闘技場の街 Town in a competition place
ラミーとブランと別れ、俺は村のみんなの墓を作り始めた。
「みんなごめんなさい…俺がもっと早く戻っていたらこんなことにはならなかったのに…。」
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ストッ。
「これで、終わり。」
俺が最後の墓を作り終えた時には、日が沈む直前だった。
「今日は、村長の家にある地下倉庫で夜を明かそう。」
俺は地下倉庫に向かった。
ガタッ!
「真っ暗だな、明かりは、あった。」
俺はランプを付けた。
「中には本棚と、道具入れ、ベッドがあるな。」
本棚の本を見て、俺は理解した。
「魔物の習性や性格、好物が書いてある本や、魔物が書いた書物、魔物が好きそうな薬学書物がたくさんあるな、だから村長は魔物に偏見がなかったはずだ、魔物の知識を深めて、実際に見て、一緒に行動して、理解したんだなあ。」
本棚を見終わったので、今日はもう眠ることにした。
「寝よう、今日はもう疲れた」
俺は明日のために、犠牲になったみんなのために生きないといけないのかもしれない…。
翌朝…
「朝みたいだな。」
朝になって起きたので、道具入れを調べてみた。
「中身は、2本の剣と小箱だな。」
また頭の中に直接声が響いてくる。
「その剣から特別な力を感じる。」
「どんな力?」
「簡単に言うと反対の力だ、相反する力だ。」
「対極の力か。」
「そういう事になる、扱いこなせなければ死ぬか意識を乗っ取られる。」
「どうしようかな。」
「持って行っていいと思う。」
「村長はそういってたな、そういえば。」
俺はとりあえず、2本の剣を腰に着けた。
「次は小箱だな。」
俺は小箱をゆっくり開けた。
「ペンダント?」
そこには菱形の石が付いた首飾りが入っていた。
「…」
少し悩んで、持って行くことにした。
「今となったらこれはみんなの形見なんだよな。」
ペンダントを首に着けて、俺は外に出た。
「どうしようかな…。」
地図を持っていたのを、俺は数分経って思い出した。
「さて、どこに行こうか。」
「なるほど、東に行ったら親魔物領の街ミルスで、西に行ったら隣村のエオスの村、南に行ったら港町バレノ、北に行ったらあの教団の街か、なら東に行こう。」
俺は、東の街ミルスに行くことにした。
「お、門が見えてきた。」
ミルスの街に着いて、俺は武装した女性に声をかけられた。
「お前、どこから来た?」
(魔物みたいだけど、特に人間との違いが少し尖った耳くらいしかないな…。)
「グリネ村からです。」
「グリネ村、まさかお前があの事件の唯一の生き残りか!?」
「唯一ではないけどそうなる。」
「なるほど、なら領主の館に行く、着いて来い。」
「え?」
「領主様はあの事件の生き残りを探していた。」
「俺を魔王軍に突き出すのか?」
「いや、情報提供をして欲しい。」
「わかった。」
しばらく歩いて、領主の館に着いた。
「ここが領主様の館だ、くれぐれも失礼のないようにな。」
「…。」
俺は館に足を踏み入れた。
「私はセレナ、誇り高いヴァンパイアの一族。」
(ヴァンパイアか、道理で気品があるけどプライドも高そうな感じだなぁ。)
「ジュンです、見ての通り、人間です。」
「いくつか聞いていいか?」
「答えられることなら。」
「わかった。お前が、あの事件の唯一の生き残りか?」
「はい、唯一ではないですがそういう事になります。」
「唯一ではない、どういうことなのだ?」
「最初から説明した方がいいと思うんですが、どうしますか?」
「なら最初からにして欲しい。」
「分かりました、まずあの事件の起きた日、俺は近くの林で村で使う薪を割っていました。」
「なるほど、だから生き残れたのか。」
「はい、そういう事になります、そして昼近くに、村長の娘でラミーって名前のサキュバスが弁当を届けに来たんです。」
「なるほど、図らずも彼女は生き延びることになったのか。」
