連載小説
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始まり the first
あの日から俺の人生は変わったのかもしれない。


あの日…

「あっちが騒がしいな、ってなんだあれ。」

そこには光っている球体のようなものが浮かんでいた。


俺は謎の光に近づいて行った、そもそもこれが間違いだったのかもしれない。

「まぶしい、なんだ!?」
光の球がぶつかり、意識が薄れていく…死んだのかもしれないな、俺…。

「…て…。」

「…?」

「起きてください…。」

「…」

「村長、倒れてた人が起きました!」

「目が覚めたようですね。」

「はい、ここは?」

「ここは中立領のグリネ村です、あなたが倒れていたところを娘が知らせて、運んできました。」

「どうもありがとうございます。」

「君、名前は?」

「ジュンと言います、18才です。」

「なるほど、なら単刀直入に言おう、君は何者だ?」

「なんと言えばいいものか…」

「私が分かる範囲だと、このあたりの人間ではないようだが。」

「多分そうだと思います」

「多分?」

「実は謎の光の球が当たった瞬間、意識がなくなって…」

「謎の光の球、か。」

「はい、その光が近づいてきて、当たったとおもったら…」

「なるほど、確か…」

「?」

「たまに起こるんだ、この世界と別の世界の境界が曖昧になって、繋がることがあるんだよ。」

「なるほど、だとしたら…」

「君の考えてることは多分、元の世界に戻りたいんだろう。」

「はい、できますか?」

「多分、もう無理だよ。」
「そうですか…。」

「もう、君を連れてきた光の球は、消えていたと娘から聞いている。」

「分かりました、ならこの世界で生きて行きます。」
「そうか。」

「あれ、この格好は…?」
「君が来たときの服装そのままだ。」

「!?」

「君は恐らく、別世界の人間だろう、しかも凄腕の傭兵だ。」

「え!?」

「君の装備、君の雰囲気からしてそうだろう?」
俺はその武具を手に取る。
「!」

誰かの声が頭に直接来る…。
「君には済まないと思っているが、君はこの世界で生きてもらいたい、君にしか私の力を託す事ができない、私には君しかいないんだ…」

「どういうことだよ…」

「君には特別な適性がある、服や武器はささやかだが餞別だ、受け取って欲しい。」

「特別な適性ってなあ…。」

「…」

「何か事情があるみたいだね。」

「はい、自分をこの世界に送った本人からみたいです。」

「なるほど、君にしか聞こえなかったみたいようだね。」

「はい、そのようです。」
「ところで君は行くところがないなら、しばらくここに居ると良い」

「はい、ありがとうございます、薪割りとかならやれます。」

「うん、頑張って。」

「あの、お兄さん。」

「なに?」

「この世界で生きていくなら、私達のことも知っておいて欲しいです。」

(よく見たらかなり露出が多い目の毒な服装をしてるな、趣味かな…?)

