ルラギンないで!マーチヘアちゃん!
「山と言えば!」
「青姦!」
「か、川と言えば!」
「水中セックス!」
「今日は雨だね!」
「そうだねー! パンツもアソコもビショビショー!」
「ナズェミテルンデス!」
「ティンコデス!」
ハートの女王の城、そこの観測室。
俺ことヅェルの前でまともに報告を聞いてくれないのは、マーチヘアのミュルミュルだ。
トランプの兵隊「ダイヤの3」で、観測部隊の副隊長である俺は剣の腕だって立つし、観測だって隊長にも負けてないつもりだ。
だけど隊長の娘である、このミュルミュルにはどうも勝てない、色々な意味で。
「きちんと話を聞いてくれよ……」
「むゆ?」
首を傾げるミュルミュル。
悲しげに言ったせいか、少し心配そうに覗き込んでくる。
「あのな、新しい騎士とかにできそうなのはいなかったよ」
「りょかい!」
こうしないとまともに聞いてくれないので、俺は苦労する。
ならばミュルミュルに合わせればいいかとも言う奴は、試してみるといい。
オン○ゥル語でも卑猥な意味を含んで返してくる、それの苦労がわかるだろうから。
「そういえば今日の美味しかったな」
「ミュルのオツユが美味しかったの? いつ飲んだの?」
「ちげーよ! マーレン隊長とチェシャさんのクッキーだよ!」
「スペードのA」、実質的なトランプの兵隊のトップであるマーレン隊長と、その育ての親であるチェシャ猫のチェシャさんが焼いたクッキーの話でもこれだ。
最初にミュルミュルと話すと、意味不明で首を傾げるか激怒するかのどちらかだ、俺は後者だった。
「あー、確かに美味しかったねー」
「だろ? 俺もアレぐらい料理できればモテモテなのになー」
「ねー」
でもまあ、裏表のない奴だから、言葉に気を付ければ話しやすいし、良い奴だと思う、うん。
「……なあ、ミュルミュル」
「んー?」
「実は話があるんだけどさ」
「なになに、ミュルとイイコトしたいの?」
「いや、ちげーよ」
「もう! 恥ずかしがらないでよ!」
「いや、ほんとに」
話したいことがあるのに中々たどり着けない。
今回のは割と真面目に聞いてほしんだけど。
「あのさ、俺は」
「ミュルを犯したい!? もしかしてそう!?」
「……ちげーよ」
「ならなにかな!? ミュルと子作りしたい?」
「ちげえって……」
だんだん興奮していくミュルミュルに対して、俺の気持ちは段々と冷めていくのがわかる。
これだけは、今回だけは、きちんと聞いてもらいたいのに。
「じゃあ〜」
「いい加減にしろよ!!」
思わず怒鳴って、肩を震わせる。
驚いて、恐かったのか……涙目のミュルミュルが何か言おうとしたけど、俺は素早く振り返ってミュルミュルから離れた。
怒鳴ってもあいつの性格が治るわけじゃない、けど、話したかったことを話せないなら、いる意味はない。
「ごめんね……」
泣きそうな声が聞こえたけど、俺は無視して観測室から逃げるように去った。
***
「……はぁ」
自分の部屋のベッドでため息。
幾らなんでも怒鳴るのはなかった、それにあいつも謝ったのに。
俺は明日からどうやってミュルミュルと話すか、と、考えていると。
『ヅェル』
「あ、はい」
隊長……ミュルミュルの父親の声。
返事をすると、しばらくの沈黙の後に、
『ウチの娘が泣いて帰ってきたんだが何かあったのか』
の一言。
「俺が怒鳴ってしまって……その、ミュルミュルの会話で感情的になってしまいました」
『ン……。そうか、珍しいな、お前がミュルミュルに感情的になるなんて』
「そう、ですね」
そりゃあみんなと同じで、最初の内は怒ったけど、昨日までは上手くあしらえていたからなあ。