「はい、そして昼食を食べた後に、ラミーが村の異変を感じたので、戻ってみたらあの惨劇が…。」
「なるほど、その後は?」
「気がついたら俺は教団の騎士達を怒りのままに叩き潰して全滅させていました。」
「なるほど。」
「そして村で一夜を明かしてここに来ました。」
「なるほど、情報提供感謝する。」
「いえ。」
「この街で滞在するためには許可証が必要だ、私が書いてやる。」
「ありがとうございます。」
しばらく経って許可証を貰い、領主の館から出た。
「許可証を貰えたようだな。」
「おかげさまで。」
「それは何よりだ。」
「…なんで着いて来るんだ?」
「まあ一応見張りとしてな、ないとは思うが万が一何かあったら困る。」
「衛兵も大変なんだなぁ。」
「私はこれが仕事だ。」
「そういえば自己紹介がまだだったな、俺はジュン。ただの人間。」
「私はオリヴィア、デュラハンだ。」
(デュラハンか、確か首が外れる魔物で、戦闘能力が高めだってあの本に書いてあったなぁ。)
自己紹介も終えて時間が昼過ぎになっていたので、昼食にすることにした。
「そういえば昨日の昼から何も食べてなかったんだった。」
「そうか、昼食にするか?」
「ご飯どこにしようかな…。」
「こっちにいい店がある、安くてうまい、しかも量も多い。」
「案内よろしく。」
「あぁ。」
5分くらい歩いて、店に着いたようだ。
「なにがいいのかな…」
「私のオススメはこれだ。」
彼女が指差すのはオイルソースパスタだ。
「ならそれにしようかな。」
「そうか。」
注文を済ませ、しばらく外を見ていると、オリヴィアが話し掛けて来た。
「ジュンはこれからどうするんだ?」
「とりあえずバレノに行って情報集めして、どこかの傭兵ギルドに入りたいと思ってる。」
「傭兵ギルドならこの街にもある。」
「衛兵居るのにあるんだ。」
「まぁどの街にも基本的にはある、この街の傭兵ギルドの人数の6割以上は魔物達だが。」
「そんなところに入ったら、獣の群れに肉を投げ込むようなものだと思う。」
「否定はしないな…。」
「魔物は嫌いじゃないけど、いきなり襲い掛かってくるのは勘弁して欲しい。」
「いきなり襲い掛かってくるようなのはあまりいないがな。」
「それでも餓えた獣のような目で見られていい気はしない…。」
「まあ魔物が夫を手に入れるためのやり方は、本人次第だがな。」
「まぁ確かに。」
「いきなり襲い掛かってくるのも居るが、大抵は外堀から固めたり、誘惑の魔法を使ったり、人間からしたらハイペースだが仲良くなって距離を詰めたり、結局は本人次第だ。」
「確かにそうだ、いきなり襲い掛かってくるだけじゃないよな、だけどなんで誘惑の魔法を使うんだろう、みんな美女、美少女揃いなのに。」
「まあ他の奴も狙ってないとは限らないからな、早く手に入れたいんだろうさ。」
雑談をしているうちに、頼んだものが来たようだ。
「いただきます。」
「いただきます。」
食事を終えて店から出ると、広場に人だかりが出来ていた。
「なんだろう。」
「あれは武道大会だ、ひと月に一回行われる。」
「賞金が出るのか。」
「4位まで出る。」
「参加してみようかな。」
「まぁ止めはしないが、5割くらいでいきなり恋人が出来たりするぞ。」
「お、おう。」
「しかも戦いが終わるか終わらないかでまぐわい始める奴らもいるくらいだ…。」
「奔放とはいえ節操がないな…。」
「まあ盛り上がるのは確かだが。」
「武道大会というより、カップルを生み出す大会なんじゃ…。」
「フフッ、違いない。」
とりあえず大会にエントリーした。
「何試合目なんだ?」
「1回戦の7試合目。」
「そうか。」
なんだかんだで6試合が終わり、出番になった。
「んじゃ、行ってくる。」
「まぁせいぜい公衆面前で犯されないようにな。」
「全力でやらないと。」
俺が出てすぐに、相手も出てきたようだ。
「お、来たか。」
「さぁ、始めようじゃないか、あたしはミディアだ。」
