友人と酒を飲みに行くと
ようやくとれた休日で実家に帰って来た北島は暑い夏の日、酒を呑みに行く。
「おーい、来たぞ」
「早いな」
一人で行くのもつまらないので友人の大城戸に行く店を任せてみた。家の窓から顔を出して大城戸が見下ろしている。
「暑いからな、ビールで冷えたいわけよ」
「夏冬変わらないだろう」
北島が大酒呑みなのは誰でも知っている。
「まあいいか。居酒屋で良いんだろう?」
「おう」
ラフな格好で近所の居酒屋に行こうと大城戸の家の玄関前で待つ。
「待たせた」
「あーっお兄ちゃんどこ行くの」
甲高い声に北島が大城戸の体から家を覗くと、そこには見た事がある顔が居た。
「おや、光ちゃんか…?」
疑問形になったのは顔ではなく昔見た幼児の頃よりだいぶ成長していた為である。大城戸の妹は年齢差が10歳以上あるのでまだ小さい。身長と変わらないような大きな人形を抱えて、体の一部が異常発達している。そして背中に蝙蝠の羽、腰に尖った尻尾という変化がありすぎた。
「あれ、この格好で会うのは初めてか?」
大城戸は体をずらして妹を見えるようにする。
「ああ、幼稚園の頃にはあったけど、お前両親人間だったよな」
「人間だ。この子も人間で生まれたよ。光、覚えているか知らないが、俺の友
達で北島だ。お菓子は貰った事があるだろう」
「覚えてない。でもお久しぶりです。お兄ちゃんの妹の光です」
「あ、これはご丁寧に」
頭を下げられて下げ返す北島は異常発達した一部が揺れるのを見た。
「そして光が持っている人形が、光をサキュバスにしたろくでなしのリビングドールだ」
「ずいぶんな紹介ね」
「魔物娘だったのか」
抱えられた人形が声を出したので北島は後ずさる。
「ずいぶんな紹介されたけどマリア、よ。よろしくね」
「ああ、よろしく」
人形を改めてみると、顔は人間っぽい感じで、よくある金髪碧眼の人形のようだ。足元まで伸びている髪の毛も人形としてはアリだと思われる。しかし
「何でこの子も巨乳なんだ」
そう、二人の魔物娘は子供サイズとは異なるサイズだった。大人の握り拳よりも大きい。
「魔物というのはそういう物なんじゃないのか?こいつは人形だから詰め物だろうし」
「失礼ね、100%天然よ」
マリアと大城戸が口げんかをするのを光はにこにこと笑ってみている。
「止めなくていいのか?俺はさっさと飲みに行きたいんだが」
「大丈夫ですよ。二人は仲良しだから。でも、今日はデパートに連れて行ってもらおうと思ってたのに」
「それは悪かった。俺からも大城戸に言っとこう」
「ありがとう」
満面の笑みを浮かべる光に北島は照れて頭をかく。
「そうだ、こんな馬鹿な事をやっている場合じゃなかった」
「馬鹿な事とはなによ」
「済まないが、飲みに行くのを優先してくれ」
また始まりそうになったのに割り込んで、北島は大城戸を外へ連れ出した。
「喧嘩は呑みに行った後にしてくれ」
「すまんすまん。しかし、お前本当に呑みに行くことにしか興味がないんだな」
「昔の趣味だったプロレスの試合も観戦できないぐらい忙しくてな、TV見ながら飲むしか出来ない」
「ご愁傷様」
大城戸は急に暗くなった北島に同情した。同時にその背中にどんという音と共にぶつかって来た物に衝撃で転ばされる。
「大丈夫か」
「何だ?キコちゃんか」
「兄貴!あそぼー!」
ぶつかって来たのはオーガの娘で、低い身長ながら鉄砲玉のように突撃してきたのだ。
「この子は?」
「妹のクラスメートで、オーガのキコちゃんだ。俺をぶつかっても大丈夫な的にしてるらしくてよく突っ込んでくる」
「なんだそりゃ」
キコは二人が話しているのを見てぶんぶんと握り拳を振り回している。そしてそれにともなって子供らしからぬ大きさの部分が上下に揺れる。
