魔物娘VS○○
ある過激派のリリムに率いられた魔物娘の一団がこちらの世界に潜入した、彼女らの最終的な目標はこの世界の魔界化だが、その過程で戦いがおこり死人が出ることを彼女らは決して望まなかった。
そのため第一段階として、この世界のことを良く調査し、魔界化の過程で障害になりそうな人物や組織を把握することを第一目標とした。
この段階では、魔物娘の存在をこの世界の人間たちに知られるわけにはいかないので、人化の術を使い、自分たちが魔物娘であることを知られないことと、魔物娘化、インキュバス化は行わないことを仲間たちにも徹底させた。
この世界のとある場所にあるアジトで、リリムは世界各地に潜入させた仲間たちからの報告を受けるため、彼女らを集合させた。
アメリカに潜入させていたデュラハンが報告の口火を切った、アメリカはこの世界における最強の軍事力を持つ国家なので、仲間内では軍事に一番詳しい彼女が担当した。
「この国の軍隊は物理的破壊力でいえば教団の軍隊や我々魔王軍をはるかに上回ります。ですが我々魔物娘の存在を全く知らないので、魅了や魔物化に対抗できる装備を全く持っていません。また、指揮系統はこの国の最高指導者、大統領のもとに一元化されています、よって最初に大統領を我々の仲間にすれば軍隊は無力化できます」
「やり方さえ間違えなければ、アメリカはそれほど脅威ではないということね」
報告を受けたリリムは満足そうに微笑んだ。
「違いますリリム様、私も最初はそう思いましたが、調査を進めていくうちに軍隊よりもっと厄介な者たちを見つけました」
デュラハンは深刻な声で話した。
「それはなに?」
リリムは驚いて問いただした。
「一般的に『スーパーヒーロー』と呼ばれる個人、もしくは少数の集団です。彼らは平均的な人間をはるかに上回る能力を持ちます」
「勇者のような人たちと言うことね、もちろんその方々についても調べたんでしょ?」
「もちろん調べました、ですが調べれば調べるほど理解不能なことばかりです」
「どういうこと?」
「私の調べたところでは彼らの中で一番強力なのは『スーパーマン』とよばれる独身の男性です、普段はクラーク・ケントと名乗りデイリー・プラネットという新聞社に勤めています」
「そこまで分かっているのなら魅了してしまえば問題ないわよね、なんなら私がするわよ」
「ですがいくら調べてもクラーク・ケントがどこに住んでいるのか、それどころかデイリー・プラネット社がどこにあるのかも分からないのです」
「え?だって新聞社なら新聞を発行しているはずでしょ?」
「その新聞もいくら探しても見つかりませんでした」
集まった魔物娘たちから困惑のざわめきが上がった。
「本当に存在するの?」
「記録映像はたくさんあります、名前や勤め先もそれで調べることができました」
「なら間違いないわね…、スーパーマンの能力はどれくらいなの?」
「いろいろありますが代表的なのは時速800万キロで空を飛び、80万トンの物を持ち上げることができます」
リリムも含む魔物娘たちから驚愕の叫びが上がった、彼女らは人間より優れた身体能力を持っているが、そのどれよりもはるかに上回る数字を聞いて驚かされた。
「しかもスーパーマンは地球を逆回転させることにより時間を戻すということもできます」
「そんなことお母様やお父様、全盛期の主神にだってできないわよ!」
リリムは再度叫んだが、ふとあることに気付いた。
「ちょっと待ちなさい、この世界は科学という技術が発達しているから、この世界の科学技術について、そこにいるリッチに調べさせて報告させたけど、そんなことはできそうにないわよ」
リリムのわきに座っているリッチは黙って首を縦に振った。
「その報告は私も読みました、ですがスーパーマンの能力はこの世界の科学でも我々の魔法でも説明ができないのです、先ほど理解不能と言ったのはそのことも含みます」
困惑してしまったリリムは、小さな声でデュラハンに尋ねた。
「他にはどんな『スーパーヒーロー』がいるの」
「他には『バットマン』という男性がいます、能力面ではスーパーマンに劣りますが、私よりは強いです。やはり謎が多く『ゴッサム・シティ』と言う都市に住んでいることは分かったのですが、どの地図を探してもその町は見つかりませんでした」
魔物娘たちは困惑していた、どんな強力な力を持った相手がいても魅了して味方にしたり、骨抜きにしたりすれば大丈夫と考えていたが、どこにいるのか分からず、こちらの想定をはるかに上回る力を持った相手では対処のしようがなかった。