(ミディア、彼女は確かミノタウロスだよな、真っ向からのパワー勝負ではまず勝てない、どうしようかな…。)
「ジュンです、よろしくお願いします。」
「よろしく、ところであたしはこの大会で旦那を探しに来てるんだ。」
「え、あ、はぁ…。」
「あたしが勝ったら…」
「その続きは勝ってから言ったらいいんじゃないかな、言うだけ言って負けた時に恥をかくことになりかねないと思うよ。」
「確かにそうだ、勝たせてもらうよ…。」
「意地でも負けられないなぁ…。」
なんだかんだで試合が始まった。
「あたしから行くよ!」
「いつでもいい。」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ミディアはものすごい勢いで突進してくる、少なくとも力では勝ち目はない、ならテクニックで行くしかないと思い、身体を真横にずらし、足払いをかけた。
「わっ!と!と!と!と!」
「はっ!」
俺は背中を軽く押す。
「わたっ!」
彼女は転んで場外に出た。
「勝ち。」
「まさか避けられるとはなぁ…。」
「ものすごいスピードとパワーだから、こうするしかなかった。」
「完敗だ、こんな簡単な策に引っ掛かるとは…。」
「単純なものほど、策としては以外に効果が大きいもんだよ。」
「違いない。」
とりあえず一回戦を勝ち抜いた。
「意外なほどあっさり終わったようだな。」
「場外負けにした。」
「なるほど。」
それ以降は、特に魔物と当たることもなく、決勝まで無事に勝ち抜いた。
「決勝まで来たなぁ。」
「そうだな。」
「どこまで行けるかな。」
「危ないと思ったら棄権するのもいい、まだ独り身でいたいならな。」
「考えとく。」
決勝戦が始まる、俺は部屋から出た。
「決勝戦だ、緊張するな。」
俺が出てすぐに、相手も出てきたようだ。
「あんたが決勝の相手みたいね。」
(確か彼女はワイバーンって魔物だったはずだ、飛べる相手にはどう戦ったらいいんだろう。)
「ああ、俺はジュン。」
「私はアキュリスよ、そろそろ始めましょうか。」
「だな。」
決勝戦のゴングが鳴る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「速い…!」
アキュリスはかなりの速さと正確さで滑空してくる。
「だぁっ!」
「つっ!」
俺は渾身の横振りで滑空を防御する。
「あんた、かなり強いわね、今まで戦ってきた人間とは違うみたい。」
「そうか、しかし速いな、避けるより防御の方がきついかも…」
「次で決着を付けましょう、泣いても笑っても次でおしまい。」
「だな。」
アキュリスはさらに高く飛び上がる、俺は呼吸を整えて構え直した。
(まず避けられないな、なら待ちからのカウンターに賭けるしかない…。)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「さっきまでより速い…!」
ガッッッッッ!
「ハァ…ハァ…ハァ…。」
「うぅー…。」
辛うじて彼女の後頭部に柄を当てることが出来た。
「私の、負けね…。」
彼女はそう言い残し、気を失った。
「勝った…。」
辛うじて優勝をして、賞金を手に入れて宿屋に戻った。
「さすがは一騎士団を全滅させただけはある、見事だった。」
「全部ギリギリだったけどな。」
「そうか。」
「人間と魔物じゃ戦い方が全然違うんだなって思った。」
「そうか。」
「疲れた、寝る。」
「私は隣の部屋にいる、何かあったら来い。」
「分かった。」
俺はこうしてミルスの街での大会に辛うじて勝ったのだった。
「みんなごめんなさい…俺がもっと早く戻っていたらこんなことにはならなかったのに…。」
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ストッ。
「これで、終わり。」
俺が最後の墓を作り終えた時には、日が沈む直前だった。
「今日は、村長の家にある地下倉庫で夜を明かそう。」
俺は地下倉庫に向かった。
ガタッ!
