ジェン「誇りより命の方が大事と人々は言うが誇りを捨ててまで得た命に何の意味がある?」(ぬらりひょん)
※これもあり得た可能性のある話です。
俺はいつもしている首飾りを忘れかけていたので首飾りを着けてから出掛ける事にした。
ジュン「相変わらず、魔物ってのは自分勝手だな。人の事は言えないかもしれないが…。」
俺は呆れながらも旅館から出て、温泉街を回りに行った…。
ジュン「俺みたいに1つの考えを貫いて生きるのは時代錯誤なのかもしれないな…。」
自嘲気味に呟きながらも俺は温泉街を楽しんだ。
ジュン「さて…。!?(部屋の前に着いたがただならぬ気配を感じて止まる)」
だが、このままではお持ち帰りルート確定にしか思えなかったのでとりあえず気配の元凶を確かめる事を選んだ。
ジュン「…。(部屋の中に入り履き物置き場から扉の前に移動して気配を探る)」
気配を探ると、高位の魔物が部屋に居ることが感じ取れて俺は本格的に緊張とプレッシャーに逃げ出したくなった。
ジュン「…。(少し震える)」
???『とって食いはしないから入ってきたらどうかな?』
ジュン「!!(扉を見据える)」
俺が感じたのは強い魔力とプレッシャー、そしてそれとは違う他の感情だった。
???『怖がってるのかな?』
ジュン「…。(隠しきれない肯定)」
???『余程の事があったと見えるねぇこれは…。(扉を開ける)』
ジュン「ぬらりひょん…。」
???『知っているのかい?』
ジュン「情報は大事だ、相手を知れば争いを避けたり弱点を知ったりできる」
扉を開けて出てきたのは書物で読んだぬらりひょんという魔物だった。
???『なるほど、確かに違いないねぇ。』
ジュン「で、なにか用が?」
???『君はジュンて間違いないかな?』
ジュン「あんたのことだ、とっくに調べてあるんだろ?」
???『確認さ』
ジュン「ああ、合っている」
???『私は久遠、知っての通りぬらりひょんだ。』
ジュン「ご丁寧にどうも」
久遠『そこまで警戒するには、それだけの理由があると思う。』
ジュン「ある。」
久遠『否定はしないのかな?』
ジュン「下手に小細工をすれば足元を掬われかねない」
久遠『思った以上に…。(なぜか笑う)』
ジュン「?」
久遠『この流れだと聞いても話しはしないねぇ、多分…。』
ジュン「分かってるなら話は早いな」
久遠『なら…。(瞳が光る)』
ジュン「!!(衝撃に弾き飛ばされる)」
久遠『!?』
ジュン「さしずめ魔眼か何かだろうが対策済だ…。(口角から一筋の血を流しながらも淡々と返す)」
久遠『一体…。』
ジュン「俺は魔物の魔力を実際のダメージに変換するアクセサリを着けている。魔力で堕とそうとするならその前に間違いなく俺は死ぬだろうがな。」
久遠『なるほど…。伊達に報復者を束ねてはいないか…。』
ジュン「魔物はどんなやつでも報復の邪魔をする、敵でしかない。」
久遠『無効にする手もあると思うけどねぇ…。』
ジュン「それではだめだ、それではな…。」
久遠『?』
ジュン「高位の魔物は壊しにかかるだろうと読んでの策だ」
久遠『これじゃ迂闊にやればお陀仏、確かに高位の魔物には有功だ。考えたねぇ…。』
ジュン「人のまま生き、人のまま死ぬのが俺の最後の役目だ。」
久遠『!そういえば、ジュンの仲間たちは…。』
ジュン「そうだ。戦いで死んだりあんたたちが心を壊してでも持ち帰ったりした」
久遠『最後の存在であるからこその意地…。』
ジュン「あんたも知っているだろう?心が壊れなかった奴はどうなったか」
久遠『誇りのために、命を捨てた…。』
ジュン「そうだ。」
久遠『命を何だと思っている…。』
ジュン「…。」
久遠『たくさんの人が誇りのために命を捨てた…。』
ジュン「そうだ、あいつらは死を以て人間の誇りを示した。」
久遠『馬鹿げている!』
ジュン「そう見えるだろうな…。だが、このままでは悪人がのうのうと生き虐げられた者達は泣き寝入りだ。だからこそ戦う道を彼らは選んだ。」
久遠『…。』
ジュン「あんたたちがやっていることはそういうことだ、切り捨てられた人々を自らの幸せのために黙殺している」
