デーモンの召喚
「うんにゃかはんにゃか、へんにゃかふんにゃか。いでよ、悪魔よ〜」
満月が天空の最上位に達した時、石畳に描かれていた魔法陣が呪文に応じて光り輝き、そこから一人の美しいデーモンが現れた。
「この魔術を使うなんて、久しぶりね」
「あれ、デビルを呼ぶ予定だったのにデーモンが現れた」
召喚した男は分厚い本を片手で持ちながら、本とデーモンの顔を見比べるて首をひねっている。
「何か間違えたかな。まず、四大精霊に呼応するもので外側の魔法陣を描き、七つの大罪に呼応する七種類の悪そうな生物で内側の魔法陣を作る。魔法陣に間違いはない」
「ちょっと」
「うむ、サラマンダーの爪は山椒魚でなくて魔物のサラマンダーだったかな。シルフに対応するのに高級黄金シルクが悪かったか」
「え、それ欲しい」
「それともミューカストードの粘液の代わりに使ったガマの油が問題か?ドラゴンの羽の代わりにプテラノドンの化石がまずかったかも」
「ちょっとちょっと」
「一番問題だと思うのは黒山羊が届くのが明日になったから、隣の中華レストランでもらった烏骨鶏のダシガラを中央に置いた事だろうな」
「話を聞きなさい!」
ぶつぶつと独り言を続けている魔術師に向かってデーモンが一歩足を踏み出した。しかし見えない壁にぶつかってたじろぐ。
「ふっふっふっふっふ。魔物を召喚するのに何も用意しないと思ったか。魔物はこちらが許すまで召喚陣から出られないのだ」
「それはこっちの台詞よ」
バチィ
火花と音を立てて防御用の壁が消滅した。
「私をデビルと一緒にしない事ね」
「くそっどうしてか知らないが上級の魔物が出てきたのがあだになったか。しかし本当に一体どうしてデーモンが召喚されたんだ。やっぱり急いだのとけちったのが悪かったか」
防御陣が破れて巻き起こった風でめくれたローブの下から、まだ幼さの抜け切れない少年が顔を出していた。
「(うわっ物凄く好み)理由を教えてあげましょうか。貴方が最後に撒いた精液が、私の好みの匂いだったからよ」
「う、自前で節約しようとしたのが悪かったか」
「さあ、理由が分かったんだから私と良い事…」
デーモンが本題に入ろうとすると、背後の鉄の扉が激しく揺れた。
「あら、どうしたのかしら」
「あ、そうだった。急いでたんだった。ここは反魔物領で、教国の領なんだが、魔物召喚の魔法陣を研究してたら急に不信心者として聖騎士が攻めて来たんだ」
「ああ、なるほど、すると逃げたいからデビルを呼んだのね」
「いや研究が途中だからてっとり早く噂のレスカティエみたいに魔物領にしてもらおうと思って。ここはそんなに大きい街じゃないし」
「いやいやいや。それ、デビルでどうにかできる問題じゃないわよ」
流石に国とは名ばかりの街程度の範囲であろうと、レスカティエ並みの事をデビルが出来る訳はない。
「でも安心しなさい。私はデーモン。つまりレスカティエ並みは無理かもしれないけど、聖騎士ぐらいなら簡単に相手出来るわ」
「そうなのか。じゃあお願いする」
「ただし報酬は先払いね」
「え」
デーモンは召喚者に逆レイプを仕掛けた。
しかし防御された。
「そうそうやられてたまるか。これは凄いぞ。召喚者を守るための魔法陣その二だ。八種のドラゴンの力でできている」
「中々手ごわいわね」
「そうだろう。コモドドラゴンとエリマキトカゲは輸入に手間取った」
「何でそんなのでドラゴンの魔法陣が起動するのよ」
「やっぱり旅の竜騎士からもらった愛ドラゴンの鱗が効いているんではないかな?」
「くっこの魔力、魔王軍ドラゴン兵団の将軍並み。何でこんな物がここに」
「そこまでだ」
二人の掛け合いに、いつの間にか開いた扉の向こうから白銀の鎧を着た聖騎士たちがまるで雑兵のごとく続々と現れた。
「シュトルム国王、魔物召喚の罪で王位、財産、国土を没収。この国は教団の統制下に入ります」
「え、貴方国王だったの?」
「何か問題でも?」
「大ありだろう。魔物を呼ぶなど神に背く大罪を」
国王が答える前に聖騎士がデーモンへ剣を突きつける。
「ちょっと黙ってて」