ここまで読んだ方はおわかりだろうが、魔物娘たちは架空の存在であるスーパーヒーローたちを実在の人物と思い込んでいた。
彼女たちのメンタリティが子供並みというわけではなく、特撮やSFXのことを全く知らないのでDVD等で見た映画を本当の話だと思い込んでしまったのだ。
図鑑世界のことを全く知らないこちらの世界の普通の人間が、もし魔物娘が魔法を使う映像を見たら、良くできたSFXだなと思うのと同じことだ。
暗い雰囲気の中、日本に潜入していた稲荷が報告を始めた、日本という国は図鑑世界のジパングと似ているところが多いので、ジパング出身の彼女が担当した。
「日本の軍隊…彼らは自衛隊と呼んでいますが、我々に対抗できる装備が無い、指揮系統が総理大臣に一元化されていて、そこを押さえれば勝てるというところはアメリカと同じです」
彼女の顔はあまり明るそうには見えなかった。
「じゃあ日本は大丈夫っていうこと?」
デュラハンの報告で暗くなった雰囲気を何とかしたいと思ったリリムにとって藁をもつかむ思いだった。
「この国はかなり前から何度も、この国の征服をたくらむ秘密組織と戦ってきました。秘密組織と戦うのは警察や自衛隊とは異なる団体で一般に『スーパー戦隊』と呼ばれています。複数あって『ゴレンジャー』というのが良く知られています」
リリムは稲荷の口調が朗報を知らせるものではないことに気付いた。
「このスーパー戦隊も記録映像はたくさんあります、それらによると5人一組で戦うことが多いです、問題は使用ずる武器が警察や自衛隊でさえ使用していない特殊な武器が多いことです、中には巨大ロボットに乗って戦うのもあります。これらの武器や兵器は先ほどのスーパーマンと同じくこの世界の科学では説明できません」
「それらのスーパー戦隊は日本の政府のどの組織でどこにあるのかというのは分かった?」
個人で戦うことが多いスーパーヒーローと異なり団体のスーパー戦隊なら具体的にどういう組織なのかはすぐ分かるだろうとリリムは考えた。
「わかりませんでした。どこにあるのか、どういう指揮系統なのか、予算はどこから出ているのか、使用している武器等の技術はどうやって開発されたのか。これらの情報が一切秘匿されているのに、記録映像が簡単に手に入るのはどうしても説明できないのです」
稲荷は説明を続けた。
「ただ唯一判明したのは、スーパー戦隊が敵の主力と戦う場所が特定できたことです。すでに使われていない石切り場ですがかなりの頻度でそこで戦います。念のため行ってはみましたが何も有効な情報はつかめませんでした」
デュラハンの報告したスーパーヒーローとは異なる強敵の存在に魔物娘たちは沈黙してしまった。
「みんな、そんなに暗くなる必要はないわ、私たちには魔法がある。この世界においては使われていない力よ、知られていないのだから、それだけでもとても有利な位置にいるのよ」
暗い雰囲気を何とかしようとリリムは魔法による自分たちの優位性を説いた。
彼女たちはこちらの世界に来る前に、こちらの世界から図鑑世界に来てしまった人間たちに、こちらの世界についていろいろ尋ねた。
彼らにとって、図鑑世界に来て一番驚いたのは魔物娘の存在だが、二番目は魔法の存在だった、魔法は元いた世界では実在しないもの、あるいはとっくの昔に滅んでしまったものと考えられていた。
リリムの言葉でその場の雰囲気が少し明るくなりかけた。
「そうはいかぬのだリリム殿、今度は儂の報告も聞いてくれぬか」
イギリスに潜入していたバフォメットが話し始めた。
「儂も魔法はこの世界では実在しないものだと思っていたがな、それは間違っていたのじゃ。この国にはホグワーツ魔法魔術学校というかなり規模の大きい魔法を教える学校があるのじゃ、教員や施設の質はとても高く、教団の魔術学校に勝るとも劣りはせぬ」
魔物娘たちはまたざわめきだした、事前に得た情報とは全く異なることを知って大いに動揺した。
リリムはあわててバフォメットに尋ねた。
「その学校の場所とかは分かるの?」
「残念ながらそれは分からなかった、じゃが、行く方法は分かったのじゃ。イギリスの首都ロンドンあるキングス・クロス駅から専用の鉄道に乗って行くことができるのじゃ」
「じゃあ行ってみたの?」
「記録映像によると、その鉄道の専用ホームは普通の人間には気づかれぬように魔法で隠されているとのことじゃ」
「ならすぐ見つかるわね」