「真っ暗だな、明かりは、あった。」
俺はランプを付けた。
「中には本棚と、道具入れ、ベッドがあるな。」
本棚の本を見て、俺は理解した。
「魔物の習性や性格、好物が書いてある本や、魔物が書いた書物、魔物が好きそうな薬学書物がたくさんあるな、だから村長は魔物に偏見がなかったはずだ、魔物の知識を深めて、実際に見て、一緒に行動して、理解したんだなあ。」
本棚を見終わったので、今日はもう眠ることにした。
「寝よう、今日はもう疲れた」
俺は明日のために、犠牲になったみんなのために生きないといけないのかもしれない…。
翌朝…
「朝みたいだな。」
朝になって起きたので、道具入れを調べてみた。
「中身は、2本の剣と小箱だな。」
また頭の中に直接声が響いてくる。
「その剣から特別な力を感じる。」
「どんな力?」
「簡単に言うと反対の力だ、相反する力だ。」
「対極の力か。」
「そういう事になる、扱いこなせなければ死ぬか意識を乗っ取られる。」
「どうしようかな。」
「持って行っていいと思う。」
「村長はそういってたな、そういえば。」
俺はとりあえず、2本の剣を腰に着けた。
「次は小箱だな。」
俺は小箱をゆっくり開けた。
「ペンダント?」
そこには菱形の石が付いた首飾りが入っていた。
「…」
少し悩んで、持って行くことにした。
「今となったらこれはみんなの形見なんだよな。」
ペンダントを首に着けて、俺は外に出た。
「どうしようかな…。」
地図を持っていたのを、俺は数分経って思い出した。
「さて、どこに行こうか。」
「なるほど、東に行ったら親魔物領の街ミルスで、西に行ったら隣村のエオスの村、南に行ったら港町バレノ、北に行ったらあの教団の街か、なら東に行こう。」
俺は、東の街ミルスに行くことにした。
「お、門が見えてきた。」
ミルスの街に着いて、俺は武装した女性に声をかけられた。
「お前、どこから来た?」
(魔物みたいだけど、特に人間との違いが少し尖った耳くらいしかないな…。)
「グリネ村からです。」
「グリネ村、まさかお前があの事件の唯一の生き残りか!?」
「唯一ではないけどそうなる。」
「なるほど、なら領主の館に行く、着いて来い。」
「え?」
「領主様はあの事件の生き残りを探していた。」
「俺を魔王軍に突き出すのか?」
「いや、情報提供をして欲しい。」
「わかった。」
しばらく歩いて、領主の館に着いた。
「ここが領主様の館だ、くれぐれも失礼のないようにな。」
「…。」
俺は館に足を踏み入れた。
「私はセレナ、誇り高いヴァンパイアの一族。」
(ヴァンパイアか、道理で気品があるけどプライドも高そうな感じだなぁ。)
「ジュンです、見ての通り、人間です。」
「いくつか聞いていいか?」
「答えられることなら。」
「わかった。お前が、あの事件の唯一の生き残りか?」
「はい、唯一ではないですがそういう事になります。」
「唯一ではない、どういうことなのだ?」
「最初から説明した方がいいと思うんですが、どうしますか?」
「なら最初からにして欲しい。」
「分かりました、まずあの事件の起きた日、俺は近くの林で村で使う薪を割っていました。」
「なるほど、だから生き残れたのか。」
「はい、そういう事になります、そして昼近くに、村長の娘でラミーって名前のサキュバスが弁当を届けに来たんです。」
「なるほど、図らずも彼女は生き延びることになったのか。」
「はい、そして昼食を食べた後に、ラミーが村の異変を感じたので、戻ってみたらあの惨劇が…。」
「なるほど、その後は?」
「気がついたら俺は教団の騎士達を怒りのままに叩き潰して全滅させていました。」
「なるほど。」
「そして村で一夜を明かしてここに来ました。」
