優しい人たち
あぁ、なんでこんなにも悲しいのだろう?……いや、俺は分かってるはずだ、それを認めたくないだけなんだって。
――やっぱり、俺は彼女が好きなんだ――
彼女に想いを受けとって貰えなかった事がこんなにも苦しいのなら、彼女を好きになるんじゃなかった。
――嘘――
今も彼女が好きなのにそんなこと思えるわけがない。叶わないと分かっていても想いが大きくなって、それが溢れ出して辛いから言い訳しようとしてるだけ。
最初は彼女の事は好きでも嫌いでもなかった、いや……興味すら無かった。クラスメイトなのに名前すら知らなかったくらいだ。
それなのに偶然一緒に仕事をする時に見えた彼女の笑顔に心を奪われしまうなんて。
飛び抜けて綺麗なわけじゃない、特別優しかったわけでもない。
たった一回見ただけの笑顔に全て魅了されてしまったんだ。彼女か仲間にだけ見せる笑顔が俺の心を掴んで離さなかった。
――でも――
俺は彼女にフラれたんだ、想いは伝えても無駄だったんだ。
その日は何も考えたくなかった、でも頭の中にいろんな考えがゴチャゴチャしてグルグル回って、そして俺は泣いてしまったんだ。
情けない程に泣いた、フラれただけなのに……今までだってフラれたことぐらいあったのに何でこんなに悲しいんだろう。
俺は答えも出せないまま日々を過ごしていった。想いは大きくなるばかりで、それは余計に俺の心を縛り付けていく……どんなに大きくなったって、どんなに想っていても、彼女の気持ちを俺が変える事なんて出来るわけが無いのに。
そんなことは頭の中で分かっていても、納得いかない俺がいた。
本当は諦めなければ彼女の心だって動かせるんじゃないか?動かせないなら自分から近付けばいいんじゃないか?
でも……無理なんだ、断られたことは俺に枷となってすぐにそんな考えを否定する。そして俺の目から涙が溢れてくる。
――嗚呼――
――そうか――
――俺が泣いてた理由って――
――俺が悲しんでた理由って――
――彼女を好きでいることが怖いからだったんだ――
――彼女を好きでいることを否定するのが嫌だったからだったんだ――
答えは出た、自分に確認する。
彼女にもう一度告白する勇気はあるか?そんなもの有り余ってる。
彼女のことを想っているか?当たり前だ、それが勇気にも繋がっている。
彼女に迷惑は掛からないか?掛かる、でもそれを上回る位に愛することは出来る。
よし、今ならもう大丈夫だ。今すぐ彼女の元へいこう。
彼女は屋上にいた、一人で寂しそうにしていた。
彼女の黒い羽が夕陽に当たって金色に輝いてた。それなのに彼女の表情は曇っていた。
そして彼女は俺に気付くと人を射殺せるぐらいの視線で睨んできた。
「何の用よ」
俺を威嚇しながら彼女は話しかけてきた、しかしその声は少し鼻声で彼女の目には零れそうなぐらい涙がたまっていた。
「伝えたいことがあるんだ」
俺は彼女の威嚇に怖気づくことなく話す。本当は怖くて逃げ出したくなった、でも彼女への想いがそれを踏みとどまらせた。
「……告白だったらお断りよ」
彼女が短めに話す、それは泣きそうな自分を隠そうとしてるのだろう。
「やだね、キミのことが大好きなのに断られてたまるか」
俺は自分自身の大きくなりすぎた想いを止められなくなっていた、全て俺の心を奪ってしまった彼女が悪いのだ。
「……あなた、人の迷惑を考えたことある?」
冷たく言い放たれた、俺が最も恐れていたことだ。彼女に嫌がられていたかもしれないこと。
「たとえキミが今は迷惑でも、今すぐにでもそれ以上の愛をキミに与えることぐらい出来る」