「話してつまんない。あそぼーよ」
「いや、これから出かける所だから、今度な」
「つまんなーい」
「キコちゃん、駄目よ、邪魔しちゃ」
そこへ別の声が入る。北島が声の方を見れば頭に花を咲かせた少女がいる。トロールの少女だ。
「あ、葵ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです」
男性二人よりは低いが成人女子と言っても大丈夫なほど年齢の平均よりも身体も胸も大きな娘さんだ。
「初めまして、向井 葵と言います」
「あ、これはどうも北島です」
「アタシは島 キコッ」
「ああ、よろしく」
葵ちゃんが挨拶するのに倣ってキコちゃんも手を上げて元気に挨拶してくる。
「済まないが俺達はこれから出かけるから、また今度ね」
「分かりました。あ、今度の海楽しみにしてます」
「アタシも行くんだから準備万端でな!」
「はいはい」
二人の少女と手を振って別れた大城戸に北島が疑問を投げかけた。
「何であんな少女と付き合いがあるんだ?」
「え、市民センターの講座の手伝いに行ったのが始まりかな」
「講座って何をやったんだ」
「模型屋の田中さんを手伝ってガンプラを」
「なんだそりゃ」
自分も昔は通った店とはいえ女の子にガンプラという組み合わせが分からなくて、北島は頭を捻る。
「ガンプラとあの子達と何の関係があるんだ」
「いや、講座には来たけど、光の同級生だ」
「そっちを先にいえや」
分かりやすい関係に思わず大城戸へツッコミ・チョップを与えた北島だった。
目的の居酒屋は駅前の商店街の中にある。昔はにぎわっていたと思っていた場所だが北島が今見れば寂れている。
「昔はもっと店があったと思うんだけど」
「地方の商店街何てこんな物だよ」
地元に居続ける大城戸は慣れている様子だった。
「とりゃっ」
「えいっ」
「今度は何だ」
大城戸が再び襲われるのに慣れてきた北島は離れて様子を見る事にした。襲ってきた物体は二つの棍棒だった。持ち主はミノタウロスとホブゴブリン。共に怪力の持ち主だ。
「畜生、また躱されたかっ」
「美緒ちゃん、もう一回だよぅ」
「やめなさい。今日は友達がいるんだ、これ以上やると二度と相手しない」
「え〜っ」
「やめますからやめないで〜」
大城戸の言葉が二人を止める。
「それで、今度の娘さんは何だ。やっぱり光ちゃんの同級生か」
「何故わかった」
いい加減に同じような事が続けば嫌でも分かると、北島は自己紹介する。
「どうもこんにちは、北島と言います」
「オレは牛山 美緒だ」
「瘤山 鈴ですぅ」
大城戸は二人の自己紹介の間何かを探している。
「何やってるんだ」
「いや、この子達がいるという事はもう一人いるんだ」
「もう一人?」
「ああ、悪餓鬼三人組での、俗にいう悪知恵担当の娘なんだけど、あ、居た」
店の並ぶ中二階へと続く階段の上で、少し引っ込んだ位置で真っ白な少女がこちらを見ていた。
「あの子か?」
「そう、白澤の本山 チェリーちゃんだ」
「ふむ、奇襲は失敗しましたか」
北島は襲ってきた二人と並んだ三人の少女に目をやる。
「大城戸さん」
「何、チェリーちゃん」
「そこのお友達の視線を止めてください、胸に刺さってうっとうしいです」
「げ」
北島としては何となく目をとられたと言う感じの視線だったが白澤の少女の声に慌てて視線を逸らした。
「まあ仕方ない、種族の都合とはいえ、男としては目を奪われる」
「オーキドは見なかったじゃないか」
大城戸のフォローにミノタウロス少女が文句をつける。
「どうもすいません」
友人にとばっちりがいくのも申し訳ないので北島は頭を下げた。
