港町の祭りと歌姫 Festival in a port town and songstress
翌朝…
「…朝か。」
「起きたか。」
ドアの外から声がする、オリヴィアだろう。
「ああ、朝食食べたらここを出ようと思うんだ。」
「そうか。」
俺達は宿屋から出て店を探した。
「ここがいい、安くて味もいい。」
オリヴィアは宿屋の向かいにある店を差した。
「ならそうしよう。」
とりあえず店に入り、注文をした。
「なにがいいんだろう…。」
「私はこのセットをここに来たら頼んでいる。」
彼女が指差したのはパンにスープ、ベーコンエッグのセットだ。
「それいいな。」
「ならこれ2つだな。」
「だな。」
朝食を取って入ると、誰かが後ろから話し掛けて来た。
「お、ジュンじゃないか。」
「お、ミディアか。」
「朝飯か?」
「まあそういうこと。」
「あたしも腹減ったな、朝飯注文しよう…。」
「そうしろ。」
俺達は食事を済ませ、店を出た。
「さて、行こう。」
「待ってくれ!」
後ろからミディアが走って追いかけて来る。
「何だよいきなり!?」
「またこの街に来るのか?」
「機会があったら。」
「ならまた来たとき、あたしと戦ってくれ!」
「まぁ、時間に余裕があったらな。」
「あたしも早く旦那が欲しいなぁ…。」
「そ、そうか…。」
「旦那にするならやっぱりなにが大事かな…。」
「まぁじっくり考えてればいいよ、いずれ答えは出るだろうさ。」
「またな!」
「またいつか。」
ミディアとオリヴィアに送られ、俺はミルスの街から出た。
「南西にバレノがあるんだよな、行こう。」
しばらく進んで、道が2つに分かれた。
「一方は森を通る道、一方はやや迂回する平野か、どっちの道にしようかな、うーん…。」
しばらく考えて、森で野生の獣に襲われたら困るので迂回する平野を行くことにした。
「平野にしよう。」
それから一時間半くらい歩いて、潮の香りがしてきた。
「もうすぐだな、門みたいなのが見える。」
門番が話し掛けて来た。
「あなたは?」
「旅人です、この街に入りたいんですが。」
「何か持ってますか?」
「何かってなんだろう…。」
「有名な方の書いた書類とか、ありませんか?」
「あ、それなら。」
ミルスでもらった許可証を見せると、あっさり通してくれた。
「港町バレノにようこそ。」
「では街に入っていいんですよね。」
「はい、ごゆっくり。」
港町バレノ、潮風と人々の賑わいがある活気のある街だと俺は思った。
「さて、とりあえず宿を決めよう。」
俺は宿を決めようと、街を歩いていた。
「ん?」
「どこ行っちゃったんだろう…。」
そこには、十歳かそこらの魔物の女の子が困ったように辺りを見回していた。
「どうかしたのか?」
「あの、お父さんとお母さんとはぐれちゃって…。」
「そうか、どこまで一緒だったんだ?」
「えっと、パン屋さんのところまではいたのに…。」
「ならとりあえずパン屋までだな、一人が寂しいなら俺も行こう。」
「うん、お兄ちゃんありがとう…。」
(多分この娘はアリスって魔物のはずだ、純粋な少女そのものな魔物と書いてあったがまさにその通りだ。)
彼女が言うパン屋の近くまで来て、誰かを探している男女を見つけた。
「あの、すみません。」
「はい。」
「何かを探してるのか?」
「はい、娘が迷子になってしまって…。」
「お父さん!」
「やっぱりか。」
「ありがとうございます。」
「いや、偶然通りかかっただけですよ。」
「お兄ちゃんありがとう!」
「じゃあな。」
「待ってください。」
「はい?」
「娘から聞きました、あなたは宿を探しているとか。」
「えぇ。」
「もしよろしければ、我が家に泊まってください。」
「でもいいのか?家族水入らずなのに。」
「いえいえ、娘の恩人ですからよろしければ。」
俺は少し考えて、宿代や食事代が浮くと考え、この申し出を受けた。