このバフォメットは建物等を隠匿する魔法に関しては、図鑑世界では有数の専門家だった。
「それがの、キングス・クロス駅に行っていくら調べても魔法の痕跡すら見つけることができなかったのじゃ」
またざわめきが上がった、彼女に見つけられなかったということは、隠匿魔法をかけた者はもっと巧妙な魔法を使うということになるからだ。
「この世界の魔法使いたちの戦闘力はどれくらいなの?」
「それについても記録映像がかなり有るのじゃ。ほんの数年前にある邪悪な魔法使いが彼らを支配しようとして、死人が出るほどの激しい戦いが起きた、戦争と言ってよいくらいじゃな。儂の見るところでは教団の勇者や魔法使いよりははるかに上じゃ、ひょっとしたら我々より強いかもしれぬ」
今度は悲鳴が上がった、こちら側が有利な条件がほとんどなくなるということは最悪敗北もあるということになる。
仲間たちの不安な視線を浴びたリリムは全面撤退を決断した、反対意見は出なかった。
「お母様がこの世界への進入を禁止したのは、このことを知っていたからなのね」
こちらの世界に潜入したことは彼女の母親である魔王には知られていないはずなので、仲間たちを口止めすれば大丈夫なはずだとリリムは考えた。
こちらの世界では神界、もしくは天界と呼ばれる場所で、そこの主が部下から報告を受けていた。
「報告します、我々の世界に侵入した魔物娘の一団はすべて元の世界へ撤退しました」
「ぎりぎりだったな、3日後には彼女らを一斉に拘束する予定だったのだが中止だ」
「御意にござります、ただちに連絡します」
「だが今回の件が不可侵協定違反であることは変わらぬ、なるべく早く魔王に面会して厳重な抗議を行うように、関係者を厳罰に処すことも要請するようにな」
「御意にござります、すみやかに準備します」
「それにしても彼女らの行動には不可解な点が多いな、はじめのうちは各国の政治体制や警察、軍隊などを調べていたのだが、途中から引きこもってDVD等をひたすらみていたのだな?」
「そのとおりでございます、主にSF、特撮、ファンタジーといったジャンルです。中には作品に関連した聖地巡礼をおこなう者もいました」
「聖地巡礼?エルサレムやメッカにでも行ったのかね?」
「失礼しました、間違った意味で使いました」
「?」
そのため第一段階として、この世界のことを良く調査し、魔界化の過程で障害になりそうな人物や組織を把握することを第一目標とした。
この段階では、魔物娘の存在をこの世界の人間たちに知られるわけにはいかないので、人化の術を使い、自分たちが魔物娘であることを知られないことと、魔物娘化、インキュバス化は行わないことを仲間たちにも徹底させた。
この世界のとある場所にあるアジトで、リリムは世界各地に潜入させた仲間たちからの報告を受けるため、彼女らを集合させた。
アメリカに潜入させていたデュラハンが報告の口火を切った、アメリカはこの世界における最強の軍事力を持つ国家なので、仲間内では軍事に一番詳しい彼女が担当した。
「この国の軍隊は物理的破壊力でいえば教団の軍隊や我々魔王軍をはるかに上回ります。ですが我々魔物娘の存在を全く知らないので、魅了や魔物化に対抗できる装備を全く持っていません。また、指揮系統はこの国の最高指導者、大統領のもとに一元化されています、よって最初に大統領を我々の仲間にすれば軍隊は無力化できます」
「やり方さえ間違えなければ、アメリカはそれほど脅威ではないということね」
報告を受けたリリムは満足そうに微笑んだ。
「違いますリリム様、私も最初はそう思いましたが、調査を進めていくうちに軍隊よりもっと厄介な者たちを見つけました」
デュラハンは深刻な声で話した。
「それはなに?」
リリムは驚いて問いただした。
「一般的に『スーパーヒーロー』と呼ばれる個人、もしくは少数の集団です。彼らは平均的な人間をはるかに上回る能力を持ちます」
「勇者のような人たちと言うことね、もちろんその方々についても調べたんでしょ?」
「もちろん調べました、ですが調べれば調べるほど理解不能なことばかりです」
「どういうこと?」
「私の調べたところでは彼らの中で一番強力なのは『スーパーマン』とよばれる独身の男性です、普段はクラーク・ケントと名乗りデイリー・プラネットという新聞社に勤めています」
「そこまで分かっているのなら魅了してしまえば問題ないわよね、なんなら私がするわよ」
「ですがいくら調べてもクラーク・ケントがどこに住んでいるのか、それどころかデイリー・プラネット社がどこにあるのかも分からないのです」
