黒い液の国
第一王子である私、カイは他国への留学を終えて国に戻ってきた。
国に戻れば婚約者であるサラさんとの結婚や王位の受け継ぎなど色々忙しくなるだろう。
「ただいま、第一王子、カイ。帰還いたしました!」
「お帰りなさい、カイ……!」
「カイ様!お帰りなさい!」
変わらない様子で両親や臣下のもの達が迎え入れてきた。
私は留学の成果を報告し、久しぶりの食事などを楽しみ、かつてと同じく王子として過ごす毎日が続いていた……はずだった。
最近、城や街の中の道や建物が昔と変化している。
ただの増築なのだろうと最初は気にしてなかったが、だがだんだん違和感が強くなる。
いくらなんでも普通の都市開発でここまで変化するものだろうか?
王と王妃である両親に聞こうとしたこともあった。
しかし……。
「気のせいよ……!何も変わらないわ」
「そうだ……、我らが過ごす平和な国のままだ」
そう返されて何も言えなかった。
確かに民は幸せそうだ……、王子である私をいつもにこやかに接してくれている。
夜になるとどこからか異音が聞こえる。
水音もする。
しかしその方向に向かおうとしても何故か行けない。
何故かあるはずの扉や道がいつのまにかなくなり元の部屋に戻っていた。
最初は夢だと思っていた。
しかしだんだんとそれはリアリティを増していく……。
そしてある日の事だ。
「どうした?こんな夜中に……?」
「カイ様……!やっとこの日が来ました……!」
夜中に私の部屋にサラがやってきた。
「そうです……!やっとこの国に相応しい身体になったんですよ、カイ様」
「!?手!手が私の体をすり抜けて!?」
なんと何の妨げもなく私の体にサラの腕が入っていく!?
謎の快感と共にだ!
「ああ……!ついにです!やっと……!」
「な!?ばっ!?バケモノ!?」
私は恐怖のあまり、サラの身体に壁に立てかけていた剣を突き立てるが全く歯応えがない。
「ああ……!その剣は、少し前に私にしておきましたぁ……♡」
剣はドロっとした黒い液体に変わり、逆に私の体を拘束する。
「安心してください……!私はサラです……!幼馴染で婚約者の♡」
昔と変わらない表情で、声色で彼女は呟く。
「教えてあげますよ……!何があったのか……!」
カイ様が留学してしばらくの頃でしょうか。
私はカイ様の事を思って悩み苦しんでいました。
私がカイ様を支えられるのだろうか?
カイ様の愛を受け止められるのか?
国を守れるのか……?
そんな時です。
一つの本を手に入れました。
一体どこからその本が紛れ込んだかわかりませんが……、私はこの本に書かれていることが全ての悩みを解決させてくれると直感したのです。
そして私はその本に書いてある儀式を行いました。
そして現れたのは……、混沌でした。
善も悪も、光も闇もない。
全てが無く、全てがある。
原初のモノでした。
それは私を呑み込みました。
肌が、脳が、血管が、心臓が、肺が、目が、耳が。
あらゆるものが溶けていきました。
溶けて溶けて溶けて……、そして私は混沌と一つになりました。
それがこの今の私の姿です……!
どうしましたか?カイ様?
それからどうしたかですか?
焦らないでください、ちゃんと話しますから。
ほら……、ちゃんと当人達にも合わせてあげますから。
私は混沌となりました。
そしてこの国を平和で素晴らしく幸せな世界にせねばなりません。
だからまずは王様夫妻に分かってもらいました。
さすがかつては国を救った英雄2人です。
最初は私に剣を向けてきましたが……、その前にさっきみたいに道具や壁などを私にしておいて隙を作って……。
50近くともどちらも若々しい見た目で……。
王妃様の幾つになっても王様の愛する人になりたい、その女心はとても素晴らしいです!
王様も同じく逞しく、筋肉質な身体で……。
そんな2人が仕事や責務で愛し合う時間が取れないのは間違っています!
だから私は、2人を愛し合えさせました。
最初は抵抗されるので手足を封じさせて、無理やり交わらせましたが……。
私が混じっていくたびにどっちもビクンビクンしちゃって、どんどんお互いのことしか見えなくなって……!
ほら……、今王座に座っている2人のように溶け合った下半身を動かしながら幸せそうに……!
……そのあとは他の家臣の方々もゆっくり少しずつ、分かってもらいました。
ゆっくり少しずつ、この城を私にして……。
特にここの魔道書の数々を読めたのは良かったです。
新しい方法とか知識を手に入れられましたし。
私をしっかり摂取していたおかげで苦しむ事もなく……。
同じように井戸に私を混ぜつつ人民達にも……。
城壁が、建物が、家が、川が、公園が、あらゆるものが溶けていく。
さっきまで形あったものは、色を失い、硬さを失い、黒く粘着質な液体へと溶けていく。
先程まで普通に仕事をしていた臣下や国民達は怯えもせず、大地が溶けて自らの体を沈みゆくのを見ても、焦らず、むしろ嬉しそうな表情で沈んでいく……。
「ほら………!
