断る!
「あああぁぁ!」
『天使憑依』の力で動かしている人形を次々に蹴り倒す。休日が終わってからずっと続けていることだが―
「動きが乱れておるぞ、タツキ。」
「はぁ、はぁ、はぁ、解かっている・・・!」
あの日以来頭の中はぐちゃぐちゃで、まったく思考がまとまらない。死んだはずの南雲由紀は生きており、しかも魔物だったという。だが、現教団のトップであり、私とは文字通り対極の存在である。
「うああぁぁ!!」
ひたすらに人形を蹴り続ける。残念ながら、今の私はこうでもしていないと、発狂してしまいかねない。前ならば迷うことなく、南雲の提案を呑んだが―
「無理するなよ。」
「・・・水。」
「ZZZzzz...」
一名を除いて、今では家族同然にも思える魔物たちを切り捨てることは出来ない。一週間。一週間ですべてを決めなければ―
―「ボクの仲間になってほしい。」
「・・・・・・。」
教団の教主となっている南雲由紀。いろいろ聞きたいことがあるが―
「―何故、魔物を消そうとする。」
ここが重要だ。
「今のキミには関係あるまい?でもまあ、教団サイドに来るなら、一晩中講釈してあげてもいいくらいだ。」
両手を広げ天を仰ぐ南雲。やはり、そう簡単には教えるつもりは無いか。ならば―
「断ったらどうする?」
「そうだね・・・。」
ふっと笑う南雲。
「―まず、キミがいるお城の子たちに、消えてもらうかな。次はそうだね、親魔物派の都市を一つ一つ、地図から消そうかな?」
言っている内容は荒唐無稽、口ぶりもたいしたことではなさそうだが―奴の目は本気だ。
「・・・私以外でも、優れた人間は多々いる。何故私なのだ?」
「前に言っただろう?キミとボクの二人で十分。これ以上は人手の無駄だ。」
「―待ちなさいよ。」
後ろから現れるメドゥーサ。名前聞いてなかったな。
「随分と教主様ともあろう御方が、執心なさっているわね。どういうつもりかしら?」
「残念だが、魔物に講釈するような言葉は持ち合わせていなくてね。」
「そういうあんただって魔物でしょう。」
「キミたちとはランクが違うんだよ。」
どんどん剣呑な空気をかもし出すメドゥーサ。ゴブリンたちは完全にひるんでしまっているが。
「ま、いいか、タツキ君。キミに一週間の執行猶予をあげよう。一週間後、『空際の祭壇』にキミと、ゲスト達を連れて行くから、そのときに答えを聞かせてくれ。」
そういって立ち去る南雲由紀を、見送ることしか出来なかった。
―「一週間、一週間のお。」
このことは当然五強の連中には話してある。
「タツキ。お前はどうしたいんだ・・・?」
不安げな目で見てくるバハムート。そんなの私にも解からない。いや、そういって結論から目を逸らしてはいけないな。
「・・・仲間になるつもりは無い。だが―奴の側近の精霊共をどうにかしないことには。」
サシでの勝負は相当きついだろう。一体どうすれば―
「・・・ウンディーネは私が。」
「スピア・・・?」
何を言っているんだ?
「バカじゃの、そんな奴らワシらにかかればチョチョイのチョイのチョイじゃ。」
チョイが多い。それより―
「これは私の問題だ。キミらには関係ない。」
「冷たい事言うなよタツキ。私と君の仲だろう?」
顔を覗き込んでくるバハムート。・・・いかん交わったときのことを思い出して―
「・・・・・・。」
「な、なに顔を赤らめている!」
マズイ、今更だが、顔を直視できない・・・!
「フン、ニンゲン風情が。お前は教主を殺る方法でも考えておけ。」
「会長!ご飯です!」
「おにぃちゃん!差し入れ!」
・・・教主を倒す方法か・・・。きっと『天使憑依』である程度は戦えるだろうが、それ以前に、南雲由紀の種族がわかれば対策は立てやすい。まあ、あれほどのカリスマ性だ。大方『サキュバス』か『リリム』で男共を誘惑しているのだろう。あいつが一番取りそうな方法だし。
「フッ・・・。」
いい方法を思いついた。だが、万が一『サキュバス』か『リリム』でなかったときのリスクは高いが・・・。
「―やる価値はあるか。」
今の私は一人ではない。少なくとも、慕ってくれている人が(魔物がほとんどだが)いるのだから、ぐちぐち悩まず、やれることを、やれるだけやろう!
