そこ!?注目すべき点がそこ!?
―「困ったことになったな。」
エンジェルのリエルをタツキが撃破した後、マリアにいろいろ聞き出してもらったところ、タツキは確実に『教団の敵』とみなされているとのこと。つまり、これ以上私達とかかわると、『普通の人』として、生きていくことが不可能になるということだ。
「聞いておるか?バハムート。」
「あ、ああ。」
そして、急遽、城の最上階である、緊急会議室に私―バハムート、バフォメットのカプリコーン、ヴァンパイアのシルヴィア=ヘルゴールドが集まったのだ。(本来ならば、ここにスピアが入るが、確実にタツキをここに留めようとする為参加させていない。)。
「最近では、親魔物国などは、『教団による粛清』と言う名義で、散々な眼にあっているというしな。」
他にも、魔女狩りならぬ、魔物狩りなどもされている。城の者には話していないが、状況は悪化の一途をたどっている。
「・・・ワシは、タツキはこれ以上深入りしないほうがいいと思うのじゃ。確かに奴は頼めば絶対にここに残るじゃろうし、文句を言いながらも、ちゃんとわしの相手をしてくれる。・・・どこかの誰かと違ってな。」
「確かに、奴に出て行かれると、また私がおもりをすることに・・・。」
「何じゃと!?」
まだ知り合ってから二日しかたっていないが、タツキはバフォメットのいうとおり、頼めばここに残るだろうし、私達と戦ってくれるだろう。だが・・・。
「・・・何があいつの幸せなのか・・・。」
先程婉曲気味に質問したら、『キミが傍に居てくれたら嬉しいぞ。』といった。つまり、少なくとも今は奴は出て行く気はないということだ。
「まあ、いずれにせよ教団とは雌雄を決さなければ成らない。その時期が早まるか否かと言うことだけのことだ。」
シルヴィアのいうとおり、城の魔物たちはいずれ教団と戦わねばならない。前の教主は比較的温厚な人物だったらしいが、新教主になってからは、凄い勢いで魔物は消されている。
「これだから、ああいうバカは手に負えんのだ。」
自覚があるかはどうかは知らないが、奴の場合きっと『みんなの幸せ』が自分の幸せなのだろう。あるいは、仲間と一緒にいることが。だが、その仲間は世界中から敵視されている。つまり、いつだれが欠けるかが判らないのだ。それに、仮に前者だとしたら、みんなの幸せを追い求めている以上、奴には永遠に幸せは訪れないということだ。
「本人に聞くのが一番早いな。」
二人に確認を取ると、二つ返事で了承してくれた。私としては、出て行ってほしくは無い。だが、ここにいればいずれ『同種である人間』から、敵視されるということを意味している―
―くしゃみがとまらない。風邪でも引いたのだろうか。リエルを撃破した後、奴はバハムートに連れられ、どこかいってしまった。つまり、
この私、東雲龍紀は遠く離れた丘から、夜真っ暗な道をひたすら歩く羽目になっているのだ。
「キレてないですよ。」
何度目かわからない自己暗示。先程から使う間隔が短くなっている。落ち着け自分。もっとクールになるのだ。
『捨てられた男だな。』
『無様だな・・・。』
・・・眼から、青春の汗が少し出てきた(詩的表現)。というか、何時間歩いているのだろうか。方角は間違っていない(たぶん)ので、おそらく、バハムートの飛行速度が尋常じゃないのだろう。やはり、思考は変態でもドラゴンなんだな・・・。
「・・・うん?」
気がつかなかったが、周囲の草むらががさがさと音を立てている。・・・別にいいか。なんか気力入らないな。
「「「ここはアタイらの縄張りだ!」」」
・・・何だゴブリンか。城の誰かとちょっと期待したんだけどな。
「ふふ〜ん、ここを通りたければ―おい!無視するな!」
スピアはどいてくれたかな?あーあ、今日はバフォ様来ないといーな。あっ、ミリアムと最近話してないな(あとミサも)。
「無視するなー!」
後ろから後頭部を鈍器で殴られた。今日は厄日か。スピアに寝床を取られるし、シルヴィアの酌をするはめになるし、マリアにSMについてえんえんと説かれるし、バハムートから怒鳴られ、しかも放置プレイ。変な子供―もとい、ゴブリンに殴られるし。天使を倒したはずなのに生きてるし。
『呼んだ?』
出てくるな天使。人が世界の世知辛さをかみ締めているのだ。
「倒した?」
「やったぜー!」
何かゴブリンが騒いでる。というより、何してたんだ?