久遠『!』
ジュン「高位の魔物としては頭が柔らかいな。」
久遠『だが、復讐は新しい復讐を産み出すだろう?』
ジュン「それは今に始まったことではないだろう、それこそ人が人になったときから起こっている」
久遠『…。』
ジュン「?」
久遠『今度は強制しない、ジュン、君に何があったのか聞かせてほしい、何があってそこまでになってしまったのかを…。』
ジュン「面白い話でもない。過去を掘り返したところで死人はよみがえらないだろう」
久遠『大切な人を、失ったのか…。』
ジュン「そうだ、二人ほどな…。」
久遠『なるほど…。』
ジュン「その加害者はみんな何年かすれば牢屋から出てくる、許せるか?」
久遠『…。』
ジュン「だから俺たちは集まり、社会に反旗を翻した。」
久遠『それがあの組織の変遷…。』
ジュン「初めてかもな、魔物にここまで話したのは」
久遠『…。』
ジュン「これで理解してくれたか?」
久遠『確かに、無関係な人々は傷つけないし殺すのは悪人だけ、やっと頭のなかで繋がった…。』
ジュン「そうか」
久遠『でも死ぬ理由がわからないねぇ…。』
ジュン「それほどの覚悟がないとあんたらに堕とされてしまうからな。」
久遠『私達魔物の事を知っているんだねぇ…。』
ジュン「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。」
久遠『なるほど、やってたことに理解はできないが言葉通りに実践はしていると…。』
ジュン「…。」
久遠『最後の報復者…。』
ジュン「ああそうだ。」
久遠『自分だけが堕ちる訳には行かないって訳かい…。』
ジュン「ああそうだ、俺がやらなければこれまで誇りのために散って行った仲間達が浮かばれないだろうが…。」
久遠『惜しいよ…。』
ジュン「?」
久遠『報復者になる前に出会えていたなら…。』
ジュン「そうはならなかった、あんたにとっては残念だがな」
久遠『意地でもなんとかしなきゃいけないねこりゃ…。』
ジュン「…。」
久遠『?』
ジュン「絶対にあんたらの思い通りにはさせない。(座っていたが両手で何とか体制を保っている)」
久遠『!』
俺の意識はそこで途切れた…。
ジュン「…。誰だ?俺を呼ぶのは?」
目を開けると仰向けになっている俺を覗き込んでいる久遠の姿があった…。
久遠『やっと目を開けてくれた…。』
ジュン「…。(立ち上がる)」
久遠『!?』
ジュン「死んでもあんたらの思い通りにはさせない…。」
久遠『!』
??『待ってください!(誰かが入ってくる)』
ジュン「…。(冷たい目)」
??『あなたが死んでもどうにもなりません!』
ジュン「裏切り者が殺されに来たのか?」
??『確かに貴方にとっては裏切り者かもしれません、でも…。』
ジュン「裏切り者の恥さらしに耳を貸すとでも?」
??『…。』
ジュン「よくのこのこと俺の前に現れられたな、誇りどころか常識さえも壊されたか」
久遠『仲間だったのにそんな言い方…。』
ジュン「仲間?簡単に誇りを捨てるものは仲間ではない」
??『生きてください、死んでいった仲間のために、そして…。』
ジュン「裏切り者がほざくな…。(胸倉を掴む)」
??『ジュンさん…。』
ジュン「口を開くな、裏切り者」
??『…。』
ジュン「文洋、最後の警告だ。俺の前に二度と現れるな。」
文洋『ジュンさん…。(立ち去る)』
ジュン「…。」
久遠『一欠片の優しさは残ってるんだねぇ…。』
ジュン「俺達が消すのは悪人だけだ、奴を消せばそれが崩れる」
久遠『そうかい…。』
ジュン「あのとき俺は死んだはずでは…。」
久遠『全く、お陰でかなり魔力を食っちまったよ…。』
ジュン「…。」
久遠『隠しても仕方ないから言うがジュンが誇りとして守り抜いた人間であることも、もうない。』
ジュン「そうか…。」
久遠『?』
ジュン「ずっと前からほんの少し感じていた違和感がやっとわかった…。」
久遠『?』
ジュン「纏まらんな…。」
久遠『…。(待ってます)』
