「皆の方……、今まで良く使えてくれました」

目の前にいるのは傷ついた臣下達。

私は小さい国の城主でした。
でも小さくても好きだった私たちの国は支配を広げようとする大国の手で無惨に壊されていた。

「私はここで命を断ちます……！皆は逃げ延びてください」

「姫！それは！！」

もはや私たちの負けは確実。
あとはどう滅ぶかどうかの問題でしかない。







「……姫様」

「鬼丸……！あなたも生き延びてください……！」

幼い頃から乳兄妹として私のそばにいたこの国で一番の豪将、鬼丸は部屋に1人で居る私に扉越しに声をかけた。

「……残念ながらそれはできません、私は武士です、最後までこの国のために命をかけて敵を討ちます……、共に黄泉へ渡れぬ事をお許しください」

「……鬼丸」






戦に行く者達の声が聞こえ、人々の怒号や悲鳴が聞こえる。
私がもっと強ければ……。
せめてもの抵抗はこの身体を奴らに明け渡さない事。

「……、愚かな私を許してね、皆の者たち……」

私は小瓶を開ける。
この戦が始まる前に鬼丸と城下町に行った際にとある怪しげな商店で売っていた毒薬を。
もしもの時と言って持たされたが……、まさかこれを使うことになるとは。









赤い液体をゆっくりと飲み干す。

息が苦しくなる、身体が熱い、意識が遠のく、死が近づいているのが感じる……！

何かが弾けた。

どうして私たちはこんなに苦しまなければいけなかったのか！！
なぜ、平和に暮らしてた我が国をあいつらに踏み躙られなければいけなかったのか！！
なぜ私は弱い！！？
なぜ私は鬼丸を！！皆を死なせてしまうことにならないといけないのか！！

怒りが湧き上がる。
ずっと怒りを抱いていた。
現実に絶望し、心の奥底に封印していた怒りが今にも火を吹きそうだ。

身体中に走る痛みよりも上回る怒りが私の中で渦巻く！

鬼丸への想いが止まらない。
ずっと大好きだった。
ずっとそばにいたい、それなのにあいつらは……！！

一際大きな声を上げて私は気づいた。
今の私ならあいつらへこの怒りをぶつけられると。
怒りをぶちまけても良いと！！

壁にかけられてた刀を手に取る。
幼い頃、鬼丸にせがんで幾らか動きは教えてもらった。
今なら使える気がする。

「姫様！？その姿は！！」

「……あなた達にも分けてあげるわ」

「な、何を！！」

私は刀で少し腕を切り、流れた血を部屋から出て驚愕した目で見てくるお付きの娘達に飲ませていく。

娘達も先ほどの私のように激痛と怒りが渦巻いていくだろう。
さあ……！皆に怒りを！

私は前よりも進む速度が速くなった足でこの城を駆け回る。
中には私を見て悲鳴をあげて、剣や槍を刺してくる者も居た。
だが私は彼らを許そう。
本来なら私の弱さを責められるべきなのだから。

だからこそこの血の返礼を与えよう。

医務室で傷ついた者達にもこの血を与えよう。
次第に私の血を取り込んだ者達も同じように怒りをぶちまけて強い身体を手に入れた。

速いものでは既に恋人や伴侶がいるものは獣のように交わっていた。
今まで私のせいで色々我慢していたのだろう。
彼らのその嬉しそうな顔が嬉しかった。

城の人々が全員血を受け入れ、そこに居るのは怒りと獣欲が渦巻く戦士達だけである。

その怒りを表すかのようにメスの者達にはツノが生えて、腕は太くなり、歳いった者はそれぞれ理想的な歳になり、手足は獣のような爪と蜘蛛のような何本もある強力な者になっていた。

オス達も傷を癒やし、並みのオス達よりも遥かに血気盛んな瞳で叫んでいた。

このままだとここで皆、交わり合ってしまう。
それも良いが一番優先しなくてはいけないのは……！

「皆！我らは行かなくてはならない！今、戦っている者達の場所へ！そしてその怒りを奴らにぶつけねばいけない！皆の衆、ついてまいれ！」

その掛け声に反応して、彼らは武器を手に持ち、奴らの元へ向かう。

我が愛しのオスである鬼丸が今、戦っている戦場へと。
















小さな国を支配する事など、我らにとってはいつもの事であった。
奴らは我々を罵るが、我らからすれば最初の通告の時に服従すれば良かったのだ。

だから今回の戦いも同じように終わる。
そう思っていた。

「な、なんだよぉぉ！！？槍が！？効かねええ！」

「うわぁぁ！！血が！！あ、ああああ！！身体が熱いぃぃぃ！！」

「や、やめてよ、ねえ！？女を傷つけるなんてさ！？」

「ああああ！！足が！！おかしくなってる！？頭が！！熱い熱い熱いいぃぃ！！」

だが今目の前で起きていたのは地獄であった。
最初、それはただの援軍だと思っていた。
だがそれは違った。
武装は乏しく、鎧を見に纏ってるものなんて殆どいない。
だがその目は飢えていた、血に、怒りに。
男はまだ良い、女の見た目はまるで蜘蛛と牛を合わせたような怪物の姿であった。
皆、見目麗しい女の姿をしてるが、その恐怖を知るのはすぐだった。