「ならお世話になります。」
「いえいえ。」
15分ほど歩いて、夫婦の家に着いた。
「お兄ちゃん、何してるの?」
「今は近くに来ない方がいい、危ない。」
「お兄ちゃん、剣の手入れしてるんだ。」
「そうだよ、危ないから離れて。」
「うん。」
「そういえば君の名前を聞いてなかったな、俺はジュン、旅の傭兵だ。」
「私はクリムだよ。」
「そうか、ならクリム、危ないから離れて。」
「うん。」
20分ほど経ち、手入れが終わった。
「よし、終わった。」
「お兄ちゃんの手、油だらけ。」
「手を洗う場所はどこだろう。」
「こっちこっち〜。」
クリムは俺の手を引っ張り、手洗い場に向かう。
「油付くぞ、って聞いてないか。」
手を洗い終わると、クリムの父親が話し掛けて来た。
「昼食ができました、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「ご飯〜。」
クリムははしゃいでいる。
「ごちそうさまでした。」
「完食ね〜、若いっていいわね〜。」
「…」
クリムの母親からの返答に困ることを言われ、どうしたものかと考えていると、クリムが話し掛けて来た。
「お兄ちゃん、ご飯食べたら何する?」
「そうだな、今日はこの街で祭りをしていると聞いた、行ってみようか。」
「賛成ね、私達も楽しみたいし。」
「なら決まりですね。」
俺達は祭りに出発した。
「お兄ちゃん、あれなに〜?」
「あれは的当てだな、的を落とすと景品がもらえる。」
「やってみた〜い。」
「ならやるか。」
二人分の料金を払い、的当てを始めた。
「えいっ!」
カッ…
クリムの投げた玉は、的にかすったが倒れるまでには至らないようだ。
「はっ!」
バン!
的が倒れた。
「お兄ちゃんすご〜い。」
「的の真ん中を狙うと倒しやすい。」
「うん!」
カコ…カタ…カタ…パタン。
「倒れた〜!」
「いい感じだ。」
「うん!」
的当てを終えて、屋台から出た。
「お兄ちゃんほとんど当たってたね。」
「おかげでなかなかの景品がもらえた。」
「私もあのぬいぐるみがもらえたから満足。」
「そうか。」
「お兄ちゃんは何にしたの?」
「運命の石だって店の人は言ってたな。」
「運命の石?」
「話によると持ってる人の人生を変える人がいる向きに向くんだってよ。」
「ホントかなぁ〜。」
「わからん。」
「だよねぇ〜。」
クリムと雑談をしたり、店をいくつか回ったりして、アクセサリー屋を通りかかった時、クリムの足が止まった。
「わぁ…。」
「綺麗だな。」
「うん…。」
「主人。」
「はい、いらっしゃい。」
俺は主人に耳打ちをする。
「それでしたら、これはどうでしょう?」
「なるほど。」
値段もなかなか安かったので、買うことにした。
「この髪飾り1つ。」
「まいどあり。」
「え?お兄ちゃん?」
「ほら、着けるからじっとして。」
「これお兄ちゃんのじゃないの?」
「あげるよ。」
「うん…。」
何故かクリムは顔を真っ赤にしていた。
「そろそろ戻ろうか。」
「うん!」
15分くらい歩いて、クリムの両親と合流した。
「クリム、これどうしたの?」
「お兄ちゃんが買ってくれたの。」
「すみません…。」
「お気になさらず、久しぶりに楽しい時間を過ごさせてくれたお礼です。」
「お兄ちゃんとのお祭り、忘れないから。」
「…。」
自然と笑顔になる。
「帰って晩ご飯だ。」
「うん!」
夕食と風呂を済ませ、考えているとクリムが入って来た。
「どうしたんだ?」
「怖い夢、見ちゃった…。」
「なら親のところに行ってみたらいいんじゃないかな。」
「お父さんとお母さん、鍵掛けてる…。」
「娘ほったらかしてなにやってんだよ…。」
「怖いの…。」
「そうか…。」
俺はクリムの手を握る。
「お母さんの手みたいに柔かくも、お父さんの手みたいに大きくもないが、クリムの手を包むくらいはできる。」