ミノタウロス、ホブゴブリン、白澤というバストを自慢する魔物娘は少女であっても十分すぎる大きさを持っていた。しかも自慢するように突き出している。
「大城戸さん、どうして今日の奇襲が分かったのぉ」
眠くなる言い方のホブゴブリン少女が大城戸の袖を引く。
「今日は暑いから涼しそうな所に目が行くんだ。それであちこち見ていたら見た事のある体型の影が隠れていた所から見えたからね」
この子達も暑いから少しでも涼しそうな所に入っていた所、後から光がさして特徴ある影が出来たと言う事らしい。
「成程、今度から後ろも注意しないといけませんね」
白澤の娘は頷いている。
「おい、俺は早く行きたいんだけど、まだか?」
北島の言葉に大城戸は3人娘と別れて先を歩く。
「お前、何かあの娘さん達に恨みでもかってるのか?」
さっきの奇襲は結構な威力があったので北島は何をやらかしたのかと大城戸を問い詰めれば、
「この前光達と遊んだ時、突っかかられたから躱して頭を撫でてあげた」
それはある意味において馬鹿にされると思ったのではないだろうか。北島はそう思ったがまあいいやと口を閉じた。何よりも酒を呑むことの方が大事だ。
「おお、ここだ」
「居酒屋ミルキーウェイね、酒はうまいのか?」
「家族でやってるから酒も良いけど居心地がいい。最近はもっぱらここだ」
大城戸は扉を引いて中に入っていく。
「こんにちわ〜」
「はーい」
現れたのはホルスタウロスの少女だった。
「ちょっと待て、この娘さんが女将とかいうオチか?」
流石にこの年の子供に酒のあれこれをさせるのは難しいと北島が思わず大城戸を見る。
「いやそれはない。この子は近所の娘さんだよ」
「あ、あんちゃん来てくれたんだ。嬉しいな」
「こんにちは瑪瑙ちゃん。今日は友達と来たから、飲みに来たんだよ」
「わたしに会いに来てくれたんじゃないんだ」
残念そうな少女は胸を強調するように腕を下に組んでいる。
「この子は何で酒場にいるんだ?」
北島は別に誰がどこに居ても良いが、労働基準法が気になるのは北島が働き過ぎだからである。
「ここのオーナーの娘さんだよ。商店街の店の娘さんで集まる時は何故かここが使われるんだ」
「それじゃあ大人はいるのか」
「ちゃんといるよ」
「私がここの女将さ」
北島の答えと重なった声のした方を見れば、そこにはサテュロスの女性が居た。
「女将をやっている遥だ。よろしく」
サテュロスといえば洋風の魔物娘なのに遥は着物を着こなしていた。
「まだちょっと早い時間帯だから、準備に時間がかかるよ。それでいいならお酒だけを出すよ」
「あ、それで構いません」
奥に女将が引っ込むと北島は大城戸の耳を引っ張った。
「おい、何でサテュロスがいるんだ?酒場には良いと思うけど」
「いやいい痛い。まず手を離せ」
北島が手を離すと大城戸は席に着く。
「お待たせ、とりあえずビールと、乾き物」
「これはどうも」
席に着いたと同時に酒が来た。北島はお盆を受け取る。
「まず乾杯しよう」
「よし」
ビールジョッキをぶつけると一気に喉へ流し込まれるビール。
「ぷはっこの一杯の為に生きている」
「それでさっさと説明しろや」
北島は限界の様だ。大城戸はやれやれと口を開いた。
「別に大したことはないんだ。女将さんは日本生まれなんだけど、母親は最近日本でも有名になった日本ワインを作る仕事をしている。で、姉妹と相談して販売の方を引き受けた一人だとさ」
ビールを口に含む大城戸に北島は勢いよくジョッキを飲み干した。
「オッキャクサン、おっぱいドーゾー」
「「ぶっ」」
甲高い声の台詞に思わず吹き出す男二人。
「きゃーっだいせいこーっ」