『しばらくしたらウチの娘が来るから、できるだけ仲直りしてくれると私も嬉しい』
「……了解」
命令と言う訳ではないけど、隊長の悲しそうな声を聞いたからには仲直りしなきゃな。
そしてミュルミュルの好む媚薬池の水を沸騰させて作った紅茶を淹れて、俺は買い溜めしていた普通のコーヒーを淹れる。
「ヅェールー……こんばんは……」
「おう」
「ごめんなさい……」
耳を極限まで垂らして、ハートの模様が入った目を真っ赤にしている。
鼻水を垂らしてるし、かなり反省しているみたいだ。
「いや、俺も急に怒鳴ったりしてすまん。ビックリしたろ」
「うん……」
こいつは耳がいいから、相当大きな声で聞こえたはずだ。
俺もやっぱり色々反省しなきゃなんない。
「紅茶いるか?」
「ううん、ヅェルと仲直りしにきたからいい」
しょぼくれたミュルミュルの頭を撫でてから、もう一つコーヒーを淹れてやって出してやる。
「ありがと。……ウェー……」
「不細工だなあ、おい!!」
女の子とは思えないほど渋い顔をしたミュルミュル。
俺も飲むが全然苦くない、っていうか不思議の国の魔物が単に甘党なだけなんだと思うが。
「ほれ、鼻水も拭け」
「うん、ズブー!!」
「誰が俺の布団でやれっつったよ!!」
俺の布団で鼻をかむミュルミュル、今日どうやって寝りゃあいいんだよ!
「……なあ、ミュルミュル」
「ん? なあに?」
「話聞いてくれるか」
「……うん」
それ以上は何も言わず、頷くミュルミュル。
「俺さ、そのな、なんて言えば……あー……」
「づ、ヅェル?」
「俺はな、えーとな、ミュルミュル」
「うん」
「お前の事が、す、好きなんだよ……そう、好き……好き」
時間が止まった。
いや、止まってはないけど、ミュルミュルが固まった。
「好き? えっと、好き?」
「う、うん」
ミュルミュルが無表情のまま言うのに対して、思わず目を逸らしながら答える。
「う、うみゅ〜……」
「ミュルミュル!?」
真っ赤な顔をして、その場に座り込んでしまうミュルミュル。
「し、下ネタ反対〜……」
「下ネタじゃねえよ!!」
***
元は教団の騎士だった俺。
魔物もその夫も子供も、命を奪ってきた非道な騎士団長が率いる騎士団の一員として魔物領を侵攻した。
でも、みんながみんな……どっか優しくて、妄信的すぎるこちらが馬鹿すぎると思っていた時。
通行中のケンタウロスに轢かれて、さらには空中でワイバーンに衝突して、ウサギの巣穴にシュートされ、この不思議の国へやって来た。
「教団の騎士さん! やだー! 犯されちゃう!!」
「なんだお前ーッ!?」
それが、俺とミュルミュルの出会いだった。
でも話している内に、裏表がなくて、いつでも優しいミュルミュルの内面に惹かれて。
俺はミュルミュルを好きになった。
***
しばらくして。
「ねー、ヅェル」
「なんだよ」
「観測部隊やめたってほんと?」
「そうだけど」
「何でー?」
「あー、だって」
「「お前が寂しがるだろ」」
「……こんなろー、夜に覚えとけよ!!」
「もー! こんな時間から下ネタはんたーい!」
「うっせー!!」
「仲が良いねー」
「ダネー」
散歩中のマーレン隊長とチェシャさんに笑われながら、俺は笑顔で会釈して、捕獲したミュルミュルに梅干の刑を食らわす。
「イダダダダ!! ね、ねー、ヅェル!」
「あ?」
「好き! 性的にも!」
「一言余計だった! ……まあ、俺も好きだ」
まだ少し照れくさいけど。
俺はミュルミュルにそのまま抱き付いて、大声で爆笑する太陽の昇る昼下がりを過ごしたのだった。
大好きな、身体も中身もピンク色な兎と一緒に。
【お し ま い】
