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chapter4 彼の戦いの行方
俺はアッシュ。まあそう名付けられただけでそもそも意味のある名前を持つものは本当にどれ程居るだろう…そんなことを考えながら塔の頂上で座っている…

アッシュ「…」

俺は、人間ではない。魔物たちも見抜けなかったところを見ると相当精巧なのだろう

アッシュ「…」

しばらく座って待って居ると…

ブラン「ここが、頂上ね…」

アッシュ「…」

ブラン『貴方が…』

アッシュ「まずは、良くここまで辿り着いたな。ようこそ」

ブラン『貴方は、何者…?なぜこれだけの犠牲を…!?』

アッシュ「感付いている者が居るようだが」

ブラン『…?』

カタリナ『貴方は…まさか…』

アッシュ「…」

カタリナ『信じたくないけど…だとしたら…何で…何でこんなことを…!!』

アッシュ「信じたくない?起きたことを理解できないのか、それとも否定を望むのか?」

カタリナ『アッシュ!!!!』

ブラン『彼はアッシュって名前なのね…』

アッシュ「分かっているならなぜ聞いた?」

俺は兜と仮面をはずす

カタリナ『何で…何でこんなことを…』

アッシュ「旧時代の遺物を消し去るためだ」

カタリナ『それだけのためにあれだけ犠牲を!?』

アッシュ「お前達魔物がかつてしてきたことに比べれば相当少ないはずだが」

アルフレッド「確かに、それには同意する…お前は無軌道な殺戮者ではないことはわかる」

アッシュ「…」

カタリナ『なぜこんなことをしたのか答えなさい!!!!どうして…』

アッシュ「あれだけヒントを残したのに分からないか?」

カタリナ『確かに、彼らのしたことは許されることではないわ…でも殺すことはないでしょう!?』

アッシュ「…なら教えてやる、何故俺が奴らを殺したのかをな」

アルフレッド「ああ、聞かせてくれ…その雰囲気からして只事ではなさそうだ…」

アッシュ「奴らのしていた研究はわかるか?」

カタリナ『命を弄ぶことを、していたわね…』

アッシュ「そう、人造生命体を作る研究とその生命体に魂をいれる研究だ」

カタリナ『…』

アッシュ「奴らの本当にやろうとしていたことが何か分からないか?」

カタリナ『でも…』

アッシュ「そっちの魔物は理解できたようだな」

ブラン『もしかして、彼らの研究の終着点は…』

アッシュ「…」

ブラン『主神の、器…?』

アッシュ「ご名答」

ブラン『なるほど…』

カタリナ『…』

アッシュ「そういうことだ」

カタリナ『貴方は、主神の受肉を阻止しようとしていたのね…』

アッシュ「ああ。」

アルフレッド「なるほど…つまり君が…」

アッシュ「ああ」

ブラン『???』

アッシュ「そういうことだ」

アルフレッド「主神復活の鍵はお前が全て滅した、つまり最後の鍵はお前だ!アッシュ!!」

アッシュ「ああ、そういうことだな」

互いに武器を構えるが、魔物たちは横槍を入れる

アッシュ「これは俺の問題だ、手出しは無用」

ブラン『本当に、手はないの…?』

そう話していると空から光が降り注ぐ

アッシュ「フッ…お出ましか…」

光の柱から、ざっと30体ほどの武器を装備した天使が降りてきた

アッシュ「何のようだ?」

天使「決まっているでしょう、不良品。」

アッシュ「ハッ…神の走狗が言うな…」

ブラン『まだ懲りないわけ?貴女たちの主は何をして居るのかしらね?』

天使「黙りなさい」

そのまま斬りかかってくるが…

アッシュ「…」

俺はほんの少しだけ横に避けてその天使の鳩尾に拳を叩き込み、そのままアッパーカットに繋ぐ

アッシュ「その程度か?」

さらにその天使を腰の双剣で撫で斬りにする

ブラン『ちょ!何してるの!?』

アッシュ「この程度なら、まだ魔物の軍隊の方が手応えはあるな…」

俺のその言葉に天使たちは顔を真っ赤にして突撃してくる

アルフレッド「神は、やはりこの世界を…それならば勇者として力無き人々のために戦うのが勤めだ…!!俺は神に刃を向ける!去りたいものは去れ!!」

決意を込めた言葉に彼の配下は誰も去らなかった

アッシュ「そういうことだ、オラァ!!」

そのままこちらも突進して間合いを詰め、鎧のマントで眼前の天使の視界を塞いだ上で渾身の蹴りを叩き込みその天使の首が普通は曲がらない方向に曲がったのを一瞬見てその勢いでさらに近くにいた天使の胴体を横一線に凪ぐ