きゃらきゃらと笑う声の主はピンクな鳥だった。ジャブジャブと呼ばれるハーピィの一種だ。その手(?)のお盆には俗にいうおっぱいプリンが乗っている。
「桃子ちゃん、いつも言っているが、そういう冗談はやらないように。さらに言っているが人が物を食べている時はやめるように」
「はーい」
「あ、モモちゃん、来たよ」
大城戸がさらに何か言う前にホルスタウロスの少女が近寄ってくる魔物娘に手を振った。
「おーす」
「金華ちゃん遅いよ」
現れたオークの少女にホルスタウロスとジャブジャブの少女は荷物を持って集まった。
「あ、あにさん、おーす」
「ああはい、こんにちは。」
「あにさんも行こう。今日は焼肉食い放題だい」
「いや、ここには呑みに来てるんだからね」
苦笑して大城戸はビールのお代わりを注文した。オークの少女はややぽっちゃり気味の体型ながら、他の二人と張り合ったバストを震わせる。
「「「行ってきまーす」」」
「行ってらっしゃい」
「あの子達は、何だ?」
手を振って魔物娘を見送る大城戸に北島が話かける。
「彼女たちも光のクラスメートだけど、ホルスタウロスの大木 瑠璃ちゃん、ジャブジャブの羽鳥 桃子ちゃん、オークの太田 金華ちゃん。桃子ちゃんはあっちの旅行代理店の娘さんで、金華ちゃんはよく食いに行く、ほら学生の頃に言ったてたろ、太田食堂。あそこの娘さん夫婦の子供だよ」
「成程」
北島の目が据わっていた。見ればジョッキが5つ並んでいる。
「おい、大したつまみがないんだからこんなに一気に飲んだら悪いぞ」
「悪い?おお、悪いわ!貴様俺が悲鳴を上げて働いてるってのにもてやがって、貴様は俺の敵だ!」
「本気で酔ってるな。俺は子供には興味がないぞ、そう胸とか色々出ている大人の…」
「そう、胸だ!貴様!
妹ロリ巨乳と人形ロリ巨乳と元気ロリ巨乳と大人っぽいロリ巨乳と凶暴ロリ巨乳とのんびりロリ巨乳と眼鏡ロリ巨乳とベーシックロリ巨乳と悪戯ロリ巨乳と太目ロリ巨乳
と付き合いがあるとは何事だ!」
「おい、目から赤い物が出てるぞ、病気か?」
「違う、これは貴様の贅沢さに反発する血の涙だ!」
ドンと音を立ててジョッキがテーブルに叩き付けられる。
「駄目だこりゃ」
「貴様、
無邪気ロリ巨乳と喧嘩友達ロリ巨乳と突撃ロリ巨乳と従順ロリ巨乳と親分ロリ巨乳と子分ロリ巨乳と参謀ロリ巨乳とミルクロリ巨乳と頭ピンクロリ巨乳と肉ロリ巨乳
と付き合い等言語道断!警察に訴えてやる」
「よく一息で言えるな」
「大丈夫かい、彼?」
変な事に感心している大城戸へジョッキを運んできた遥がこっそりと聞いてくる。
「あんまり大丈夫じゃないです。遠くで働いて疲れているみたいで、趣味のプロレスも見られずもう一つの趣味の酒に走っている感じですね」
暢気な北島の言葉に遥が頷いた。
「そうか、それじゃ後は私に任せてくれないか?」
「え、大分酔ってますが大丈夫ですか?」
「サテュロスは酒を詳しく知っている。という事は酔いを醒まさせる方法も知っていると言う事なんだよ。取りあえず今日は帰った方が良い、君が目の前にいると何か暴走しているようだ」
「何だ貴様この上女将さんにも手を出す気か」
「どうもそのようですね」
話しているだけで突っかかってくるようでは完全に酔っている。大城戸は運ばれてきたジョッキを次々と飲み干す北島の意識がジョッキに向いている間にこっそりと席を立った。
「それじゃあ、後はお願いします」
「ああ、終わったら報告するから安心して良いよ」
目を光らせている女将に多めに代金を支払って北島を置いて店を出た大城戸はふうと一息ついた。酒の事はサテュロスに任しておいた方が良いだろう。
「でも、遥さん結構好みだったんだけどな」
魔物娘が目を光らせている理由は一つしかない。やれやれと大城戸は家路についた。