「ああ、帰らなきゃ・・・。」
やばいとは思うが、完全にマイナスな考えになっている。
「「「生きてた!?」」」
・・・人が生きていたらマズイのか?なんか、今までたまったストレスが爆発しそう。・・・まあ、生徒会長として、ここはガマンガマン―
「じゃじゃ〜ん、わたしが、親分のパニャだ〜。」
でで〜んと現れたホブゴブ『プチッ』リン。あれ?今何か切れ―
「いい加減にしろおおぉぉ!」
ああ、自分の脳の血管がストレスで切れたのか(違うだろうけど)。私の『正常な意識』があったのは、そこまでだった。
―やってるね、タツキ君。しかもあろうことかボクが彼にあげた『悪魔モード』全開だね。本人は自覚して無いだろうけど。
「マ、ママン?リエルを助けなくっていいのですか?」
「うるさいよ、変態眼鏡。ボクは今タツキ君の生態観察で忙しいんだ。」
ぶっちゃけいって、リエルぐらいの階級にそんなに知られて困ることはいってない。もちろん、この変態眼鏡にもだけど。しかし、ここであの城の連中が運よく通れば、タツキ君は確実に追い出され、晴れて僕らの仲間入りだ。彼は僕には及ばないけど、十二分にチートっぽいしね。
「うわ、ゴブリンの腕関節を逆にするなんてシノノメクンは信じられないことをするな。」
「おいおい、へんな事を言うなよ。誰にも躊躇無く、徹底的に破壊する。あの『悪魔モード』はタツキ君の唯一の欠点を完璧に補ってくれる代物だぜ。」
ようやく黙る、ゴメス。違った、ゴレオだ。全く紛らわしい。そうこうしているうちにゴブリンは全滅か。残るはホブゴブリンだけど、彼女もう戦意を喪失しているから下手したら死ぬな。ボクの知ったことじゃないけど。
『・・・あれ?』
あーあ、残念。『悪魔モード』が終了してしまった。もう見るものないし、帰ろう。
「ママン。どこまでシノノメクンのことを知っているのです?」
「全部だよ、全部。生年月日、身長体重彼について知らないことは無いね。」
一瞬リエルを助けようと思うが、まあ、いいか。タツキ君を仲間にする犠牲と思えば、安いものだ。
―あれ?私は何をしていたんだ?辺りを見回すと、ありえない方向に関節を折られているゴブリンや、全身に打撲のような怪我を負ったゴブリンが地に伏していた。
「あう・・・グスッ・・・ごめんなさいぃ・・・。」
目の前には何故か号泣し、失禁しているホブゴブリン。なんだ?何があったんだ。
『お前の代わりに、俺がやってやったぜ。』
あ、悪魔。何それ。・・・まあ、いいや。こいつらに耳を貸して、良い事があったためしがない。
―城に着いたときには、朝日がちょうど山から顔を出すほんの数瞬前ぐらいだった。
「・・・・・・。」
正直、徹夜で歩くのは、バフォ様の相手よりつらい。こんなことなら散歩するんじゃなかった。もう二度としないけど。
「・・・すぅ、すぅ。」
部屋に戻ると、いまだにスピアが熟睡していた。たたき起こそうとも思ったが、あそこまで気持ちよさげに寝られたら、おこせないよなぁ・・・。
「・・・タツキ。ちょっといいかの?」
呼ばれたほうを見ると、バフォ様がいた。なんだ?今からゲームか?
