そこで改心するな!
「あ、暑い・・・。」
「オアシスはまだなのぉ?」
「おにぃちゃん、暑くて死んじゃう・・・。」
「・・・?」
「何でお前がここにいる。」
ジパング・・・もとい日本に帰る手がかりが、最近発見された砂漠の『パトラ王の遺跡』にあるという情報を聞いて、ここまで来たのだが、いつの間にか義妹もついてきていた。・・・どうやってきたか非常に気になる。
「・・・っていうか、何であなた達は平気なのよ・・・。」
玉のような汗を浮かべたマリア。いつになくだらけている。
「・・・鎧の効果。」
「『黒き帳』の特性。」
そう、私―東雲龍紀の着ている長ランは、外部からのダメージだけでなく、体温まで一定に保てるようになっていた。そのため、砂漠にいる現在でも、非常に快適である。
「うう・・・。」
クロは、一つしかない眼の焦点が定まっていない。この服を貸そうか―
「あつっ!」
―やはりやめておこう、決してウソだと思ったら予想以上の暑さだったわけではない。そう、これは準備をしてこなかった彼女らに責任があるのだ。
「うう、おにぃちゃん・・・。」
今、義妹のほうを見てはいけない。奴の特殊能力、『おねだりの瞳(シスター・チャーム)』を回避するすべを私はまだ知らないのだから。下手に眼を合わせたら、奴の言いなりになってしまう。決してシスコンではない。
「・・・オアシス。」
本当だ。目の前にはオアシスと中心とした町が広がっている。ここを拠点に遺跡の位置を調べ、調査するのがいいだろう。
「ここも、親魔物地域みたいね。」
「ああ。」
いたるところに魔物がいる。地域が違うとここまで変わるものか。とりあいず、宿の確保―
「おい、どこ見て歩いてんだ!」
「―うん?」
きがつくと、緑色の肌の魔物と肩がぶつかっていたようだ。
「すまない。少し考え事をしていたもので。」
「すまないで済むかよ。」
何なんだ?こちらは誠意を持って謝っているのに。
「―腕の一本は覚悟しなぁ!」
「はあ。」
さすがオーガ(だったはず)。でもまあ―
「私の『新兵器』のテストにはちょうどいいな!」
『驚天動地の靴(ガイア・ブーツ)』は威力こそテストをしたが(震脚一発で終わったが)、実践はまだしたことがない。いい機会だ。
「うらああぁぁ!」
巨大な斧を振り上げてくるオーガ。
「お、おにぃちゃん!?」
「・・・邪魔しちゃダメ。」
半泣きの妹をあやしているスピア。・・・根はいい子なんだよな。スピアは。
「さて―」
この『驚天動地の靴』は基本的に脚にかかる重力を操れるらしい。つまり、最も効果的な攻撃は、上から踏みつけることだ。また、あくまでも『脚にかかる重力』が操れるので、おそらくハイキックなどでは、いまいち効果を発揮できないだろう。
「フンヌ!」
斧をめちゃくちゃに振り回すオーガ。それに呼吸を合わせて体を少しずらす程度の動作で回避。この暑さと、オーバーに武器を振り回していることもあり、オーガは早くも汗をかき始めている。対する私は、『黒き帳』で快適なままである。
「はあ、はあ、はあ、ちょこまかしやがって・・・!」
恨めしそうににらんでくるオーガ。凄い勢いで体力が減っているのが判る。
「そろそろ反撃するか。」
軽くバックステップで距離をとる。そして、それに追いすがってきたオーガに脚払いをかけ、鳩尾に踵落しを打ち込む(特に重力を操作していない)。
「ウグゥ!?」
いくらオーガでも、女性に攻撃するのは気乗りしなかったな―
「オラァ!」
「危なっ!」
さすがオーガ。まだ意識があったとは・・・!
「・・・気が変わった。テメェは徹底的に犯してやる、小娘!」
・・・男だけどね。
「・・・私は男だ。」
「「「なにぃ!?」」」
何故そこで周囲の部外者まで驚くんだ!?