「おーい、来たぞ」
「早いな」
一人で行くのもつまらないので友人の大城戸に行く店を任せてみた。家の窓から顔を出して大城戸が見下ろしている。
「暑いからな、ビールで冷えたいわけよ」
「夏冬変わらないだろう」
北島が大酒呑みなのは誰でも知っている。
「まあいいか。居酒屋で良いんだろう?」
「おう」
ラフな格好で近所の居酒屋に行こうと大城戸の家の玄関前で待つ。
「待たせた」
「あーっお兄ちゃんどこ行くの」
甲高い声に北島が大城戸の体から家を覗くと、そこには見た事がある顔が居た。
「おや、光ちゃんか…?」
疑問形になったのは顔ではなく昔見た幼児の頃よりだいぶ成長していた為である。大城戸の妹は年齢差が10歳以上あるのでまだ小さい。身長と変わらないような大きな人形を抱えて、体の一部が異常発達している。そして背中に蝙蝠の羽、腰に尖った尻尾という変化がありすぎた。
「あれ、この格好で会うのは初めてか?」
大城戸は体をずらして妹を見えるようにする。
「ああ、幼稚園の頃にはあったけど、お前両親人間だったよな」
「人間だ。この子も人間で生まれたよ。光、覚えているか知らないが、俺の友
達で北島だ。お菓子は貰った事があるだろう」
「覚えてない。でもお久しぶりです。お兄ちゃんの妹の光です」
「あ、これはご丁寧に」
頭を下げられて下げ返す北島は異常発達した一部が揺れるのを見た。
「そして光が持っている人形が、光をサキュバスにしたろくでなしのリビングドールだ」
「ずいぶんな紹介ね」
「魔物娘だったのか」
抱えられた人形が声を出したので北島は後ずさる。
「ずいぶんな紹介されたけどマリア、よ。よろしくね」
「ああ、よろしく」
人形を改めてみると、顔は人間っぽい感じで、よくある金髪碧眼の人形のようだ。足元まで伸びている髪の毛も人形としてはアリだと思われる。しかし
「何でこの子も巨乳なんだ」
そう、二人の魔物娘は子供サイズとは異なるサイズだった。大人の握り拳よりも大きい。
「魔物というのはそういう物なんじゃないのか?こいつは人形だから詰め物だろうし」
「失礼ね、100%天然よ」
マリアと大城戸が口げんかをするのを光はにこにこと笑ってみている。
「止めなくていいのか?俺はさっさと飲みに行きたいんだが」
「大丈夫ですよ。二人は仲良しだから。でも、今日はデパートに連れて行ってもらおうと思ってたのに」
「それは悪かった。俺からも大城戸に言っとこう」
「ありがとう」
満面の笑みを浮かべる光に北島は照れて頭をかく。
「そうだ、こんな馬鹿な事をやっている場合じゃなかった」
「馬鹿な事とはなによ」
「済まないが、飲みに行くのを優先してくれ」
また始まりそうになったのに割り込んで、北島は大城戸を外へ連れ出した。
「喧嘩は呑みに行った後にしてくれ」
「すまんすまん。しかし、お前本当に呑みに行くことにしか興味がないんだな」
「昔の趣味だったプロレスの試合も観戦できないぐらい忙しくてな、TV見ながら飲むしか出来ない」
「ご愁傷様」
大城戸は急に暗くなった北島に同情した。同時にその背中にどんという音と共にぶつかって来た物に衝撃で転ばされる。
「大丈夫か」
「何だ?キコちゃんか」
「兄貴!あそぼー!」
ぶつかって来たのはオーガの娘で、低い身長ながら鉄砲玉のように突撃してきたのだ。
「この子は?」
「妹のクラスメートで、オーガのキコちゃんだ。俺をぶつかっても大丈夫な的にしてるらしくてよく突っ込んでくる」
「なんだそりゃ」
キコは二人が話しているのを見てぶんぶんと握り拳を振り回している。そしてそれにともなって子供らしからぬ大きさの部分が上下に揺れる。
「話してつまんない。あそぼーよ」