「ヌシは、どうやら教団に目をつけられているらしいのじゃ。」
なんだ、そんなことか。といっても、私は専守防衛に務めているから、あっちが絡んできて、あっちがボコられ、あっちが逆上しているだけの気がする。
「それがどうしたのだ?」
「・・・このままワシらといると、ヌシはもう真っ当な人の道を歩けぬぞ?」
不安げな顔でいってくるバフォ様。なんだ。人をゲームのCPU代わりにしか思っていないと感じたが、それは気のせいで、ちゃんと考えていてくれたのか。うん、いい子いい子。
「そこで何故ワシの頭をなでるのじゃ?」
真っ当な人の道か。だが、何が正しく、何が間違いか。そういうことはぶっちゃけ、他人が決めていいことではないと思う。ホラ、あれだ。戦隊モノでも、正義の味方が敵と戦うのは、普通は正義だが、別の視点から見れば五人で敵をボコる、いわばリンチみたいな事をしているわけだ。少なくともフェアな戦いではない。まあ、私は正義の味方派だが。
『いやいや、怪人は雑魚の戦闘員を何人も連れているから、むしろ怪人のほうが卑怯だろ。』
『そういうことがいいたいんじゃない。最終的には、怪人一人だろう?』
いや、敵が巨大化した後ではロボットは一つだから、やっぱりフェアか・・・?
「聞いておるのか?」
そうだそうだ。忘れていた。
「教団?だかなんだか知らないが、少なくとも私はいままで、真っ当な道を歩んできたつもりは無いよ。」
これは事実だ。まあ、真っ当な人生を送ってきた奴が魔物を難なく倒せるわけ無いしな。
「じゃが、しかし―」
「そう追い出したがるなよ。私は万が一教団とぶつかる事になっても、ある程度の敵は倒せる自信があるし、そういう意味では露払いだって出来るつもりだ。」
「べ、別に追い出したいわけではなく・・・。」
『また、泣かせるのか?』
『信じられん・・・。』
まじめな話のときに出てくるお前らの神経が信じられん・・・!
「・・・まあよい。ヌシがその道を選んだのじゃ。」
そのまま去ってしまうバフォ様。なんだ?そんなことのためにわざわざ来たのか。さてと部屋に―
「・・・・・・(ジーッ)。」
・・・あれ?起きている。
「スピアさん?いつから起きていたんですかい?」
「・・・『それがどうした』あたり。」
ほとんど最初だ。
「・・・寝てない?」
「ああ、徹夜で歩いていた。」
「・・・そう。」
そういうとおもむろに腰とひざ関節に手をまわし―っておい!何故そこでわたしが『お姫様抱っこ』をされなければならないのだ!?
「・・・夫との同衾は嫁の当然の責務。」
「待て!嫁にした覚えはないし、同衾は権利であって責務ではない!」
「・・・なら、権利を行使する。」
「権利を行使する前に、義務を果たせ!」
「・・・嫁の義務・・・?ああ、お休みのちゅー?」
「違う!結局一週回って権利になっている事に気づけ!」
なんだ!?何でこんなにアプローチして来るんだ!?
「・・・ああ、あの言葉・・・?」
「今度はどんな余計なこと言う気だ!?」
「・・・お帰りなさいアナタ。」
「言うタイミングが明らかにおかしいが、それより降ろせ!」
「・・・私の体と言うご飯にします?それとも、お風呂でローション?それとも、ワ・タ・シ・・・?」
「それは選択肢とはいわないし、どこでそんなセリフを覚えたんだ!?」
「・・・コレをいえば、マリアが『男はイチコロ』って。」
フフフといやらしい笑みを浮かべるダークエルフが脳裏に。あの女めっ!