―タツキめ、ようやくらしさを取り戻したな。まったく、世話の焼ける。
「バハムート、お前はどうするのだ?」
「何がだ?シルヴィア。」
まったく、人の感傷の邪魔をするとは。
「精霊の相手だ。恐らく、サシで戦うことになるだろうからな。」
確かに、いくら精霊とはいえ、選ばれた『王(王女か)』なのだ。生半可な力では勝てないだろう。
「そういうお前はどうなのだ?」
「ハンッ、ヘルゴールド家の力を舐めるなよ。今のままでも十二分に楽勝だ。」
・・・あいかわらず、無駄に凄い自信だ。
「・・・・・・。」
タツキを見る。ちょうど奴も私を見て―私たちの間に言葉は要らなかった。
―一週間後―
「さて、ここが『空際の祭壇』だ。ボクとタツキ君、プラスゲスト諸君も集まったね。」
周囲を見回す南雲由紀。
「―それじゃあ、返事を聞こうか、タツキ君。キミが僕らと共に―」
「断る!」
聞き間違えの無いくらい大きな声で言った。もう、後には戻れない。
「―まあ、そういうと思ったよ。だからこそ、ボクとキミはゲストを招いたんだ。」
南雲の後ろにいるのが、精霊か・・・?
「まあ、ぶっちゃけ言うと、キミのいる城を落とせば、後はどうって事無いからね、少しゲームをしようと思ってね。」
「ゲームだと?」
訝しげな表情をするバハムート。まあ、私にも奴の意図が見えないから、似たような表情をしているのだろう。
「なに、このルーレットを回して、ボクら『教団チーム』と『クーデターチーム』で、世界の支配権を争おうって訳だよ。」
・・・・・・?
「ルールはルーレットで選ばれたフィールドで、選ばれた『教団チーム』と『クーデターチーム』の者が一騎打ちをする。三勝した方が勝ちって言う簡単なゲームだ。」
「随分舐められたものだな。」
「そんなこと無いさ。これはいわば、キミたちにとって一世一度の大チャンスなんだぜ?」
確かにそうだ。下手に雑魚を相手にして無駄な消費をするより確実だ。・・・というより、あくまでも私たちの扱いは『クーデター』なのか・・・。
「―私たちが勝ったら、どんな特典つきなんだ?」
「ボク達五人は今後一切、魔物と人の関係を絶つまねはしない―教団を解散させる。」
「「「何!?」」」
バカな!いくらなんでも条件がよすぎる。何か裏があるのか・・・?
「じゃあ、早速はじめようか。ちなみにキミらがまけた場合は、―全世界の魔物を残らず抹消する。」
―まあ、対価としては同等な条件だろう。なにより、こちらははなから負ける気は無い!
「行くぜ、ルーレット!」
凄い速さで回り始めるルーレット。誰もが見守る中、最初の対戦カードが決定された―
「―記念すべき第一戦!デュラハンのスピアVS,ウンディーネのレイン。フィールドは『大雷岩(だいらいがん)』だ。」
大雷岩・・・?
「チャンスじゃな。」
「大雷岩ってどこだ?」
「遥か北方にある、雷鳴区域の天然の立方体の岩だ。ところどころに円錐状の柱があり、不規則に電気を撒き散らす岩だ。」
「迷惑極まりない岩だな。だが―」
相手はウンディーネ。確かにこれはチャンスだ。
「それじゃ、ワープオーブに入ってくれ。」
指名されたスピアと、レインはオーブに入り―一瞬の光の後に消えた。
「それじゃあ、ボクらは今回は観戦だね。」
ガラス張りだった周囲に『大雷岩』が映し出される。激しい雨と、絶え間ない雷鳴が鳴り響いており、かなり天候は荒れているようだ。
「今日は比較的に静かだな。」
「あれで静かなのか!?」
そんなバカな!?970ヘクトパスカルと言われても、『もっと気圧低いだろ!』といいたくなるような悪天候だぞ!?