「いや、これから出かける所だから、今度な」
「つまんなーい」
「キコちゃん、駄目よ、邪魔しちゃ」
そこへ別の声が入る。北島が声の方を見れば頭に花を咲かせた少女がいる。トロールの少女だ。
「あ、葵ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです」
男性二人よりは低いが成人女子と言っても大丈夫なほど年齢の平均よりも身体も胸も大きな娘さんだ。
「初めまして、向井 葵と言います」
「あ、これはどうも北島です」
「アタシは島 キコッ」
「ああ、よろしく」
葵ちゃんが挨拶するのに倣ってキコちゃんも手を上げて元気に挨拶してくる。
「済まないが俺達はこれから出かけるから、また今度ね」
「分かりました。あ、今度の海楽しみにしてます」
「アタシも行くんだから準備万端でな!」
「はいはい」
二人の少女と手を振って別れた大城戸に北島が疑問を投げかけた。
「何であんな少女と付き合いがあるんだ?」
「え、市民センターの講座の手伝いに行ったのが始まりかな」
「講座って何をやったんだ」
「模型屋の田中さんを手伝ってガンプラを」
「なんだそりゃ」
自分も昔は通った店とはいえ女の子にガンプラという組み合わせが分からなくて、北島は頭を捻る。
「ガンプラとあの子達と何の関係があるんだ」
「いや、講座には来たけど、光の同級生だ」
「そっちを先にいえや」
分かりやすい関係に思わず大城戸へツッコミ・チョップを与えた北島だった。
目的の居酒屋は駅前の商店街の中にある。昔はにぎわっていたと思っていた場所だが北島が今見れば寂れている。
「昔はもっと店があったと思うんだけど」
「地方の商店街何てこんな物だよ」
地元に居続ける大城戸は慣れている様子だった。
「とりゃっ」
「えいっ」
「今度は何だ」
大城戸が再び襲われるのに慣れてきた北島は離れて様子を見る事にした。襲ってきた物体は二つの棍棒だった。持ち主はミノタウロスとホブゴブリン。共に怪力の持ち主だ。
「畜生、また躱されたかっ」
「美緒ちゃん、もう一回だよぅ」
「やめなさい。今日は友達がいるんだ、これ以上やると二度と相手しない」
「え〜っ」
「やめますからやめないで〜」
大城戸の言葉が二人を止める。
「それで、今度の娘さんは何だ。やっぱり光ちゃんの同級生か」
「何故わかった」
いい加減に同じような事が続けば嫌でも分かると、北島は自己紹介する。
「どうもこんにちは、北島と言います」
「オレは牛山 美緒だ」
「瘤山 鈴ですぅ」
大城戸は二人の自己紹介の間何かを探している。
「何やってるんだ」
「いや、この子達がいるという事はもう一人いるんだ」
「もう一人?」
「ああ、悪餓鬼三人組での、俗にいう悪知恵担当の娘なんだけど、あ、居た」
店の並ぶ中二階へと続く階段の上で、少し引っ込んだ位置で真っ白な少女がこちらを見ていた。
「あの子か?」
「そう、白澤の本山 チェリーちゃんだ」
「ふむ、奇襲は失敗しましたか」
北島は襲ってきた二人と並んだ三人の少女に目をやる。
「大城戸さん」
「何、チェリーちゃん」
「そこのお友達の視線を止めてください、胸に刺さってうっとうしいです」
「げ」
北島としては何となく目をとられたと言う感じの視線だったが白澤の少女の声に慌てて視線を逸らした。
「まあ仕方ない、種族の都合とはいえ、男としては目を奪われる」
「オーキドは見なかったじゃないか」
大城戸のフォローにミノタウロス少女が文句をつける。
「どうもすいません」
友人にとばっちりがいくのも申し訳ないので北島は頭を下げた。
ミノタウロス、ホブゴブリン、白澤というバストを自慢する魔物娘は少女であっても十分すぎる大きさを持っていた。しかも自慢するように突き出している。
