初めてする行動ってどきどきと緊張の連続
前回のあらすじ
ギルドに向かいます
いざ、ギルドへ向かうとしますか。
「それじゃ、行ってきますー」
「行ってらっしゃい、襲われて怪我しないように気をつけるのよ。」
「ん、襲われるって魔物にですか?てか、なんで襲われるんですか、ここら辺に広まるくらい悪いことしたつもりないんですけど・・・」
この国の魔物は、人間と良い関係だって聞いてたから、よっぽどお腹を空かせてる魔物に出くわさなければ、食われることはないだろうと踏んでいた。それらのに、襲われるのは何でなのか腑に落ちないで聞いておく。しかも、こっちに来てまだ一夜明けたばっかりだし。
「今朝、剣二君が起きてくるまでに、二人の魔物が剣二君をくださいって来たわよ。もう有名人なのね。」
(二人の魔物にくださいって・・・有名人とか恥ずかしい、まさかここに来るまでの服が目立ってたのか?今着てるのはこっちの服借りてるから、もう町歩いても大丈夫だとは思うけど・・・ってか、なんで、『ください』なんだよ。物じゃねぇよ・・・でも着慣れた服は簡単にはあげられないから、追っ払ってくれて助かったな。)
なんて感じに、俺が勝手に恥ずかしがって想像して、欲しがってたのは服だと決めつける。
「ください。って何なんですか・・・。しかも有名人ってそんな馬鹿な。まだこっちに来て一夜明けたばっかですよ?しかも、それ本当ならさっき話してる間に来てるはずじゃないですか。」
そう、少なくとも三時間は話し合ってた。これ核心ついたんじゃないの?
「あら、さっきまで窓からこっちを見てたのよ?」
・・・不覚、まさか人の視線に気づけないとは、きっと興奮を抑えて集中して話してたからだろな。にしても、そんな服欲しいんだったらこっちの服と交換しようかな、俺もこっちの服を着てみたいってのはあるし。でも、だったら俺が起きてるんだから、直接言ってくれればいいのに・・・
「・・・考えるの面倒になったんでもう行きます。」
「行ってらっしゃい。それじゃルシー、よろしく頼んだわよ?」
「分かっている、今回は登録だけ済ます予定だから、時間までには帰って来られるはずだ。仕事もしないから、何も危険じゃない。それじゃ、行ってくる。」
「行ってらっしゃいー」
「近いって言っても、やっぱそこそこの距離はあるんですね。」
歩きながらルシールさんに聞く。近いって言ってたもんだから、家を出て1分くらいで、もう着くんじゃないの。って思いながら歩いてきたからね。
「そうだな、家から歩いて10分くらいの所だ。こっからだと、後5分はかかるな。」
ガシャガシャと鎧の音を立てて歩きながら、ルシールさんが答える。その鎧は常備なんですね。
んー、にしても近いんだか遠いんだか中途半端な距離だな・・・
「近いんだか中途半端っすね。それと、鎧って外さないんですか?いつも着けっぱなし?」
「いや、流石に寝るときと風呂に入るときは取る。それ以外は、大体着けて行動している。」
ここで疑問点が一つできた、鎧って普通身を守る物だよね?だったらさ
「んっと・・・人間と魔物の関係は良好って聞いたんですけど、ずっと鎧つける意味あるんですか?」
「鎧と言っても、身を守る為に使う。という選択肢一つな訳ではない。そうだな・・・ファッションの一つだと考えてくれて構わない。」
ファッションっすか・・・ガシャガシャ音たてる鎧がファッションっすか・・・
やっぱ分かんない事だらけだな、早く慣れないと。
「それに、この町が良好だからといって、他の町や村も安全とは限らん。ギルドの仕事で別の町に行ったりしたときに、その町が魔物をあまり好かん連中だったら、寝首をかかれたり、あるいは武器を持って追い払いに来るだろう。」
そいやそうだったな、この町が安全なだけで、他の村や町が安全とは限らないんだった。
「それに、逆も然りだ。お前も周囲に気を配っておけ。もしかしたら、人間を嫌っている村から来た魔物が、今もお前を狙っているやも知れん。」