それでも俺の想いは止まらなかった、壊れなくなった想いは無理やりにでも彼女に近付こうとしていた。
「愛の押し付けが迷惑なのよ、わからないの?」
彼女は俺の想いを弾き返そうとする、拒絶しようとする。
「迷惑でも、大好きな人が泣きそうになってるのを放っておけるかよ」
その一言が彼女の拒絶をすり抜けて、彼女の側にいけた。彼女の心に届いてしまった。
「なんで?なんで?なんで優しいのよぉ?私はアナタにひどい言葉をかけたのに、私には優しくされる事なんてされちゃいけないのに」
彼女はボロボロと泣き出してしまった。それは仲間以外には睨むような目線をしている彼女ではなく、俺の見た笑顔を持つ優しい彼女だった。
俺はそっと彼女を抱きしめポンポンと背中を軽く叩いてあげることしか出来なかった。
彼女は俺に抱きしめられて、泣きながら心の奥底の気持ちを吐き出した。
彼女は友達が彼氏と一緒にいる事が羨ましかった事。
それを妬んでしまっていた事。
妬んでる自分が許せなかった事。
それでいつも一人で屋上で泣いていた事。
そのたびに友達に申し訳なく思って優しくされることを拒絶していた事。
そして、自分を好きでいてくれる俺にひどい言葉をかけてしまった事。
全部吐き出してそれでも彼女は泣いていた。
俺は彼女の優しさを改めて知った、優しいから全て自分で押さえ込もうとしてしまう。そのくらい優しい人なんだ。
やっぱり俺じゃ彼女に釣り合わないかもしれない、彼女には自分で好きな人を見つけてもらった方がいいのかも知れない。そう思ったときだった。
「本当はアタシはクールでこんなに情けなく泣いてるわけじゃないんだから、アタシの弱みを見たからには責任……とってよね?」
泣いてたはずの彼女は俺の目の前で笑顔を見せていた、それは俺が惚れた時の笑顔よりもずっと……ずっと素敵なものだった。
そして、そのまま顔が近付いていき、唇同士が触れ合った。
「ファーストキスなんだからありがたく想ってよね、彼氏さん」
そのまま俺は彼女に手を引かれて屋上から出て行くのであった。
――やっぱり、俺は彼女が好きなんだ――
彼女に想いを受けとって貰えなかった事がこんなにも苦しいのなら、彼女を好きになるんじゃなかった。
――嘘――
今も彼女が好きなのにそんなこと思えるわけがない。叶わないと分かっていても想いが大きくなって、それが溢れ出して辛いから言い訳しようとしてるだけ。
最初は彼女の事は好きでも嫌いでもなかった、いや……興味すら無かった。クラスメイトなのに名前すら知らなかったくらいだ。
それなのに偶然一緒に仕事をする時に見えた彼女の笑顔に心を奪われしまうなんて。
飛び抜けて綺麗なわけじゃない、特別優しかったわけでもない。
たった一回見ただけの笑顔に全て魅了されてしまったんだ。彼女か仲間にだけ見せる笑顔が俺の心を掴んで離さなかった。
――でも――
俺は彼女にフラれたんだ、想いは伝えても無駄だったんだ。
その日は何も考えたくなかった、でも頭の中にいろんな考えがゴチャゴチャしてグルグル回って、そして俺は泣いてしまったんだ。
情けない程に泣いた、フラれただけなのに……今までだってフラれたことぐらいあったのに何でこんなに悲しいんだろう。
俺は答えも出せないまま日々を過ごしていった。想いは大きくなるばかりで、それは余計に俺の心を縛り付けていく……どんなに大きくなったって、どんなに想っていても、彼女の気持ちを俺が変える事なんて出来るわけが無いのに。
そんなことは頭の中で分かっていても、納得いかない俺がいた。
本当は諦めなければ彼女の心だって動かせるんじゃないか?動かせないなら自分から近付けばいいんじゃないか?
