよ、こんなこと」
伏せていた頭を上げた彼女の瞳には零れそうな程に涙が溜まっていた。
……涙?
ありえない、俺は彼女の家族以外で一番長い付き合いだけど見たことないぞ。むしろ昔は俺がよく泣き虫と馬鹿にされてるくらいだったはずだ。
どんなに痛くたって、どんなに辛くたって泣いた事のない彼女が涙を流す?
どれほどの事をしでかしたんだ俺は?
まさか、彼女の昔からの俺への恨みが爆発したとか……そうだとしたら殺されても文句言えないな、彼女に迷惑をかなりかけてるし。
「もう、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。お前が泣くほどのことをしでかしてたんだろ? 俺は何も文句なんて言えないからな」
俺は諦めてベッドに仰向けになって次に襲い掛かってくる衝撃に耐えるように目を閉じた。
ゆっくりと彼女が近づいてきて俺の腹の上に馬乗りになる、反射的に歯を食いしばる。
でも俺が想像するような痛みも衝撃も襲い掛かってこなかった、その代わりに感じたのはやさしく頭を撫でられる感覚と俺の頬に落ちてきた涙だけだった。
「ごめんなさい」
そう呟いて彼女は俺を抱きしめた。殴られると思っていた俺にはもはや訳がわからなかった。
「とりあえず俺の縄を解いてしっかり話し合おう、逃げたりしないからさ」
さすがに幼馴染の悪友だからといって女性に目の前で泣かれたままでいるのは正直困る。
彼女はコクリと頷くと息を整えながらしゃべり始めた。
「あのね、変かもしれないけどボク最近君キミの事考えてると、胸の奥がギュッと締め付けられるように痛いんだ、苦しくて苦しくてどうしていいか分からなくて」
おいおい、待てよ。何だよそれ、そんなのどう考えたって……お願いだからそれ以上は言わないでくれ。
だけど、俺の思いは泣きながら喋ってくれる彼女に向けての言葉にはできなかった。
「そのうちキミだって誰かと結婚するのかなって考えてたら誰にも奪われたくなくて、だから」
俺は何も言えなかった、彼女の気持ちは俺にだって分かるさ。でも俺にはそれが分かっても、何も……できることなんて無い。
「悪いことだと分かってたよ、でもキミを誰にも渡したくなかった。そう……決めたはずだった、キミが謝ってくるのを見たら……やっぱりボクがキミを縛り付けちゃいけないんだって分かったんだ。だから、ごめんね」
そして、また彼女の瞳から涙が零れ落ちた。彼女は何も悪くないんだ、今まで恋も知らなくて好きって気持ちが分からなくて。だから、自分の気持ちを伝える術が分からないから自分なりに伝えようとしただけなんだ。
そう理解したときには俺は……彼女を抱きしめてキスをしていた。
「正直、お前を異性としてみた事は今まで無かったよ。でも今お前の弱い部分を見て、すごく繊細で一途なお前を見て、俺はお前を好きになりたいと思った。そんな…そんな俺でよければ」
彼女は返事をする代わりにそっと抱きしめてくれた。
14/09/17 08:42更新 / アンノウン