「うん…。」
しばらくしてクリムの表情が落ち着いた。
「部屋、戻るか?」
「また怖い夢見るかもしれない…。」
「なら布団持って来ようか、寝てる間手を握っててあげるから。」
「うん!」
俺達はクリムの部屋に向かう。
「う、重たい…。」
「枕だけでいいから。」
「うん…。」
とりあえず、部屋にクリムの布団を敷いた。
「お兄ちゃん、おやすみなさい。」
「ん、あぁおやすみ。」
クリムの手を握りながら、眠りに落ちていった。
「…朝か。」
「おに…ちゃ…、ふふ。」
「どんな夢を見ているのか。」
カタン。
「おはようございます。」
「ん、おはようございます。」
「どうしたんですか?」
「貴方達が夜お楽しみの間、クリムが悪夢を見たらしいのでこうなりました。」
「あ、ごめんなさいね…。」
「まあクリムもよく眠れてるようですし。」
「ふふふ。」
「ん、あぁ〜、おはようお兄ちゃん。」
「ん、あぁおはよう。」
朝食を済ませてクリムの家族達の家から出た。
「ありがとうございました。」
「私、お嫁さんになるならお兄ちゃんみたいな人のお嫁さんになりたい。」
「まあいろいろな人と出会ってみたらいい、クリムの考え方とかも変わっていくだろう。」
「うん!」
「では。」
「お兄ちゃんまた来てね〜!」
クリムの家族達の家から出て、宿を探していると、歌声が聞こえて来た。
「何か聞こえてくるな、これは歌声か?」
また歌声が聞こえて来る、こっちのようだ。
「こっちか、確か海があったはずだ。」
俺は海に向かって歩いた。
「♪〜♪〜♪〜♪」
この歌の意味は分からないが、綺麗な声と心が洗い流されるような感覚に、自然と涙が出た。
「君が、歌っていたのか。」
「え?人間さん、何か悲しいことでもあったんですか?」
(彼女は、人魚か?いや、この世界じゃマーメイドと呼ばれていたはずだ。)
「君の歌を聞いたら、自然に、な。」
「何かあったんですか?」
「一口には言えないけどな。」
「つらいことがあったんですね…。」
「なぜそう思う?」
「何となくです。」
「そうか、久しぶりにいいものを聞かせてもらった、俺はジュン、君は?」
「私は、マリンでマーメイドです。」
「ありがとう、マリン。」
「いつか私にも、あなたみたいに繊細な感性の王子様が来てくれないかしら…。」
「いずれ来るよ、きっとね。」
「むしろあなたがいいかもしれないわね。」
「俺にはまだやることがある。」
「そう、残念ね。」
「ちょうど良い、昨日の祭りでもらった運命の石がある、使ってみよう。」
「運命の石?」
「持ってみてくれ。」
俺はマリンに石を渡す。
「どうするんですか?」
「とりあえず水に浮かべるなり、平たい石の上に置くなりしてくれ。」
「はい。」
マリンは石を海に浮かべた。
「お、あっちを指してるな。」
「私の王子様はあっちにいるの?」
「可能性はあるな。」
「行ってみるわね。」
「ああ、頑張れよ。」
「えぇ。」
俺はマリンと分かれ、宿を探した。
「お、この宿はいいな。」「いらっしゃい、見てたわよ、あなたとマリンちゃんを。」
「え、あ、はぁ…。」
しばらくして宿の手続きをしていると、宿の主人が話し掛けて来た。
「お、マリンちゃんにも春が来たみたいだね。」
「本当ですか?」
「ほら、あっちで男と向かい合って座ってる。」
「本当に効果あるのか…。」
「?」
「こっちの話です。」
「そうか。」
「お、マリンちゃん、彼を抱きしめたよ。」
「あの男はさしずめ振られたのかな…。」
「かもしれないね、彼は昨日、明日あの娘に告白するとか言っていたな。」
「まあ幸せそうで何よりだ。」
「だね、これ以上は出歯亀になる。」
「…。」
とりあえずそれから宿で今後のことを考えたり、酒場で情報を集めたりしたら意外と遅い時間になっていたので食後を取って眠った。
「さて、明日はどうなるかな…。」
「…朝か。」
「起きたか。」