ブラン『とりあえず応戦しないといけないわね…!』

魔物たちも天使たちを無力化していく…

天使「な…!」

アッシュ「だっ!!」

アルフレッド「だりゃっ!!」

さらに近くにいた天使を剣で刺し貫き、そのまま放り投げアルフレッドは天使を叩き斬る

アッシュ「っ!!」

頬を矢が掠める、どうやら弓使いも居るようだ

アッシュ「やっと頭を使うようになったか…だが、所詮狩りしかしてきていないお前達ではその程度だろうな…」

アルフレッド「人間を舐めるな…」

そのまま矢をギリギリで避け、俺達は天使を1体1体斬り伏せていく、天使たちは反撃されてもそこまで痛い目にあったことはないだろう…まさに狩りだ。命のやり取りをしてきているなら族の方が一対一ならまだ有利に思えるほどに

天使「バカな…貴方にそこまでの力はなかったはず…」

カタリナ『意思の力は限界を超える、貴女たちはそんなことも知らないの?』

アッシュ「ハッ…それさえわからんならそのまま消えろ!」

そう言った天使を抱えて思い切り脳天を床に叩きつける

アッシュ「あれだけいても、もう一桁か…」

アルフレッド「ああ、倒してしまおう」

残った天使たちも、斬り伏せていく…こいつらには盲信だけで不殺の信念も刺し違えてでも敵を倒そうと言う覚悟も感じられない…

アッシュ「まあ、現魔王に負けた奴の配下なんて所詮こんなものか…」

ブラン『人望も無いらしいしね』

アッシュ「だろうな」

アルフレッド「あんな主かと思うと情けなくなってくる…」

天使「不良品が…我らの主を…」

アッシュ「もういい、死ね」

そのまま最後の天使も首を切り落とそうとするがカタリナが止めてくる

カタリナ『なにも殺すこと無いでしょう!?』

アッシュ「いや、ある」

カタリナ『??』

アッシュ「まず一つ目が、向こうが殺すつもりで来ているのだから容赦する必要はないだろう?二つ目は生かしておけばまたなにかをしでかすかもしれない、三つ目はどうせここで生かしても奴らは戻った地点で消される、それならここで消した方が良いだろう…」

