P-03
...それからしばらくしてシルヴィアはリアムが居る場所を教えてもらった後、休む間もなく飛び出るようにして家を出ました。
道中で仕事場の同僚などにも偶然見られ、声をかけられたりしましたが、シルヴィアは聞く耳も持たず一心不乱にリアムのもとへと向かっていたのです。
途中、道を見失いかけてしまうこともありましたが所々に残されていたリアムの痕跡から出る微量な精気を頼りに進んでいました。
そうして何とか街へと近づくことが出来ましたが、その頃合いには既に日は暮れており、街へ辿り着いたときには街は静まり返っていました。けれど、それ故にシルヴィアの感覚は研ぎ澄まされリアムの居る場所へと本能的に向かうことが出来たのです...
____________
....あれから私はリアムさんが居るとダークプリーストさんに教えてもらった場所、リアムさんが居るという街へと向かっていました。
しばらくの間家からも出ず、仕事にも行っていませんでしたから....歩くこともままなりませんでした。
けれど、そんなことでリアムさんを放っておくことなんてできない....そう思うと自然と体が動くようになっていきました。
ただでさえ元々は歩けないほどまでの怪我をされていたんですから、そんな状態で無理やりにでも体を動かせば....考えれば考えるほど彼のこと、リアムさんのことが心配でなりませんでした。
せっかく出会えたのに、こんな別れ方なんて嫌....
....そう思った時、ふと視線を上げるとそこはある程度舗装された道で街に近づいているということが分かりました。
もっともその頃には日も落ちかけていて雪も降っていたんですけどね...
そうしてしばらくの間その道を歩いていると街にたどり着くことが出来ました。
街は当然の事ですけど静まり返っていて....私の履いていた支給品のブーツが地面を蹴る音だけが街に響いていました。
静かだということもあって明確ににリアムさんの気配を感じ取ることが出来て....リアムさんは無事なのだということが伝わってきました。
それで安心しながらも歩いていると、ある路地裏から強く気配を感じたので急いで向かったんです。そうしたらそこには紙くずやありあわせの布に包まって寝ているリアムさんが居たんです....
____________
....こうしてシルヴィアはやっとのことでリアムに会うことができました。
けれども...リアムはあまり良い状態ではありませんでした。そう、彼はあの日と同じように悪夢を見て苦痛の表情を浮かべながら寝ていたのですから....
____________
....ここは何処だろう。畑に、見覚えのある家....僕の家.....?
あれ、母さん....母さんか.....?でも、母さんは父さんと一緒に死んだはずじゃ....
「母さん...!?、母さんじゃないか....生きていたのかい....?」
驚きながらもそうして僕は懐かしくもある家の玄関を潜り抜け、母さんの元へ歩み寄って行くとそこにはもうこの世には居ないはずの母さんが居たんだ....でも、いくら話しかけても返事をしないで僕のことを見てくるだけでさ....少し気味が悪かった。
....それでしばらくの間立ち尽くしていると急に母さんが僕の首を絞めてきて
「どうしたんだい母さ...ぐッ、何するんだよ....放してッ!」
それを境にあの時の夢に出てきたジョンと同じように体からは皮膚や肉が削げ落ちていって、血も噴き出しているというのに母さんは僕の首を絞める手を緩めなかったんだ。
「アガッ....、母さん、ごめん、僕がもっと、ぐッ......早く、早く帰って来ていれば、戦争がもっと早く終わっていたらッ.....!、ごめんなさい、母さん、許して....母さん....母さん.....母さん......」
そうして僕は夢だというのにも関わらずに段々と意識が薄くなり始めて....痛みも段々と感じなくなって来て....
「母さん....母さん....母さん、許して.....母さん....」
それで意識を手放しかけたとき、聞き覚えのある声がして
「リアムさん!起きてください!、...お願いだから....起きて...!」
そうしたら、そうしたら...僕は夢から覚めることが出来たんだ....
____________
....目が覚めるとそこには何故かシルヴィアさんが居て、あの時と同じでさ....僕の体を優しく抱きしめてくれていたんだ。
でも、シルヴィアさんには気づかれないように....迷惑にならないようにする為に何処へ行くのかは教えてはいなかったはずなのにどうしてシルヴィアさんがここに?