ジュン「心の奥底でほんの少しだが止めてほしいと望んでいたのかもしれない」
久遠『私は最初からわかってたよ。』
ジュン「え」
久遠『私は「これ以上仲間を失いたくない、止めてほしい」って感じてたよ』
ジュン「手のひらの上か…。」
久遠『予想外に拘るのと死にかけたのは想定外だったけどねぇ…。』
ジュン「せめてもの矜持だ。」
久遠『あと、これも落胆するから言わなかったけどねぇ…。今ならいいかな』
ジュン「?」
久遠『ジュンの死んだ仲間達もみんな魂だけだけど幸せに暮らしてるよ、ふふ…。』
ジュン「え」
久遠『ゴースト系、だったっけ?その娘達にお持ち帰りさ…。』
ジュン「今までやってたことは何だったんだよ…。(膝から崩れる)」
久遠『だから安心して、ねぇ?』
ジュン「…。(詰んだ、これ詰んだな…。)」
久遠『…。(頭から抱き抱える)』
ジュン「はは、は…。」
久遠『逃げられるとは思わないことだねぇ…。』
彼女は猛禽のような光を宿らせた目で言った。
ジュン「降参だなこりゃ」
久遠『やっと剥き出しのジュンとご対面だ』
ジュン「何か力抜けた」
久遠『なら…。』
俺はいや応なしにひざ枕の体勢で寝転がされた…。
久遠『見込み通りだ』
ジュン「?」
久遠『鎧と障壁を剥がせば私の求めてたもの…。』
ジュン「よく付き合ったな…。」
久遠『魔物は気が長いんだよ…。』
ジュン「なるほど…。」
久遠『笑った方が良い男じゃないか…。』
ジュン「!(赤くなる)」
久遠『やっぱりか…。』
ジュン「?」
久遠『女性関係で何かあったね…?』
ジュン「昔、な…。」
久遠『大丈夫、私は裏切らないから…。』
その瞬間、頭を抱き抱えられた…。
ジュン「!」
久遠『大丈夫、大丈夫…。』
ジュン「!…。」
久遠『何処へも行かないし、裏切らないから…。』
ジュン「…。」
俺はいろいろ堪えながらも頷いた…。
久遠『我慢しなくていいからね?』
こうして俺の誇りは、ここで完全に砕けた。だがここまで誇りを持ち続けてきたからこそ久遠に会えたのかもしれない…。
俺はいつもしている首飾りを忘れかけていたので首飾りを着けてから出掛ける事にした。
ジュン「相変わらず、魔物ってのは自分勝手だな。人の事は言えないかもしれないが…。」
俺は呆れながらも旅館から出て、温泉街を回りに行った…。
ジュン「俺みたいに1つの考えを貫いて生きるのは時代錯誤なのかもしれないな…。」
自嘲気味に呟きながらも俺は温泉街を楽しんだ。
ジュン「さて…。!?(部屋の前に着いたがただならぬ気配を感じて止まる)」
だが、このままではお持ち帰りルート確定にしか思えなかったのでとりあえず気配の元凶を確かめる事を選んだ。
ジュン「…。(部屋の中に入り履き物置き場から扉の前に移動して気配を探る)」
気配を探ると、高位の魔物が部屋に居ることが感じ取れて俺は本格的に緊張とプレッシャーに逃げ出したくなった。
ジュン「…。(少し震える)」
???『とって食いはしないから入ってきたらどうかな?』
ジュン「!!(扉を見据える)」
俺が感じたのは強い魔力とプレッシャー、そしてそれとは違う他の感情だった。
???『怖がってるのかな?』
ジュン「…。(隠しきれない肯定)」
???『余程の事があったと見えるねぇこれは…。(扉を開ける)』
ジュン「ぬらりひょん…。」
???『知っているのかい?』
ジュン「情報は大事だ、相手を知れば争いを避けたり弱点を知ったりできる」
扉を開けて出てきたのは書物で読んだぬらりひょんという魔物だった。
???『なるほど、確かに違いないねぇ。』
ジュン「で、なにか用が?」
???『君はジュンて間違いないかな?』
ジュン「あんたのことだ、とっくに調べてあるんだろ?」
???『確認さ』
ジュン「ああ、合っている」
???『私は久遠、知っての通りぬらりひょんだ。』
ジュン「ご丁寧にどうも」
久遠『そこまで警戒するには、それだけの理由があると思う。』
ジュン「ある。」
久遠『否定はしないのかな?』
ジュン「下手に小細工をすれば足元を掬われかねない」
久遠『思った以上に…。(なぜか笑う)』
