The red knight and Morus
死することすら許されず、最大たる咎を背負ったのはいつのことであったか、それはもう分からない。時間としてなら記録があるため、数字としての時間なら簡単に言うことができるが、そういう問題ではない、そういうことじゃない。 あの咎を背負った時から、多くの時の中で生きてきた。様々な人々と出会いを経験した。偶然の出会いから知り合った人々、喜びも悲しみも分かち合った友人たち、世界の様々な物事を教えた教え子たち、目的の違いのために敵となった友もいた、或る時には人の親となったこともあった。そして一人残らず、死んでいった。出会いには、様々な人々との出会いには別れが最後に必ずあり、私のみが残された。 何度、我が運命を呪ったことであったか、何度、絶望を呪ったことであろうか、しかし、そのたびにその理由を、自分が何者であったのか、自分が何のために戦い、そしてその咎を背負うことになったのか、全ての理由は思い出させられる、そして、その結果に悔いはないということを思い出すのだ。 だが、これは時間の問題であり、いずれかは全てを忘れてしまうかもしれない。 それでもいいのかもしれない。果てしない時の中で生きる、否、生かされている私としては…そう思う。 永久に咲き続ける花よりも、散っていく花のほうが遥かに美しい―ある者の言葉だ。私のことを皮肉って言った言葉ではない、逆だ、あの時のあいつ自身を皮肉って言ったのだ。私があいつのことを羨ましいと言った時、返された言葉だ。私は今になって、その気持ちが理解できた。そして、その苦悩も絶望も、諦めも理解できた。 あいつは知っていたのだろう、救えぬ者の存在を、己の器がいかに矮小な物であるかを、故に愛していたのだろう 記憶の中で、白き賢者は微笑む。ただ信じる者の瞳で、おれを、かつて人であったおれを、信じていたゆえに、微笑む。 あの者は知っていたのだろう、人の、人ゆえの罪を、それゆえの喜びを。人の儚さ、脆さ、醜さ、すべてを知っているがゆえに、ゆえに、希望を抱けたのだろう。 なぁ、セルセ。我が憎き敵にして我が心優しき友よ、人であったお前なら私を笑うか?世界で足掻き続け、もがき続け、泥にまみえる私を、おれを笑うか? 私の名はヴィルマ。人間の残滓を持つ、人間だったもの。この世を彷徨い生きるただの愚か者、後悔はないが反省ばかりの生き様。自分で言うのも何だが、私のようになってしまった人間は終わりだと思う。終わりがないのに、終わりだと思う。……うん、我ながらくだらない。 |
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