ブラン『でも…』

彼女たちが言い終える前に首を切り落とす

アッシュ「さて…話の続きか?」

ブラン『その前に私はブラン、魔界王女よ。』

アルフレッド「俺はアルフレッド、勇者の一人だな。」

アッシュ「俺はアッシュ、まあこの名前に意味さえあるかはわからないが…」

再び玉座らしきところに座る…

ブラン『貴方まで消える必要はないでしょう!?』

アッシュ「俺が何者か分からんのか?」

聞いてきている魔物以外は生きている天使たちを拘束したようだ

ブラン『…』

アッシュ「わからんなら教えてやる、俺は最初期に作られた人造生命体だ。」

カタリナ『…』

アッシュ「そして、俺以降に作られた人造生命体はヒト型だけだが俺をデチューンした」

カタリナ『…貴方が、制御できなかったから?』

アッシュ「ああ、そういうことだ」

カタリナ『そして貴方は、暴れに暴れてあの街を爆発させた…記憶はそのときの爆発によるショックで封印状態になった…こんなところかしら?』

アッシュ「満点の回答だ」

アルフレッド「なるほど…肉体はわかった、なら魂は一体…」

アッシュ「ここの女達には酷な話だ」

ブラン『今さら動じはしないわ…今のことでもかなり驚いてるから』

アッシュ「なら話してやる、俺は嘗てお前たちが変化する前の時代で魔物に絶望の中殺された者の一人だ」

カタリナ『そんな…』

アッシュ「まあ、俺の作り手も当て付けのためだろうな…成仏もできずにさ迷っていた俺をこの身体にいれた」

カタリナ『なら、何故記憶を取り戻した私達に攻撃をしなかったの?』

アッシュ「お前達を赦すつもりはないが、変化したことは認める」

カタリナ『…』

アッシュ「それに、嘗てそんなことをした奴らは変化しているなら自責の念で潰れていそうだからな。俺が止めを刺す必要さえない」

ブラン『わかってたのね…』

アッシュ「ああ」

ブラン『それなら、私達が貴方を…』

アッシュ「俺から最後の尊厳さえ奪うつもりか?」

アルフレッド「奴は、死を望んでいる。というよりは解放されたいのだろう…」

アッシュ「肉体と魂の繋がりも、だいぶ薄れてきている。このままでは暴走した肉体がたくさんのものを傷つけかねない」

アルフレッド「わかった…なら介錯は俺がしてやる」

アッシュ「魔物達よ、気にすることはない。目の前にいるのは人間ではないのだから」

ブラン『だめよ…』

アッシュ「ハッ…魔物はやはり傲慢だな…事情を知って尚手段を選ばずに自分の意見を押し通そうとする。盲信している主神教団の連中と何が違う?」

カタリナ『…』

アッシュ「お前達を赦すつもりはないと言ったのはそういうことだ」

ブラン『絶望の中殺された。そう言っていたけど…』

アッシュ「これ以上はお前達の心を抉るだけだ」

カタリナ『覚悟の上よ…聞かせて…』

アッシュ「…お前達は進軍の邪魔だと言う理由で笑みさえ浮かべながら俺の故郷の人々を殺した、そして俺は隠れていたが一人でも残せば後に仇なすと考えたらしく俺の故郷に片っ端から火を放ちあぶり出されて殺された。もう良いか?」

カタリナ『…えぇ』

ブラン『まさか、救えていない魂があったことは本当に盲点だったわ…』

アルフレッド「…あれは」

アッシュ「いよいよしびれを切らしてきたか…こりゃ解放は後だな…」

ブラン『器がないと出てこれない筈では…?』

アッシュ「ここからは俺の仮説だが、奴は器がなくても出てこられるが器があった方が切り離しが効いて逃げやすいってことではないか?」

アルフレッド「仮説だけど納得…」

???[失敗作風情で私のやろうとして居ることを語らないでもらいたいものですが]

アッシュ「俺は確かに失敗作だが、それならあんたは傲慢な小物で臆病者だな」


どうやら主神がしびれを切らしてきたのは勘違いではなかったらしい

???[!!!!]

アッシュ「ハッ!失敗作の言葉で怒りを露にするなら、本当に小物だな…」

ブラン『それは違いないわね』

アルフレッド「…」

???[やはり、人間も魔物も一度消してリセットすべきなようですね…]

アッシュ「気に入らないから壊す、ガキかお前は」

アルフレッド「…」

アッシュ「???」

アルフレッド「勇者は、神の走狗ではない…力無き者のために命を懸けて戦うのが使命だ…!!そのためなら主神!貴様にも刃を向ける!!」

アッシュ「お前、やはり良い奴だな…こんな身体でなければ…」

アルフレッド「裏切りに、力を貸してくれるか?」

アッシュ「ああ、奴が出てきたなら解放より先に奴をなんとしないといけないな」

ブラン『私達も、力を貸すわ…』

彼女たちも、決意に満ちた目をして居る

アルフレッド「変化した魔物も、これには戦わざるを得ないか」

ブラン『えぇ…家族のため、そして彼のような存在を増やさないようにするためにも…!!』

俺達の意思は、方向がひとつになったようだ

アッシュ「…」

とはいえ、生身な彼らは腐っても神な威光で動きが鈍い…なら俺がやることは…

アッシュ「…!!」

出てきた主神にアッパーを叩き込み、脳天に肘撃ちを入れる

主神[!!]

アッシュ「今がチャンスだ!!」

ブラン『えぇ!』

カタリナ『食らいなさい!!』

魔物たちは連携を組みながら攻撃魔法と物理攻撃を織り交ぜ主神はそれの対応に追われている…

アルフレッド「はっ!」

アッシュ「ドラァ!!」

対処に追われ無防備な主神目掛けて俺達は斬りつける

主神[っ!!小賢しい連携を…!!]

アッシュ「そんな無駄口を叩いている余裕があるのか?」

さらに主神の鳩尾に膝蹴りを叩き込む

主神[っ!!]

主神の顔色が変わる…

主神[魔王の一族だけではなく…人間と不良品風情に…]

ブラン『黙りなさい』

冷たい眼をしたブランは持っている細剣で主神を何度も突き刺す

ブラン『貴方が怠慢で傲慢なことでどれだけの人々が苦しんだと思っているの?』

主神[私が作ったものを私が好きにして何が悪いのですか?]

アッシュ「魔王夫妻に負け、離反者を出した。そしてこのザマだろう?」

主神は怒りのままに光の鋭いエネルギー弾を作るが…

アッシュ「だから裏切られるんだよ…!!」

そのまままた鳩尾な今度は拳を叩き込む

主神[っ!!!!]