ドアの外から声がする、オリヴィアだろう。
「ああ、朝食食べたらここを出ようと思うんだ。」
「そうか。」
俺達は宿屋から出て店を探した。
「ここがいい、安くて味もいい。」
オリヴィアは宿屋の向かいにある店を差した。
「ならそうしよう。」
とりあえず店に入り、注文をした。
「なにがいいんだろう…。」
「私はこのセットをここに来たら頼んでいる。」
彼女が指差したのはパンにスープ、ベーコンエッグのセットだ。
「それいいな。」
「ならこれ2つだな。」
「だな。」
朝食を取って入ると、誰かが後ろから話し掛けて来た。
「お、ジュンじゃないか。」
「お、ミディアか。」
「朝飯か?」
「まあそういうこと。」
「あたしも腹減ったな、朝飯注文しよう…。」
「そうしろ。」
俺達は食事を済ませ、店を出た。
「さて、行こう。」
「待ってくれ!」
後ろからミディアが走って追いかけて来る。
「何だよいきなり!?」
「またこの街に来るのか?」
「機会があったら。」
「ならまた来たとき、あたしと戦ってくれ!」
「まぁ、時間に余裕があったらな。」
「あたしも早く旦那が欲しいなぁ…。」
「そ、そうか…。」
「旦那にするならやっぱりなにが大事かな…。」
「まぁじっくり考えてればいいよ、いずれ答えは出るだろうさ。」
「またな!」
「またいつか。」
ミディアとオリヴィアに送られ、俺はミルスの街から出た。
「南西にバレノがあるんだよな、行こう。」
しばらく進んで、道が2つに分かれた。
「一方は森を通る道、一方はやや迂回する平野か、どっちの道にしようかな、うーん…。」
しばらく考えて、森で野生の獣に襲われたら困るので迂回する平野を行くことにした。
「平野にしよう。」
それから一時間半くらい歩いて、潮の香りがしてきた。
「もうすぐだな、門みたいなのが見える。」
門番が話し掛けて来た。
「あなたは?」
「旅人です、この街に入りたいんですが。」
「何か持ってますか?」
「何かってなんだろう…。」
「有名な方の書いた書類とか、ありませんか?」
「あ、それなら。」
ミルスでもらった許可証を見せると、あっさり通してくれた。
「港町バレノにようこそ。」
「では街に入っていいんですよね。」
「はい、ごゆっくり。」
港町バレノ、潮風と人々の賑わいがある活気のある街だと俺は思った。
「さて、とりあえず宿を決めよう。」
俺は宿を決めようと、街を歩いていた。
「ん?」
「どこ行っちゃったんだろう…。」
そこには、十歳かそこらの魔物の女の子が困ったように辺りを見回していた。
「どうかしたのか?」
「あの、お父さんとお母さんとはぐれちゃって…。」
「そうか、どこまで一緒だったんだ?」
「えっと、パン屋さんのところまではいたのに…。」
「ならとりあえずパン屋までだな、一人が寂しいなら俺も行こう。」
「うん、お兄ちゃんありがとう…。」
(多分この娘はアリスって魔物のはずだ、純粋な少女そのものな魔物と書いてあったがまさにその通りだ。)
彼女が言うパン屋の近くまで来て、誰かを探している男女を見つけた。
「あの、すみません。」
「はい。」
「何かを探してるのか?」
「はい、娘が迷子になってしまって…。」
「お父さん!」
「やっぱりか。」
「ありがとうございます。」
「いや、偶然通りかかっただけですよ。」
「お兄ちゃんありがとう!」
「じゃあな。」
「待ってください。」
「はい?」
「娘から聞きました、あなたは宿を探しているとか。」
「えぇ。」
「もしよろしければ、我が家に泊まってください。」
「でもいいのか?家族水入らずなのに。」
「いえいえ、娘の恩人ですからよろしければ。」
俺は少し考えて、宿代や食事代が浮くと考え、この申し出を受けた。
「ならお世話になります。」
「いえいえ。」
15分ほど歩いて、夫婦の家に着いた。
「お兄ちゃん、何してるの?」