「あれ....どうしてシルヴィアさんが、シルヴィアさんがここに居るんですか?」
「知り合いの、リアムさんを治療してくれたダークプリーストさんが居場所を教えてくれたんです。それで、怪我をしているのに飛び出していった貴方のことが心配で....どうしてこんな無茶をしてまで家から出たんですか!」
「それは....」
「....私が魔物で、気味が悪いからですか。」
「違いますよッ!、そうじゃなくて....僕が居ると、迷惑になると思って。」
「そんなことありませんよ....迷惑だなんて、大体リアムさんは怪我人なんですよ!、それを迷惑だなんて思ったりしません....」
「だけど、だけど僕はシルヴィアさんと元々面識のあった関係じゃないんですよ!、それなのにいきなり現れて、運ばれたとはいえ勝手に人の家に上がり込んだり....迷惑なことですよ。」
....僕は、僕はこの世界の人間じゃない。だから、この世界には存在していない、存在していては人間なんだ。本当なら、シルヴィアさんと出会うことも無かったんだから....こんなことはしてはいけない。
「....確かにリアムさんと私は面識のない関係です。ですけど、だからと言って貴方を放ってなんかおけません....」
「シルヴィアさん....」
「....だから、私思いついたんです。リアムさんをもう二度と何処にも行かせないって....」
「えっ...?」
すると今までのシルヴィアさんの雰囲気が優しかったものからとても、とても怖いものになって....
「絶対に...絶対に幸せにしてあげますから....ね?」
そういうとシルヴィアさんは腰に身に着けている鞘から剣を瞬時に引き抜いて、僕の胸に真上から突き刺してきて....痛みが来ると思っていたんだけど痛みは全然なくて何かが身体から抜けていく感覚がした後、意識を失ってしまったんだ.....
____________
....少し抵抗はありましたが今のリアムさんはいくらお話をしても納得してくれるとは思えません、そこで私は自らの持っている剣で少しだけ気絶してもらうことにしました。
剣と言っても普通の鉱物でできたものではなく魔界銀製の物なので相手を斬りつけても怪我をすることはありませんから....
けれど、いくら怪我をしないと言っても剣だということには変わりはありません。そしてそんなものでリアムさんを、私が守らなければならない彼を斬るんですから....やっぱり実行に移してしまう前まではとても心配でした。
ですけど、何事も無く眠ってくれて良かったです。抵抗されてしまうともしかしたらまだ治っていない怪我が悪化してしまったり、怪我をしてしまいますから。
.....それにしてもリアムさんが見つかって本当に、本当に良かったです。こんなところで生活を送っていては健康を害していつか駄目になってしまいます。
だから、だからこれからは私とリアムさん2人きりで、誰からも危害の加えられない2人きりの家で彼を幸せにしてあげるんです....
....ふふふ、うふふふふふふ...あははははははははははははははッ!
____________
....こうしてシルヴィアはようやくリアムと再び会うことが出来ました。
けれど、自らが関わってしまえば迷惑になってしまうとリアムは考えていたため、再会することが出来たもののあまり嬉しくはありませんでした。
それでも何とかして説得し、リアムを幸せにしてあげ守ってあげたいシルヴィアはこれ以上ここで話していても彼は考えを変えずここから動いてくれないだろうと判断し、強引でもあり自分の意思に反する行為だと分かってはいたものの自らの剣を使い気絶させたのでした。
そうして動かなくなったリアムをシルヴィアはこれから始まる2人きりの、彼を幸せにするための生活を想像しながらも彼をあの時のようにして両手で抱きかかえ、自らの家へと虚ろな目をしながら再び向かい始めたのでした....
____________
....私がシルヴィアさんにリアムさんの居場所を教えて差し上げてから家を飛び出るようにして出発されてから次の日のことでした。
シルヴィアさんはどうやらリアムさんと会うことが出来たのか帰ってきたときには2人で帰ってきていて....私はそれを見て安心しました。
けれど、並んで歩いてきたわけでは無くリアムさんはシルヴィアさんに抱きかかえられていて....顔色は優れているとは言えないものでしたがさして悪いわけでもありませんでしたから怪我をなされてはいないようでした。
取り敢えず顔色だけでは完全にリアムさんの健康状態が分かりませんからシルヴィアさんに近づいて事情を少しだけでもお聞きしようと思って声をかけたんです。
....ですけどシルヴィアさんは一瞬だけこちらに視線を向けただけで私のことを全く気にもしないで家へ行ってしまわれました。
その時のシルヴィアさんの顔は、遠くから見たときにはそこまで体調が悪いようには見えなかったんですけど....でも、その時は近くではっきりと見ることが出来たので驚いてしまいました。
シルヴィアさんは頬が少しこけていて、目には全く光が灯っていなかったんですから....それに、髪は所々痛んでいて...酷い状態でした。
そんな雰囲気のシルヴィアさんに私は近づいていくことが出来なくて、気が付いたときにはもう既にそこには彼女とリアムさんは居ませんでした.....
