走れ!!走れ!!荒野をかけるバイク娘。
所長の部屋に急に呼び出されたサナ。普段、アナウンスで呼ばれないのに今日は呼ばれた。別に悪さもしてないし大丈夫だろうと思い所長室の扉を開ける。
「尖兵部隊隊長エリック・サナ入ります」扉を開けるとそこに居たのは応接机の上に足を乗せブーツを履いたドワーフがいた。服は黒くてかてかしておりデビルバグをイメージすかのような服装で所々に鋲がついていた。極めつけはこのタバコの煙であった。あまりにも煙たいので咳き込んでしまうサナ。
「ゴホッゴホッ・・・なんなのこのタバコの煙は・・・」
「すまないね、嬢ちゃん。あたしのタバコだよ」灰皿にタバコを押し付け火を消すドワーフ。
「あたしの名前は、トライアンナ・ボンネビル。気軽にビルと呼んでくれ。所属部隊はバイク兵部隊隊長だよ」笑いながら小さい背でサナの肩をたたこうとするが届かなくぴょンぴょンと飛んでいた。
「・・・・・・」
「こういう時は、空気を呼んであたしと身長あわせるんだよ!!!」切れたビル。
「えぇ〜〜!!」仕方なくボンネビルと身長をあわせるべく中腰になるサナ。
「うんうん。これでいいわ」ニッコリと笑うビル。
「自己紹介は終わりましたか?サナさん。ボンネビルさん」所長机の隣で本を持ちながら言うダークプリーストのバイエル・ソリア。
「それは、いいけどリシアは?」
「所長なら、タバコの煙が嫌で外に逃げました」窓の外を見たら、ハンカチを持ったソリアが空を飛びながら手を振っていた。
「で、何で呼ばれたの」呆れてソリアに向き直るサナ。
「それは、これを第3支部に持っていって欲しいのです」ソリアが手に持ったのは以前ネリアが作った自白剤であった。
「この自白剤は、とても強力なので今捕虜になっている教会騎士団の人達に飲ませるために必要なのお願いできるかしら」
「いいわ。これを第3支部に持っていけばいいのね。それなら、ハーピー部隊に持って行かせたらいいんじゃないの?そっちの方が早いのに・・・」
「いえ・・・その・・・ちょっと諸事情でハーピー部隊が居ないのよ」苦笑いしながら言うソリア。
「もしかして、ソリアさん。ハーピー達の発情期に乗じて万魔殿(パンデモ二ウム)に連れていったとか」
「うぅ・・・すみません。つい、癖で」うつむきながら言うソリア。
「もう!!ソリアさん。むやみやたらにうちの部隊の人たちを万魔殿(パンデモ二ウム)に連れて行かないでください。お陰で今人手不足なんですよ」
「ハハハ!!本当に面白いなここの支部は!!」笑いながら言うビル。片手には銀製で竜の彫刻を施したケースのオイルライターが世話しなく音を立てて開け閉めしていた。
「と言うわけでお願いね。死んでいった(社会的に)ハーピーの分まで頑張って届けてね。途中、教団の奴らが待ち伏せしてるけど頑張ってね」
「ちょっと!!なんで、教団の連中が待ち伏せしてるの!!」
「それは、ネリアがこの事を教団の人に言っちゃったのよ。金貨300枚で」溜息が出るソリア。
「あの、クソロリババァ!!今度あったら顔面チョップを食らわしてやる!!」拳をプルプルと震わせながら言うサナ。
「ドハハハ!!金のために仲間売るとはとんだ室長だな」大笑いするビル。
「なら、お願いね。ボンネビルさんと一緒に第3支部に届けてね」
「はぁ〜い。わかりました(あんまり、乗り気じゃないんだけどね」
「分かった。とりあえずこの物を届けたらいいんだろ。楽勝だよ」
そして、入り口の門の前には、赤く塗装したバイクが置いてあった。シートを低く、ハンドルを長く後ろには『地獄のペテン師』と描かれた旗が付いていた。その両端には同じ型だが色が黒と黄色のバイクと3人の乗り手がいた。
「あの〜この人たちは?」
「あぁ!!あたしの姉妹達だよ。オイ!!降りて挨拶しな!!」ビルの一言でバイクを降りる3人。黄色いバイクからはゴブリンとホブゴブリンが乗っており黒いバイクにはアリスが乗っていた。だが、アリスの腰には刀が差してあった。