ジュン「?」
久遠『この流れだと聞いても話しはしないねぇ、多分…。』
ジュン「分かってるなら話は早いな」
久遠『なら…。(瞳が光る)』
ジュン「!!(衝撃に弾き飛ばされる)」
久遠『!?』
ジュン「さしずめ魔眼か何かだろうが対策済だ…。(口角から一筋の血を流しながらも淡々と返す)」
久遠『一体…。』
ジュン「俺は魔物の魔力を実際のダメージに変換するアクセサリを着けている。魔力で堕とそうとするならその前に間違いなく俺は死ぬだろうがな。」
久遠『なるほど…。伊達に報復者を束ねてはいないか…。』
ジュン「魔物はどんなやつでも報復の邪魔をする、敵でしかない。」
久遠『無効にする手もあると思うけどねぇ…。』
ジュン「それではだめだ、それではな…。」
久遠『?』
ジュン「高位の魔物は壊しにかかるだろうと読んでの策だ」
久遠『これじゃ迂闊にやればお陀仏、確かに高位の魔物には有功だ。考えたねぇ…。』
ジュン「人のまま生き、人のまま死ぬのが俺の最後の役目だ。」
久遠『!そういえば、ジュンの仲間たちは…。』
ジュン「そうだ。戦いで死んだりあんたたちが心を壊してでも持ち帰ったりした」
久遠『最後の存在であるからこその意地…。』
ジュン「あんたも知っているだろう?心が壊れなかった奴はどうなったか」
久遠『誇りのために、命を捨てた…。』
ジュン「そうだ。」
久遠『命を何だと思っている…。』
ジュン「…。」
久遠『たくさんの人が誇りのために命を捨てた…。』
ジュン「そうだ、あいつらは死を以て人間の誇りを示した。」
久遠『馬鹿げている!』
ジュン「そう見えるだろうな…。だが、このままでは悪人がのうのうと生き虐げられた者達は泣き寝入りだ。だからこそ戦う道を彼らは選んだ。」
久遠『…。』
ジュン「あんたたちがやっていることはそういうことだ、切り捨てられた人々を自らの幸せのために黙殺している」
久遠『!』
ジュン「高位の魔物としては頭が柔らかいな。」
久遠『だが、復讐は新しい復讐を産み出すだろう?』
ジュン「それは今に始まったことではないだろう、それこそ人が人になったときから起こっている」
久遠『…。』
ジュン「?」
久遠『今度は強制しない、ジュン、君に何があったのか聞かせてほしい、何があってそこまでになってしまったのかを…。』
ジュン「面白い話でもない。過去を掘り返したところで死人はよみがえらないだろう」
久遠『大切な人を、失ったのか…。』
ジュン「そうだ、二人ほどな…。」
久遠『なるほど…。』
ジュン「その加害者はみんな何年かすれば牢屋から出てくる、許せるか?」
久遠『…。』
ジュン「だから俺たちは集まり、社会に反旗を翻した。」
久遠『それがあの組織の変遷…。』
ジュン「初めてかもな、魔物にここまで話したのは」
久遠『…。』
ジュン「これで理解してくれたか?」
久遠『確かに、無関係な人々は傷つけないし殺すのは悪人だけ、やっと頭のなかで繋がった…。』
ジュン「そうか」
久遠『でも死ぬ理由がわからないねぇ…。』
ジュン「それほどの覚悟がないとあんたらに堕とされてしまうからな。」
久遠『私達魔物の事を知っているんだねぇ…。』
ジュン「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。」
久遠『なるほど、やってたことに理解はできないが言葉通りに実践はしていると…。』
ジュン「…。」
久遠『最後の報復者…。』
ジュン「ああそうだ。」
久遠『自分だけが堕ちる訳には行かないって訳かい…。』
ジュン「ああそうだ、俺がやらなければこれまで誇りのために散って行った仲間達が浮かばれないだろうが…。」
久遠『惜しいよ…。』
ジュン「?」
久遠『報復者になる前に出会えていたなら…。』
ジュン「そうはならなかった、あんたにとっては残念だがな」
久遠『意地でもなんとかしなきゃいけないねこりゃ…。』
ジュン「…。」
久遠『?』
ジュン「絶対にあんたらの思い通りにはさせない。(座っていたが両手で何とか体制を保っている)」
久遠『!』