____________
....シルヴィアさんに刺されてしまってからどれぐらい経ったんだろう。
意識が戻り始めてきたときには上下に揺れながら運ばれていて....あの日シルヴィアさんに運ばれた時と同じ感覚がしたからシルヴィアさんに運ばれているんだって気が付いたんだ。
ある程度は知っている人だったから最初は安心していたけど、思い返してみれば僕はシルヴィアさんに刺されて気絶したのだから運んでいる人物が同一人物だと気が付くと急に安心感は消えて、怖いという気持ちだけが残って....どうして僕のことを....?
そうして何故シルヴィアさんが僕のことを剣で刺してきたのか....そんなことを考えているうちにどうやら彼女は目的地に着いたようで、ゆっくりと歩く振動が止まっていった。
....次に気が付くと僕はシルヴィアさんの家にあるベッドの上で横になっていてさ、眠い目を何とか開けて部屋を見回すとこちらに背を向けて何か作業をしているシルヴィアさんが視界に入ったんだ。
それでとにかく起きたことを伝えるためにシルヴィアさんに声をかけたんだ....
「....シルヴィアさん、今起きましたよ。ところでそれは何を.....ッ!?」
「嗚呼....リアムさん、起きていたんですね...今は料理を作っているところですよ....」
「こんなの料理だなんて...!、いったいこれは.....」
シルヴィアさんは料理をしている、そう言ったんだけど....そこには、そこには手首をナイフで切って、料理に入れている彼女が居て.....
「これはですね....普通の料理ではリアムさんを幸せにはできませんから、どうしようかって考えて....考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて、工夫してみようと思ってやってみたんですよ....」
「初めて作るものですから、調整が難しくて.....まだ出来上がるまで時間がありますから、もう一度お休みになって待っていてくださいね.....すぐに、すぐに作りますから....ふふふ.....」
そう彼女が言うと突然強烈な眠気に襲われて...まだ起きたばかりなのにも関わらず、僕は眠気に襲われてしまったんだ....
そうして最後に眠ってしまう前、僕が見た光景は最初に出会った時に見たシルヴィアさんとは思えないような不敵な笑みを浮かべ、微笑む彼女が料理に専念している光景だった......
道中で仕事場の同僚などにも偶然見られ、声をかけられたりしましたが、シルヴィアは聞く耳も持たず一心不乱にリアムのもとへと向かっていたのです。
途中、道を見失いかけてしまうこともありましたが所々に残されていたリアムの痕跡から出る微量な精気を頼りに進んでいました。
そうして何とか街へと近づくことが出来ましたが、その頃合いには既に日は暮れており、街へ辿り着いたときには街は静まり返っていました。けれど、それ故にシルヴィアの感覚は研ぎ澄まされリアムの居る場所へと本能的に向かうことが出来たのです...
____________
....あれから私はリアムさんが居るとダークプリーストさんに教えてもらった場所、リアムさんが居るという街へと向かっていました。
しばらくの間家からも出ず、仕事にも行っていませんでしたから....歩くこともままなりませんでした。
けれど、そんなことでリアムさんを放っておくことなんてできない....そう思うと自然と体が動くようになっていきました。
ただでさえ元々は歩けないほどまでの怪我をされていたんですから、そんな状態で無理やりにでも体を動かせば....考えれば考えるほど彼のこと、リアムさんのことが心配でなりませんでした。
せっかく出会えたのに、こんな別れ方なんて嫌....
....そう思った時、ふと視線を上げるとそこはある程度舗装された道で街に近づいているということが分かりました。
もっともその頃には日も落ちかけていて雪も降っていたんですけどね...
そうしてしばらくの間その道を歩いていると街にたどり着くことが出来ました。
街は当然の事ですけど静まり返っていて....私の履いていた支給品のブーツが地面を蹴る音だけが街に響いていました。
静かだということもあって明確ににリアムさんの気配を感じ取ることが出来て....リアムさんは無事なのだということが伝わってきました。
それで安心しながらも歩いていると、ある路地裏から強く気配を感じたので急いで向かったんです。そうしたらそこには紙くずやありあわせの布に包まって寝ているリアムさんが居たんです....
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....こうしてシルヴィアはやっとのことでリアムに会うことができました。
けれども...リアムはあまり良い状態ではありませんでした。そう、彼はあの日と同じように悪夢を見て苦痛の表情を浮かべながら寝ていたのですから....