見てください!今や私がこの国そのものです!
私の中でみんな幸せそうに気持ちよさそうに……!」
そこにあったのは黒い粘液、ありとあらゆるものを飲み込む混沌。
かつてあらゆる建物が並んで活気あふれた国は、混沌を取り込んだ女の姿をした巨大なスライムへと変わり果てたのだ。
「大丈夫ですよ、私の中は広いんです。
私さえ分からないくらいに。
みんな狭苦しいことはありません」
サラの大きくなった指が、私のものを擦る。
すると私は勢いよく、射精してしまった。
「良いですよ、カイ様♡もっと私を白く染め上がるくらいに♡」
そう言うとサラはその大きくなったその胸に私を挟み込み、優しく全身を擦る。
だがその快楽は優しくない!
甘い香りが、柔らかい感触が!
気持ち良すぎて……!?
「あはぁ♡こんなに沢山……♡
ねえ、カイ様♡
ほら、私という国の中に私をこのように作ることだって可能です」
その言葉の通り、一つの小さい小屋ができるとそこにもサラは居た。
「この部屋も壁も窓も家具も全て私です。
いつでもどんな時でも……、カイ様がしたい時にさせてあげます!
ほら、どうです?おっぱい壁に挟まれるのは?
こうやって私が両方から囁くのも気持ちいいですよね?」
拒否権などない、既に私は……
「大人の姿の私でも、初めて会った頃の私でも、さらにちっちゃい頃の私でも、何人でも、どんな姿でも、どんなふうにでも……!」
さらに多数のサラが私に集まっていく。
「ほらぁ、下半身が混ざり合って気持ちいいでしょう?
びゅーびゅーしてるのがあたりまえで溶けていくのがいいでしょう」
そして気がつけばサラの下半身は溶けて、いや、私の下半身も溶けて混ざり合っていた。
「おっぱいミルクが身体の中に直接流れていく感覚良いですよね」
沢山の彼女の乳房から私の身体に母乳が流れ込んでいく。
そしてその味を全身で味わい悦んでいた!
唇が舌が混ざり合ってあまくてあまくてぇ……!
そして……!
ああああああああああああああああああ!
さあて、そろそろ他所から兵が来そうですね。
別に負ける気はしませんが……、せっかくだし移住しましょうか?
安心してください、どこでも私たちは幸せですよ!
それまで何もなかった場所に、急に国が現れる。
そんな事が何度も至る所で繰り返されていた。
いくつかの国は、警戒し、戦士やスパイ、学者などを送り込んだが帰る事は無かった。
とある魔法使いは自らの感覚を繋げた使い魔で探ろうとした。
しかしそこにあったのは……
家が、建物が、そして人が境目もなく、粘液として混ざり合っていた。
とある国から潜入していた戦士は、黒く粘液の身体に変化した仲間の魔法使いに声にもならない悲鳴をあげながら射精していた。
しかも射精するたびに戦士の身体から、技術も知恵も失われ、どんどん若返っていくのを優秀な魔法使いである彼は理解していた。
また別の二人組は身体を拘束されながら、部屋に閉じ込められていた。
必死に開けようと足掻くが……、頭上から粘液が部屋を満たしていく。
どんどん部屋の中を満たしていき、気がつくと下半身も浸かった時に二人は気づいた。
距離は離れているのに二人の感覚が繋がっている事を。
足掻こうとすればするほど両者の身体に快楽が走り、精や愛液が放たれている事にも。
怯え、身悶えしてもさらに身体が快楽で、溶かされていく。
動かないと逃げられない、動いたら気持ちいい。
そんな生き地獄の中、部屋が満たされた時、二人も混ざり、満たされた……。
建物の影から、いや、建物からも嬌声が上がる、
側から見れば人々は溶かされ、溶かしていっていた。
だが誰も苦痛の顔を浮かべず、気持ちよさそうな悦びの顔を上げていた。
ぐちょぐちょのぐちゃぐちゃに、じゅるじゅるとどろどろに、どぷんどぶん、どぴゅ、どぴゅんと。
あらゆるものが波を立てて、水音を立てて、嬌声をあげて。
それが外に伝わった最後の情報だった。
それを見た使い魔の主は逆流した思念に侵され、同じく近くにいた弟子と共に混沌の眷属へと落ちてしまったからだ。
国の者達は急ぎ、その部屋を異空間に封印し、あの国への一才の干渉を禁じたという
24/07/06 22:22更新 / デーカルス