読切小説
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公園で
「何してるんだろう、俺……」

そんな言葉が口からこぼれた、公園のベンチに座ってどの位たったのだろう?辺りは暗くなり、手に持っていたホットで買ったはずのコーヒーは既に冷え切っていた。

「『好きな人が居るので、ごめんなさい』……かぁ、そりゃ無理だよな。向こうはユニコーンだもんなぁ」

ハァ……と吐いた溜め息が白く染まる。フラれてからずっとここで座ってたのか、もしかしたら気が変わって俺に会いに来てくれるなんて絶対にありえないような期待をしながら。

無駄だったんだけどな、期待してるだけじゃ何もおきない事なんて分かってる。でも、迷惑掛けるわけにはいかないもんなぁ。そんなこと考えながらコーヒーのプルトップを引き、中身を一口飲んだ。

「……苦い」

そう思ってよく見てみたら、いつもの甘いぐらいのコーヒーじゃなくてブラックのコーヒーだった。ボーっとしてて間違って買っちゃたんだろうな。

でも、このくらい苦い方が今の俺にはちょうどいいかもな……なんて考えていたら涙が出そうになっていた。その時、いきなり声を掛けられた。

「こんなところに居たのか」

俺の昔からの友達で、八本足で、なんか蜘蛛っぽい奴、まぁアラクネだから蜘蛛っぽいのは当たり前か。

「何しに来たんだよ?」

精一杯強がってその言葉を言った、コイツには俺の泣いてるところを見られたくないから見栄を張って強がった。

「いや、お前がフラれたって聞いて慰めに来てやった」

「ん?なんだ、こいつフラれてやんのダサいなって言いに来たのか」

零れそうになった涙を隠そうとして大声で言った、震えた声が響いた。

「別に泣いてもいいんだぞ?失恋は辛いものってぐらいアタシだって分かってるよ、その涙は誇るべきものだぞ」

「泣いてなんか……ねぇよ」

震えた声で言い返す、惨めな姿の俺をコイツに見られたくなかった、だから泣いてることがバレていても否定した。

「そうか……アタシはお前のこと十分凄いと思うけどな、想いを伝えられないアタシにとっては」

「あっそ、用はそれだけか?」

これ以上ここに居たくなかった、何かここに居たらコイツと友達ではなくなってしまうような予感がした。

「いや、まだまだ話したいことはあるさ。だが、喉が渇いたなキミの持っているコーヒーを一口いただくよ」

そういってコイツは勝手に俺の手に持っていたコーヒーを奪い一口飲んだ。

「……苦いな、でもまぁこれから言うことは酔った勢いの所為に出来る」

「酔ったって、これコーヒーなの分かってるよな?」

「あぁ、だがなアタシたちアラクネ種にとってカフェインがアルコールと同じような働きをするんだよ、だからカフェインの含むコーヒーはアタシにとってお酒みたいなものなのさ」

「ふーん、で何を言うつもりだったんだ?」

俺は聞いて、少しコイツは深呼吸をした後、話し出した。

「こんなタイミングで言うのはズルイかもしれないが、アタシは昔からキミのことが好きだった。友達としても、異性としてもキミに惹かれていったんだ。でもキミに恋愛相談をされた時にキミがアタシのことを異性として好きじゃないって分かったさ。でもな諦めきれないんだ、キミだってそうだろう?」

「……いきなりそんなこと言われても、答えは出せない」

「わかってるさ、だから言っただろう、これは酔った勢いだって。それにアタシは何時までもキミがこっちを向いてくれるまで待つつもりだよ。すまないな、慰めるどころか余計に悩みを増やしてしまったな」

アイツは一方的に言うだけ言っておぼつかない足取りで帰っていった。

そして公園に取り残されたのは俺と半分ぐらい残された冷たいコーヒーだけだった。
14/09/17 08:44更新 / アンノウン

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