「そう・・・っすね。その可能性も捨てきれないですね。一応、いつでも走る準備はできてます。」
「そうか、まぁこちらとしては、真っ正面から堂々と戦って勝ってほしいところだが・・・」
歩くスピードを遅めて、こっちを振り返ったルシールさんが一言
「無理そうだしな。」
おぅふ、ぐさりと来た。完全に俺が小さいからって、戦って勝つの無理だって判断したよ。
(・・・ギルドの仕事多くこなして、見返してやんよ。)
心の中で、小さく誓うのであった。
「さて、着いたぞ。ここがそうだ。」
家を出る前に言われたみたいに、襲われる事も無く、安全に着いた。でも、さっき話してる時に言われたみたいに、露店に並ぶ珍しい食べ物や、初めて見る武器を見るのを止めて、人の視線を気にしてみたら結構俺を見てた気がする。
なんだろ、まだ目立ってるのかな俺・・・
「あ、え、はい、えっと、これが・・・ギルド?」
予想してたのと凄い違ったので、戸惑ったのが口に出てしまった。
もっと、外見的には汚れてて、樽とか置いてあって、お酒の臭いが入り口まで漂って、男達の賑やかな声が聞こえるんじゃないかな。
ってイメージしてた。
でも現実は全然違って、綺麗な建物で、入り口の横には花壇があって見たことの無い花が咲いてた。臭いは酒の臭いはまったくせず、おいしそうな食べ物の臭いが漂って来た。
「そうだ、これがギルドだ。それじゃ入るぞ。」
そう言って、入り口の西部の町で見かけるようなドアを、キィと音を立てて開けた。
「・・・はい。」
俺も緊張しながら後に続いた。外から見たら、なんかの食堂っぽいけど、ここはギルド。そして俺は仕事を探しに来た身だし、こっちの世界の事をほとんど知らないから、失礼の無いようにしないように気を引き締めて行かないと。
後に続いて、軽く回りを見渡して見る。丸机に乗ってる瓶のお酒を、椅子に座って飲んでる俺より小さい、露出の多い角の生えた女の子と、会話をしながら傍らにでかい金棒を携えて豪快に笑っている・・・(鬼でしょ、絶対。俺でも分かる。)鬼が居たり、掲示板に張り出されたクエストを眺めている男の人が二人。人間が居て正直ホッとした。
見るからに猫を擬人化した女の子と、その横にお義母さんの服がピンクっぽく塗装された女の人がクエストを見ている。
パッと見、6人くらいしか居ないみたいだ。
(人少ないんだな、でも人の目があまり無いってラッキーだな、うん。)
変に、多くの人に注目されないからマシ。
「メイルは居るか。」
カウンターの前に移動しているルシールさんが、カウンターの奥に向かって呼びかける。
するとカウンターの奥から
「その声はルシールか。」
と返事が返ってきた。
返事が返ってきてからすぐ直後に、全身が緑色の鱗っぽいので覆われた人が、カウンターに出てきた。緑の尻尾もおまけ付きである。
ごっつい男の人が出てくるもんだと思ってたから、これもまたイメージ通りには行かなかった。
「一人ギルドに入れたい奴が居てな。」
そう言って横に居た俺を指さす。
その緑の人は、しばらく俺を見た後
「今噂の奴か。お前が連れてきて、ギルドに入れたいと推薦するとはな・・・強いのか?」
噂になってるって、顔見ただけで分かるんすか。もう大体の事に関しては驚かないから別にいいけど。
「いや、多分弱い。」
・・・さくっと言いますね。でも多分は付けてくれてたから、気には留めないでおこう。
「駄目か?」
「いや、駄目では無いが・・・風の噂によると、別世界から来た人間だとか、しかも来たのがつい昨日とも。」
そう言って俺を見てきた。マジで噂の広まり方が半端無い、なんでそこまで知ってんだよと。
(今朝俺の服をくれって言ってきた人なのかな、ミリアちゃんが、友達とかに話したちゃったのかな。あ、昨日家に行くまでにあの服だったじゃんか。だから知っててもおかしくないな・・・おかしくなよいよな?もう何が有っても不思議じゃないもんな?)