「へへへ。最近男を喰ってないからな、丁度いいぜ。」
「何度来ようが、地に沈めてやろう。」
一定の距離をキープしてオーガに対峙する。いくら女でも、体格、力では向こうのほうが圧倒的だ。
「どうした?攻めてこねぇのか?」
挑発するように嫌らし笑みを浮かべるオーガ。このオーガ、すこしは頭が働くようだ。
「おにぃちゃん!危ないよ!」
「・・・だとよ?『おにぃちゃん』?」
私をバカにしているのか?まあ、いいか、向こうが来ないというなら―
「お、おいてめぇ!どこ行きやがる!」
「そっちが振ってきた喧嘩だし、そっちが来ないなら、長居は無用だ。」
―ウザいくらいの正論をかざせば、向こうも来るだろう。
「このヤロウ!」
姿勢を低くして、突進してくるオーガ。斧は捨てたようで、先程より遥かに早い。だが―
「―別に、見切れないほどじゃないな。」
突っ込んできたオーガの肩の部分に斜めに踵落しを当てる。そのままオーガは私の体の左ぎりぎりに軌道がそらされ、派手に顔面から地面に突っ込んだ。
「ガッ・・・ゴホッ・・・テメェ・・・人間か!?」
「生物学上は。」
周囲の奴らも、さすがに驚いているようだ。まあ、私にすればホンの肩鳴らし程度・・・いや、足技しか使ってないか。
「ヘッ・・・なおさら、テメェを犯したくなったぜ!」
タフだと聞いていたが、限度があるだろう。いや、今までの奴らが軟弱すぎたのか?・・・しょうがない。
「―少々、本気を出すか。」
つま先立ちし、左足に重心を置く。後は突っ込んでくる相手に合わせ蹴りこむだけだ。
「そう何度も食らうかよ!」
急停止し、こちらが蹴りこむのを待つ気だろうか?フッその考え、カカオ99%チョコレートより甘い!
ズウゥゥン!
「うお!なんだ!?」
―左足に重心を置いていたことで、利き脚で震脚が使える。そして、オーガは体勢を崩しているから―
「攻撃を当てるなど、造作もない。」
オーガの腹部に、手刀を突きこむ。
「カハアッ!」
やっと気を失ったか。如何せんタフだったな。
『お、おい、あいつクェーラを倒したぞ・・・!』
『何者だ・・・?』
このオーガ、クェーラって言うのか。・・・そろそろ宿屋を―
「待ち・・・やがれ・・・!」
・・・・・・・・・。
「・・・・・・。」
再び立ち上がるオーガ―もとい、クェーラ。タフすぎるだろう。
「・・・いい加減にして。」
「スピア?」
『任せて』とアイコンタクトを送ってくるスピア。どうする気なのだ?
「そこ・・・どけぇ・・・!」
眼の焦点があってない。さすがにやり過ぎたか・・・?
「・・・これ以上、ハネムーンの邪魔をするなら、五体バラバラにする。」
「な・・・ハネムーン・・・!?」
え?何言ってるのこの首なし騎士は。
「違うって言っただろう!?まだそのつもりだったのか!?」
「そうか・・・邪魔してすまなかった。」
「おおい!そこで改心するな!案外、いい奴ということはわかったが!」
「・・・大声出さない。」
「誰がそうさせているんだ!」
「随分女を連れているようだが?」
「・・・夫はプレイボーイ。」
「違う!そして、何故お前はそれを、誇らしげに!?」
「否定してるぞ。」
「・・・照れ屋な可愛い夫。」
「私が正妻よ。」
「マリア!キサマさっきまで他人のフリをしていただろう!人が追い詰められているときに、戻ってくるな!」
「やあねえ。冷たい亭主。これが冷えた家庭かしら?」
「何なんだお前ら!何しに来たんだ!?」
「・・・正妻は私。」
「誰か話を聞け!」
「ま、こんだけ女をたらしこんでるんだ。精力も凄いのか?」
「ええもう。毎日やっても、濃くてドロリとしてて―」
「ウソをつくな!私はまだ未経験だ!」
「未経験・・・?ゴクリ。なかなかその顔立ちで未経験な奴は・・・。」