「・・・まよっているようだから、特別にフルコースにする。」
「やめろ!あ、おい!ミリアム!顔を真っ赤にして逸らすな!助けるのだっ!」
「ワタシ、アナタノコトバワカリマセン。」
「いやいや、十分に私の言葉ですよそれ!?そんなに係わり合いを持ちたくないのか!?」
クソッ薄情ものめ!こうなれば、頭を蹴り飛ばして―
『首の外れた彼女達は一転して、素直で好色な性格になってしまうという。 抜粋:魔物娘図鑑本文』
読んでくれてありがとう悪魔。その優しさに、涙が止まらないよ。
「・・・最初はお風呂から・・・。」
「後生だミリアム。この性欲騎士から助けてくれ!」
「完全にキャラが崩壊しているわよ。」
「そこ!?注目すべき点がそこ!?」
「・・・駄々こねないの。」
その後、下着一枚まで追い詰められたが、苦戦の末に関節技をきめ、何とか逃げることに成功した私だった。
エンジェルのリエルをタツキが撃破した後、マリアにいろいろ聞き出してもらったところ、タツキは確実に『教団の敵』とみなされているとのこと。つまり、これ以上私達とかかわると、『普通の人』として、生きていくことが不可能になるということだ。
「聞いておるか?バハムート。」
「あ、ああ。」
そして、急遽、城の最上階である、緊急会議室に私―バハムート、バフォメットのカプリコーン、ヴァンパイアのシルヴィア=ヘルゴールドが集まったのだ。(本来ならば、ここにスピアが入るが、確実にタツキをここに留めようとする為参加させていない。)。
「最近では、親魔物国などは、『教団による粛清』と言う名義で、散々な眼にあっているというしな。」
他にも、魔女狩りならぬ、魔物狩りなどもされている。城の者には話していないが、状況は悪化の一途をたどっている。
「・・・ワシは、タツキはこれ以上深入りしないほうがいいと思うのじゃ。確かに奴は頼めば絶対にここに残るじゃろうし、文句を言いながらも、ちゃんとわしの相手をしてくれる。・・・どこかの誰かと違ってな。」
「確かに、奴に出て行かれると、また私がおもりをすることに・・・。」
「何じゃと!?」
まだ知り合ってから二日しかたっていないが、タツキはバフォメットのいうとおり、頼めばここに残るだろうし、私達と戦ってくれるだろう。だが・・・。
「・・・何があいつの幸せなのか・・・。」
先程婉曲気味に質問したら、『キミが傍に居てくれたら嬉しいぞ。』といった。つまり、少なくとも今は奴は出て行く気はないということだ。
「まあ、いずれにせよ教団とは雌雄を決さなければ成らない。その時期が早まるか否かと言うことだけのことだ。」
シルヴィアのいうとおり、城の魔物たちはいずれ教団と戦わねばならない。前の教主は比較的温厚な人物だったらしいが、新教主になってからは、凄い勢いで魔物は消されている。
「これだから、ああいうバカは手に負えんのだ。」
自覚があるかはどうかは知らないが、奴の場合きっと『みんなの幸せ』が自分の幸せなのだろう。あるいは、仲間と一緒にいることが。だが、その仲間は世界中から敵視されている。つまり、いつだれが欠けるかが判らないのだ。それに、仮に前者だとしたら、みんなの幸せを追い求めている以上、奴には永遠に幸せは訪れないということだ。
「本人に聞くのが一番早いな。」
二人に確認を取ると、二つ返事で了承してくれた。私としては、出て行ってほしくは無い。だが、ここにいればいずれ『同種である人間』から、敵視されるということを意味している―
―くしゃみがとまらない。風邪でも引いたのだろうか。リエルを撃破した後、奴はバハムートに連れられ、どこかいってしまった。つまり、
この私、東雲龍紀は遠く離れた丘から、夜真っ暗な道をひたすら歩く羽目になっているのだ。
「キレてないですよ。」
何度目かわからない自己暗示。先程から使う間隔が短くなっている。落ち着け自分。もっとクールになるのだ。
『捨てられた男だな。』
『無様だな・・・。』
・・・眼から、青春の汗が少し出てきた(詩的表現)。というか、何時間歩いているのだろうか。方角は間違っていない(たぶん)ので、おそらく、バハムートの飛行速度が尋常じゃないのだろう。やはり、思考は変態でもドラゴンなんだな・・・。
「・・・うん?」
気がつかなかったが、周囲の草むらががさがさと音を立てている。・・・別にいいか。なんか気力入らないな。
「「「ここはアタイらの縄張りだ!」」」
・・・何だゴブリンか。城の誰かとちょっと期待したんだけどな。
「ふふ〜ん、ここを通りたければ―おい!無視するな!」
スピアはどいてくれたかな?あーあ、今日はバフォ様来ないといーな。あっ、ミリアムと最近話してないな(あとミサも)。
「無視するなー!」
後ろから後頭部を鈍器で殴られた。今日は厄日か。スピアに寝床を取られるし、シルヴィアの酌をするはめになるし、マリアにSMについてえんえんと説かれるし、バハムートから怒鳴られ、しかも放置プレイ。変な子供―もとい、ゴブリンに殴られるし。天使を倒したはずなのに生きてるし。
『呼んだ?』
出てくるな天使。人が世界の世知辛さをかみ締めているのだ。
「倒した?」
「やったぜー!」
何かゴブリンが騒いでる。というより、何してたんだ?