そして目の前の現実に目を向ける。
「えっと、多分それで合ってます。別世界から来たってのも・・・証拠とかは無いですけど。」
緊張した声で自分の意見を言う。今のところ、別世界に来たって言う証拠が、俺の見ている物だけ。他人に信じ込ませようとすると、これは骨が折れる。服を見せれば一発の気もするけど。
「あ、ついでに俺は弱いですけど・・・負けん気とやる気なら強いですから、途中で仕事放り出すなんて真似はしません。・・・駄目ですか?」
「いや、さっきも言ったが駄目では無い。それに、しっかり自分の弱さを認めてるのが気に入った。ちょっと待ってろ。」
カウンター横の書類と、ペンを一枚置いた。
「そこに年齢と、そっちに名前を書いてくれ。それで入会終了だ。」
横からルシールさんが教えてくれる。
17才
杉村 剣二
書類に記入して、とかげっぽいなと思いながら、目の前の緑の人に渡す。
「これでいいですか?」
「・・・大丈夫だ。よし、もう好きにしていいぞ。」
「・・・え、終わりっすか?もう?」
書類に記入してギルド入会終わりとは、あまりにもの呆気ない。
その質問にはルシールさんが答えてくれた。
「そうだ、基本ギルドに入会した奴らの顔は忘れん。つまり顔パスだ。基本深夜はやっていないから、暇だからと言ってここに来るなよ?受けたいクエストがあったら、あそこの掲示板からやりたいクエストの紙をちぎってここに持ってこい。そうすれば印を押してやる、それを持ってクエスト主に会いに行けばいい。」
聞きたい事を全部説明してくれた。すっごい助かります、先輩。
「そうなんですか、顔パスって何か気楽のような、気になるような。」
と呟き、カウンターに居る緑の女性に向かって
「それじゃ、これからお世話になります。えっと・・・メイルさん。」
頭を下げる。
「あぁ、これからのお前の活躍に期待してるぞ。しばらくはルシールがついてくれるみたいだから、安心してクエストをこなして行くと良い。」
「はい、頑張ります!」
ギルドに入れた、どんな仕事をやっていくことになるのか楽しみすぎる。
男の子なら、冒険して強くなるもんだって信じてるからね。
それに、あまりにトントン拍子で事が運んだから、約束の時間には余裕で間に合うな。
「さて、時間が結構あるな。」
ルシールさんは、横にちらりと目をやる。そっちに俺も目を向けると、時計があった。
「ここで飯でも食べて行くか。」
「俺、金持ってないですよ?」
「つけだ、つけ。」
「・・・そこはしっかりしてるんすね。」
そう言いながら、俺とルシールさんはカウンターに近い席に腰を降ろす。
(このお肉おいしいな、何の肉なんだろ。あ、パンにもしっかり味ついてる。あのとき貰ったパンにそっくりだな、もしかしてここのパン?)
昼食を取りながら、俺は重要な事を思い出した。
「あ、重要な事聞き忘れてたんですけど、ルシールさんは、デュラハンって種族じゃないですか。ミリアちゃんやお義母さん、それとメイルさんの種族ってなんですか?」
「なんだ、説明してなかったか。」
「ですから聞き忘れたんですって・・・」
「そうだな、ミリアちゃんとロットは・・・あ、ロットってのはミリアちゃんのお母さんの名前だからな。その二人は、サキュバス種って種族だ。寝てる時は、ドアと窓の戸締まりをしっかりしておけ。特徴は・・・・・・」
・ミリアちゃんと、お義母さんはサキュバス種。メイルさんはなんと、ドラゴンという種族だった。
・基本似てる格好や特徴だったら同じ種族だと思っておっけー。
・これからは、心の中ではお義母さんをロットさんって呼んでいこう。
・魔物は全体的に、精液を主な栄養としてたから、今もそれが濃くも薄くも受け継がれてるから狙われたら仕方ないと思え。
との事、最後について理解したくなかったが、ロットさんもルシールさんも俺の体液を狙っていると、カミングアウトしてきました\(^o^)/
「・・・大体分かりました、もう大丈夫です。」
「そうか、それじゃ、飯を食い終わったら私の家にでも来るか?まだ時間はたっぷりあるぞ。」
「あ、強さを見る為の訓練とかですか?俺、弱いですけどいざってときには―――」
「何、邪魔者が入らない所でゆっくりと甘」
「―――あ、やっぱいいです、遠慮しときます。ご馳走様でした。それじゃ、帰りますか。まだ道覚えきれて無いんで、家までお願いします。」
「・・・それじゃ帰るとするか。」
わくわくしてきたっちゃしてきたけど、これ冒険以外にも危険が身の回りにあるって事実感したわ。
それと、さっきの説明でもう安易に想像できたのは・・・朝来た女の子は、服じゃなくて、マジで俺を『もらいに』来たんじゃないかって事。
・・・さて、明日から頑張るぞ!