剣や、槍で奴らを刺しても全く痛みを感じず進んできた。
それどころか流れる血を兵士たちに浴びさせていく。

それからすぐ浴びさせられたのが男であれば、正気を失い、近くの女を襲った。
中には先ほど傷つけた怪物の女に襲い、襲われる者も居た。

女だった場合は、なんと同じように怪物の姿へとなって男に襲いに行った。

どれだけ傷つけようとしても減らすどころか、兵士たちが奴らの同族へと変わり果てていく。
中には、この国の農民である人間もいる。
それら全てが血と性に飢えたケダモノへと成り下がっている。

兵士は恐怖し逃げる者も出始めた。
だがそれでも奴らは追いかけてくる。
また1人、また1人と餌食になる。

そんな私も同じように逃げていた。

この国の中でもかなりの豪将であろう男達の部隊で待ち構えようとした、その時だった。

奴らが現れ敵味方関係なしに襲っていったのを。

奴らの中の長らしい女が、豪将を襲っていったのを見た後、私は一目散に逃げた。

こんな狂った状況から早くも逃げたかった。

だが……

「凱将軍様ぁぁぁ♡逃げないで下さいヨォ♡♡♡」

そこにはかつて私の腹心の部下であった女が私の目の前にいた、怪物の姿で。

「あはぁ……♡将軍のおちんぽぉ♡大きいですねぇ♡もう待ちきれないですぅ♡」

「や、やめろ！！」

その静止は効かなかった。
かつて人であった時に奴を抱いたことはあったがそれよりもより素晴らしい名器具合で私のものを搾り取ろうとしていた。

「我慢はよくないですヨォ♡もっと素直にならないと♡」

そう言うと奴は持ってた剣で胸をついて血を私に浴びせかけて……！

「良いぃぃ♡♡激しくなってきたぁぁぁ♡♡」

目の前のメスへの欲望が爆発した。
犯す犯す犯す犯す！！

「んひぃぃぃぃ♡♡はらむぅぅ♡♡」

















とある小国は確かに一度滅んだ。

だが民は死んでいなかった。
民はウシオニという怪物に成り果てて国を滅ぼそうとした大国の軍を討ち滅ぼした。

姫はその軍の者達も新たな国の一員として取り込んだ。

人々はその国に恐怖し、不可侵条約を結ぶことになった。


かつての城、その内部は多くのウシオニ達が作った巣があちらこちらに作られて、彼らはその中でお互いを犯し、犯されあっていた。

そしてその中でも一番大きな巣の中には……

「ん……♡もっと♡もっと♡お腹のやや子に鬼丸の強強精子をかけて強い子を産ませてくれ♡♡」

「ひ、姫さまぁ！！産んでくださいぃ！！」

ウシオニ達の長となった姫は、既に子を孕み大きくなった腹にさらに精を取り込んでいた。

「母様、お仕事の時間ですよ」

「んん♡桜姫、これも仕事であるぞ♡あとつぎになる強い男児を産まないといけないのだからな」

「仕方ありませんね……！父様も頑張って弟孕ませてくださいね！」
^_^
公務の大体は既に娘の桜姫に任せているが……。

「鬼丸、見たか？桜姫のホト、しっかりと涎を垂らしてぽとぽとと雫が……！」

しばらくすると桜姫の声が聞こえる。
ケダモノのような本能を解放したかのような声が。

「桜姫も私の娘よ、オスと交わるのが好きで好きでたまらない……な♡」

「……そうですね」

「そう言いながら乳を吸うではない……！いや良いぞ！もっと吸って……♡何人でも私を孕ませるが良い♡」

だが公務の必要性は実のところない、皆、己の欲望に忠実なウシオニ達なのだから。

己の欲望のまま生き続けるのだ。








かつて摘まれて散るだけだった花は、その怒りと獣性で敵を駆逐する怪しげな毒花として生まれ変わったのだった

■作者メッセージ
姫様

小国の姫様。
心優しい姫であるがそれは体の弱い事も原因の一つである。
弱さゆえに怒りを押し殺していたが、魔物と化したことにより、性格も変わっていった。
尚、たまに獣性が落ち着いてきた時はかつてのように花を見たり散歩したりするという。
街はほとんどの民がウシオニかそのオスに成り果てているため、ほぼずっと交わっていたりするため物の流通とかは外の国からの商人がほとんどである


毒入りの小瓶

とある魔物が作ったウシオニの血を濃縮して作った薬。
あまりにも強すぎるために魔物の中でも危険物。
人間に使う場合でも下手をすれば血が濃すぎて魔物化する前に死ぬ危険性も