ウチ、人虎の杏(しん)や。

生まれも育ちも関西やけど、中国風な名前なのは格闘術大好きおじいの趣味で父母の反対押し切ってこの名前にしたんやって。

ウチは気に入ってるんやけど、この名前を「しん」じゃなくて「あんず」と読む人が多いのはご愛嬌。



「あ、杏先輩おはようございます」

「レンレンおっは〜」

「レンレンはやめてくださいって……」



とと、珍しく早起きで家を出て、けど結構人のいる駅でウチの学校に行く電車を待ってると近づいてきたのはレンレンもとい、一つ年下の後輩である古賀　蓮。

なーんか、人虎に怖いイメージついてんのかなぁ、こっち……関東に引っ越してきた時、なかなか友達はできなかったんやけど、二年生になってからこうやって仲がいい後輩ができた。

高校生活ずっとぼっちかなー、ウチがモテないのはどう見てもお前らが悪い状態になるんかなー、なんて思ったけど良かった良かった。



「杏先輩、そういえば聞きました？」

「んー？　何を？」

「電車に痴漢が多発してるから、気を付けて乗るか彼氏と乗るかしろって」

「ああ、アレねぇ。まあウチはレンレンおるし、何よりこれでも空手黒帯やもん」

「でも気を付けてくださいよ、杏先輩、一度発情期入ったら話聞かないんですから……この間もそうでしたし」

「痴漢されて興奮するかいな。レンレンはウチが痴漢にイカされて悪堕ちしていいの？」

「嫌ですよ！　……でも、僕は剣道部だし、電車じゃ竹刀振り回せないんで……」

「気にしない気にしない、ほら、もう来るからピッタリ後ろに付いてね」

「はい」



レンレンを後ろに付けて、とりあえず後ろ側のガードをしてもらう。

前の方は仕方ない、自分で守るかいざとなれば魔物の女の子を盾にしようかなあ、なーんて、しばらく考えているうちに電車は滑り込んできて、ウチとレンレンのちょうど前に止まってくれたので、割り込まれないうちに素早く電車に入る。

まだ早いから座れるかな、と考えていたけど全部にウチらの高校の生徒が座っていたり、違っても図体の大きい魔物が占拠して座れたもんじゃなかった。



「ドア側行こっか、レンレン」

「あ、はい。ってうかレンレンやめてください！」

「あははー、ごめんごめん」



まだドアのところは空いていたので、後ろにレンレンを立たせてウチは鉄棒を握って押し寄せる人の波を何とか耐える。



「レンレン、大丈夫？」

「な、なんとか〜……」



すぐ背後から聞こえるのは確かにレンレンの声。

良かった、きちんと付いてくれとるわー……。

電車のドアが閉まって、少し揺れるとすぐに動き出した。



「あっつう……」



秋だっていうのにまるでサウナみたいな暑さ。

確実汗臭くなるやん、学校行く前に制汗剤とか買わないとなあ……ん？



「ひうっ」



突然、「ウチから」そんな声が出た。

なんでかと言えば、スカート越しだけどお尻を……誰かが揉んだからや……。

ウチの声に気づいたのか、尻を揉み続ける手のスピードは少しづつ早くなっていく。



「いや、いややあ……」



ウチは必死に声を出すけれど、どうやら痴漢「プレイ」をしている学生や夫婦が多いんだろう、喘ぎは他にも聞こえて気にされない。

もしもこれがレンレンの手だったら別にええ、けど尻を揉んできている手は明らかにゴツゴツした男の手だ、剣道やっててもちょっと細いレンレンの手やない。



「レンレェン……」



よく痴漢されて「ああん、感じるぅ」なんて言うけど、あんなん嘘や。

嫌悪感と好きでもない奴、顔も見えない奴に身体を触られるなんて……一番最悪や、怒りしか湧いてこん。



「うぐっ！？」



次にはパンツに手をかける、しかも途中で太ももまで撫でまわしてきて……い、嫌！



「や、やめろ……！」

「うるせえ、黙ってろ。どうせ感じてんだろうが」



はじめて聞こえた声。

ねっとりして、嫌な小声でもう本当に歯を食いしばって相手の手が撫でてくるのを耐える。

目が熱くなって、出てきたのは涙。



「レンレン……！」

「誰だそりゃあ？」



ゲヒゲヒ笑いながら男はついにウチの股間へと手を伸ばし、指を付けてきた――その時だった。



「おい」

「ん？　あえ？」

「え？」



嫌だった男の気配が消え、代わりに聞こえたのは何かが空を切った音。

後ろを振り向けば、ざわつく車両がまるでモーゼの海割りのような感じで空いていた。



「痴漢いました、神楽塾委員長」

「ご苦労さん、毒針。さあてと、痴漢野郎さんよ、お仕置きの時間だ」



何故か手にメリケンサックを嵌める、明らかに矛盾しているような、『風紀』と書かれた腕章を付けた聖ミネルヴァ学園の男子と、生パスタを咥え、『代議』の腕章を付けた男子生徒がいた。