ギルドに向かいます
いざ、ギルドへ向かうとしますか。
「それじゃ、行ってきますー」
「行ってらっしゃい、襲われて怪我しないように気をつけるのよ。」
「ん、襲われるって魔物にですか?てか、なんで襲われるんですか、ここら辺に広まるくらい悪いことしたつもりないんですけど・・・」
この国の魔物は、人間と良い関係だって聞いてたから、よっぽどお腹を空かせてる魔物に出くわさなければ、食われることはないだろうと踏んでいた。それらのに、襲われるのは何でなのか腑に落ちないで聞いておく。しかも、こっちに来てまだ一夜明けたばっかりだし。
「今朝、剣二君が起きてくるまでに、二人の魔物が剣二君をくださいって来たわよ。もう有名人なのね。」
(二人の魔物にくださいって・・・有名人とか恥ずかしい、まさかここに来るまでの服が目立ってたのか?今着てるのはこっちの服借りてるから、もう町歩いても大丈夫だとは思うけど・・・ってか、なんで、『ください』なんだよ。物じゃねぇよ・・・でも着慣れた服は簡単にはあげられないから、追っ払ってくれて助かったな。)
なんて感じに、俺が勝手に恥ずかしがって想像して、欲しがってたのは服だと決めつける。
「ください。って何なんですか・・・。しかも有名人ってそんな馬鹿な。まだこっちに来て一夜明けたばっかですよ?しかも、それ本当ならさっき話してる間に来てるはずじゃないですか。」
そう、少なくとも三時間は話し合ってた。これ核心ついたんじゃないの?
「あら、さっきまで窓からこっちを見てたのよ?」
・・・不覚、まさか人の視線に気づけないとは、きっと興奮を抑えて集中して話してたからだろな。にしても、そんな服欲しいんだったらこっちの服と交換しようかな、俺もこっちの服を着てみたいってのはあるし。でも、だったら俺が起きてるんだから、直接言ってくれればいいのに・・・
「・・・考えるの面倒になったんでもう行きます。」
「行ってらっしゃい。それじゃルシー、よろしく頼んだわよ?」
「分かっている、今回は登録だけ済ます予定だから、時間までには帰って来られるはずだ。仕事もしないから、何も危険じゃない。それじゃ、行ってくる。」
「行ってらっしゃいー」
「近いって言っても、やっぱそこそこの距離はあるんですね。」
歩きながらルシールさんに聞く。近いって言ってたもんだから、家を出て1分くらいで、もう着くんじゃないの。って思いながら歩いてきたからね。
「そうだな、家から歩いて10分くらいの所だ。こっからだと、後5分はかかるな。」
ガシャガシャと鎧の音を立てて歩きながら、ルシールさんが答える。その鎧は常備なんですね。
んー、にしても近いんだか遠いんだか中途半端な距離だな・・・
「近いんだか中途半端っすね。それと、鎧って外さないんですか?いつも着けっぱなし?」
「いや、流石に寝るときと風呂に入るときは取る。それ以外は、大体着けて行動している。」
ここで疑問点が一つできた、鎧って普通身を守る物だよね?だったらさ
「んっと・・・人間と魔物の関係は良好って聞いたんですけど、ずっと鎧つける意味あるんですか?」
「鎧と言っても、身を守る為に使う。という選択肢一つな訳ではない。そうだな・・・ファッションの一つだと考えてくれて構わない。」
ファッションっすか・・・ガシャガシャ音たてる鎧がファッションっすか・・・
やっぱ分かんない事だらけだな、早く慣れないと。
「それに、この町が良好だからといって、他の町や村も安全とは限らん。ギルドの仕事で別の町に行ったりしたときに、その町が魔物をあまり好かん連中だったら、寝首をかかれたり、あるいは武器を持って追い払いに来るだろう。」
そいやそうだったな、この町が安全なだけで、他の村や町が安全とは限らないんだった。
「それに、逆も然りだ。お前も周囲に気を配っておけ。もしかしたら、人間を嫌っている村から来た魔物が、今もお前を狙っているやも知れん。」