やはりそこが弱いらしい…

アッシュ「神らしい傲慢さだな…だからこそ成長しない…」

アルフレッド「人々の平和のため…貴様は許せん…!!」

ブラン『今までに貴方が見殺しにしたものたちの痛み、受けなさい!!』

そのまま俺達は一斉に主神を斬りつける

主神[がっ!!!!]

斬りつけた直後、俺は主神の背後に回り押さえつける

アッシュ「俺に構わずやれ!!」

ブラン『でも…』

アッシュ「お前達には新たな未来が託されている…それがお前達の役目だ!!」

アルフレッド「お前の覚悟…受け取った!!」

カタリナ『!これなら…』

アルフレッドとカタリナは、剣を構え俺との間合いを詰めそして…

アッシュ「っ!!!!」

カタリナ『ごめんなさい…』

そのまま俺もろとも主神を突き刺してくるが…

主神[私を…謀ったのですか…!?]

俺はギリギリまで押さえつけていたが奴を貫く寸前に拘束を外して足蹴にしながら貫いた剣を避けたのだ

アッシュ「誰がお前なんかと心中してやるかよ、本当に駆け引きが下手だな…」

俺はそのまま主神に向き直り、双剣で斬り伏せる

主神[神に刃を…出来損ないの…]

アッシュ「その[出来損ない]に消されるのならお前は神でありながらそれ以下ってことだよなあ?」

さらに何度も怒りと憎しみを込めて切り刻む

アッシュ「もうこの地の生き物たちに神は不要、消えろ…」

頭から縦に両断し、吐き捨てる

アルフレッド「奴、逃げるみたいだぞ!!」

アッシュ「ああ…」

カタリナ『逃がしはしないわ!!』

そのまま俺は上に跳躍する

アッシュ「逃がさん!!」

上っていこうとした光輝く玉を俺はに両断し、アルフレッドは横に一閃を加え、カタリナとブランは魔法を放ち消し飛ばした

ブラン『…主神は、滅んだの?』

アッシュ「少なくとも壊滅的なダメージは与えられた、これならかなりの間なにもできんと思う」

アルフレッド「そうか…」

アッシュ「さて、良いか?」

アルフレッド「ああ…」

ブラン『他に方法はないの?』

アッシュ「ない」

ブラン『即答!?』

アッシュ「俺はお前達を赦すつもりはないし、俺がいると争いの種になる」

ブラン『話くらい聞いて…』

アッシュ「お前達は話を聞いたか?まあ聞いてなければ俺は俺でなかっただろうがな」

ブラン『…』

彼女はそれでも立ちはだかる

アッシュ「エゴを押し通す気か?流石魔物、力付くでなんでも無理を通す訳か」

ブラン『エゴを押し通してるのは貴方もでしょう?私達の謝罪を受けてくれないなんて』

アッシュ「相変わらず傲慢な態度だな、謝罪を受けるかどうかはそいつ次第だろうが。どれだけ傲慢になれば自分達の謝罪を受けさせるのを強制しようとできるんだかな」

ブラン『どうしてわかってくれないのよ…!!』

アッシュ「先に事をしでかしたのは、お前達だ。」

埒が明かないので場所を変えようとする

アッシュ「下らん理想論を信じるような奴らとわかり合えるわけもなし、場所を変えよう」

アルフレッド「確かに、そうだな」

そのまま立ち去ろうとすると、魔方陣が足元に展開されて俺たちは飛ばされた























アッシュ「ここは…」

アルフレッド「魔界か?」

ブラン『えぇ、ここは…』

???「前々から、君と話をしたいと思っていた」

そこにいたのは、玉座らしきところに座る男女だった

ブラン『父様、母様…』

アッシュ「ついに大将が自ら動くとは、傲慢さもここまで極まるか」

アルフレッド「恐れを知らん奴だな…」

改めて見るが俺が作られてから情報を集めるために見た書物に描かれていた魔王夫妻そのものだった

???「君の解放を止めるためじゃない、君たちの事を知るために呼んだんだ」

恐らくだが魔王の夫は言う

アッシュ「…」

アルフレッド「俺も???」

???『えぇ…今更言い訳はしないわ…』

