読切小説
[TOP]
Be my Valentine
「なぁ?何で俺の家でチョコを作ってるわけ?」

俺の家で俺にチョコレートの作り方の指導を受けているバカに訊ねる。

「んーとね、ボクがチョコの作り方を知らないからだよ、流石に彼氏さんに市販のチョコを渡すわけにはいかないもん」
「その彼氏にチョコの作り方を聞いてどうする、何のサプライズもないだろ」

俺の幼馴染で彼女でそんでもって結構バカな琴理は頭の上にいくつも?を出していた。

「ちょっと落胆させられてからのプレゼントとかさ、そういうのが世間では喜ばれるんだぞ」
「なにそれ?素直にプレゼントしたほうがいいじゃん!楽だし、頭使わなくてすみそうだし」

まぁ、そうだけどな。このバカで純粋で真っ直ぐなのも琴理のいいところか。

「でも、普通は彼氏には聞かないだろチョコの作り方。親に手伝ってもらえよ」
「えー……だってお母さんはお父さんと一緒に出かけちゃったんだもん、それで『今日は泊まってくるから、あなたも彼氏と楽しみなさい』だって。だからショーちゃんと楽しんでチョコを作ってるんじゃない」

琴理……多分お前の両親はそんなつもりで言ったんじゃないと思うぞ。だがそんなお前も魅力て……いかん、思考がバカップルになりそうだった。最近琴理と一緒にいるとすぐにバカップル思考になりそうになるな。

「っとそろそろこれを入れてもいいかな?」

琴理はそう言うとなにやらピンクの液体が入った小瓶を取り出した。うん、嫌な予感しかしない。絶対メロウの血だよねアレ。

「琴理?一体それは何なのかな?明らかに隠し味って訳じゃないよな」
「これ?これはねボクの友達がね『彼氏ともっと仲良くなりたかったら隠し味に入れな』ってニヤニヤしながらくれたの」

うん、犯人わかった。あの新婚色ボケインプめ、余計なことを琴理に吹き込みやがって。どうせこのメロウの血も自分の惚気話をメロウに聞かせてもらってきたんだろうがそうはいくか。

「琴理、それは入れないほうが美味しく出来るぞ。俺が保障する」
「そうなの?だったら止めておこうかな。でもこのビンの中身どうしよう?飲む?」
「それは保存できるから、とっておきなさい。もしくは俺が預かっておこうか?」

下手に飲まされたら俺がマジで琴理のことを襲いかねん、ただでさえバカップル脳になりかけているんだからメロウの血はマジヤバイ。

「じゃあ、このまま型に流しちゃっていいの?」
「あぁ、それでいい」

少し大きめのハートの型にゆっくりチョコレートが流し込まれる。
好きな人からチョコレートの作り方を聞かれるバレンタインってのもあっていいのかも知れない。一生懸命にチョコレートを作ろうとがんばってる琴理の姿を見るとそうも思えてきた。
14/09/17 08:44更新 / アンノウン

■作者メッセージ
「……またあの二人に大人の階段を上らせるのを失敗したか。」
アタイは少し考える、男子高校生なら彼女に手を出せよ、ってか出すだろ普通。
「どうしたの、何か考え事?」
ダーリンがアタイの傍に来てくれた、温かくて優しい匂いがする、それと微かにカカオの匂いも。
「ちょっと、友達のことで心配事。ところでダーリン、チョコ持ってるでしょ」
アタイは笑顔で語りかける。
「はい、僕の素敵な奥さんにバレンタインのチョコレート。一応君の好きな味にしてみたんだけど口に合うかな?」
ダーリンは隠していたチョコをアタイに渡してちょっと心配そうに言った。
心配することないのに、アタイはダーリンの料理は全部美味しく感じるんだから。


結果、ダーリンの手作りチョコがもらえたからどうでも良いや。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33