「大城戸さん、どうして今日の奇襲が分かったのぉ」
眠くなる言い方のホブゴブリン少女が大城戸の袖を引く。
「今日は暑いから涼しそうな所に目が行くんだ。それであちこち見ていたら見た事のある体型の影が隠れていた所から見えたからね」
この子達も暑いから少しでも涼しそうな所に入っていた所、後から光がさして特徴ある影が出来たと言う事らしい。
「成程、今度から後ろも注意しないといけませんね」
白澤の娘は頷いている。
「おい、俺は早く行きたいんだけど、まだか?」
北島の言葉に大城戸は3人娘と別れて先を歩く。
「お前、何かあの娘さん達に恨みでもかってるのか?」
さっきの奇襲は結構な威力があったので北島は何をやらかしたのかと大城戸を問い詰めれば、
「この前光達と遊んだ時、突っかかられたから躱して頭を撫でてあげた」
それはある意味において馬鹿にされると思ったのではないだろうか。北島はそう思ったがまあいいやと口を閉じた。何よりも酒を呑むことの方が大事だ。
「おお、ここだ」
「居酒屋ミルキーウェイね、酒はうまいのか?」
「家族でやってるから酒も良いけど居心地がいい。最近はもっぱらここだ」
大城戸は扉を引いて中に入っていく。
「こんにちわ〜」
「はーい」
現れたのはホルスタウロスの少女だった。
「ちょっと待て、この娘さんが女将とかいうオチか?」
流石にこの年の子供に酒のあれこれをさせるのは難しいと北島が思わず大城戸を見る。
「いやそれはない。この子は近所の娘さんだよ」
「あ、あんちゃん来てくれたんだ。嬉しいな」
「こんにちは瑪瑙ちゃん。今日は友達と来たから、飲みに来たんだよ」
「わたしに会いに来てくれたんじゃないんだ」
残念そうな少女は胸を強調するように腕を下に組んでいる。
「この子は何で酒場にいるんだ?」
北島は別に誰がどこに居ても良いが、労働基準法が気になるのは北島が働き過ぎだからである。
「ここのオーナーの娘さんだよ。商店街の店の娘さんで集まる時は何故かここが使われるんだ」
「それじゃあ大人はいるのか」
「ちゃんといるよ」
「私がここの女将さ」
北島の答えと重なった声のした方を見れば、そこにはサテュロスの女性が居た。
「女将をやっている遥だ。よろしく」
サテュロスといえば洋風の魔物娘なのに遥は着物を着こなしていた。
「まだちょっと早い時間帯だから、準備に時間がかかるよ。それでいいならお酒だけを出すよ」
「あ、それで構いません」
奥に女将が引っ込むと北島は大城戸の耳を引っ張った。
「おい、何でサテュロスがいるんだ?酒場には良いと思うけど」
「いやいい痛い。まず手を離せ」
北島が手を離すと大城戸は席に着く。
「お待たせ、とりあえずビールと、乾き物」
「これはどうも」
席に着いたと同時に酒が来た。北島はお盆を受け取る。
「まず乾杯しよう」
「よし」
ビールジョッキをぶつけると一気に喉へ流し込まれるビール。
「ぷはっこの一杯の為に生きている」
「それでさっさと説明しろや」
北島は限界の様だ。大城戸はやれやれと口を開いた。
「別に大したことはないんだ。女将さんは日本生まれなんだけど、母親は最近日本でも有名になった日本ワインを作る仕事をしている。で、姉妹と相談して販売の方を引き受けた一人だとさ」
ビールを口に含む大城戸に北島は勢いよくジョッキを飲み干した。
「オッキャクサン、おっぱいドーゾー」
「「ぶっ」」
甲高い声の台詞に思わず吹き出す男二人。
「きゃーっだいせいこーっ」
きゃらきゃらと笑う声の主はピンクな鳥だった。ジャブジャブと呼ばれるハーピィの一種だ。その手(?)のお盆には俗にいうおっぱいプリンが乗っている。
