蟲に喰らわれた国
とある小さな村があった。
豊かな自然に溢れる土地であった。
しかしある日大災害が起きて、村は壊滅状態になった。
国は彼らを見捨てた。
国は腐敗していた。
自らの豊かな生活のためなら、小さな村がどうなろうと良かったのだ。
それどころかなけなしの食料を奪って行った。
人々は絶望し、憎み呪った。
国を、世界を、運命を。
ある日ラッパの音が聞こえた。
今にも息絶える人々は見た。
空を飛ぶ蟲を。
復讐を!
奪われるのなら奪う力を!
願った!
飢えながらしにいく時願った。
そして彼らは……、蟲に喰われて……!
それからしばらくしてその地には緑豊かな自然も、畑も、あらゆる食材というものが無くなっていた。
そして人も影も形も失われていた。
王都で人々は贅を尽くし、生きていた。
あたりにはあまり捨てられた食料が捨てられてる。
味が気に入らないからと捨てるものもいる。
人にぶつけ遊ぶものもいる。
それは羽音を聞いた。
人々は空を見た。
羽を震わして、空を覆う黒い影。
そしてそれらは人々を襲った。
剣を持つものも、魔法を使うものも、逃げるものも、呆然とするものも、善人も、悪人も全て。
スラムに住む少年男女は身を寄せ合い、残飯を喰らい、落とした金銀で生きてきた。
だが今、スラムさえ覆い尽くそうとする蟲達はそんなものに目をくれず人々を襲っていた。
少年はその泥やらで汚れた体で、たまたま手に入れた棒切れで蟲達から後ろにいる少女を守っていた。
何度も何度も自分たちからものを奪った大人も既に蟲達に喰らわれている。
少年の仲間も多くは蟲の中に埋もれている。
そして棒切れが折れて、少年は少女を抱きしめて守ろうとした。
そして少年と少女は蟲の中に消えた。
腐敗する王国の中でも彼は剣を振い、戦っていた。
いつかそれが人々のためになると信じて。
しかし敵は多すぎた。
剣は次第に切れ味を落とし、鎧は敗れ、体力は尽きていく。
また1人、また1人と同志達は蟲に溺れていく。
そして今、男の剣も落ちて……。
2人はこの王都に住む奴隷の夫婦だった。
生まれた時から人生を決められていたが、それでも生命を保護しているだけ、まだ救われてる方だった。
だがそれは今日までだった。
自分たちが使えていた主人の娘の結婚式、その日美しいドレスに身を包んだ娘は、空から現れた黒い蟲達に襲われ埋もれて見えなくなった。
周りの貴族達も逃げようとするが、すぐに追いつかれて、その貴金属が散りばめられた豪華なドレスや礼服は、汚れ、喰われ、そして……。
ただ逃げていた。
逃げた先に何もないとしても。
だが男の足が崩れる。
その足は蟲達に掴まれていた。
男は逃げろと妻に言う。
だが妻は逃げなかった。
妻は男の手を握ったまま蟲に呑まれた。
神に祈りを捧げている女が居た。
この腐敗した国でも、救おうと願っていた。
祈り続ける。
目の前の白き教会に入り込む無数の蟲達を見ても。
悲鳴をあげて呑み込まれていく信者達。
だがそれでも彼女は祈りを辞めなかった。
自らも飲まれるその時まで。
王、王妃は助けを呼んだ。
だがそれはこの城に響く悲鳴、そして喘ぎ声がかき消した。
聞こえたところで助けられるものも居なかったが。
王達は、城下町を見渡す。
白き美しい街は、黒い蟲達に蹂躙されている。
あらゆるところで体液が撒き散らかされ、緑豊かな自然も食べ物も全て食い尽くされて、汚されていく。
蟲達は近寄る。
一歩一歩また一つ……!
そして一際大きな悲鳴がこの街に鳴り響く喘ぎ声と一緒になるのはそう時間が掛からなかった。
かつて自然豊かな国は変わり果てた。
木々は一部の魔界産の植物を除き失われ、川や湖も汚れ、空は黒い魔力に染まり。
かつてスラムだったところでは、かつて自分を守ってくれた少年を貪り、その胸から溢れる母乳を少女は与えていた。
その腹は膨れ、近くにはまもなく産まれようとする卵が複数あった。
多数の強き騎士達は、蟲達に貪り尽くされ、新たな強き蟲を産む苗床となっていた。
男達が振るうのは剣ではなく、股間のモノであった。
その中には、前から好意を持っていた男を狙う女戦士も居た。
奴隷夫婦は、その身を解放した。
初めての自由を手に入れた。
その羽を伸ばし空に舞いながら新たな命を孕んでいた。
教会は今日も生命で溢れかえっていた。
信者達の中心で、聖女は今も新たな生命を産み落としながら世界に、人に感謝を告げていた。
人々はそんな聖女に倣い、新たな命を産み落としていた。
国のあらゆるところに卵や母乳、愛液、精液などがこびりつく。
常にオスとメスはお互いを喰らいあい、新たな生命を常に増やしながら。
かつて王であったモノ達は、自分たちのせいで失われた命の分まで生み落とすと誓い、かつて王城だった巣を自分たちの卵で埋め尽くしていく。
あらゆるところで卵が植え付けられ、そして自ら生み落とすものもいる。
喰らい続けていく。
誰も飢えずに永遠に。
かつて王座であるところにとある蟲の女は今日も産み落とした。
彼らは知らない。
その女の顔がとある小さな村で憎みながら願った女に似ていることを。
知る必要もないのだから
豊かな自然に溢れる土地であった。
しかしある日大災害が起きて、村は壊滅状態になった。
国は彼らを見捨てた。
国は腐敗していた。
自らの豊かな生活のためなら、小さな村がどうなろうと良かったのだ。
それどころかなけなしの食料を奪って行った。
人々は絶望し、憎み呪った。
国を、世界を、運命を。
ある日ラッパの音が聞こえた。
今にも息絶える人々は見た。
空を飛ぶ蟲を。
復讐を!