魔王は俺の目を見て重々しく言葉を出す

アッシュ「何度も言うように、魔物が変化したことは認めます。でもしたことが消えるわけではないのはわかりませんか?」

魔王『えぇ、私達のしたことは消えないわ』

アッシュ「おや」

魔王『???』

アッシュ「てっきり押し付けをしてくるかと思いましたが」

アルフレッド「俺もそう思った」

魔王『えぇ…やったことは消えないわ…』

アルフレッド「彼の魂を解放することが救いになる…皮肉かもしれませんがね…」

夫「まあ、こんなことにもなれば新しい身体を与え二度目の人生を与えるといわれても「一度殺しておいて二度目とは何様のつもりだ?」と言いたくなるのも当然だろうね…」


アッシュ「その通りですね…だからこそ赦すつもりはないと言うことです」

魔王『私達にとって、最大のミスにして見過ごすことを許されないことね…』

ブラン『私もそう思う…』

アッシュ「俺を作らせたこと?それとも…」

魔王『貴方の魂が、あいつらの手にわたる前に救えなかったことよ…』

アッシュ「なるほど…」

魔王『責めないのね?』

アッシュ「貴殿方も万能ではない、それだけでしょう?」

夫「割りきりが早いな」

アッシュ「割りきらないとやってられないだけです」

アルフレッド「割りきれただけ彼は強かった…か」

魔王『なるほど…』

夫「なら、次は君の番だ」

魔王の夫はアルフレッドを見る

アルフレッド「…」

夫「君は、勇者の一人かな?」

アルフレッド「はい、まさかこんなきっかけで伝説の人に会えるとは…」

夫「君は、そこまで魔物を嫌悪していないみたいだね」

アルフレッド「相手を知らなければ敵も味方もない、変化したことは知っているので」

夫「なるほど、でもそれは君たちのところでは…」

アルフレッド「ええ、異端児ですよ。守りには有能でも攻めでは使えない。そして魔物を滅ぼすことに使えないならと志願してアッシュの正体を見極めに来ました」

夫「なるほど、で、彼をどう見た?」

アルフレッド「彼は彼の考えがあって動いていたこと、そして主神の器を壊し自分もその一つであったことを聞きました」

魔王『酷いことをするわね…』

アルフレッド「同じ人間とはいえ、嫌悪感を隠せません」

魔王『ある意味、彼がやらないと止まらなかったのかもしれないわね…』

アルフレッド「確かに…魔物ではない関係者であったこと、被害者だからこそ…かもしれませんね…」

話が一段落ついたので俺は口を開く

アッシュ「俺は解放を望みます」

夫「まあ、後々の事も考えて、か」

アッシュ「ですね…」

魔王『解放は、まあ止められはしないわね…なら…』

アッシュ「???」

魔王『貴方に、もし良かったら選んでほしい道があるのよ』

アッシュ「???」

魔王『一つ目が、この世界を見守るために転生してほしいわ』

アッシュ「…二つ目は?」

魔王『不死者の国に行って暮らすと言う道よ』

アッシュ「…」

とりあえず、今の身体から解放はしてくれるようだ

アッシュ「転生、とは?」

疑問を投げ掛けてみる

魔王『その気になったわけではないみたいね…』

アッシュ「とりあえず、全部聞いてみてそこから考えるべきだと思ったので」

魔王『貴方の記憶を持ったまま、インキュバスへ転生できるわ』

アルフレッド「そんなことが…」

アッシュ「流石に滅んだ肉体の再生は無理か」

魔王『えぇ…』

アッシュ「…」

夫「言い方が悪いかも知れないが、君は不運が連続してしまったように思えるな」

アルフレッド「確かに…不運というには大きいですけどね…」

アッシュ「不運…か」

夫「君があの時居合わせてしまい、殺されてしまい、魂が材料にされてしまった。最初の時期がもっと先、もっと言うと魔物が変化してからなら君は死ななくて済んだだろうし君の魂が材料になる前になんとかできていたなら…とおもう…」