「青姦!」
「か、川と言えば!」
「水中セックス!」
「今日は雨だね!」
「そうだねー! パンツもアソコもビショビショー!」
「ナズェミテルンデス!」
「ティンコデス!」
ハートの女王の城、そこの観測室。
俺ことヅェルの前でまともに報告を聞いてくれないのは、マーチヘアのミュルミュルだ。
トランプの兵隊「ダイヤの3」で、観測部隊の副隊長である俺は剣の腕だって立つし、観測だって隊長にも負けてないつもりだ。
だけど隊長の娘である、このミュルミュルにはどうも勝てない、色々な意味で。
「きちんと話を聞いてくれよ……」
「むゆ?」
首を傾げるミュルミュル。
悲しげに言ったせいか、少し心配そうに覗き込んでくる。
「あのな、新しい騎士とかにできそうなのはいなかったよ」
「りょかい!」
こうしないとまともに聞いてくれないので、俺は苦労する。
ならばミュルミュルに合わせればいいかとも言う奴は、試してみるといい。
オン○ゥル語でも卑猥な意味を含んで返してくる、それの苦労がわかるだろうから。
「そういえば今日の美味しかったな」
「ミュルのオツユが美味しかったの? いつ飲んだの?」
「ちげーよ! マーレン隊長とチェシャさんのクッキーだよ!」
「スペードのA」、実質的なトランプの兵隊のトップであるマーレン隊長と、その育ての親であるチェシャ猫のチェシャさんが焼いたクッキーの話でもこれだ。
最初にミュルミュルと話すと、意味不明で首を傾げるか激怒するかのどちらかだ、俺は後者だった。
「あー、確かに美味しかったねー」
「だろ? 俺もアレぐらい料理できればモテモテなのになー」
「ねー」
でもまあ、裏表のない奴だから、言葉に気を付ければ話しやすいし、良い奴だと思う、うん。
「……なあ、ミュルミュル」
「んー?」
「実は話があるんだけどさ」
「なになに、ミュルとイイコトしたいの?」
「いや、ちげーよ」
「もう! 恥ずかしがらないでよ!」
「いや、ほんとに」
話したいことがあるのに中々たどり着けない。
今回のは割と真面目に聞いてほしんだけど。
「あのさ、俺は」
「ミュルを犯したい!? もしかしてそう!?」
「……ちげーよ」
「ならなにかな!? ミュルと子作りしたい?」
「ちげえって……」
だんだん興奮していくミュルミュルに対して、俺の気持ちは段々と冷めていくのがわかる。
これだけは、今回だけは、きちんと聞いてもらいたいのに。
「じゃあ〜」
「いい加減にしろよ!!」
思わず怒鳴って、肩を震わせる。
驚いて、恐かったのか……涙目のミュルミュルが何か言おうとしたけど、俺は素早く振り返ってミュルミュルから離れた。
怒鳴ってもあいつの性格が治るわけじゃない、けど、話したかったことを話せないなら、いる意味はない。
「ごめんね……」
泣きそうな声が聞こえたけど、俺は無視して観測室から逃げるように去った。
***
「……はぁ」
自分の部屋のベッドでため息。
幾らなんでも怒鳴るのはなかった、それにあいつも謝ったのに。
俺は明日からどうやってミュルミュルと話すか、と、考えていると。
『ヅェル』
「あ、はい」
隊長……ミュルミュルの父親の声。
返事をすると、しばらくの沈黙の後に、
『ウチの娘が泣いて帰ってきたんだが何かあったのか』
の一言。
「俺が怒鳴ってしまって……その、ミュルミュルの会話で感情的になってしまいました」
『ン……。そうか、珍しいな、お前がミュルミュルに感情的になるなんて』
「そう、ですね」
そりゃあみんなと同じで、最初の内は怒ったけど、昨日までは上手くあしらえていたからなあ。
『しばらくしたらウチの娘が来るから、できるだけ仲直りしてくれると私も嬉しい』