でも……無理なんだ、断られたことは俺に枷となってすぐにそんな考えを否定する。そして俺の目から涙が溢れてくる。
――嗚呼――
――そうか――
――俺が泣いてた理由って――
――俺が悲しんでた理由って――
――彼女を好きでいることが怖いからだったんだ――
――彼女を好きでいることを否定するのが嫌だったからだったんだ――
答えは出た、自分に確認する。
彼女にもう一度告白する勇気はあるか?そんなもの有り余ってる。
彼女のことを想っているか?当たり前だ、それが勇気にも繋がっている。
彼女に迷惑は掛からないか?掛かる、でもそれを上回る位に愛することは出来る。
よし、今ならもう大丈夫だ。今すぐ彼女の元へいこう。
彼女は屋上にいた、一人で寂しそうにしていた。
彼女の黒い羽が夕陽に当たって金色に輝いてた。それなのに彼女の表情は曇っていた。
そして彼女は俺に気付くと人を射殺せるぐらいの視線で睨んできた。
「何の用よ」
俺を威嚇しながら彼女は話しかけてきた、しかしその声は少し鼻声で彼女の目には零れそうなぐらい涙がたまっていた。
「伝えたいことがあるんだ」
俺は彼女の威嚇に怖気づくことなく話す。本当は怖くて逃げ出したくなった、でも彼女への想いがそれを踏みとどまらせた。
「……告白だったらお断りよ」
彼女が短めに話す、それは泣きそうな自分を隠そうとしてるのだろう。
「やだね、キミのことが大好きなのに断られてたまるか」
俺は自分自身の大きくなりすぎた想いを止められなくなっていた、全て俺の心を奪ってしまった彼女が悪いのだ。
「……あなた、人の迷惑を考えたことある?」
冷たく言い放たれた、俺が最も恐れていたことだ。彼女に嫌がられていたかもしれないこと。
「たとえキミが今は迷惑でも、今すぐにでもそれ以上の愛をキミに与えることぐらい出来る」
それでも俺の想いは止まらなかった、壊れなくなった想いは無理やりにでも彼女に近付こうとしていた。
「愛の押し付けが迷惑なのよ、わからないの?」
彼女は俺の想いを弾き返そうとする、拒絶しようとする。
「迷惑でも、大好きな人が泣きそうになってるのを放っておけるかよ」
その一言が彼女の拒絶をすり抜けて、彼女の側にいけた。彼女の心に届いてしまった。
「なんで?なんで?なんで優しいのよぉ?私はアナタにひどい言葉をかけたのに、私には優しくされる事なんてされちゃいけないのに」
彼女はボロボロと泣き出してしまった。それは仲間以外には睨むような目線をしている彼女ではなく、俺の見た笑顔を持つ優しい彼女だった。
俺はそっと彼女を抱きしめポンポンと背中を軽く叩いてあげることしか出来なかった。
彼女は俺に抱きしめられて、泣きながら心の奥底の気持ちを吐き出した。
彼女は友達が彼氏と一緒にいる事が羨ましかった事。
それを妬んでしまっていた事。
妬んでる自分が許せなかった事。
それでいつも一人で屋上で泣いていた事。
そのたびに友達に申し訳なく思って優しくされることを拒絶していた事。
そして、自分を好きでいてくれる俺にひどい言葉をかけてしまった事。
全部吐き出してそれでも彼女は泣いていた。
俺は彼女の優しさを改めて知った、優しいから全て自分で押さえ込もうとしてしまう。そのくらい優しい人なんだ。
やっぱり俺じゃ彼女に釣り合わないかもしれない、彼女には自分で好きな人を見つけてもらった方がいいのかも知れない。そう思ったときだった。
「本当はアタシはクールでこんなに情けなく泣いてるわけじゃないんだから、アタシの弱みを見たからには責任……とってよね?」
泣いてたはずの彼女は俺の目の前で笑顔を見せていた、それは俺が惚れた時の笑顔よりもずっと……ずっと素敵なものだった。
そして、そのまま顔が近付いていき、唇同士が触れ合った。
「ファーストキスなんだからありがたく想ってよね、彼氏さん」
そのまま俺は彼女に手を引かれて屋上から出て行くのであった。
14/09/17 08:44更新 / アンノウン