アッシュ「だが、そうはならなかった。所詮運命なんてこんなものですよ」

アルフレッド「思いのままにいかない、痛感してきているからか…」

魔王『一つ、良いかしら』

アッシュ「??」

魔王『貴方の記憶を、見せてもらえない?』

アッシュ「…貴殿方には酷です」

魔王『…それでも、長として見なければならないわ』

アルフレッド「俺にも、見せてもらえるか、」

ブラン『えぇ、私たちも…』

アッシュ「…わかった」

魔王は俺の頭に手を置き、水晶を近くに置くと記憶が投影された

魔王『!!』

アッシュ「…」

アルフレッド「これは…」

魔王『かつての私達は、こんなひどいことを…』

ブラン『何てことなの…』

アッシュ「だからこそ変化したことは認めてます。赦すつもりはないのも変わらんですが」

魔王『えぇ…許しを乞うつもりもないわ…』

ブラン『と言うよりその資格無いかも…』

夫「…一つ、礼を言わせてもらいたい」

アッシュ「言われるようなことを?」

夫「ああ、君がその気になれば自分と同じ「造られし者」たちを集めて人間にも魔物にも報復を行えたはずだ」

アッシュ「…」

アッシュ「それにより沢山の血が流れ命を失うものが出てきたかもしれない。それをしなかったことに感謝したい」

アッシュ「まあ、すでに何人か殺してるのは知っているでしょう」

魔王『えぇ、とはいえ責めることは出来ないわね…』

アッシュ「なるほど…」

魔王『???』

アッシュ「てっきり責めるかとおもってましたが」

魔王『貴方が殺したのは、独り身かつあの研究をしていたものだけでしょう?』

アッシュ「まあ、皆殺しにしていればより貴殿方を刺激して目的を達成する前に捕まる可能性を考慮しました」

魔王『なるほど…』

アッシュ「それに、全面戦争を仕掛けても勝ちの目はない。それなら後の災厄の種を刈り取るという目的を達成することに注力した方が有意義でしょう?」

夫「なるほど…」

アッシュ「それに、全部憎み暴れられるほど時間も残されていなかったわけです」

魔王『…やっぱり』

アッシュ「強い力を宿す代償に、俺の肉体の時間は持って数年程度しかないわけです」

魔王『酷いわね…兵器として作った上にその後の人生さえ与えないなんて』

アッシュ「…」

夫「なるほど…」

アッシュ「そろそろ、時間のようですね…」

俺はそのまま立ち去ろうとするが…

魔王『待って』

アッシュ「俺の身体には、エネルギーを宿したコアがあります。そこまで大きくないとはいえ被害が出るので俺は離れます」

俺は上半身、人間で言うと心臓の辺りにある丸いコアを見せる

アルフレッド「赤黒く光っているな…」

夫「そう言うことだったのか…」

アッシュ「ここで被害を出せば奴らの思惑通りだから」

魔王『まさか…』

アッシュ「えぇ、貴殿方の予想通り俺の身体には魔物の魔力蓄積量が一定以上になると爆発を起こすコアが仕掛けてあります。」

アルフレッド「ここまで狂っていたとは…」

夫「魔物に殺され、魂さえ利用され…」

アッシュ「えぇ、転生を望んでいないのは人間にも魔物にも魔物にも嫌悪感があるからです」

アルフレッド「そうなるのが自然だ…」

ブラン『ここまで続けば…本当に…』

魔物一同は涙を流している…

魔王『何て事なの…』

アッシュ「では」

魔王『なら、私達が何とかしないとならないわね…』

夫「そうだな…」

アッシュ「??俺は人間ではないし、本来この時代にいないはずの存在だ。仮初の器と言う不安定なものに入った魂でしかない」