「・・・夫はプラトニック。」
「どんどん話をややこしくするな!」
『なんだなんだ?楽しそうだな。』
『私たちも混ぜろ。』
「天使と悪魔!?まだいたの!?」
「・・・今日から毎日、夫と子作り。」
『よかったな。』
『いいもんか!折角義妹もこっちに来たんだ!義妹との背徳恋愛を―』
「・・・・・・。」
なんか、もうどうでもいいや。誰も話し聞いてくれないし。早く用事済ませて帰ろう。うん、それがいい。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
「・・・待って。」
「折角『驚天動地の靴』のテストのいい機会だったのに・・・。」
「ふえ?あ、待ってください!」
そのまま、宿屋に直行し、夕飯を食べる気力すら削がれた私は、そのまま眠りについた。明日からの本格的調査に向けて―。
―タツキ君も大変だな。わざわざもとの世界に帰るために砂漠まで来て。まあ、見ているボクとしては十二分に楽しい。だが―
『・・・大丈夫?顔が虚ろ。』
『ほら、しっかりしなさいよ。』
―どうにも、タツキ君に絡んでいる奴らが目障りだ。
「教主様。どうしたんだ?」
「別に。」
そういって、契約したイグニスに返事をする。
「なんなら、あの人間以外オレがや殺ってきてやるぜ?」
いくらイグニスという精霊の『王』であっても、好戦的なことに代わりはないか。
「それより、ジパングへの資料はちゃんと取ってきたの?」
「カンペキ。」
そういって、分厚い本をよこしてくる。確かに本物だ。
「だが、教主様もあの男が気に入ってるなら、直接赴けばいいじゃねえか。ましてや、今の教主様は―」
「おっと、それ以上は言っちゃ駄目だぜ。」
何より、タツキ君自身にきてもらうことに意味があるのだから。
「ふうん、で、あの魔物共は、どうする?」
「そのうち、嫌でも僕のところに来るだろうから、そのときまではほっとけばいいさ。」
そのうちに、タツキ君はボクの仲間になるのだから―
「オアシスはまだなのぉ?」
「おにぃちゃん、暑くて死んじゃう・・・。」
「・・・?」
「何でお前がここにいる。」
ジパング・・・もとい日本に帰る手がかりが、最近発見された砂漠の『パトラ王の遺跡』にあるという情報を聞いて、ここまで来たのだが、いつの間にか義妹もついてきていた。・・・どうやってきたか非常に気になる。
「・・・っていうか、何であなた達は平気なのよ・・・。」
玉のような汗を浮かべたマリア。いつになくだらけている。
「・・・鎧の効果。」
「『黒き帳』の特性。」
そう、私―東雲龍紀の着ている長ランは、外部からのダメージだけでなく、体温まで一定に保てるようになっていた。そのため、砂漠にいる現在でも、非常に快適である。
「うう・・・。」
クロは、一つしかない眼の焦点が定まっていない。この服を貸そうか―
「あつっ!」
―やはりやめておこう、決してウソだと思ったら予想以上の暑さだったわけではない。そう、これは準備をしてこなかった彼女らに責任があるのだ。
「うう、おにぃちゃん・・・。」
今、義妹のほうを見てはいけない。奴の特殊能力、『おねだりの瞳(シスター・チャーム)』を回避するすべを私はまだ知らないのだから。下手に眼を合わせたら、奴の言いなりになってしまう。決してシスコンではない。
「・・・オアシス。」
本当だ。目の前にはオアシスと中心とした町が広がっている。ここを拠点に遺跡の位置を調べ、調査するのがいいだろう。
「ここも、親魔物地域みたいね。」
「ああ。」
いたるところに魔物がいる。地域が違うとここまで変わるものか。とりあいず、宿の確保―
「おい、どこ見て歩いてんだ!」
「―うん?」