「それじゃあ、いくよ―」
立ち上がり、静かに目を閉じる南雲由紀。そしてゆっくりと瞳を開け―
「『教団サイド』レインVS,『クーデターサイド』スピア。試合開始!!」
戦いの火蓋は切って落とされた。
『天使憑依』の力で動かしている人形を次々に蹴り倒す。休日が終わってからずっと続けていることだが―
「動きが乱れておるぞ、タツキ。」
「はぁ、はぁ、はぁ、解かっている・・・!」
あの日以来頭の中はぐちゃぐちゃで、まったく思考がまとまらない。死んだはずの南雲由紀は生きており、しかも魔物だったという。だが、現教団のトップであり、私とは文字通り対極の存在である。
「うああぁぁ!!」
ひたすらに人形を蹴り続ける。残念ながら、今の私はこうでもしていないと、発狂してしまいかねない。前ならば迷うことなく、南雲の提案を呑んだが―
「無理するなよ。」
「・・・水。」
「ZZZzzz...」
一名を除いて、今では家族同然にも思える魔物たちを切り捨てることは出来ない。一週間。一週間ですべてを決めなければ―
―「ボクの仲間になってほしい。」
「・・・・・・。」
教団の教主となっている南雲由紀。いろいろ聞きたいことがあるが―
「―何故、魔物を消そうとする。」
ここが重要だ。
「今のキミには関係あるまい?でもまあ、教団サイドに来るなら、一晩中講釈してあげてもいいくらいだ。」
両手を広げ天を仰ぐ南雲。やはり、そう簡単には教えるつもりは無いか。ならば―
「断ったらどうする?」
「そうだね・・・。」
ふっと笑う南雲。
「―まず、キミがいるお城の子たちに、消えてもらうかな。次はそうだね、親魔物派の都市を一つ一つ、地図から消そうかな?」
言っている内容は荒唐無稽、口ぶりもたいしたことではなさそうだが―奴の目は本気だ。
「・・・私以外でも、優れた人間は多々いる。何故私なのだ?」
「前に言っただろう?キミとボクの二人で十分。これ以上は人手の無駄だ。」
「―待ちなさいよ。」
後ろから現れるメドゥーサ。名前聞いてなかったな。
「随分と教主様ともあろう御方が、執心なさっているわね。どういうつもりかしら?」
「残念だが、魔物に講釈するような言葉は持ち合わせていなくてね。」
「そういうあんただって魔物でしょう。」
「キミたちとはランクが違うんだよ。」
どんどん剣呑な空気をかもし出すメドゥーサ。ゴブリンたちは完全にひるんでしまっているが。
「ま、いいか、タツキ君。キミに一週間の執行猶予をあげよう。一週間後、『空際の祭壇』にキミと、ゲスト達を連れて行くから、そのときに答えを聞かせてくれ。」
そういって立ち去る南雲由紀を、見送ることしか出来なかった。
―「一週間、一週間のお。」
このことは当然五強の連中には話してある。
「タツキ。お前はどうしたいんだ・・・?」
不安げな目で見てくるバハムート。そんなの私にも解からない。いや、そういって結論から目を逸らしてはいけないな。
「・・・仲間になるつもりは無い。だが―奴の側近の精霊共をどうにかしないことには。」
サシでの勝負は相当きついだろう。一体どうすれば―
「・・・ウンディーネは私が。」
「スピア・・・?」
何を言っているんだ?
「バカじゃの、そんな奴らワシらにかかればチョチョイのチョイのチョイじゃ。」
チョイが多い。それより―
「これは私の問題だ。キミらには関係ない。」
「冷たい事言うなよタツキ。私と君の仲だろう?」
顔を覗き込んでくるバハムート。・・・いかん交わったときのことを思い出して―
「・・・・・・。」
「な、なに顔を赤らめている!」
マズイ、今更だが、顔を直視できない・・・!
「フン、ニンゲン風情が。お前は教主を殺る方法でも考えておけ。」
「会長!ご飯です!」
「おにぃちゃん!差し入れ!」
・・・教主を倒す方法か・・・。きっと『天使憑依』である程度は戦えるだろうが、それ以前に、南雲由紀の種族がわかれば対策は立てやすい。まあ、あれほどのカリスマ性だ。大方『サキュバス』か『リリム』で男共を誘惑しているのだろう。あいつが一番取りそうな方法だし。
「フッ・・・。」
いい方法を思いついた。だが、万が一『サキュバス』か『リリム』でなかったときのリスクは高いが・・・。
「―やる価値はあるか。」
今の私は一人ではない。少なくとも、慕ってくれている人が(魔物がほとんどだが)いるのだから、ぐちぐち悩まず、やれることを、やれるだけやろう!