魔王『だとしてもよ!!』

魔王は凄まじい剣幕で言い放つ

アッシュ「???」

夫「一応新しい時代の私達がやらねばならないことだ…」

魔王、魔物たち、魔王の夫は同じ決意を持った眼で俺を見る

アッシュ「俺は変化したとはいえ自分を殺した魔物も勝手な理由で兵器にした人間も赦す気はない」

魔王『赦しは、求めてないわ…』

アッシュ「???」

魔王『なんの救いもなく消える、貴方はそれでいいの!?』

アッシュ「貴殿方には理解できないかもしれないが、消えればもうなにも憎まなくて済む…それも救いの一つだ」

ブラン『そんな救いしか残ってないの!?』

アルフレッド「彼がそういうなら、そうなんだろう…」

夫「済まない…君が兵器になる前になんとか出来ていたなら…」

アッシュ「しかし、そうはならなかった。貴殿方にとって残念なことに…」

確かに兵器になる前に救われていたなら、他の道もあったのかもしれない。だが…

アッシュ「とはいえ、俺の第二の生に意味はあった。」

魔王『確かに、主神の器にならずその器の作り手や非道な研究を殲滅したのは大きな意味があったわね…』

アッシュ「だから、未来は貴殿方に託します。」

夫「本当に、それでいいのか?」

アッシュ「それに…」

俺が腕を前に出すと、灰色の破片が落ちた

アッシュ「造られた身体も最早これまでのようです」

魔王『身体が…』

アッシュ「えぇ、崩壊を始めています」

そのまま手首から先が落ちて地面に当たると俺の手首だったものは灰のように崩れて粉になった

夫「どう言うことだ…」

アルフレッド「…まさか」

アッシュ「少し気が変わって貴殿方に迷惑をかけんように抑え込んでいるから、爆発は…しないはずだ」

アルフレッド「やはり、か…」

魔王『どうして…!!』

アッシュ「貴殿方なら、時間こそかかっても争いのない世界を作れる。そう感じたからですよ」

ブラン『だからって…!!』

魔王『ごめんなさい…』

アッシュ「俺が残された時間を急速に縮めてまで託す気になったのです、わかりますよね?」

夫「ああ…」

そのまま俺の腕は崩れ落ちた

魔王『…!!』

魔王夫妻は涙を流している…人間でさえない不良品の俺に対して…

アッシュ「っ!!」

なんとか脚が崩れ落ちる前に体勢を仰向けに変える

魔王夫妻だけでなく魔物たちやアルフレッドもそのまま残っている俺の手を握る…

アッシュ「…」

造られてからの記憶を振り替える…自分の意思を持ち自分の作り手もろとも街を滅ぼし、記憶を失い倒れたところで村人たちに拾われその村を襲う族を殲滅し自分の事をどうやって知ったかはわからないが魔物たちと短い間とはいえ共にあり魔物たちの変化を感じ記憶を取り戻してからは魔物たちの目を掻い潜りつつ主神の器を造るものや器候補を破壊ないし無力化して自分の事を使えないと理解した天使たちや主神を魔物たち、アルフレッドと殲滅して魔王夫妻に呼び寄せられ最期を看取られる…

アッシュ「なら、未来は…頼みました…」

俺の肉体は灰になり崩れ落ちた

アッシュ「…?」

魂は最早稀薄と言えるほどに随分弱っていたはずだが…

魔王『聞こえる?』

アルフレッド「魂か、初めて見た…」

アッシュ「…」

俺はぼんやりとした姿のまま頷く

夫「おそらくだが、君が爆発のエネルギーを抑え込んだことでそのエネルギーを魂が吸収、完全消滅するはずがエネルギーにより魂が存在できるまでに回復した。そう捉えるべきかと思う」