「そう・・・っすね。その可能性も捨てきれないですね。一応、いつでも走る準備はできてます。」
「そうか、まぁこちらとしては、真っ正面から堂々と戦って勝ってほしいところだが・・・」
歩くスピードを遅めて、こっちを振り返ったルシールさんが一言
「無理そうだしな。」
おぅふ、ぐさりと来た。完全に俺が小さいからって、戦って勝つの無理だって判断したよ。
(・・・ギルドの仕事多くこなして、見返してやんよ。)
心の中で、小さく誓うのであった。
「さて、着いたぞ。ここがそうだ。」
家を出る前に言われたみたいに、襲われる事も無く、安全に着いた。でも、さっき話してる時に言われたみたいに、露店に並ぶ珍しい食べ物や、初めて見る武器を見るのを止めて、人の視線を気にしてみたら結構俺を見てた気がする。
なんだろ、まだ目立ってるのかな俺・・・
「あ、え、はい、えっと、これが・・・ギルド?」
予想してたのと凄い違ったので、戸惑ったのが口に出てしまった。
もっと、外見的には汚れてて、樽とか置いてあって、お酒の臭いが入り口まで漂って、男達の賑やかな声が聞こえるんじゃないかな。
ってイメージしてた。
でも現実は全然違って、綺麗な建物で、入り口の横には花壇があって見たことの無い花が咲いてた。臭いは酒の臭いはまったくせず、おいしそうな食べ物の臭いが漂って来た。
「そうだ、これがギルドだ。それじゃ入るぞ。」
そう言って、入り口の西部の町で見かけるようなドアを、キィと音を立てて開けた。
「・・・はい。」
俺も緊張しながら後に続いた。外から見たら、なんかの食堂っぽいけど、ここはギルド。そして俺は仕事を探しに来た身だし、こっちの世界の事をほとんど知らないから、失礼の無いようにしないように気を引き締めて行かないと。
後に続いて、軽く回りを見渡して見る。丸机に乗ってる瓶のお酒を、椅子に座って飲んでる俺より小さい、露出の多い角の生えた女の子と、会話をしながら傍らにでかい金棒を携えて豪快に笑っている・・・(鬼でしょ、絶対。俺でも分かる。)鬼が居たり、掲示板に張り出されたクエストを眺めている男の人が二人。人間が居て正直ホッとした。
見るからに猫を擬人化した女の子と、その横にお義母さんの服がピンクっぽく塗装された女の人がクエストを見ている。
パッと見、6人くらいしか居ないみたいだ。
(人少ないんだな、でも人の目があまり無いってラッキーだな、うん。)
変に、多くの人に注目されないからマシ。
「メイルは居るか。」
カウンターの前に移動しているルシールさんが、カウンターの奥に向かって呼びかける。
するとカウンターの奥から
「その声はルシールか。」
と返事が返ってきた。
返事が返ってきてからすぐ直後に、全身が緑色の鱗っぽいので覆われた人が、カウンターに出てきた。緑の尻尾もおまけ付きである。
ごっつい男の人が出てくるもんだと思ってたから、これもまたイメージ通りには行かなかった。
「一人ギルドに入れたい奴が居てな。」
そう言って横に居た俺を指さす。
その緑の人は、しばらく俺を見た後
「今噂の奴か。お前が連れてきて、ギルドに入れたいと推薦するとはな・・・強いのか?」
噂になってるって、顔見ただけで分かるんすか。もう大体の事に関しては驚かないから別にいいけど。
「いや、多分弱い。」
・・・さくっと言いますね。でも多分は付けてくれてたから、気には留めないでおこう。
「駄目か?」
「いや、駄目では無いが・・・風の噂によると、別世界から来た人間だとか、しかも来たのがつい昨日とも。」
そう言って俺を見てきた。マジで噂の広まり方が半端無い、なんでそこまで知ってんだよと。
(今朝俺の服をくれって言ってきた人なのかな、ミリアちゃんが、友達とかに話したちゃったのかな。あ、昨日家に行くまでにあの服だったじゃんか。だから知っててもおかしくないな・・・おかしくなよいよな?もう何が有っても不思議じゃないもんな?)
