読切小説
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おみとおし

「福ちゃん、起きなよ」

そう言ってボクはぐっすりと眠っている幼馴染の体を揺らす。

「あれ、姐さん……おはようございます」
「あのさぁ、同い年だしボクの方が誕生日があとなんだからさ。その『姐さん』って呼び方はどうにかならないの?」
「そりゃ、俺なんかよりも姐さんの方がしっかりしててずっと大人っぽいんで」
「それは福ちゃんがだらしないからだろ?」
「それもそうなんすけど、なんてーか俺のこといつも見守っててくれるじゃないっすか、それでなんか姐さんっぽいんすよ」

それは見守ってるんじゃなくて、好きな人だからついつい目で追ってしまっているだけなんだけど。

「それでもだよ、幼馴染なんだからかしこまらなくたっていいのに。それともボクの名前忘れてたりする?」
「尾長 黒子(おなが くろこ)さんです‼」
「じゃあ名前でボクのこと呼んでみて?」
「くろ……まだ無理っす。姐さんって呼ぶのが今は一番落ち着くんで」

なんでだよ⁉そんなにボクの名前呼ぶの嫌なのかよ‼

「じゃあ、いいよ姐さんで。但し、ボクはすっごく悲しいからな。距離置かれてるみたいで」
「すみません、善処はするつもりなんすけど。ところで姐さん的には俺の顔ってどうっすかね」
「眠気が落ち切ってなくてだらしない顔」

それもまた可愛いけど。

「そうじゃなくて、異性として格好良いとかそういう話っす」
「んーまぁ、ボクとしては花丸つけられるかな」

好きな人なんだから1番以外選択肢が無いわけだけども。

「マジっすか⁉おっし‼」
「どうしたのさ、急にそんなこと聞いて」
「それが、最近好きな人が出来て……ちょっと違うか、ある人を好きなことに気づいたんすよ」
「ほう……」

なにそれ、ボクはずっと観察してたけどそんな素振りなかっただろ。

「いや、まあその人に釣り合うぐらいの男になりたいって思って」
「へぇ、それで相手は一体誰なのかな?」
「それは姐さんには言えないっていうか、いずれ言わなきゃいけないっていうか」
「って事はボクの知り合いかな?」
「姐さんは確かによく知ってる人だとは思うけど、なんか表現的にちょっと違う気が」

ええい、なんでそこまで曖昧な答えなんだよ、こうなったら。

「分かったよ、福ちゃん」
「嘘っすよね⁉そんな簡単にバレるなんて」
「うん、だからボクの眼をよく見てくれるかな?」
「えっ分かったっす」

これはちょっとズルだけど福ちゃんに魔眼を見つめてもらってから聞き出そう。

「さて、福ちゃん。君の好きな人を教えてくれるかな?」
「姐さんっす」

……⁉聞き間違いじゃないよね?

「ごめん、本名で」
「尾長 黒子さんっす」

おーマジかー両想いだったか。

「福ちゃんはボクにどんな感情を抱いてるのかな?」
「好きっす」
「異性として?」
「はい」

これは……面と向かって言われると、うん、にやけてきちゃうな。

「ボクのこと考えながら自慰したことある?」
「それは…………言えないっすよ⁉ってか姐さんズルくないっすか⁉」

ちっ、魔眼の効果が切れたか。

「そりゃねぇ、好きな人に想い人がいるって聞いたら気になるからね」
「こう、俺としては姐さんに見合うような男になってから言おうと思ってたのに」
「分かってないなぁ……ボクが好きになってる時点で福ちゃんはとっくにボクに見合う男なのさ」
「ん……姐さん俺のこと好きなんすか?」
「好きでもなきゃ面倒なんか見るわけないだろ?」

ボクだって自分に得がないのに動けるほど高潔な精神の持ち主じゃないし。

「それだったら……あのっ黒子さん俺と付き合ってください‼」
「いいよ」
「そんなあっさり」
「いや、両想いってわかってるんだし悩む必要もないだろ?」
「それもそうなんですけど」
「それとも、恥ずかしがりながらの方がよかったかな?福ちゃん的には気の強い女性が濡れ場では乙女してるような本が好きだもんねぇ」
「⁉っなんでそれを‼隠してあるはずなのに」
「ボクの眼にはお見通しなんだよ」

まあ、部屋を漁ってたら普通に見つけただけなんだけど。

「本当に俺が姐さんに見合ってるんすかね?」
「当たり前だろ」

だってボクの眼にはずうっと昔から彼しか映っていないのだから。
18/09/12 08:27更新 / アンノウン

■作者メッセージ
「黒子さん機嫌良さそうだけどどうしたの?」
同じクラスのバジリスクの美弥子さんが話しかけてくる。
「いやー願いかなえたりって感じでね、みーちゃんにも後で詳しく教えてあげるよ」
「そうだね、数少ないボクをさらけ出せる仲間として聞いておきたいかな。まぁボクも陸君の自慢はさせてもらうけど」
「ほうほう、それでも福ちゃんの自慢の方が長くなると思うから」
「その喧嘩買わせてもらうよ」
「そっちがその気なら受けて立つよ」

魔眼仲間は今日も平和です。

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