「なるほど、情報提供感謝する。」
「いえ。」
「この街で滞在するためには許可証が必要だ、私が書いてやる。」
「ありがとうございます。」
しばらく経って許可証を貰い、領主の館から出た。
「許可証を貰えたようだな。」
「おかげさまで。」
「それは何よりだ。」
「…なんで着いて来るんだ?」
「まあ一応見張りとしてな、ないとは思うが万が一何かあったら困る。」
「衛兵も大変なんだなぁ。」
「私はこれが仕事だ。」
「そういえば自己紹介がまだだったな、俺はジュン。ただの人間。」
「私はオリヴィア、デュラハンだ。」
(デュラハンか、確か首が外れる魔物で、戦闘能力が高めだってあの本に書いてあったなぁ。)
自己紹介も終えて時間が昼過ぎになっていたので、昼食にすることにした。
「そういえば昨日の昼から何も食べてなかったんだった。」
「そうか、昼食にするか?」
「ご飯どこにしようかな…。」
「こっちにいい店がある、安くてうまい、しかも量も多い。」
「案内よろしく。」
「あぁ。」
5分くらい歩いて、店に着いたようだ。
「なにがいいのかな…」
「私のオススメはこれだ。」
彼女が指差すのはオイルソースパスタだ。
「ならそれにしようかな。」
「そうか。」
注文を済ませ、しばらく外を見ていると、オリヴィアが話し掛けて来た。
「ジュンはこれからどうするんだ?」
「とりあえずバレノに行って情報集めして、どこかの傭兵ギルドに入りたいと思ってる。」
「傭兵ギルドならこの街にもある。」
「衛兵居るのにあるんだ。」
「まぁどの街にも基本的にはある、この街の傭兵ギルドの人数の6割以上は魔物達だが。」
「そんなところに入ったら、獣の群れに肉を投げ込むようなものだと思う。」
「否定はしないな…。」
「魔物は嫌いじゃないけど、いきなり襲い掛かってくるのは勘弁して欲しい。」
「いきなり襲い掛かってくるようなのはあまりいないがな。」
「それでも餓えた獣のような目で見られていい気はしない…。」
「まあ魔物が夫を手に入れるためのやり方は、本人次第だがな。」
「まぁ確かに。」
「いきなり襲い掛かってくるのも居るが、大抵は外堀から固めたり、誘惑の魔法を使ったり、人間からしたらハイペースだが仲良くなって距離を詰めたり、結局は本人次第だ。」
「確かにそうだ、いきなり襲い掛かってくるだけじゃないよな、だけどなんで誘惑の魔法を使うんだろう、みんな美女、美少女揃いなのに。」
「まあ他の奴も狙ってないとは限らないからな、早く手に入れたいんだろうさ。」
雑談をしているうちに、頼んだものが来たようだ。
「いただきます。」
「いただきます。」
食事を終えて店から出ると、広場に人だかりが出来ていた。
「なんだろう。」
「あれは武道大会だ、ひと月に一回行われる。」
「賞金が出るのか。」
「4位まで出る。」
「参加してみようかな。」
「まぁ止めはしないが、5割くらいでいきなり恋人が出来たりするぞ。」
「お、おう。」
「しかも戦いが終わるか終わらないかでまぐわい始める奴らもいるくらいだ…。」
「奔放とはいえ節操がないな…。」
「まあ盛り上がるのは確かだが。」
「武道大会というより、カップルを生み出す大会なんじゃ…。」
「フフッ、違いない。」
とりあえず大会にエントリーした。
「何試合目なんだ?」
「1回戦の7試合目。」
「そうか。」
なんだかんだで6試合が終わり、出番になった。
「んじゃ、行ってくる。」
「まぁせいぜい公衆面前で犯されないようにな。」
「全力でやらないと。」
俺が出てすぐに、相手も出てきたようだ。
「お、来たか。」
「さぁ、始めようじゃないか、あたしはミディアだ。」