「杏先輩！」

「あっ！？　レンレェン！！」



竹刀を背負って、顔を真っ赤にしたレンレンが来て、思わず私は抱きしめた。



「ちょっ……！！」

「レンレン！怖かったぁ！」

「す、すみません。あの後……返事した後、あの痴漢男に押されて、なんかそのまま向こうの車両まで流されちゃって」

「うん……」

「でも、そこでなんでかわからなかったんですけど、痴漢探してるあの聖ミネの二人見つけて、それで協力あおいだら……」

「そうだったんやね。ウチも油断してたわ……」

「僕ももっと鍛えてれば……」

「あのー」



と、話していると、さっきの二人の男が近づいてきた。



「すぐに助けられなくてすまん、電車は混んでるし俺たち問題起こすわけにはいかなくてね」

「い、いえ、助けてもらっただけで感謝しますよ。僕だけじゃあ……」

「そうだな、君の竹刀では守るのは難しい、喧嘩実戦を……」



生パスタさん(仮名)が前を見つめたまま、メリケンさん(仮名)にエルボーを食らわせた。



「とりあえず協力あんがと、お礼したいし学校教えて」

「いいですよ、僕たちも助けてもらいましたし！」

「そっか……。ん？　はいさい、俺だけど……どした？　はあ、遅刻しそうだけど何か問題が？」

「で、では、毒針たちはこれで……うぉお……」



去っていく生パスタさんとメリケンさん。

その後黒服のオーガとアカオニが痴漢男を連れて、生パスタさんに付いていった……何なんやろ、あの人ら。



「……あ、杏先輩、そろそろ離して……下さい……」

「あ、ごめん」



頭がくらくらしてきたと思ったら、レンレンの匂い嗅いでたせいだったみたい。

っ……！　

マズイ、子宮も疼いてきた……あんなんされた後なのにぃ……！



「あ、杏先輩？」

「レンレン……次の駅で降りてええ？　パンツ穿きたい……」

「は、はい」

「あと、怖いから降りるまでこうしててや……」

「……はい」



ぎゅっと抱いてくれたレンレンの手は細いけれど暖かった。







＊＊＊







次駅で降りてから、ウチとレンレンは「兼用トイレ」に向かう。

すぐに鍵を閉めて、ウチはレンレンをアルコール消毒させた便器の上に座らせてから、服を脱ぐ。



「杏先輩！？　ちょ、遅刻しますって！」

「やぁ！　もう我慢できないし、発情期入っちゃたんやぁ！」

「杏先輩、ダメ……」

「そういって興奮してんやろ、わかってるで……」

「うぅ……」



人虎であるウチは、ただ見るだけでレンレンが性的に興奮してるかわかる。

難しい本では体温変化とか、それが本能的にわかるらしいけれど、そんな理屈知らん、ウチの勘が「レンレンは興奮してる」って言ってるんや。



「痴漢されたウチを慰めや……！　あんな奴の臭い消してぇ……」

「杏先輩……うぅー……」

「ひゃうっ！？　おっぱいなんか触られてへんって、吸わんといてってぇえええ……」

「じゅるるぅ」



おっぱいを吸いながら、お尻や太ももを撫でてくるレンレン。

んふぅ……これがいいのぉ……レンレンの手でならいつまでも触られてたい……！



「杏先輩、僕もう」

「こんなにされたらウチも我慢できへん、いいよ、シよ？」

「はい……」



レンレンがズボンをパンツごと下げて、もうガチガチになったおちんちんを出す。

鼻にレンレンの香りがまた一層強く突き刺さって、ウチのおまんこからどんどんお汁が垂れてレンレンのおちんちんを濡らしていく。



「入れるよ……んうっ！！」

「あぐぉ！？」

「レンレェン……もうビクビクして、イキそう？」

「ご、ごめんなさい……一週間も出してなくて……んんぅうう……」

「ウチも発情期入らないとノラなくてごめんねぇ……。レンレンザーメン、ウチの子宮に出してぇ……！」

「そんなに抱かれたら離れられませんっ……！　うっ！」

「ひきゅぅうっ！？」



急に子宮口が押し上げられて、ウチの子宮へレンレンが容赦なく射精した。

すごい濃くて、量もとんでもなくて、一回でもうお腹が灼けそうなぐらい……！！



「レンレン……」

「杏先輩ぃ……」



ああ……幸せやぁ……。



「杏先輩、じゃあ」

「もう一回！」

「え、でも、学校……！！」

「休む！　レンレンは学校とウチ、どっちが大事なん！？」

「……杏先輩ですっ！！」

「大好きや、レンレン！」



発情期スイッチ入ったウチは結局昼近くまでレンレンとセックスし続けた。

散々した後に冷静になってみると、なんで発情期の時はあんなに積極的になるんやろうか？

まあ、それも人虎の種族の特徴なんやろなぁ。



「杏先輩……腰抜けちゃいました……」

「大丈夫？　ほら、おんぶするわ」

「ありがとうございます……」



腰が抜けて立てないレンレンを背負って、ウチはトイレから出て、お腹も空いたしマ○ドへ向かう。



「レンレンの精液零れないかなあ……」

「一応拭きましたけど……カスがあったら掃除しといた方がいいですね」

「うん」

「あと、レンレンはやめてくださいって」

「嫌や」

「何でですか？」

「知りたい？」

「はい」



ウチは振り向いてレンレンの顔を見る。











「蓮、レンレンの名前に、恋、二文字繋いでレンレンや。ウチ、レンレンに恋してるから」











それを聞いたレンレンはもぞもぞと動いて、顔をウチの背中に隠す。



恋蓮――レンレン、ウチ、レンレンのことが大好き。



これからもウチ、レンレンに恋してるからね。









皆が見てる前でお腹が鳴る前に、ウチはレンレンを背負って駅の階段を降りていった。









これからも、レンレンとこうやって過ごせることを夢見ながら。

■作者メッセージ
人虎ちゃん更新
↓
わぁい！
↓
エロ書こう！
↓
さほどエロじゃないじゃん……

人虎ちゃん、「じんこ」で出てこない悲しみデス