「ああ、帰らなきゃ・・・。」
やばいとは思うが、完全にマイナスな考えになっている。
「「「生きてた!?」」」
・・・人が生きていたらマズイのか?なんか、今までたまったストレスが爆発しそう。・・・まあ、生徒会長として、ここはガマンガマン―
「じゃじゃ〜ん、わたしが、親分のパニャだ〜。」
でで〜んと現れたホブゴブ『プチッ』リン。あれ?今何か切れ―
「いい加減にしろおおぉぉ!」
ああ、自分の脳の血管がストレスで切れたのか(違うだろうけど)。私の『正常な意識』があったのは、そこまでだった。
―やってるね、タツキ君。しかもあろうことかボクが彼にあげた『悪魔モード』全開だね。本人は自覚して無いだろうけど。
「マ、ママン?リエルを助けなくっていいのですか?」
「うるさいよ、変態眼鏡。ボクは今タツキ君の生態観察で忙しいんだ。」
ぶっちゃけいって、リエルぐらいの階級にそんなに知られて困ることはいってない。もちろん、この変態眼鏡にもだけど。しかし、ここであの城の連中が運よく通れば、タツキ君は確実に追い出され、晴れて僕らの仲間入りだ。彼は僕には及ばないけど、十二分にチートっぽいしね。
「うわ、ゴブリンの腕関節を逆にするなんてシノノメクンは信じられないことをするな。」
「おいおい、へんな事を言うなよ。誰にも躊躇無く、徹底的に破壊する。あの『悪魔モード』はタツキ君の唯一の欠点を完璧に補ってくれる代物だぜ。」
ようやく黙る、ゴメス。違った、ゴレオだ。全く紛らわしい。そうこうしているうちにゴブリンは全滅か。残るはホブゴブリンだけど、彼女もう戦意を喪失しているから下手したら死ぬな。ボクの知ったことじゃないけど。
『・・・あれ?』
あーあ、残念。『悪魔モード』が終了してしまった。もう見るものないし、帰ろう。
「ママン。どこまでシノノメクンのことを知っているのです?」
「全部だよ、全部。生年月日、身長体重彼について知らないことは無いね。」
一瞬リエルを助けようと思うが、まあ、いいか。タツキ君を仲間にする犠牲と思えば、安いものだ。
―あれ?私は何をしていたんだ?辺りを見回すと、ありえない方向に関節を折られているゴブリンや、全身に打撲のような怪我を負ったゴブリンが地に伏していた。
「あう・・・グスッ・・・ごめんなさいぃ・・・。」
目の前には何故か号泣し、失禁しているホブゴブリン。なんだ?何があったんだ。
『お前の代わりに、俺がやってやったぜ。』
あ、悪魔。何それ。・・・まあ、いいや。こいつらに耳を貸して、良い事があったためしがない。
―城に着いたときには、朝日がちょうど山から顔を出すほんの数瞬前ぐらいだった。
「・・・・・・。」
正直、徹夜で歩くのは、バフォ様の相手よりつらい。こんなことなら散歩するんじゃなかった。もう二度としないけど。
「・・・すぅ、すぅ。」
部屋に戻ると、いまだにスピアが熟睡していた。たたき起こそうとも思ったが、あそこまで気持ちよさげに寝られたら、おこせないよなぁ・・・。
「・・・タツキ。ちょっといいかの?」
呼ばれたほうを見ると、バフォ様がいた。なんだ?今からゲームか?