「え?だって新聞社なら新聞を発行しているはずでしょ?」
「その新聞もいくら探しても見つかりませんでした」
集まった魔物娘たちから困惑のざわめきが上がった。
「本当に存在するの?」
「記録映像はたくさんあります、名前や勤め先もそれで調べることができました」
「なら間違いないわね…、スーパーマンの能力はどれくらいなの?」
「いろいろありますが代表的なのは時速800万キロで空を飛び、80万トンの物を持ち上げることができます」
リリムも含む魔物娘たちから驚愕の叫びが上がった、彼女らは人間より優れた身体能力を持っているが、そのどれよりもはるかに上回る数字を聞いて驚かされた。
「しかもスーパーマンは地球を逆回転させることにより時間を戻すということもできます」
「そんなことお母様やお父様、全盛期の主神にだってできないわよ!」
リリムは再度叫んだが、ふとあることに気付いた。
「ちょっと待ちなさい、この世界は科学という技術が発達しているから、この世界の科学技術について、そこにいるリッチに調べさせて報告させたけど、そんなことはできそうにないわよ」
リリムのわきに座っているリッチは黙って首を縦に振った。
「その報告は私も読みました、ですがスーパーマンの能力はこの世界の科学でも我々の魔法でも説明ができないのです、先ほど理解不能と言ったのはそのことも含みます」
困惑してしまったリリムは、小さな声でデュラハンに尋ねた。
「他にはどんな『スーパーヒーロー』がいるの」
「他には『バットマン』という男性がいます、能力面ではスーパーマンに劣りますが、私よりは強いです。やはり謎が多く『ゴッサム・シティ』と言う都市に住んでいることは分かったのですが、どの地図を探してもその町は見つかりませんでした」
魔物娘たちは困惑していた、どんな強力な力を持った相手がいても魅了して味方にしたり、骨抜きにしたりすれば大丈夫と考えていたが、どこにいるのか分からず、こちらの想定をはるかに上回る力を持った相手では対処のしようがなかった。
ここまで読んだ方はおわかりだろうが、魔物娘たちは架空の存在であるスーパーヒーローたちを実在の人物と思い込んでいた。
彼女たちのメンタリティが子供並みというわけではなく、特撮やSFXのことを全く知らないのでDVD等で見た映画を本当の話だと思い込んでしまったのだ。
図鑑世界のことを全く知らないこちらの世界の普通の人間が、もし魔物娘が魔法を使う映像を見たら、良くできたSFXだなと思うのと同じことだ。
暗い雰囲気の中、日本に潜入していた稲荷が報告を始めた、日本という国は図鑑世界のジパングと似ているところが多いので、ジパング出身の彼女が担当した。
「日本の軍隊…彼らは自衛隊と呼んでいますが、我々に対抗できる装備が無い、指揮系統が総理大臣に一元化されていて、そこを押さえれば勝てるというところはアメリカと同じです」
彼女の顔はあまり明るそうには見えなかった。
「じゃあ日本は大丈夫っていうこと?」
デュラハンの報告で暗くなった雰囲気を何とかしたいと思ったリリムにとって藁をもつかむ思いだった。
「この国はかなり前から何度も、この国の征服をたくらむ秘密組織と戦ってきました。秘密組織と戦うのは警察や自衛隊とは異なる団体で一般に『スーパー戦隊』と呼ばれています。複数あって『ゴレンジャー』というのが良く知られています」
リリムは稲荷の口調が朗報を知らせるものではないことに気付いた。
「このスーパー戦隊も記録映像はたくさんあります、それらによると5人一組で戦うことが多いです、問題は使用ずる武器が警察や自衛隊でさえ使用していない特殊な武器が多いことです、中には巨大ロボットに乗って戦うのもあります。これらの武器や兵器は先ほどのスーパーマンと同じくこの世界の科学では説明できません」
「それらのスーパー戦隊は日本の政府のどの組織でどこにあるのかというのは分かった?」
個人で戦うことが多いスーパーヒーローと異なり団体のスーパー戦隊なら具体的にどういう組織なのかはすぐ分かるだろうとリリムは考えた。
「わかりませんでした。どこにあるのか、どういう指揮系統なのか、予算はどこから出ているのか、使用している武器等の技術はどうやって開発されたのか。これらの情報が一切秘匿されているのに、記録映像が簡単に手に入るのはどうしても説明できないのです」
稲荷は説明を続けた。