(ミディア、彼女は確かミノタウロスだよな、真っ向からのパワー勝負ではまず勝てない、どうしようかな…。)
「ジュンです、よろしくお願いします。」
「よろしく、ところであたしはこの大会で旦那を探しに来てるんだ。」
「え、あ、はぁ…。」
「あたしが勝ったら…」
「その続きは勝ってから言ったらいいんじゃないかな、言うだけ言って負けた時に恥をかくことになりかねないと思うよ。」
「確かにそうだ、勝たせてもらうよ…。」
「意地でも負けられないなぁ…。」
なんだかんだで試合が始まった。
「あたしから行くよ!」
「いつでもいい。」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ミディアはものすごい勢いで突進してくる、少なくとも力では勝ち目はない、ならテクニックで行くしかないと思い、身体を真横にずらし、足払いをかけた。
「わっ!と!と!と!と!」
「はっ!」
俺は背中を軽く押す。
「わたっ!」
彼女は転んで場外に出た。
「勝ち。」
「まさか避けられるとはなぁ…。」
「ものすごいスピードとパワーだから、こうするしかなかった。」
「完敗だ、こんな簡単な策に引っ掛かるとは…。」
「単純なものほど、策としては以外に効果が大きいもんだよ。」
「違いない。」
とりあえず一回戦を勝ち抜いた。
「意外なほどあっさり終わったようだな。」
「場外負けにした。」
「なるほど。」
それ以降は、特に魔物と当たることもなく、決勝まで無事に勝ち抜いた。
「決勝まで来たなぁ。」
「そうだな。」
「どこまで行けるかな。」
「危ないと思ったら棄権するのもいい、まだ独り身でいたいならな。」
「考えとく。」
決勝戦が始まる、俺は部屋から出た。
「決勝戦だ、緊張するな。」
俺が出てすぐに、相手も出てきたようだ。
「あんたが決勝の相手みたいね。」
(確か彼女はワイバーンって魔物だったはずだ、飛べる相手にはどう戦ったらいいんだろう。)
「ああ、俺はジュン。」
「私はアキュリスよ、そろそろ始めましょうか。」
「だな。」
決勝戦のゴングが鳴る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「速い…!」
アキュリスはかなりの速さと正確さで滑空してくる。
「だぁっ!」
「つっ!」
俺は渾身の横振りで滑空を防御する。
「あんた、かなり強いわね、今まで戦ってきた人間とは違うみたい。」
「そうか、しかし速いな、避けるより防御の方がきついかも…」
「次で決着を付けましょう、泣いても笑っても次でおしまい。」
「だな。」
アキュリスはさらに高く飛び上がる、俺は呼吸を整えて構え直した。
(まず避けられないな、なら待ちからのカウンターに賭けるしかない…。)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「さっきまでより速い…!」
ガッッッッッ!
「ハァ…ハァ…ハァ…。」
「うぅー…。」
辛うじて彼女の後頭部に柄を当てることが出来た。
「私の、負けね…。」
彼女はそう言い残し、気を失った。
「勝った…。」
辛うじて優勝をして、賞金を手に入れて宿屋に戻った。
「さすがは一騎士団を全滅させただけはある、見事だった。」
「全部ギリギリだったけどな。」
「そうか。」
「人間と魔物じゃ戦い方が全然違うんだなって思った。」
「そうか。」
「疲れた、寝る。」
「私は隣の部屋にいる、何かあったら来い。」
「分かった。」
俺はこうしてミルスの街での大会に辛うじて勝ったのだった。
15/03/12 22:53更新 / サボテン
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