「ヌシは、どうやら教団に目をつけられているらしいのじゃ。」
なんだ、そんなことか。といっても、私は専守防衛に務めているから、あっちが絡んできて、あっちがボコられ、あっちが逆上しているだけの気がする。
「それがどうしたのだ?」
「・・・このままワシらといると、ヌシはもう真っ当な人の道を歩けぬぞ?」
不安げな顔でいってくるバフォ様。なんだ。人をゲームのCPU代わりにしか思っていないと感じたが、それは気のせいで、ちゃんと考えていてくれたのか。うん、いい子いい子。
「そこで何故ワシの頭をなでるのじゃ?」
真っ当な人の道か。だが、何が正しく、何が間違いか。そういうことはぶっちゃけ、他人が決めていいことではないと思う。ホラ、あれだ。戦隊モノでも、正義の味方が敵と戦うのは、普通は正義だが、別の視点から見れば五人で敵をボコる、いわばリンチみたいな事をしているわけだ。少なくともフェアな戦いではない。まあ、私は正義の味方派だが。
『いやいや、怪人は雑魚の戦闘員を何人も連れているから、むしろ怪人のほうが卑怯だろ。』
『そういうことがいいたいんじゃない。最終的には、怪人一人だろう?』
いや、敵が巨大化した後ではロボットは一つだから、やっぱりフェアか・・・?
「聞いておるのか?」
そうだそうだ。忘れていた。
「教団?だかなんだか知らないが、少なくとも私はいままで、真っ当な道を歩んできたつもりは無いよ。」
これは事実だ。まあ、真っ当な人生を送ってきた奴が魔物を難なく倒せるわけ無いしな。
「じゃが、しかし―」
「そう追い出したがるなよ。私は万が一教団とぶつかる事になっても、ある程度の敵は倒せる自信があるし、そういう意味では露払いだって出来るつもりだ。」
「べ、別に追い出したいわけではなく・・・。」
『また、泣かせるのか?』
『信じられん・・・。』
まじめな話のときに出てくるお前らの神経が信じられん・・・!
「・・・まあよい。ヌシがその道を選んだのじゃ。」
そのまま去ってしまうバフォ様。なんだ?そんなことのためにわざわざ来たのか。さてと部屋に―
「・・・・・・(ジーッ)。」
・・・あれ?起きている。
「スピアさん?いつから起きていたんですかい?」
「・・・『それがどうした』あたり。」
ほとんど最初だ。
「・・・寝てない?」
「ああ、徹夜で歩いていた。」
「・・・そう。」
そういうとおもむろに腰とひざ関節に手をまわし―っておい!何故そこでわたしが『お姫様抱っこ』をされなければならないのだ!?
「・・・夫との同衾は嫁の当然の責務。」
「待て!嫁にした覚えはないし、同衾は権利であって責務ではない!」
「・・・なら、権利を行使する。」
「権利を行使する前に、義務を果たせ!」
「・・・嫁の義務・・・?ああ、お休みのちゅー?」
「違う!結局一週回って権利になっている事に気づけ!」
なんだ!?何でこんなにアプローチして来るんだ!?
「・・・ああ、あの言葉・・・?」
「今度はどんな余計なこと言う気だ!?」
「・・・お帰りなさいアナタ。」
「言うタイミングが明らかにおかしいが、それより降ろせ!」
「・・・私の体と言うご飯にします?それとも、お風呂でローション?それとも、ワ・タ・シ・・・?」
「それは選択肢とはいわないし、どこでそんなセリフを覚えたんだ!?」
「・・・コレをいえば、マリアが『男はイチコロ』って。」
フフフといやらしい笑みを浮かべるダークエルフが脳裏に。あの女めっ!
「・・・まよっているようだから、特別にフルコースにする。」
「やめろ!あ、おい!ミリアム!顔を真っ赤にして逸らすな!助けるのだっ!」
「ワタシ、アナタノコトバワカリマセン。」
「いやいや、十分に私の言葉ですよそれ!?そんなに係わり合いを持ちたくないのか!?」
クソッ薄情ものめ!こうなれば、頭を蹴り飛ばして―
『首の外れた彼女達は一転して、素直で好色な性格になってしまうという。 抜粋:魔物娘図鑑本文』
読んでくれてありがとう悪魔。その優しさに、涙が止まらないよ。
「・・・最初はお風呂から・・・。」
「後生だミリアム。この性欲騎士から助けてくれ!」
「完全にキャラが崩壊しているわよ。」
「そこ!?注目すべき点がそこ!?」
「・・・駄々こねないの。」
その後、下着一枚まで追い詰められたが、苦戦の末に関節技をきめ、何とか逃げることに成功した私だった。
11/04/30 08:11更新 / ああああ
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