「……了解」
命令と言う訳ではないけど、隊長の悲しそうな声を聞いたからには仲直りしなきゃな。
そしてミュルミュルの好む媚薬池の水を沸騰させて作った紅茶を淹れて、俺は買い溜めしていた普通のコーヒーを淹れる。
「ヅェールー……こんばんは……」
「おう」
「ごめんなさい……」
耳を極限まで垂らして、ハートの模様が入った目を真っ赤にしている。
鼻水を垂らしてるし、かなり反省しているみたいだ。
「いや、俺も急に怒鳴ったりしてすまん。ビックリしたろ」
「うん……」
こいつは耳がいいから、相当大きな声で聞こえたはずだ。
俺もやっぱり色々反省しなきゃなんない。
「紅茶いるか?」
「ううん、ヅェルと仲直りしにきたからいい」
しょぼくれたミュルミュルの頭を撫でてから、もう一つコーヒーを淹れてやって出してやる。
「ありがと。……ウェー……」
「不細工だなあ、おい!!」
女の子とは思えないほど渋い顔をしたミュルミュル。
俺も飲むが全然苦くない、っていうか不思議の国の魔物が単に甘党なだけなんだと思うが。
「ほれ、鼻水も拭け」
「うん、ズブー!!」
「誰が俺の布団でやれっつったよ!!」
俺の布団で鼻をかむミュルミュル、今日どうやって寝りゃあいいんだよ!
「……なあ、ミュルミュル」
「ん? なあに?」
「話聞いてくれるか」
「……うん」
それ以上は何も言わず、頷くミュルミュル。
「俺さ、そのな、なんて言えば……あー……」
「づ、ヅェル?」
「俺はな、えーとな、ミュルミュル」
「うん」
「お前の事が、す、好きなんだよ……そう、好き……好き」
時間が止まった。
いや、止まってはないけど、ミュルミュルが固まった。
「好き? えっと、好き?」
「う、うん」
ミュルミュルが無表情のまま言うのに対して、思わず目を逸らしながら答える。
「う、うみゅ〜……」
「ミュルミュル!?」
真っ赤な顔をして、その場に座り込んでしまうミュルミュル。
「し、下ネタ反対〜……」
「下ネタじゃねえよ!!」
***
元は教団の騎士だった俺。
魔物もその夫も子供も、命を奪ってきた非道な騎士団長が率いる騎士団の一員として魔物領を侵攻した。
でも、みんながみんな……どっか優しくて、妄信的すぎるこちらが馬鹿すぎると思っていた時。
通行中のケンタウロスに轢かれて、さらには空中でワイバーンに衝突して、ウサギの巣穴にシュートされ、この不思議の国へやって来た。
「教団の騎士さん! やだー! 犯されちゃう!!」
「なんだお前ーッ!?」
それが、俺とミュルミュルの出会いだった。
でも話している内に、裏表がなくて、いつでも優しいミュルミュルの内面に惹かれて。
俺はミュルミュルを好きになった。
***
しばらくして。
「ねー、ヅェル」
「なんだよ」
「観測部隊やめたってほんと?」
「そうだけど」
「何でー?」
「あー、だって」
「「お前が寂しがるだろ」」
「……こんなろー、夜に覚えとけよ!!」
「もー! こんな時間から下ネタはんたーい!」
「うっせー!!」
「仲が良いねー」
「ダネー」
散歩中のマーレン隊長とチェシャさんに笑われながら、俺は笑顔で会釈して、捕獲したミュルミュルに梅干の刑を食らわす。
「イダダダダ!! ね、ねー、ヅェル!」
「あ?」
「好き! 性的にも!」
「一言余計だった! ……まあ、俺も好きだ」
まだ少し照れくさいけど。
俺はミュルミュルにそのまま抱き付いて、大声で爆笑する太陽の昇る昼下がりを過ごしたのだった。
大好きな、身体も中身もピンク色な兎と一緒に。
【お し ま い】
13/12/08 00:47更新 / 二酸化O2