きがつくと、緑色の肌の魔物と肩がぶつかっていたようだ。
「すまない。少し考え事をしていたもので。」
「すまないで済むかよ。」
何なんだ?こちらは誠意を持って謝っているのに。
「―腕の一本は覚悟しなぁ!」
「はあ。」
さすがオーガ(だったはず)。でもまあ―
「私の『新兵器』のテストにはちょうどいいな!」
『驚天動地の靴(ガイア・ブーツ)』は威力こそテストをしたが(震脚一発で終わったが)、実践はまだしたことがない。いい機会だ。
「うらああぁぁ!」
巨大な斧を振り上げてくるオーガ。
「お、おにぃちゃん!?」
「・・・邪魔しちゃダメ。」
半泣きの妹をあやしているスピア。・・・根はいい子なんだよな。スピアは。
「さて―」
この『驚天動地の靴』は基本的に脚にかかる重力を操れるらしい。つまり、最も効果的な攻撃は、上から踏みつけることだ。また、あくまでも『脚にかかる重力』が操れるので、おそらくハイキックなどでは、いまいち効果を発揮できないだろう。
「フンヌ!」
斧をめちゃくちゃに振り回すオーガ。それに呼吸を合わせて体を少しずらす程度の動作で回避。この暑さと、オーバーに武器を振り回していることもあり、オーガは早くも汗をかき始めている。対する私は、『黒き帳』で快適なままである。
「はあ、はあ、はあ、ちょこまかしやがって・・・!」
恨めしそうににらんでくるオーガ。凄い勢いで体力が減っているのが判る。
「そろそろ反撃するか。」
軽くバックステップで距離をとる。そして、それに追いすがってきたオーガに脚払いをかけ、鳩尾に踵落しを打ち込む(特に重力を操作していない)。
「ウグゥ!?」
いくらオーガでも、女性に攻撃するのは気乗りしなかったな―
「オラァ!」
「危なっ!」
さすがオーガ。まだ意識があったとは・・・!
「・・・気が変わった。テメェは徹底的に犯してやる、小娘!」
・・・男だけどね。
「・・・私は男だ。」
「「「なにぃ!?」」」
何故そこで周囲の部外者まで驚くんだ!?
「へへへ。最近男を喰ってないからな、丁度いいぜ。」
「何度来ようが、地に沈めてやろう。」
一定の距離をキープしてオーガに対峙する。いくら女でも、体格、力では向こうのほうが圧倒的だ。
「どうした?攻めてこねぇのか?」
挑発するように嫌らし笑みを浮かべるオーガ。このオーガ、すこしは頭が働くようだ。
「おにぃちゃん!危ないよ!」
「・・・だとよ?『おにぃちゃん』?」
私をバカにしているのか?まあ、いいか、向こうが来ないというなら―
「お、おいてめぇ!どこ行きやがる!」
「そっちが振ってきた喧嘩だし、そっちが来ないなら、長居は無用だ。」
―ウザいくらいの正論をかざせば、向こうも来るだろう。
「このヤロウ!」
姿勢を低くして、突進してくるオーガ。斧は捨てたようで、先程より遥かに早い。だが―
「―別に、見切れないほどじゃないな。」
突っ込んできたオーガの肩の部分に斜めに踵落しを当てる。そのままオーガは私の体の左ぎりぎりに軌道がそらされ、派手に顔面から地面に突っ込んだ。
「ガッ・・・ゴホッ・・・テメェ・・・人間か!?」
「生物学上は。」
周囲の奴らも、さすがに驚いているようだ。まあ、私にすればホンの肩鳴らし程度・・・いや、足技しか使ってないか。
「ヘッ・・・なおさら、テメェを犯したくなったぜ!」
タフだと聞いていたが、限度があるだろう。いや、今までの奴らが軟弱すぎたのか?・・・しょうがない。
「―少々、本気を出すか。」
つま先立ちし、左足に重心を置く。後は突っ込んでくる相手に合わせ蹴りこむだけだ。
「そう何度も食らうかよ!」
急停止し、こちらが蹴りこむのを待つ気だろうか?フッその考え、カカオ99%チョコレートより甘い!
ズウゥゥン!