デーモンが手をかざしただけで聖騎士達は動きを止めた。動こうと努力はしているようで顔を真っ赤にして力を入れている。
「で、何で魔物召喚の魔法陣なんて研究してたの?」
「この国は国と言えないほど小さいが、地下に先の主神時代に建てられた神殿がある。我が国はこの神殿を守護するのが第一の役目なんだが、これを教団が欲しがって、立ち退くように命じて来たんだ。これが一つ」
国王が聖騎士を横目で見ると聖騎士が目を合わせないようにする。
「後、それを断ったたら寄付金という名前の重税をかけて来たので、貴金属でできたゴーレムでも召喚できないかと思って、得意の召喚魔術を使ってみた」
「へえ、成程、遠慮はいらないわけね」
国王の答えを聞いた途端、デーモンの翼が大きく広がり尻尾が床を叩きだす。
「ちょっと使わせてもらうわね」
「何を?」
国王が返事をするかしないか、その瞬間に魔法陣が光り輝き、無数の影が飛び出してきた。
「お呼びですかお姉様」
魔法陣から出てきたデビルが一人、デーモンの前に跪く。
「ええ、この国を私達に素晴らしい物にすることに決めたわ。さしあたって、向こうの騎士様を貴方たちが相手して頂戴。あ、この国王陛下は私の相手だから手を出さないでね」
『はーい』
影の大合唱と同時に次々と影が聖騎士を連れてどこかに出ていく。魔法陣は召喚をやめようとせずにすべての聖騎士が居なくなっても影が飛び出していた。
「これでこの国もレスカティエみたいに住みよい国になるわ。どうかしら、国王様」
「我としては、聖騎士と教団のちょっかいだけどうにかしたかったんだが」
防御魔法陣から出ずに国王は遠い目をして扉の先を見ている。
「さあ、貴方の願いもかなえたし、報酬はもらうわね」
「まあ、仕方ない。ああ、ただし神殿は破壊したりしないでくれ。これはこの国をレスカティエのようにすると言う願いに含むからな」
「良いわよ。それじゃ」
バチンッと音がして防御魔法陣が消滅させられた。諦めたように国王は本を閉じる。
「まだ言っていなかったな。我の名前はアンドリューという」
「私はブリージングよ。よろしくね、貴方」
満月が天空の最上位に達した時、石畳に描かれていた魔法陣が呪文に応じて光り輝き、そこから一人の美しいデーモンが現れた。
「この魔術を使うなんて、久しぶりね」
「あれ、デビルを呼ぶ予定だったのにデーモンが現れた」
召喚した男は分厚い本を片手で持ちながら、本とデーモンの顔を見比べるて首をひねっている。
「何か間違えたかな。まず、四大精霊に呼応するもので外側の魔法陣を描き、七つの大罪に呼応する七種類の悪そうな生物で内側の魔法陣を作る。魔法陣に間違いはない」
「ちょっと」
「うむ、サラマンダーの爪は山椒魚でなくて魔物のサラマンダーだったかな。シルフに対応するのに高級黄金シルクが悪かったか」
「え、それ欲しい」
「それともミューカストードの粘液の代わりに使ったガマの油が問題か?ドラゴンの羽の代わりにプテラノドンの化石がまずかったかも」
「ちょっとちょっと」
「一番問題だと思うのは黒山羊が届くのが明日になったから、隣の中華レストランでもらった烏骨鶏のダシガラを中央に置いた事だろうな」
「話を聞きなさい!」
ぶつぶつと独り言を続けている魔術師に向かってデーモンが一歩足を踏み出した。しかし見えない壁にぶつかってたじろぐ。
「ふっふっふっふっふ。魔物を召喚するのに何も用意しないと思ったか。魔物はこちらが許すまで召喚陣から出られないのだ」
「それはこっちの台詞よ」
バチィ
火花と音を立てて防御用の壁が消滅した。
「私をデビルと一緒にしない事ね」
「くそっどうしてか知らないが上級の魔物が出てきたのがあだになったか。しかし本当に一体どうしてデーモンが召喚されたんだ。やっぱり急いだのとけちったのが悪かったか」
防御陣が破れて巻き起こった風でめくれたローブの下から、まだ幼さの抜け切れない少年が顔を出していた。
「(うわっ物凄く好み)理由を教えてあげましょうか。貴方が最後に撒いた精液が、私の好みの匂いだったからよ」
「う、自前で節約しようとしたのが悪かったか」
「さあ、理由が分かったんだから私と良い事…」