ブラン『消えなくて…良かった…』

アッシュ「…」

魔王『運命は、まだ貴方に消えてほしくないんじゃないかしらね?』

アッシュ「…」

魂魄の身になっても運命に利用されるか…と自嘲気味の顔になる

夫「とりあえず、君の命はもう一度終わりを迎えた。そうじゃないか?」

アッシュ「…」

とはいえ、割りきれるわけもない

魔王『そこでだけど』

アッシュ「?」

魔王『転生して、新しい人生を歩んでみない?』

アッシュ「…」

拒否権ないような気がする…

ブラン『こんな経験をした貴方にこそ、この世界の変化を見守って欲しいのよ…』

アルフレッド「俺もアッシュ、お前をもっと知りたい。」

奇しくも俺を殺した奴らの一族と俺を再利用しようとした一族の仲間が俺の転生を望む…皮肉なものだなと思う…

アッシュ「…」

アルフレッド「確かに、皮肉だよな…」

どうやら顔に出ていたらしい

夫「まあ、確かに皮肉かもしれないな…」

魔王『貴方が託した未来、見届けられるなら見届ける。それが託したものの責任よ』

アルフレッド「…」

半ば押し付けだろうが…と思う

夫「否定しないよ…押し付けではある」

魔王『かつての私たちは貴方の話さえ聞かなかった…だから私たちの話を聞かない。それをされても文句は言えないわ…』

ブラン『お母様…』

魔王『…』

夫「君は、それで良いのか?」

アッシュ「??」

夫「このままさ迷っていればまた利用されるかもしれないぞ?」

アッシュ「…!」

そうなれば、一度肉体を得た方がそう言う意味では…と思う

アッシュ「…」

時間をかけて頷く

魔王『ありがとう…』

それからすぐに激しい光とともに俺の魂は新しい器に入った

アッシュ「これは…」

光が収まると奇しくもかつての身体より軽く強さを感じる…

魔王『せめてのものとして、私達夫婦の力で作ったわ…』

アッシュ「おいおい…たかが一人のためにそこまでやるのか?」

魔王『えぇ…私達のかつてしてきたことを痛感させてくれたから…』

アッシュ「なら、俺は命をもてあそぶような真似をする奴を消すために世界を見て回ります」

ブラン『貴方の幸せは、その後な訳ね…』

アッシュ「また繰り返される可能性を考えた」

魔王『…その剣をどこで!?』

アッシュ「これは、俺が造られた都市の倉庫…厳重な鍵の施された倉庫の中にあった」

魔王『戦っていたところを見ると、大丈夫みたいね…』

アッシュ「これは、使用者自身を狂戦士と化す双剣…尤も俺は理性を失わなかったようですがね」

魔王『今も大丈夫?』

アッシュ「ならやってみます」

双剣を抜くが…

アッシュ「好戦的になる程度でそこまで影響はないです」

夫「なるほど…」

アッシュ「はい、ここにいる魔物たちが奪おうと言うなら抵抗はさせてもらいますよ」

魔王『使いこなせてはいる以上、よほどのことをしないと手は出させないわ…』

アッシュ「感謝します」

魔王『できるなら…殺すのはやめて欲しいけれど…』

アッシュ「やめて欲しいなら早々にそんなことをする奴を俺が行動する前に引き込めば良い。俺がこう言うのは読んでいたでしょう?」

夫「まあ、そう言うよね…」

アッシュ「それと、大抵の奴はこっちで十分です」

背中に担いでいた大振りな剣を抜く

魔王『それは…?』

アッシュ「俺が造られ記憶を失った時に居た村の人達からもらい受けた剣です」

夫「見ればわかる…愛されているな…」

アッシュ「双剣はどうしようもない相手にしか使わん方が良いと思ったので」

夫「慈悲か、それとも…」

アッシュ「万一のためです」

夫「周りに味方が居たら、攻撃してしまう可能性があるので」

魔王『…たまには、戻ってきなさいね』

アッシュ「??」

魔王『実質的に私達の息子みたいなものだから』

アッシュ「…確かに。」

夫「それに、これから君が見てきた世界を知りたいしね」

アッシュ「…」

魔王『そうだ』

アッシュ「??」

魔王『せっかくだし私達が新しい名前をつけましょうか』

アッシュ「さしずめ燃え尽きた灰から転生したから、かな?」

夫「なんだ、意外とロマンも行けるのか」

アッシュ「確か、灰から生まれる不死鳥の伝説とかありますしね」

魔王『ふふ』

アッシュ「…」

魔王『考えたのは、アダマスなんてどうかしら?』

アッシュ「アダマス…?」

魔王『貴方のその硬い意思や純粋な願いから、灰から作れるダイヤモンドが浮かんだのよ』

アッシュ「それの地方により異なる言葉でアダマス、ですか。」

魔王『そう!』

アッシュ「なら、そうさせてもらいますかね…」

魔王『あら、割りと素直…』

アッシュ「貴女方魔物が世界をどう変えていくのか、じっくり見て行動させてもらいますよ」

魔王『!!えぇ…』

夫「信じてくれたのか…」

アッシュ「薄氷一枚です、容易に砕けるのはご容赦を」

魔王『えぇ…』

変化した世界を見るために俺は進む、それがよいものであれば良いと願って…

chapter4 彼の戦いの行方 完









































???「どうだった?」

俺は上田 翔。


???『最後の最後でようやく救われたね…』

彼女は、青蓮。白澤という魔物だ

翔「このシナリオ、魔物から批判受けそうだったからいくつかエンディングを消したんだが」

俺はこのシナリオでゲームを作ろうと思い、魔界の歴史も俺より詳しい彼女にテストプレイを頼んだのだ

翠蓮『消したエンディングが気になるわね…』

翔「まず、一部の終わりにアッシュと魔物たちの別れがあるけどそこで無理に引き留めたら魔力蓄積量が許容量を超えて崩れ落ち、魂も消えるって奴」

翠蓮『何が起きたかもわからずに消えてしまうって…後味が…』

翔「だからお蔵入りにした」

翠蓮『他には?』

翔「二つ目は、アッシュの願いを叶えて介錯をするって奴」


青蓮『…』

翔「その後に魔物と人間は時間をかけてわかり合うんだけど、双方に記念碑が立てられていて人間側は「繰り返すこと、そして忘れることは決してならない者が居たことをここに刻む」と描いてあって、魔物側は『和平の礎、ここに眠る』と描いてあるのが流れる感じだった」

翠蓮『彼がそれを望んでいたとしても、なんというか魔物からしたら完全敗北ね…引き戻すこともできず、救うこともできずなんて…』

翔「だからこれもお蔵入りにした」

翠蓮『で、このエンディングが残ったわけね…』

翔「これは一番良いエンディングとして出す予定だった奴だね」

翠蓮『これだけで良いわ…他のも出したらなに言われるかわかったものではないわよ…?』

翔「だよ、なあ…魔物たちは物語よりもハッピーエンド至上主義だし」

翠蓮『たしかに、ねぇ…』

翔「なら…」

翠蓮『そうね…』


その話し合いはつぎの日の朝まで続き、数ヶ月後に完成して公開されるのは後の話…

終わり
21/08/14 03:09更新 / サボテン
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■作者メッセージ
どうも、サボテンです。

今回の話はいかがだったでしょうか?

ご意見、ご感想などありましたらよろしくお願いします。

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