「今は近くに来ない方がいい、危ない。」
「お兄ちゃん、剣の手入れしてるんだ。」
「そうだよ、危ないから離れて。」
「うん。」
「そういえば君の名前を聞いてなかったな、俺はジュン、旅の傭兵だ。」
「私はクリムだよ。」
「そうか、ならクリム、危ないから離れて。」
「うん。」
20分ほど経ち、手入れが終わった。
「よし、終わった。」
「お兄ちゃんの手、油だらけ。」
「手を洗う場所はどこだろう。」
「こっちこっち〜。」
クリムは俺の手を引っ張り、手洗い場に向かう。
「油付くぞ、って聞いてないか。」
手を洗い終わると、クリムの父親が話し掛けて来た。
「昼食ができました、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「ご飯〜。」
クリムははしゃいでいる。
「ごちそうさまでした。」
「完食ね〜、若いっていいわね〜。」
「…」
クリムの母親からの返答に困ることを言われ、どうしたものかと考えていると、クリムが話し掛けて来た。
「お兄ちゃん、ご飯食べたら何する?」
「そうだな、今日はこの街で祭りをしていると聞いた、行ってみようか。」
「賛成ね、私達も楽しみたいし。」
「なら決まりですね。」
俺達は祭りに出発した。
「お兄ちゃん、あれなに〜?」
「あれは的当てだな、的を落とすと景品がもらえる。」
「やってみた〜い。」
「ならやるか。」
二人分の料金を払い、的当てを始めた。
「えいっ!」
カッ…
クリムの投げた玉は、的にかすったが倒れるまでには至らないようだ。
「はっ!」
バン!
的が倒れた。
「お兄ちゃんすご〜い。」
「的の真ん中を狙うと倒しやすい。」
「うん!」
カコ…カタ…カタ…パタン。
「倒れた〜!」
「いい感じだ。」
「うん!」
的当てを終えて、屋台から出た。
「お兄ちゃんほとんど当たってたね。」
「おかげでなかなかの景品がもらえた。」
「私もあのぬいぐるみがもらえたから満足。」
「そうか。」
「お兄ちゃんは何にしたの?」
「運命の石だって店の人は言ってたな。」
「運命の石?」
「話によると持ってる人の人生を変える人がいる向きに向くんだってよ。」
「ホントかなぁ〜。」
「わからん。」
「だよねぇ〜。」
クリムと雑談をしたり、店をいくつか回ったりして、アクセサリー屋を通りかかった時、クリムの足が止まった。
「わぁ…。」
「綺麗だな。」
「うん…。」
「主人。」
「はい、いらっしゃい。」
俺は主人に耳打ちをする。
「それでしたら、これはどうでしょう?」
「なるほど。」
値段もなかなか安かったので、買うことにした。
「この髪飾り1つ。」
「まいどあり。」
「え?お兄ちゃん?」
「ほら、着けるからじっとして。」
「これお兄ちゃんのじゃないの?」
「あげるよ。」
「うん…。」
何故かクリムは顔を真っ赤にしていた。
「そろそろ戻ろうか。」
「うん!」
15分くらい歩いて、クリムの両親と合流した。
「クリム、これどうしたの?」
「お兄ちゃんが買ってくれたの。」
「すみません…。」
「お気になさらず、久しぶりに楽しい時間を過ごさせてくれたお礼です。」
「お兄ちゃんとのお祭り、忘れないから。」
「…。」
自然と笑顔になる。
「帰って晩ご飯だ。」
「うん!」
夕食と風呂を済ませ、考えているとクリムが入って来た。
「どうしたんだ?」
「怖い夢、見ちゃった…。」
「なら親のところに行ってみたらいいんじゃないかな。」
「お父さんとお母さん、鍵掛けてる…。」
「娘ほったらかしてなにやってんだよ…。」
「怖いの…。」
「そうか…。」
俺はクリムの手を握る。
「お母さんの手みたいに柔かくも、お父さんの手みたいに大きくもないが、クリムの手を包むくらいはできる。」
「うん…。」
しばらくしてクリムの表情が落ち着いた。
「部屋、戻るか?」
「また怖い夢見るかもしれない…。」