「ただ唯一判明したのは、スーパー戦隊が敵の主力と戦う場所が特定できたことです。すでに使われていない石切り場ですがかなりの頻度でそこで戦います。念のため行ってはみましたが何も有効な情報はつかめませんでした」
デュラハンの報告したスーパーヒーローとは異なる強敵の存在に魔物娘たちは沈黙してしまった。
「みんな、そんなに暗くなる必要はないわ、私たちには魔法がある。この世界においては使われていない力よ、知られていないのだから、それだけでもとても有利な位置にいるのよ」
暗い雰囲気を何とかしようとリリムは魔法による自分たちの優位性を説いた。
彼女たちはこちらの世界に来る前に、こちらの世界から図鑑世界に来てしまった人間たちに、こちらの世界についていろいろ尋ねた。
彼らにとって、図鑑世界に来て一番驚いたのは魔物娘の存在だが、二番目は魔法の存在だった、魔法は元いた世界では実在しないもの、あるいはとっくの昔に滅んでしまったものと考えられていた。
リリムの言葉でその場の雰囲気が少し明るくなりかけた。
「そうはいかぬのだリリム殿、今度は儂の報告も聞いてくれぬか」
イギリスに潜入していたバフォメットが話し始めた。
「儂も魔法はこの世界では実在しないものだと思っていたがな、それは間違っていたのじゃ。この国にはホグワーツ魔法魔術学校というかなり規模の大きい魔法を教える学校があるのじゃ、教員や施設の質はとても高く、教団の魔術学校に勝るとも劣りはせぬ」
魔物娘たちはまたざわめきだした、事前に得た情報とは全く異なることを知って大いに動揺した。
リリムはあわててバフォメットに尋ねた。
「その学校の場所とかは分かるの?」
「残念ながらそれは分からなかった、じゃが、行く方法は分かったのじゃ。イギリスの首都ロンドンあるキングス・クロス駅から専用の鉄道に乗って行くことができるのじゃ」
「じゃあ行ってみたの?」
「記録映像によると、その鉄道の専用ホームは普通の人間には気づかれぬように魔法で隠されているとのことじゃ」
「ならすぐ見つかるわね」
このバフォメットは建物等を隠匿する魔法に関しては、図鑑世界では有数の専門家だった。
「それがの、キングス・クロス駅に行っていくら調べても魔法の痕跡すら見つけることができなかったのじゃ」
またざわめきが上がった、彼女に見つけられなかったということは、隠匿魔法をかけた者はもっと巧妙な魔法を使うということになるからだ。
「この世界の魔法使いたちの戦闘力はどれくらいなの?」
「それについても記録映像がかなり有るのじゃ。ほんの数年前にある邪悪な魔法使いが彼らを支配しようとして、死人が出るほどの激しい戦いが起きた、戦争と言ってよいくらいじゃな。儂の見るところでは教団の勇者や魔法使いよりははるかに上じゃ、ひょっとしたら我々より強いかもしれぬ」
今度は悲鳴が上がった、こちら側が有利な条件がほとんどなくなるということは最悪敗北もあるということになる。
仲間たちの不安な視線を浴びたリリムは全面撤退を決断した、反対意見は出なかった。
「お母様がこの世界への進入を禁止したのは、このことを知っていたからなのね」
こちらの世界に潜入したことは彼女の母親である魔王には知られていないはずなので、仲間たちを口止めすれば大丈夫なはずだとリリムは考えた。
こちらの世界では神界、もしくは天界と呼ばれる場所で、そこの主が部下から報告を受けていた。
「報告します、我々の世界に侵入した魔物娘の一団はすべて元の世界へ撤退しました」
「ぎりぎりだったな、3日後には彼女らを一斉に拘束する予定だったのだが中止だ」
「御意にござります、ただちに連絡します」
「だが今回の件が不可侵協定違反であることは変わらぬ、なるべく早く魔王に面会して厳重な抗議を行うように、関係者を厳罰に処すことも要請するようにな」
「御意にござります、すみやかに準備します」
「それにしても彼女らの行動には不可解な点が多いな、はじめのうちは各国の政治体制や警察、軍隊などを調べていたのだが、途中から引きこもってDVD等をひたすらみていたのだな?」
「そのとおりでございます、主にSF、特撮、ファンタジーといったジャンルです。中には作品に関連した聖地巡礼をおこなう者もいました」
「聖地巡礼?エルサレムやメッカにでも行ったのかね?」
「失礼しました、間違った意味で使いました」
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15/01/26 23:12更新 / キープ