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....ここは何処だろう。畑に、見覚えのある家....僕の家.....?
あれ、母さん....母さんか.....?でも、母さんは父さんと一緒に死んだはずじゃ....
「母さん...!?、母さんじゃないか....生きていたのかい....?」
驚きながらもそうして僕は懐かしくもある家の玄関を潜り抜け、母さんの元へ歩み寄って行くとそこにはもうこの世には居ないはずの母さんが居たんだ....でも、いくら話しかけても返事をしないで僕のことを見てくるだけでさ....少し気味が悪かった。
....それでしばらくの間立ち尽くしていると急に母さんが僕の首を絞めてきて
「どうしたんだい母さ...ぐッ、何するんだよ....放してッ!」
それを境にあの時の夢に出てきたジョンと同じように体からは皮膚や肉が削げ落ちていって、血も噴き出しているというのに母さんは僕の首を絞める手を緩めなかったんだ。
「アガッ....、母さん、ごめん、僕がもっと、ぐッ......早く、早く帰って来ていれば、戦争がもっと早く終わっていたらッ.....!、ごめんなさい、母さん、許して....母さん....母さん.....母さん......」
そうして僕は夢だというのにも関わらずに段々と意識が薄くなり始めて....痛みも段々と感じなくなって来て....
「母さん....母さん....母さん、許して.....母さん....」
それで意識を手放しかけたとき、聞き覚えのある声がして
「リアムさん!起きてください!、...お願いだから....起きて...!」
そうしたら、そうしたら...僕は夢から覚めることが出来たんだ....
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....目が覚めるとそこには何故かシルヴィアさんが居て、あの時と同じでさ....僕の体を優しく抱きしめてくれていたんだ。
でも、シルヴィアさんには気づかれないように....迷惑にならないようにする為に何処へ行くのかは教えてはいなかったはずなのにどうしてシルヴィアさんがここに?
「あれ....どうしてシルヴィアさんが、シルヴィアさんがここに居るんですか?」
「知り合いの、リアムさんを治療してくれたダークプリーストさんが居場所を教えてくれたんです。それで、怪我をしているのに飛び出していった貴方のことが心配で....どうしてこんな無茶をしてまで家から出たんですか!」
「それは....」
「....私が魔物で、気味が悪いからですか。」
「違いますよッ!、そうじゃなくて....僕が居ると、迷惑になると思って。」
「そんなことありませんよ....迷惑だなんて、大体リアムさんは怪我人なんですよ!、それを迷惑だなんて思ったりしません....」
「だけど、だけど僕はシルヴィアさんと元々面識のあった関係じゃないんですよ!、それなのにいきなり現れて、運ばれたとはいえ勝手に人の家に上がり込んだり....迷惑なことですよ。」
....僕は、僕はこの世界の人間じゃない。だから、この世界には存在していない、存在していては人間なんだ。本当なら、シルヴィアさんと出会うことも無かったんだから....こんなことはしてはいけない。
「....確かにリアムさんと私は面識のない関係です。ですけど、だからと言って貴方を放ってなんかおけません....」
「シルヴィアさん....」
「....だから、私思いついたんです。リアムさんをもう二度と何処にも行かせないって....」
「えっ...?」
すると今までのシルヴィアさんの雰囲気が優しかったものからとても、とても怖いものになって....
「絶対に...絶対に幸せにしてあげますから....ね?」
そういうとシルヴィアさんは腰に身に着けている鞘から剣を瞬時に引き抜いて、僕の胸に真上から突き刺してきて....痛みが来ると思っていたんだけど痛みは全然なくて何かが身体から抜けていく感覚がした後、意識を失ってしまったんだ.....
____________
....少し抵抗はありましたが今のリアムさんはいくらお話をしても納得してくれるとは思えません、そこで私は自らの持っている剣で少しだけ気絶してもらうことにしました。
剣と言っても普通の鉱物でできたものではなく魔界銀製の物なので相手を斬りつけても怪我をすることはありませんから....
けれど、いくら怪我をしないと言っても剣だということには変わりはありません。そしてそんなものでリアムさんを、私が守らなければならない彼を斬るんですから....やっぱり実行に移してしまう前まではとても心配でした。
ですけど、何事も無く眠ってくれて良かったです。抵抗されてしまうともしかしたらまだ治っていない怪我が悪化してしまったり、怪我をしてしまいますから。
.....それにしてもリアムさんが見つかって本当に、本当に良かったです。こんなところで生活を送っていては健康を害していつか駄目になってしまいます。
だから、だからこれからは私とリアムさん2人きりで、誰からも危害の加えられない2人きりの家で彼を幸せにしてあげるんです....