「なら布団持って来ようか、寝てる間手を握っててあげるから。」
「うん!」
俺達はクリムの部屋に向かう。
「う、重たい…。」
「枕だけでいいから。」
「うん…。」
とりあえず、部屋にクリムの布団を敷いた。
「お兄ちゃん、おやすみなさい。」
「ん、あぁおやすみ。」
クリムの手を握りながら、眠りに落ちていった。
「…朝か。」
「おに…ちゃ…、ふふ。」
「どんな夢を見ているのか。」
カタン。
「おはようございます。」
「ん、おはようございます。」
「どうしたんですか?」
「貴方達が夜お楽しみの間、クリムが悪夢を見たらしいのでこうなりました。」
「あ、ごめんなさいね…。」
「まあクリムもよく眠れてるようですし。」
「ふふふ。」
「ん、あぁ〜、おはようお兄ちゃん。」
「ん、あぁおはよう。」
朝食を済ませてクリムの家族達の家から出た。
「ありがとうございました。」
「私、お嫁さんになるならお兄ちゃんみたいな人のお嫁さんになりたい。」
「まあいろいろな人と出会ってみたらいい、クリムの考え方とかも変わっていくだろう。」
「うん!」
「では。」
「お兄ちゃんまた来てね〜!」
クリムの家族達の家から出て、宿を探していると、歌声が聞こえて来た。
「何か聞こえてくるな、これは歌声か?」
また歌声が聞こえて来る、こっちのようだ。
「こっちか、確か海があったはずだ。」
俺は海に向かって歩いた。
「♪〜♪〜♪〜♪」
この歌の意味は分からないが、綺麗な声と心が洗い流されるような感覚に、自然と涙が出た。
「君が、歌っていたのか。」
「え?人間さん、何か悲しいことでもあったんですか?」
(彼女は、人魚か?いや、この世界じゃマーメイドと呼ばれていたはずだ。)
「君の歌を聞いたら、自然に、な。」
「何かあったんですか?」
「一口には言えないけどな。」
「つらいことがあったんですね…。」
「なぜそう思う?」
「何となくです。」
「そうか、久しぶりにいいものを聞かせてもらった、俺はジュン、君は?」
「私は、マリンでマーメイドです。」
「ありがとう、マリン。」
「いつか私にも、あなたみたいに繊細な感性の王子様が来てくれないかしら…。」
「いずれ来るよ、きっとね。」
「むしろあなたがいいかもしれないわね。」
「俺にはまだやることがある。」
「そう、残念ね。」
「ちょうど良い、昨日の祭りでもらった運命の石がある、使ってみよう。」
「運命の石?」
「持ってみてくれ。」
俺はマリンに石を渡す。
「どうするんですか?」
「とりあえず水に浮かべるなり、平たい石の上に置くなりしてくれ。」
「はい。」
マリンは石を海に浮かべた。
「お、あっちを指してるな。」
「私の王子様はあっちにいるの?」
「可能性はあるな。」
「行ってみるわね。」
「ああ、頑張れよ。」
「えぇ。」
俺はマリンと分かれ、宿を探した。
「お、この宿はいいな。」「いらっしゃい、見てたわよ、あなたとマリンちゃんを。」
「え、あ、はぁ…。」
しばらくして宿の手続きをしていると、宿の主人が話し掛けて来た。
「お、マリンちゃんにも春が来たみたいだね。」
「本当ですか?」
「ほら、あっちで男と向かい合って座ってる。」
「本当に効果あるのか…。」
「?」
「こっちの話です。」
「そうか。」
「お、マリンちゃん、彼を抱きしめたよ。」
「あの男はさしずめ振られたのかな…。」
「かもしれないね、彼は昨日、明日あの娘に告白するとか言っていたな。」
「まあ幸せそうで何よりだ。」
「だね、これ以上は出歯亀になる。」
「…。」
とりあえずそれから宿で今後のことを考えたり、酒場で情報を集めたりしたら意外と遅い時間になっていたので食後を取って眠った。
「さて、明日はどうなるかな…。」
15/03/12 20:49更新 / サボテン
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