そして目の前の現実に目を向ける。
「えっと、多分それで合ってます。別世界から来たってのも・・・証拠とかは無いですけど。」
緊張した声で自分の意見を言う。今のところ、別世界に来たって言う証拠が、俺の見ている物だけ。他人に信じ込ませようとすると、これは骨が折れる。服を見せれば一発の気もするけど。
「あ、ついでに俺は弱いですけど・・・負けん気とやる気なら強いですから、途中で仕事放り出すなんて真似はしません。・・・駄目ですか?」
「いや、さっきも言ったが駄目では無い。それに、しっかり自分の弱さを認めてるのが気に入った。ちょっと待ってろ。」
カウンター横の書類と、ペンを一枚置いた。
「そこに年齢と、そっちに名前を書いてくれ。それで入会終了だ。」
横からルシールさんが教えてくれる。
17才
杉村 剣二
書類に記入して、とかげっぽいなと思いながら、目の前の緑の人に渡す。
「これでいいですか?」
「・・・大丈夫だ。よし、もう好きにしていいぞ。」
「・・・え、終わりっすか?もう?」
書類に記入してギルド入会終わりとは、あまりにもの呆気ない。
その質問にはルシールさんが答えてくれた。
「そうだ、基本ギルドに入会した奴らの顔は忘れん。つまり顔パスだ。基本深夜はやっていないから、暇だからと言ってここに来るなよ?受けたいクエストがあったら、あそこの掲示板からやりたいクエストの紙をちぎってここに持ってこい。そうすれば印を押してやる、それを持ってクエスト主に会いに行けばいい。」
聞きたい事を全部説明してくれた。すっごい助かります、先輩。
「そうなんですか、顔パスって何か気楽のような、気になるような。」
と呟き、カウンターに居る緑の女性に向かって
「それじゃ、これからお世話になります。えっと・・・メイルさん。」
頭を下げる。
「あぁ、これからのお前の活躍に期待してるぞ。しばらくはルシールがついてくれるみたいだから、安心してクエストをこなして行くと良い。」
「はい、頑張ります!」
ギルドに入れた、どんな仕事をやっていくことになるのか楽しみすぎる。
男の子なら、冒険して強くなるもんだって信じてるからね。
それに、あまりにトントン拍子で事が運んだから、約束の時間には余裕で間に合うな。
「さて、時間が結構あるな。」
ルシールさんは、横にちらりと目をやる。そっちに俺も目を向けると、時計があった。
「ここで飯でも食べて行くか。」
「俺、金持ってないですよ?」
「つけだ、つけ。」
「・・・そこはしっかりしてるんすね。」
そう言いながら、俺とルシールさんはカウンターに近い席に腰を降ろす。
(このお肉おいしいな、何の肉なんだろ。あ、パンにもしっかり味ついてる。あのとき貰ったパンにそっくりだな、もしかしてここのパン?)
昼食を取りながら、俺は重要な事を思い出した。
「あ、重要な事聞き忘れてたんですけど、ルシールさんは、デュラハンって種族じゃないですか。ミリアちゃんやお義母さん、それとメイルさんの種族ってなんですか?」
「なんだ、説明してなかったか。」
「ですから聞き忘れたんですって・・・」
「そうだな、ミリアちゃんとロットは・・・あ、ロットってのはミリアちゃんのお母さんの名前だからな。その二人は、サキュバス種って種族だ。寝てる時は、ドアと窓の戸締まりをしっかりしておけ。特徴は・・・・・・」
・ミリアちゃんと、お義母さんはサキュバス種。メイルさんはなんと、ドラゴンという種族だった。
・基本似てる格好や特徴だったら同じ種族だと思っておっけー。
・これからは、心の中ではお義母さんをロットさんって呼んでいこう。
・魔物は全体的に、精液を主な栄養としてたから、今もそれが濃くも薄くも受け継がれてるから狙われたら仕方ないと思え。
との事、最後について理解したくなかったが、ロットさんもルシールさんも俺の体液を狙っていると、カミングアウトしてきました\(^o^)/
「・・・大体分かりました、もう大丈夫です。」
「そうか、それじゃ、飯を食い終わったら私の家にでも来るか?まだ時間はたっぷりあるぞ。」
「あ、強さを見る為の訓練とかですか?俺、弱いですけどいざってときには―――」
「何、邪魔者が入らない所でゆっくりと甘」
「―――あ、やっぱいいです、遠慮しときます。ご馳走様でした。それじゃ、帰りますか。まだ道覚えきれて無いんで、家までお願いします。」
「・・・それじゃ帰るとするか。」
わくわくしてきたっちゃしてきたけど、これ冒険以外にも危険が身の回りにあるって事実感したわ。
それと、さっきの説明でもう安易に想像できたのは・・・朝来た女の子は、服じゃなくて、マジで俺を『もらいに』来たんじゃないかって事。
・・・さて、明日から頑張るぞ!
11/06/23 06:48更新 / のりゆき
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