デーモンが本題に入ろうとすると、背後の鉄の扉が激しく揺れた。
「あら、どうしたのかしら」
「あ、そうだった。急いでたんだった。ここは反魔物領で、教国の領なんだが、魔物召喚の魔法陣を研究してたら急に不信心者として聖騎士が攻めて来たんだ」
「ああ、なるほど、すると逃げたいからデビルを呼んだのね」
「いや研究が途中だからてっとり早く噂のレスカティエみたいに魔物領にしてもらおうと思って。ここはそんなに大きい街じゃないし」
「いやいやいや。それ、デビルでどうにかできる問題じゃないわよ」
流石に国とは名ばかりの街程度の範囲であろうと、レスカティエ並みの事をデビルが出来る訳はない。
「でも安心しなさい。私はデーモン。つまりレスカティエ並みは無理かもしれないけど、聖騎士ぐらいなら簡単に相手出来るわ」
「そうなのか。じゃあお願いする」
「ただし報酬は先払いね」
「え」
デーモンは召喚者に逆レイプを仕掛けた。
しかし防御された。
「そうそうやられてたまるか。これは凄いぞ。召喚者を守るための魔法陣その二だ。八種のドラゴンの力でできている」
「中々手ごわいわね」
「そうだろう。コモドドラゴンとエリマキトカゲは輸入に手間取った」
「何でそんなのでドラゴンの魔法陣が起動するのよ」
「やっぱり旅の竜騎士からもらった愛ドラゴンの鱗が効いているんではないかな?」
「くっこの魔力、魔王軍ドラゴン兵団の将軍並み。何でこんな物がここに」
「そこまでだ」
二人の掛け合いに、いつの間にか開いた扉の向こうから白銀の鎧を着た聖騎士たちがまるで雑兵のごとく続々と現れた。
「シュトルム国王、魔物召喚の罪で王位、財産、国土を没収。この国は教団の統制下に入ります」
「え、貴方国王だったの?」
「何か問題でも?」
「大ありだろう。魔物を呼ぶなど神に背く大罪を」
国王が答える前に聖騎士がデーモンへ剣を突きつける。
「ちょっと黙ってて」
デーモンが手をかざしただけで聖騎士達は動きを止めた。動こうと努力はしているようで顔を真っ赤にして力を入れている。
「で、何で魔物召喚の魔法陣なんて研究してたの?」
「この国は国と言えないほど小さいが、地下に先の主神時代に建てられた神殿がある。我が国はこの神殿を守護するのが第一の役目なんだが、これを教団が欲しがって、立ち退くように命じて来たんだ。これが一つ」
国王が聖騎士を横目で見ると聖騎士が目を合わせないようにする。
「後、それを断ったたら寄付金という名前の重税をかけて来たので、貴金属でできたゴーレムでも召喚できないかと思って、得意の召喚魔術を使ってみた」
「へえ、成程、遠慮はいらないわけね」
国王の答えを聞いた途端、デーモンの翼が大きく広がり尻尾が床を叩きだす。
「ちょっと使わせてもらうわね」
「何を?」
国王が返事をするかしないか、その瞬間に魔法陣が光り輝き、無数の影が飛び出してきた。
「お呼びですかお姉様」
魔法陣から出てきたデビルが一人、デーモンの前に跪く。
「ええ、この国を私達に素晴らしい物にすることに決めたわ。さしあたって、向こうの騎士様を貴方たちが相手して頂戴。あ、この国王陛下は私の相手だから手を出さないでね」
『はーい』
影の大合唱と同時に次々と影が聖騎士を連れてどこかに出ていく。魔法陣は召喚をやめようとせずにすべての聖騎士が居なくなっても影が飛び出していた。
「これでこの国もレスカティエみたいに住みよい国になるわ。どうかしら、国王様」
「我としては、聖騎士と教団のちょっかいだけどうにかしたかったんだが」
防御魔法陣から出ずに国王は遠い目をして扉の先を見ている。
「さあ、貴方の願いもかなえたし、報酬はもらうわね」
「まあ、仕方ない。ああ、ただし神殿は破壊したりしないでくれ。これはこの国をレスカティエのようにすると言う願いに含むからな」
「良いわよ。それじゃ」
バチンッと音がして防御魔法陣が消滅させられた。諦めたように国王は本を閉じる。
「まだ言っていなかったな。我の名前はアンドリューという」
「私はブリージングよ。よろしくね、貴方」
15/11/28 23:36更新 / 夜矢也