俺の意識はそこで途切れた…。
ジュン「…。誰だ?俺を呼ぶのは?」
目を開けると仰向けになっている俺を覗き込んでいる久遠の姿があった…。
久遠『やっと目を開けてくれた…。』
ジュン「…。(立ち上がる)」
久遠『!?』
ジュン「死んでもあんたらの思い通りにはさせない…。」
久遠『!』
??『待ってください!(誰かが入ってくる)』
ジュン「…。(冷たい目)」
??『あなたが死んでもどうにもなりません!』
ジュン「裏切り者が殺されに来たのか?」
??『確かに貴方にとっては裏切り者かもしれません、でも…。』
ジュン「裏切り者の恥さらしに耳を貸すとでも?」
??『…。』
ジュン「よくのこのこと俺の前に現れられたな、誇りどころか常識さえも壊されたか」
久遠『仲間だったのにそんな言い方…。』
ジュン「仲間?簡単に誇りを捨てるものは仲間ではない」
??『生きてください、死んでいった仲間のために、そして…。』
ジュン「裏切り者がほざくな…。(胸倉を掴む)」
??『ジュンさん…。』
ジュン「口を開くな、裏切り者」
??『…。』
ジュン「文洋、最後の警告だ。俺の前に二度と現れるな。」
文洋『ジュンさん…。(立ち去る)』
ジュン「…。」
久遠『一欠片の優しさは残ってるんだねぇ…。』
ジュン「俺達が消すのは悪人だけだ、奴を消せばそれが崩れる」
久遠『そうかい…。』
ジュン「あのとき俺は死んだはずでは…。」
久遠『全く、お陰でかなり魔力を食っちまったよ…。』
ジュン「…。」
久遠『隠しても仕方ないから言うがジュンが誇りとして守り抜いた人間であることも、もうない。』
ジュン「そうか…。」
久遠『?』
ジュン「ずっと前からほんの少し感じていた違和感がやっとわかった…。」
久遠『?』
ジュン「纏まらんな…。」
久遠『…。(待ってます)』
ジュン「心の奥底でほんの少しだが止めてほしいと望んでいたのかもしれない」
久遠『私は最初からわかってたよ。』
ジュン「え」
久遠『私は「これ以上仲間を失いたくない、止めてほしい」って感じてたよ』
ジュン「手のひらの上か…。」
久遠『予想外に拘るのと死にかけたのは想定外だったけどねぇ…。』
ジュン「せめてもの矜持だ。」
久遠『あと、これも落胆するから言わなかったけどねぇ…。今ならいいかな』
ジュン「?」
久遠『ジュンの死んだ仲間達もみんな魂だけだけど幸せに暮らしてるよ、ふふ…。』
ジュン「え」
久遠『ゴースト系、だったっけ?その娘達にお持ち帰りさ…。』
ジュン「今までやってたことは何だったんだよ…。(膝から崩れる)」
久遠『だから安心して、ねぇ?』
ジュン「…。(詰んだ、これ詰んだな…。)」
久遠『…。(頭から抱き抱える)』
ジュン「はは、は…。」
久遠『逃げられるとは思わないことだねぇ…。』
彼女は猛禽のような光を宿らせた目で言った。
ジュン「降参だなこりゃ」
久遠『やっと剥き出しのジュンとご対面だ』
ジュン「何か力抜けた」
久遠『なら…。』
俺はいや応なしにひざ枕の体勢で寝転がされた…。
久遠『見込み通りだ』
ジュン「?」
久遠『鎧と障壁を剥がせば私の求めてたもの…。』
ジュン「よく付き合ったな…。」
久遠『魔物は気が長いんだよ…。』
ジュン「なるほど…。」
久遠『笑った方が良い男じゃないか…。』
ジュン「!(赤くなる)」
久遠『やっぱりか…。』
ジュン「?」
久遠『女性関係で何かあったね…?』
ジュン「昔、な…。」
久遠『大丈夫、私は裏切らないから…。』
その瞬間、頭を抱き抱えられた…。
ジュン「!」
久遠『大丈夫、大丈夫…。』
ジュン「!…。」
久遠『何処へも行かないし、裏切らないから…。』
ジュン「…。」
俺はいろいろ堪えながらも頷いた…。
久遠『我慢しなくていいからね?』
こうして俺の誇りは、ここで完全に砕けた。だがここまで誇りを持ち続けてきたからこそ久遠に会えたのかもしれない…。
17/07/17 01:53更新 / サボテン
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