「桃子ちゃん、いつも言っているが、そういう冗談はやらないように。さらに言っているが人が物を食べている時はやめるように」
「はーい」
「あ、モモちゃん、来たよ」
大城戸がさらに何か言う前にホルスタウロスの少女が近寄ってくる魔物娘に手を振った。
「おーす」
「金華ちゃん遅いよ」
現れたオークの少女にホルスタウロスとジャブジャブの少女は荷物を持って集まった。
「あ、あにさん、おーす」
「ああはい、こんにちは。」
「あにさんも行こう。今日は焼肉食い放題だい」
「いや、ここには呑みに来てるんだからね」
苦笑して大城戸はビールのお代わりを注文した。オークの少女はややぽっちゃり気味の体型ながら、他の二人と張り合ったバストを震わせる。
「「「行ってきまーす」」」
「行ってらっしゃい」
「あの子達は、何だ?」
手を振って魔物娘を見送る大城戸に北島が話かける。
「彼女たちも光のクラスメートだけど、ホルスタウロスの大木 瑠璃ちゃん、ジャブジャブの羽鳥 桃子ちゃん、オークの太田 金華ちゃん。桃子ちゃんはあっちの旅行代理店の娘さんで、金華ちゃんはよく食いに行く、ほら学生の頃に言ったてたろ、太田食堂。あそこの娘さん夫婦の子供だよ」
「成程」
北島の目が据わっていた。見ればジョッキが5つ並んでいる。
「おい、大したつまみがないんだからこんなに一気に飲んだら悪いぞ」
「悪い?おお、悪いわ!貴様俺が悲鳴を上げて働いてるってのにもてやがって、貴様は俺の敵だ!」
「本気で酔ってるな。俺は子供には興味がないぞ、そう胸とか色々出ている大人の…」
「そう、胸だ!貴様!
妹ロリ巨乳と人形ロリ巨乳と元気ロリ巨乳と大人っぽいロリ巨乳と凶暴ロリ巨乳とのんびりロリ巨乳と眼鏡ロリ巨乳とベーシックロリ巨乳と悪戯ロリ巨乳と太目ロリ巨乳
と付き合いがあるとは何事だ!」
「おい、目から赤い物が出てるぞ、病気か?」
「違う、これは貴様の贅沢さに反発する血の涙だ!」
ドンと音を立ててジョッキがテーブルに叩き付けられる。
「駄目だこりゃ」
「貴様、
無邪気ロリ巨乳と喧嘩友達ロリ巨乳と突撃ロリ巨乳と従順ロリ巨乳と親分ロリ巨乳と子分ロリ巨乳と参謀ロリ巨乳とミルクロリ巨乳と頭ピンクロリ巨乳と肉ロリ巨乳
と付き合い等言語道断!警察に訴えてやる」
「よく一息で言えるな」
「大丈夫かい、彼?」
変な事に感心している大城戸へジョッキを運んできた遥がこっそりと聞いてくる。
「あんまり大丈夫じゃないです。遠くで働いて疲れているみたいで、趣味のプロレスも見られずもう一つの趣味の酒に走っている感じですね」
暢気な北島の言葉に遥が頷いた。
「そうか、それじゃ後は私に任せてくれないか?」
「え、大分酔ってますが大丈夫ですか?」
「サテュロスは酒を詳しく知っている。という事は酔いを醒まさせる方法も知っていると言う事なんだよ。取りあえず今日は帰った方が良い、君が目の前にいると何か暴走しているようだ」
「何だ貴様この上女将さんにも手を出す気か」
「どうもそのようですね」
話しているだけで突っかかってくるようでは完全に酔っている。大城戸は運ばれてきたジョッキを次々と飲み干す北島の意識がジョッキに向いている間にこっそりと席を立った。
「それじゃあ、後はお願いします」
「ああ、終わったら報告するから安心して良いよ」
目を光らせている女将に多めに代金を支払って北島を置いて店を出た大城戸はふうと一息ついた。酒の事はサテュロスに任しておいた方が良いだろう。
「でも、遥さん結構好みだったんだけどな」
魔物娘が目を光らせている理由は一つしかない。やれやれと大城戸は家路についた。
20/05/09 22:30更新 / 夜矢也