「え?」

「娘のラミーはこの世界にいる種族の一つ、魔物娘なんだ」

「魔物娘?」

「魔物娘とは、その昔、人間と魔物が命の奪い合いをしていた時代があったんだ。」

「なるほど。」

「そして数百年前、魔王がサキュバスの一族になり、魔物が人を殺さなくなったんだ。」

「そして今に至るのか…。」

「そういう事だ、君は驚かないんだね。」

「驚かないというか、驚いたところで仕方がないから受け入れるのがいいかなと思ったんです。」

「そうか、なら君にはとりあえず魔物娘のことを知ってもらいたい。」

「分かりました。」

「私はサキュバスよ、ちなみにね早v

「サキュバス、俺の知っている情報だと、男性の寝ているうちに精気を吸収して生きる魔物だけど。」

「半分くらいは合ってるわよ、寝ているうちだけに留まらず、起きていても精を貰うわね、あとは人間を愛していることかしら。」

「なるほど。」

「君にこの図鑑を貸そう、魔物娘の図鑑だ。」

「ありがとうございます。」

「そろそろ夕食にしよう、食べ終わったら好きにしていていい、隣の部屋を今日は貸してあげよう。」

「ありがとうございます。」

これが俺と魔物娘の初めての出会いだった。

翌日…

「はっ!」

「なかなかの腕前だ、これからが楽しみだよ。」

「ありがとうございます。」

「そろそろお昼にしよう、時間もいいところだ。」

「はい、分かりました。」
「君は、戻りたいと思わないのか?」

「思ったところで出来ないならその世界で楽しんで生きた方がいいんじゃないかって。」

「立ち直ったようで何よりだよ。」

「そろそろ食休みも終わりにしますね」

「頑張って。」

あれから3ヶ月経ち、俺はこの日常が続くと思っていた…

「よし帰ろう、薪は十分だな。」

「たくさんあるわね、これならしばらくは持つわ早v
「だな、ラミー。」

「なんか村から煙出てないか?」

「まさか!」

「ラミー、どうしたんだ!?」

「あの街の奴らが来たのかもしれない、だとしたら…。」

「あの街の奴ら!?」

「私達魔物をよしとしない人間達よ、私達魔物はおろか、魔物の味方をする人間まで殺してるのよ!」

「なんだって!?」

村が近くなり、村の様子が見えてきた。

「燃えてる…」

「急がないと!みんなを助けなきゃ!」

「待ってくれ、俺も行くぞ!」

村に着いて、その異変の元凶を理解した。

「主神に刃向かう者に死を!」

「これ、お前らがやったのか?」

「ああ、主神に刃向かう逆徒を制裁した、貴様らもすぐに逝ける、悲しむことはない。」

「どうしてこんな酷い事が出来るの!?」

「貴様等魔物は存在自体が罪なのだ、おぞましい魔物め。」

「なんでだよ!なんで魔物と一緒に居るだけで殺されなきゃいけないんだよ!」

「だから罪なのだ、罪は断罪せねばならん。」

「同じ人間を自分達の考えに従わないから殺す、お前らは何様だ!!」

「われら主神の聖騎士に刃向かう気か?」

「許、さねぇ…。」

「ジュンの身体が、光って…」
「!」
また頭の中に声が直接来る…

「君の使える力を、使うときがきたようだ。」

「適性があるっていってた力か」

「そうだ、君にしか扱えない力だ。」

「なら…。」

「何を言って…」

「村のみんなの敵を討つ力を俺に貸してくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「君の力を、今解放しよう、思う存分力を振るえ。」
「何を叫んで…」

「だぁぁぁぁっ!」

スッ…

静かな音の後に目を開けると首を落とされた自称聖騎士がいた、俺がやったのか?

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「力が、漲ってくる…。」

「この逆徒を殺せ!殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「まずはお前から。」

「がっ…」

「全員許さねぇ…、一人も生きて返さん…。」

しばらく経って…

「はぁ…、はぁ…。」

そこにあるのは血、肉塊、血だらけの鎧、放心状態のラミー。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「そこの傭兵さん?」

「?」

「貴方がこの教団の騎士達を?」

俺は振り返った。

「あんたは?」

(彼女も、魔物か?ただ者じゃないのは確かだ、仮に今戦ったら勝てる訳がない…。)

そこには銀髪の美女が話し掛けて来ていた。

「私は旅の魔物、名前はブランよ。」

「俺はジュン、ここに住んでいた人間だ。」

「で、貴方がやったの?こいつら。」

「ああ、そういう事になる。」

「ふぅん…、悲しいわね。」

「ああ、俺がもっと早く戻っていたら、もっと犠牲者を減らせたかもしれない。」

「かもしれないわね。」

「だけど、失った命はもう戻らない、戻らないんだよ…。」

「そうね。」

「そ、その声、ジュン…なのか?」

「村長!」

「無事で、よかった。」

「俺がもっと早く戻っていたら…。」

「君に、頼みたい…事が…2つある…。」

「頼みたいこと?」

「1つ目は、げはっ…」

「もう喋るな!死んでしまう!」

「1つ目は、ラミーを、ラミーを故郷である場所まで送り届けて欲しい…。」

村長は震える手で紙切れを差し出す。

「故郷?」

「私とラミーは、血は繋がっていない。」

「なるほど、そんなことより早く、早く手当てしないと!」

「私は、もう助からない、だから無駄なことは…しないで…がぶっ!」

「無駄かどうかは、やらないとわからない!」

「無駄よ。」

「何だと?」

「彼はもう助からない、これだけ喋る事が出来るのが驚きだわ…。」

「…。」

「2つ目は…。」

「…。」

「私の家の地下に、倉庫がある、君にその中身を全部あげよう、だから…私…達のことは忘れて…どこ…かで…」

「嫌だ!嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「私が居ながら、助けられないのが…。」

「おとう…さん?」

「ラ、ラミー。」

「お父さんまで…。」

「この娘は、私が責任を持って送り届けるわ、せめてもの償いよ。」

「なら俺が!」

「いいえ、私の、魔界第74王女として…償わないと。」

「あんた、魔界の王女、つまりお姫様、ってことはあんたは魔王の娘か!?」

「えぇ、そうよ。」

「どことなくただ者じゃないとは思ってたけど…まさか王女だとは…。」

「とにかく、私が責任を持って送り届けるわ。」

「なら、頼みます。」

「ジュン、また、会えるよね?」

「ああ、いつかまた会いに行く…。」

「なら、またね…。」

「また会いましょう、貴方とはまた会える気がするわ。」

「そうか…、じゃあな。」

ここから俺の戦いが始まった。

15/03/12 22:42更新 / サボテン
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■作者メッセージ
というわけで、第一話です。
一応、エロはかなり後編にならないとないと思います、エロありだと思って見た皆さん、ごめんなさい。


人物紹介
ジュン
種族…人間
別世界からいきなり魔物娘のいる世界に飛ばされた青年、謎の声から力を貰う。
ラミー
種族…サキュバス
グリネ村長の義理の娘、ジュンが初めて出会った魔物娘。

ブラン
種族…リリム
ジュンが教団の聖騎士を怒りのままに叩き潰した直後異変に気付き村に到着した魔界第74王女、今回の犠牲者を救えなかったことに心を痛めている。

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