―タツキめ、ようやくらしさを取り戻したな。まったく、世話の焼ける。
「バハムート、お前はどうするのだ?」
「何がだ?シルヴィア。」
まったく、人の感傷の邪魔をするとは。
「精霊の相手だ。恐らく、サシで戦うことになるだろうからな。」
確かに、いくら精霊とはいえ、選ばれた『王(王女か)』なのだ。生半可な力では勝てないだろう。
「そういうお前はどうなのだ?」
「ハンッ、ヘルゴールド家の力を舐めるなよ。今のままでも十二分に楽勝だ。」
・・・あいかわらず、無駄に凄い自信だ。
「・・・・・・。」
タツキを見る。ちょうど奴も私を見て―私たちの間に言葉は要らなかった。
―一週間後―
「さて、ここが『空際の祭壇』だ。ボクとタツキ君、プラスゲスト諸君も集まったね。」
周囲を見回す南雲由紀。
「―それじゃあ、返事を聞こうか、タツキ君。キミが僕らと共に―」
「断る!」
聞き間違えの無いくらい大きな声で言った。もう、後には戻れない。
「―まあ、そういうと思ったよ。だからこそ、ボクとキミはゲストを招いたんだ。」
南雲の後ろにいるのが、精霊か・・・?
「まあ、ぶっちゃけ言うと、キミのいる城を落とせば、後はどうって事無いからね、少しゲームをしようと思ってね。」
「ゲームだと?」
訝しげな表情をするバハムート。まあ、私にも奴の意図が見えないから、似たような表情をしているのだろう。
「なに、このルーレットを回して、ボクら『教団チーム』と『クーデターチーム』で、世界の支配権を争おうって訳だよ。」
・・・・・・?
「ルールはルーレットで選ばれたフィールドで、選ばれた『教団チーム』と『クーデターチーム』の者が一騎打ちをする。三勝した方が勝ちって言う簡単なゲームだ。」
「随分舐められたものだな。」
「そんなこと無いさ。これはいわば、キミたちにとって一世一度の大チャンスなんだぜ?」
確かにそうだ。下手に雑魚を相手にして無駄な消費をするより確実だ。・・・というより、あくまでも私たちの扱いは『クーデター』なのか・・・。
「―私たちが勝ったら、どんな特典つきなんだ?」
「ボク達五人は今後一切、魔物と人の関係を絶つまねはしない―教団を解散させる。」
「「「何!?」」」
バカな!いくらなんでも条件がよすぎる。何か裏があるのか・・・?
「じゃあ、早速はじめようか。ちなみにキミらがまけた場合は、―全世界の魔物を残らず抹消する。」
―まあ、対価としては同等な条件だろう。なにより、こちらははなから負ける気は無い!
「行くぜ、ルーレット!」
凄い速さで回り始めるルーレット。誰もが見守る中、最初の対戦カードが決定された―
「―記念すべき第一戦!デュラハンのスピアVS,ウンディーネのレイン。フィールドは『大雷岩(だいらいがん)』だ。」
大雷岩・・・?
「チャンスじゃな。」
「大雷岩ってどこだ?」
「遥か北方にある、雷鳴区域の天然の立方体の岩だ。ところどころに円錐状の柱があり、不規則に電気を撒き散らす岩だ。」
「迷惑極まりない岩だな。だが―」
相手はウンディーネ。確かにこれはチャンスだ。
「それじゃ、ワープオーブに入ってくれ。」
指名されたスピアと、レインはオーブに入り―一瞬の光の後に消えた。
「それじゃあ、ボクらは今回は観戦だね。」
ガラス張りだった周囲に『大雷岩』が映し出される。激しい雨と、絶え間ない雷鳴が鳴り響いており、かなり天候は荒れているようだ。
「今日は比較的に静かだな。」
「あれで静かなのか!?」
そんなバカな!?970ヘクトパスカルと言われても、『もっと気圧低いだろ!』といいたくなるような悪天候だぞ!?
「それじゃあ、いくよ―」
立ち上がり、静かに目を閉じる南雲由紀。そしてゆっくりと瞳を開け―
「『教団サイド』レインVS,『クーデターサイド』スピア。試合開始!!」
戦いの火蓋は切って落とされた。
11/05/19 00:02更新 / ああああ
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