奪われるのなら奪う力を!
願った!
飢えながらしにいく時願った。
そして彼らは……、蟲に喰われて……!
それからしばらくしてその地には緑豊かな自然も、畑も、あらゆる食材というものが無くなっていた。
そして人も影も形も失われていた。
王都で人々は贅を尽くし、生きていた。
あたりにはあまり捨てられた食料が捨てられてる。
味が気に入らないからと捨てるものもいる。
人にぶつけ遊ぶものもいる。
それは羽音を聞いた。
人々は空を見た。
羽を震わして、空を覆う黒い影。
そしてそれらは人々を襲った。
剣を持つものも、魔法を使うものも、逃げるものも、呆然とするものも、善人も、悪人も全て。
スラムに住む少年男女は身を寄せ合い、残飯を喰らい、落とした金銀で生きてきた。
だが今、スラムさえ覆い尽くそうとする蟲達はそんなものに目をくれず人々を襲っていた。
少年はその泥やらで汚れた体で、たまたま手に入れた棒切れで蟲達から後ろにいる少女を守っていた。
何度も何度も自分たちからものを奪った大人も既に蟲達に喰らわれている。
少年の仲間も多くは蟲の中に埋もれている。
そして棒切れが折れて、少年は少女を抱きしめて守ろうとした。
そして少年と少女は蟲の中に消えた。
腐敗する王国の中でも彼は剣を振い、戦っていた。
いつかそれが人々のためになると信じて。
しかし敵は多すぎた。
剣は次第に切れ味を落とし、鎧は敗れ、体力は尽きていく。
また1人、また1人と同志達は蟲に溺れていく。
そして今、男の剣も落ちて……。
2人はこの王都に住む奴隷の夫婦だった。
生まれた時から人生を決められていたが、それでも生命を保護しているだけ、まだ救われてる方だった。
だがそれは今日までだった。
自分たちが使えていた主人の娘の結婚式、その日美しいドレスに身を包んだ娘は、空から現れた黒い蟲達に襲われ埋もれて見えなくなった。
周りの貴族達も逃げようとするが、すぐに追いつかれて、その貴金属が散りばめられた豪華なドレスや礼服は、汚れ、喰われ、そして……。
ただ逃げていた。
逃げた先に何もないとしても。
だが男の足が崩れる。
その足は蟲達に掴まれていた。
男は逃げろと妻に言う。
だが妻は逃げなかった。
妻は男の手を握ったまま蟲に呑まれた。
神に祈りを捧げている女が居た。
この腐敗した国でも、救おうと願っていた。
祈り続ける。
目の前の白き教会に入り込む無数の蟲達を見ても。
悲鳴をあげて呑み込まれていく信者達。
だがそれでも彼女は祈りを辞めなかった。
自らも飲まれるその時まで。
王、王妃は助けを呼んだ。
だがそれはこの城に響く悲鳴、そして喘ぎ声がかき消した。
聞こえたところで助けられるものも居なかったが。
王達は、城下町を見渡す。
白き美しい街は、黒い蟲達に蹂躙されている。
あらゆるところで体液が撒き散らかされ、緑豊かな自然も食べ物も全て食い尽くされて、汚されていく。
蟲達は近寄る。
一歩一歩また一つ……!
そして一際大きな悲鳴がこの街に鳴り響く喘ぎ声と一緒になるのはそう時間が掛からなかった。
かつて自然豊かな国は変わり果てた。
木々は一部の魔界産の植物を除き失われ、川や湖も汚れ、空は黒い魔力に染まり。
かつてスラムだったところでは、かつて自分を守ってくれた少年を貪り、その胸から溢れる母乳を少女は与えていた。
その腹は膨れ、近くにはまもなく産まれようとする卵が複数あった。
多数の強き騎士達は、蟲達に貪り尽くされ、新たな強き蟲を産む苗床となっていた。
男達が振るうのは剣ではなく、股間のモノであった。
その中には、前から好意を持っていた男を狙う女戦士も居た。
奴隷夫婦は、その身を解放した。
初めての自由を手に入れた。
その羽を伸ばし空に舞いながら新たな命を孕んでいた。
教会は今日も生命で溢れかえっていた。
信者達の中心で、聖女は今も新たな生命を産み落としながら世界に、人に感謝を告げていた。
人々はそんな聖女に倣い、新たな命を産み落としていた。
国のあらゆるところに卵や母乳、愛液、精液などがこびりつく。
常にオスとメスはお互いを喰らいあい、新たな生命を常に増やしながら。
かつて王であったモノ達は、自分たちのせいで失われた命の分まで生み落とすと誓い、かつて王城だった巣を自分たちの卵で埋め尽くしていく。
あらゆるところで卵が植え付けられ、そして自ら生み落とすものもいる。
喰らい続けていく。
誰も飢えずに永遠に。
かつて王座であるところにとある蟲の女は今日も産み落とした。
彼らは知らない。
その女の顔がとある小さな村で憎みながら願った女に似ていることを。
知る必要もないのだから
25/12/07 12:41更新 / デーカルス