「ヨロシクッス!!あたいは、ゴブリンのルナッス!!」
「あたしは〜〜〜サンだよ。よろしく〜」ゴブリンとホブゴブリンはサナに挨拶をした。
「こんにちわ、お姉さんあたしはミーナよろしくね」ニッコリ笑顔がキュートなミーナ。なぜこの娘がこんな荒くれ連中の仲間なのかわからないが考えるのを止めた。それは、今自分の置かれた状況であった。
「あの〜ビルさん。なんであたしの頭と体を別々にするんですか?」
「ん、だって体は邪魔だろ。あたしのバイクは2乗りは出来ないんだから」そう言いながらサナの頭をバイクのハンドル部分に、体はそのまま広場の椅子に置かれたのであった。
「いや〜あたし何のために連れて行かれるのかよく分からなくなっちゃうんですけど・・・」苦笑いしながら言うサナ。
「細かい事は気にするな!!愉快に走ろうじゃねぇか、姉妹!」
「「「おぉ!!!!!」」」
バイクにエンジンをかけるビル。それと同時に二組のバイクもエンジンをふかし始める。広場に響く爆音と重低音そして、後ろのパイプから出る白い煙。
「あの〜安全運転でお願いしますね?」一応言っておくサナ。
「安全運転?ああ、姉妹とアタシが安全なら他はどーでも良いね」
「え!!それはどういういm」言いかけたがバイクのエンジン音とともにサナの声はかき消された
「さぁ!!一気に飛ばすよ!!」そして、門が開き何故か門番のリザードマンが白黒の旗を振っていた。旗が一気に下に下げた瞬間バイクは爆音とともに物凄いスピードで走り出した。
そして、そのまま町の中央を突っ切って行く三組のバイク。普段見られないバイクをまじまじと見る町の人たち。まるで、有名人になった気分のようだ。そして、綺麗な泉や森を抜け牧場の横も通り過ぎた。寝ていたワーシープやホルスタウロスは飛び起きたみたいだけどそんな物もきにとめないでそのまま走りつづけた。そして、ちょうど第3支部の中間地点まできた時にビルの口が開いた。
「さて、第3支部にそのまま行きたいところだけど・・・どうも行かせてくれないみたいだね」あたし達の目の前に教会の騎士団がバリケードを作って待ち構えていた。
「お姉さま。あたしが行っていいですか?」微笑みながら言うアリスのミーナ。何故か刀を抜いていた。
「いいぞ。派手にやりな!!」ビルはミーナにそう言うと速度を落とした。
「なんで、あの娘1人で行かせるんですか?」
「大丈夫だよ。あの娘はこの部隊で一番強くて冷酷なんだよ」ビルがそう静かに言ったかと思うと教団の方から悲鳴が聞こえた。
「ぎゃああああああ。腕が・・・腕がぁーーーーーー」
「俺の、目が・・・目がぁああああああ!!」
「ひぃぃぃぃ・・・化け物・・・化け物がいる!!」
「えへへ・・・・お兄ちゃん達なんで逃げるの。ミーナと一緒に遊ぼうよ・・・」そこには、全身返り血のミーナが笑いながら教団の騎士達を切り刻んでいた。そうまるで、遊びのように・・・・・
「ナニモミエナイ。ミエナイヨ。キコエナイ。ナニモキコエナイ。キコエナイヨ。ア・・・・チョウチョダ」サナは現実から目をそらし逃避行へと走ったのだ。
そして、何も起きていないかなように戦闘が終わるとビルのバイクはまた走り出した。途中、生々しい音とともに。
無事、第3支部に自白剤を届けて第1支部に戻る私たち。帰り道は別の所から帰ったのだった。そして、帰り道私は・・・・・
「くぅ・・・くぅ・・・くぅ・・・」寝てしまっていた。
〜数日後〜
「えぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!この支部に配属になった!?」食堂でビールを片手に飲んでいたビル達を見つけて話をしていたら、この支部に配属されたみたいだった。
「おう!!これからよろしくな!」
「ヨロシクッス!!」
「よろしくね〜」
「よろしくお・ね・え・ちゃ・ん」
また、騒々しい1日の幕開けが始まるのであった。
11/06/23 00:03更新 / pi-sann
戻る
次へ