....ふふふ、うふふふふふふ...あははははははははははははははッ!
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....こうしてシルヴィアはようやくリアムと再び会うことが出来ました。
けれど、自らが関わってしまえば迷惑になってしまうとリアムは考えていたため、再会することが出来たもののあまり嬉しくはありませんでした。
それでも何とかして説得し、リアムを幸せにしてあげ守ってあげたいシルヴィアはこれ以上ここで話していても彼は考えを変えずここから動いてくれないだろうと判断し、強引でもあり自分の意思に反する行為だと分かってはいたものの自らの剣を使い気絶させたのでした。
そうして動かなくなったリアムをシルヴィアはこれから始まる2人きりの、彼を幸せにするための生活を想像しながらも彼をあの時のようにして両手で抱きかかえ、自らの家へと虚ろな目をしながら再び向かい始めたのでした....
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....私がシルヴィアさんにリアムさんの居場所を教えて差し上げてから家を飛び出るようにして出発されてから次の日のことでした。
シルヴィアさんはどうやらリアムさんと会うことが出来たのか帰ってきたときには2人で帰ってきていて....私はそれを見て安心しました。
けれど、並んで歩いてきたわけでは無くリアムさんはシルヴィアさんに抱きかかえられていて....顔色は優れているとは言えないものでしたがさして悪いわけでもありませんでしたから怪我をなされてはいないようでした。
取り敢えず顔色だけでは完全にリアムさんの健康状態が分かりませんからシルヴィアさんに近づいて事情を少しだけでもお聞きしようと思って声をかけたんです。
....ですけどシルヴィアさんは一瞬だけこちらに視線を向けただけで私のことを全く気にもしないで家へ行ってしまわれました。
その時のシルヴィアさんの顔は、遠くから見たときにはそこまで体調が悪いようには見えなかったんですけど....でも、その時は近くではっきりと見ることが出来たので驚いてしまいました。
シルヴィアさんは頬が少しこけていて、目には全く光が灯っていなかったんですから....それに、髪は所々痛んでいて...酷い状態でした。
そんな雰囲気のシルヴィアさんに私は近づいていくことが出来なくて、気が付いたときにはもう既にそこには彼女とリアムさんは居ませんでした.....
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....シルヴィアさんに刺されてしまってからどれぐらい経ったんだろう。
意識が戻り始めてきたときには上下に揺れながら運ばれていて....あの日シルヴィアさんに運ばれた時と同じ感覚がしたからシルヴィアさんに運ばれているんだって気が付いたんだ。
ある程度は知っている人だったから最初は安心していたけど、思い返してみれば僕はシルヴィアさんに刺されて気絶したのだから運んでいる人物が同一人物だと気が付くと急に安心感は消えて、怖いという気持ちだけが残って....どうして僕のことを....?
そうして何故シルヴィアさんが僕のことを剣で刺してきたのか....そんなことを考えているうちにどうやら彼女は目的地に着いたようで、ゆっくりと歩く振動が止まっていった。
....次に気が付くと僕はシルヴィアさんの家にあるベッドの上で横になっていてさ、眠い目を何とか開けて部屋を見回すとこちらに背を向けて何か作業をしているシルヴィアさんが視界に入ったんだ。
それでとにかく起きたことを伝えるためにシルヴィアさんに声をかけたんだ....
「....シルヴィアさん、今起きましたよ。ところでそれは何を.....ッ!?」
「嗚呼....リアムさん、起きていたんですね...今は料理を作っているところですよ....」
「こんなの料理だなんて...!、いったいこれは.....」
シルヴィアさんは料理をしている、そう言ったんだけど....そこには、そこには手首をナイフで切って、料理に入れている彼女が居て.....
「これはですね....普通の料理ではリアムさんを幸せにはできませんから、どうしようかって考えて....考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて、工夫してみようと思ってやってみたんですよ....」
「初めて作るものですから、調整が難しくて.....まだ出来上がるまで時間がありますから、もう一度お休みになって待っていてくださいね.....すぐに、すぐに作りますから....ふふふ.....」
そう彼女が言うと突然強烈な眠気に襲われて...まだ起きたばかりなのにも関わらず、僕は眠気に襲われてしまったんだ....
そうして最後に眠ってしまう前、僕が見た光景は最初に出会った時に見たシルヴィアさんとは思えないような不敵な笑みを浮かべ、微笑む彼女が料理に専念している光景だった......
20/04/06 06:13更新 / はぐれデュラハン
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