「素顔を見せるバジリスク」の意味を答えよ
ふとしたことがきっかけ、目に付いたんで助けてやっただけだ。
弱い者いじめというのかわからないけど、仮面を触られようとするのをすごく嫌がってたもんで、まぁ、何となくの流れというか。
兎も角、俺が助けてやったのは、顔の上半分を隠す木の仮面、それをいつも付けていたバジリスクって魔物の川平 涙(かわひら るい)だ。
川平はなんつうか、見てる限りあまり人と関わるって事がなかったもんで、遊び半分のふざけに対しても泣きそうな声だった。
それでつい、「やめてやれ!」と叫んで、数人の女子に逃げられたとこで川平に話しかける。
なぜか机一個分くらい距離を空けられたけど、お礼を言われた。
まだぐずぐずと涙ぐんでいて、本当に嫌だったと言われて、思わず理由を聞いても口を閉ざした。
なんでかは知らないけど嫌なものは嫌らしい、深くも聞かずに去ろうとした時、川平は「もうちょっとだけお話したい」と、やはり距離を空けて言う。
しばらく学校の行事や先生について話しているとすっかり暗くなってしまって、俺とは逆方向の位置にあるらしい川平とは校門で別れて家に帰った、「また明日お話して欲しい」と言われて。
それから放課後は川平と一時間ほど雑談してから帰るのが日課になった。
意外とおしゃべりというか、ネタには事欠かない奴で、仮面で目が見えてない分耳が良く、小さい声の噂話でも聞こえるらしく、色んな話題を覚える物覚えのいい奴なんだと知って。
俺の方も友達と呼べるのが高校ではいなかったからか、川平と話すっていうのはすごく楽しかった、ただ人の多い所で話すのは苦手なのか、昼間の間は「後でね……!!」と逃げられたけど。
そんなのが高一の梅雨頃から、高校最後の三月の卒業式まで続いた。
付き合うとかはなかった、ただ毎日話して、時折交換したメアドからメールでやり取りしたりとかしてただけ。
良くも悪くも友達のままというか、クラスの奴には小学生みたいに「お前ら付き合ってんだろ!」と茶々を入れられたけど、デートどころか学校以外で会ったこともないのに。
それのせいか、卒業式が終わって、「これでこんな風に話すのも終わりかぁ」と話していた時、ふと、いつもは机を間に挟んでいた川平が突然立ち上がり、俺の方へ近寄ってきた。
こんな近くで川平を見たことないし、女子の匂いなのかも川平だけの匂いなのかもわからないけど、桃のいい香りがして、思わず頭がくらくらしてくる中で、俺の手を握る。
こんなこと言うのは変かもしれないかもだけど、と五分くらいかけてようやく言うと、
「だ、大学入学したら、一緒の大学受けてたよね!? う、うん、そうだよね! そ、そ、それで、部屋とか決まったら、私の素顔見てほ……キャァアアアアアア!!!」
と叫んで逃げられ、それから大学の入学式まで川平の姿は見なかった。
そして入学式が終わって話した後、紅いほっぺの河合らの案内で大学の寮に招待され入ると、鍵をかけられ、十分くらい仮面の眼と睨みあって、川平がふと自分の仮面に手を付けて――こう、言った。
「あのね、私の素顔というかね、目って、すごく毒なの。見るだけで、その人を虜にしちゃうって言うのかな……よく知らないけど……あ、えーとね」
纏めてね、と言いながら仮面を外した川平の素顔。
可愛らしい紅い目をした笑顔で、俺の方をじっと見てから、いたずらっ子みたいな笑顔で俺に、蛇の下半身で巻つきながら言った。
「私が好きになっちゃった君の顔を見たくて、私の素顔も見せちゃうから、ずーっと――付き合ってもらうね」
……何と言うか、一杯食わされたなぁ。
弱い者いじめというのかわからないけど、仮面を触られようとするのをすごく嫌がってたもんで、まぁ、何となくの流れというか。
兎も角、俺が助けてやったのは、顔の上半分を隠す木の仮面、それをいつも付けていたバジリスクって魔物の川平 涙(かわひら るい)だ。
川平はなんつうか、見てる限りあまり人と関わるって事がなかったもんで、遊び半分のふざけに対しても泣きそうな声だった。
それでつい、「やめてやれ!」と叫んで、数人の女子に逃げられたとこで川平に話しかける。
なぜか机一個分くらい距離を空けられたけど、お礼を言われた。
まだぐずぐずと涙ぐんでいて、本当に嫌だったと言われて、思わず理由を聞いても口を閉ざした。
なんでかは知らないけど嫌なものは嫌らしい、深くも聞かずに去ろうとした時、川平は「もうちょっとだけお話したい」と、やはり距離を空けて言う。
しばらく学校の行事や先生について話しているとすっかり暗くなってしまって、俺とは逆方向の位置にあるらしい川平とは校門で別れて家に帰った、「また明日お話して欲しい」と言われて。
それから放課後は川平と一時間ほど雑談してから帰るのが日課になった。
意外とおしゃべりというか、ネタには事欠かない奴で、仮面で目が見えてない分耳が良く、小さい声の噂話でも聞こえるらしく、色んな話題を覚える物覚えのいい奴なんだと知って。
俺の方も友達と呼べるのが高校ではいなかったからか、川平と話すっていうのはすごく楽しかった、ただ人の多い所で話すのは苦手なのか、昼間の間は「後でね……!!」と逃げられたけど。
そんなのが高一の梅雨頃から、高校最後の三月の卒業式まで続いた。
付き合うとかはなかった、ただ毎日話して、時折交換したメアドからメールでやり取りしたりとかしてただけ。
良くも悪くも友達のままというか、クラスの奴には小学生みたいに「お前ら付き合ってんだろ!」と茶々を入れられたけど、デートどころか学校以外で会ったこともないのに。
それのせいか、卒業式が終わって、「これでこんな風に話すのも終わりかぁ」と話していた時、ふと、いつもは机を間に挟んでいた川平が突然立ち上がり、俺の方へ近寄ってきた。
こんな近くで川平を見たことないし、女子の匂いなのかも川平だけの匂いなのかもわからないけど、桃のいい香りがして、思わず頭がくらくらしてくる中で、俺の手を握る。
こんなこと言うのは変かもしれないかもだけど、と五分くらいかけてようやく言うと、
「だ、大学入学したら、一緒の大学受けてたよね!? う、うん、そうだよね! そ、そ、それで、部屋とか決まったら、私の素顔見てほ……キャァアアアアアア!!!」
と叫んで逃げられ、それから大学の入学式まで川平の姿は見なかった。
そして入学式が終わって話した後、紅いほっぺの河合らの案内で大学の寮に招待され入ると、鍵をかけられ、十分くらい仮面の眼と睨みあって、川平がふと自分の仮面に手を付けて――こう、言った。
「あのね、私の素顔というかね、目って、すごく毒なの。見るだけで、その人を虜にしちゃうって言うのかな……よく知らないけど……あ、えーとね」
纏めてね、と言いながら仮面を外した川平の素顔。
可愛らしい紅い目をした笑顔で、俺の方をじっと見てから、いたずらっ子みたいな笑顔で俺に、蛇の下半身で巻つきながら言った。
「私が好きになっちゃった君の顔を見たくて、私の素顔も見せちゃうから、ずーっと――付き合ってもらうね」
……何と言うか、一杯食わされたなぁ。
16/03/20 23:22更新 / 二酸化O2