「うお!なんだ!?」
―左足に重心を置いていたことで、利き脚で震脚が使える。そして、オーガは体勢を崩しているから―
「攻撃を当てるなど、造作もない。」
オーガの腹部に、手刀を突きこむ。
「カハアッ!」
やっと気を失ったか。如何せんタフだったな。
『お、おい、あいつクェーラを倒したぞ・・・!』
『何者だ・・・?』
このオーガ、クェーラって言うのか。・・・そろそろ宿屋を―
「待ち・・・やがれ・・・!」
・・・・・・・・・。
「・・・・・・。」
再び立ち上がるオーガ―もとい、クェーラ。タフすぎるだろう。
「・・・いい加減にして。」
「スピア?」
『任せて』とアイコンタクトを送ってくるスピア。どうする気なのだ?
「そこ・・・どけぇ・・・!」
眼の焦点があってない。さすがにやり過ぎたか・・・?
「・・・これ以上、ハネムーンの邪魔をするなら、五体バラバラにする。」
「な・・・ハネムーン・・・!?」
え?何言ってるのこの首なし騎士は。
「違うって言っただろう!?まだそのつもりだったのか!?」
「そうか・・・邪魔してすまなかった。」
「おおい!そこで改心するな!案外、いい奴ということはわかったが!」
「・・・大声出さない。」
「誰がそうさせているんだ!」
「随分女を連れているようだが?」
「・・・夫はプレイボーイ。」
「違う!そして、何故お前はそれを、誇らしげに!?」
「否定してるぞ。」
「・・・照れ屋な可愛い夫。」
「私が正妻よ。」
「マリア!キサマさっきまで他人のフリをしていただろう!人が追い詰められているときに、戻ってくるな!」
「やあねえ。冷たい亭主。これが冷えた家庭かしら?」
「何なんだお前ら!何しに来たんだ!?」
「・・・正妻は私。」
「誰か話を聞け!」
「ま、こんだけ女をたらしこんでるんだ。精力も凄いのか?」
「ええもう。毎日やっても、濃くてドロリとしてて―」
「ウソをつくな!私はまだ未経験だ!」
「未経験・・・?ゴクリ。なかなかその顔立ちで未経験な奴は・・・。」
「・・・夫はプラトニック。」
「どんどん話をややこしくするな!」
『なんだなんだ?楽しそうだな。』
『私たちも混ぜろ。』
「天使と悪魔!?まだいたの!?」
「・・・今日から毎日、夫と子作り。」
『よかったな。』
『いいもんか!折角義妹もこっちに来たんだ!義妹との背徳恋愛を―』
「・・・・・・。」
なんか、もうどうでもいいや。誰も話し聞いてくれないし。早く用事済ませて帰ろう。うん、それがいい。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
「・・・待って。」
「折角『驚天動地の靴』のテストのいい機会だったのに・・・。」
「ふえ?あ、待ってください!」
そのまま、宿屋に直行し、夕飯を食べる気力すら削がれた私は、そのまま眠りについた。明日からの本格的調査に向けて―。
―タツキ君も大変だな。わざわざもとの世界に帰るために砂漠まで来て。まあ、見ているボクとしては十二分に楽しい。だが―
『・・・大丈夫?顔が虚ろ。』
『ほら、しっかりしなさいよ。』
―どうにも、タツキ君に絡んでいる奴らが目障りだ。
「教主様。どうしたんだ?」
「別に。」
そういって、契約したイグニスに返事をする。
「なんなら、あの人間以外オレがや殺ってきてやるぜ?」
いくらイグニスという精霊の『王』であっても、好戦的なことに代わりはないか。
「それより、ジパングへの資料はちゃんと取ってきたの?」
「カンペキ。」
そういって、分厚い本をよこしてくる。確かに本物だ。
「だが、教主様もあの男が気に入ってるなら、直接赴けばいいじゃねえか。ましてや、今の教主様は―」
「おっと、それ以上は言っちゃ駄目だぜ。」
何より、タツキ君自身にきてもらうことに意味があるのだから。
「ふうん、で、あの魔物共は、どうする?」
「そのうち、嫌でも僕のところに来るだろうから、そのときまではほっとけばいいさ。」
そのうちに、タツキ君はボクの仲間になるのだから―
11/05/04 10:38更新 / ああああ
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