ウエディングドレスは知っている(前編)
「さぁ、そろそろ帰ろうかな」リュックサックを背負い机の引き出しに教科書がないことを確認して教室を出ようとする甲。
「甲くん。待って!!」茜が自分のカバンの中に教科書をぎゅうぎゅうに入れながら甲を呼び止めた。
「茜さん。せめて、少しずつでいいから持って帰ろうよ」半ば呆れて言う甲。
「いや、勉強しないんだから持って帰っても机の邪魔になるだけだし」
「茜さん・・・机でなにしてんの?」大体想像はついているが一応聞いてみる甲。
「武器のメンテナンス」ドヤ顔で言う茜。
「勉強机は物騒なものを置いたり整備しないよ・・・・」涙目で言う甲。
「違うのかよ!!」驚く茜。
「違うよ。そんなことしたらまた、学年上がってもテストで赤点だよ」
「・・・・さぁ、今日も武器のメンテナンスをするか」茜は、何事もなかったかのように教室を後にした。
「現実逃避!?」
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茜と甲が歩いていると、目の前に一人のシスターが現れた。
「こんにちわ。学生さん」
「こ・・こんにちわ」ぎこちない返事を出す甲。それもそうだ、彼女の姿はシスターではあるが、胸元が大きく開かれておりそこから見えるのはたわわに実った大きな胸。その光景を見た茜は思わず自分の胸に手をおきペタペタとさわり始めた。
「ねぇ。もしかして、この娘妹さん?可愛いわね〜♪♪」
「あ・・・・」ヤバい。甲はすかさず隣にいる茜を見た。そこには、握りこぶしをした茜が今にも、そのシスターに掴みかかる勢いであった。その様子を見た甲はすかさずそのシスターに声をかけた。
「すみません。この女性は僕の妹じゃなくて彼女なんです」
「え、そうなの!?ごめんなさいね」謝るシスター尻目に低く唸る茜。
「がルルルルル・・・・」
「彼女さん。ワーウルフなの?」びくびくしながら言うシスター。
「いえ、アリスです。茜さん落ち着いて」なだめる甲。その様子を見て、申し訳なさそうに見るシスター。
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「で、アタシたちに何の用なの?」落ち着いたのか、茜が腕を組みながら言う。
「はい。実は、この近くに教会ができまして信者を集めている所なんですよ」手に分厚い本を持ち笑顔で答えるシスター。
「教会か・・・あんま興味ねぇな」ため息つきながら言う茜。
「でも、来てくれたらウエディングドレスの試着ができますよ♥♥」その言葉を聞いた瞬間茜の耳が微かに動いた。
「行くよ、甲くん!!」甲の襟首を掴み教会へ向かう茜。
「ちょっと、茜さん。くび・・・首がしまります!!」甲の服を引っ張る茜。
「お二人様ご案内〜〜♪♪」そう言いながら甲と茜の後を追いかけていく。
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「なんですかこれは〜〜〜!!!」シスターが驚いた。何せ、ドアは粉々に砕かれ教会のシンボルであろう礼拝堂は、ぐちゃぐちゃになっていたのだ。
「これはどういうことなのですか!?」シスターはぐちゃぐちゃになった教会の中に入っていった。その後を、甲と茜が入った。
「こりゃひでぇ〜」茜が辺りを見回しながら言った。
「これはひどいですよね。まるでここだけ台風が来たみたい・・・」甲が散らかった椅子や窓ガラスなどを見ていった。
「うぅ・・・せっかく新しくできた教会がこんなぐちゃぐちゃになるなんてこんなんじゃ堕落神様に顔向けにできないわ」泣き崩れるシスター。その時、上の階から逃げるように出てきたサキュバスと男性。男性は服が半分ほど千切られてサキュバスは真っ青になって逃げてきた。
「助けてくれ!!!」男が泣き崩れたシスターにしがみつきながら言った。男の行動にキョトンとしたがサキュバスが言った一言でシスターは驚いた。
「あのシスターがいきなりマシンガンをぶっ放しながら襲ってきたの!!」サキュバスが指差した所には、裾の短い修道服を着てサングラスをつけたダークプリストが立っていた。その頭にはなぜか、笑いながら漂うケセランパサランがいた。
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「シスターマルゼ!!これはどういうことですか!?」シスターは声を荒げながら言った。先ほどいたサキュバスのカップルはこのシスターを見て脱兎のごとく教会を後にしたのは言うまでもない。
「だぁ!!うるせえな!!ただ、あたしは目の前でいちゃつき始めたバカップルを魔力で作った弾をマシンガンに込めて撃っただけだろうが!!」反省の色も見せないシスターマルゼ。
「だからと言っていきなりマシンガンを撃つシスターがどこにいるんですか!?」
「お前の目の前にいるじゃん」ドヤ顔するマルゼ。
「うぅ・・・」
「ところで、さっきからいる奴等は何しにきた?」マルゼはシスターの隣にいる茜たちに気がついた。
「僕等は、ここでウエディングドレスが着れると聞いて来たのですが」甲がおずおずとマルゼに言った。
「ふ〜ん」マルゼは甲と茜をまじまじと見た。その上では未だにケセランパサランがふわふわと漂っていた。
「またきな。クソチビが、テメーのようなお子ちゃまが着るようなドレスなんてねぇーんだよ!!」中指を立てながら茜を愚弄するマルゼ。
「んだとてめー!!誰がクソチビだコラ!!!!」茜が机を蹴り飛ばす。
「小さいくせに彼氏とドレスが着たいとは世も末だぜ」
「あはは〜♪♪おませ、おませ♪♪」
「頭来たぜ!!てめぇらをしばきあげたらぁ!!」
「茜さん。落ち着いて!!」甲が茜を抑えようと抱きついた。その光景を見ながら舌打ちするマルゼ。
「っチ」
「あはは〜〜♪♪」
「放して甲くん。そいつを殺れない!!」甲に抱きしめながらジタバタと暴れる茜。
「シスターマルゼ!早く謝ってください。」シスターが泣きながら言った。
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「そんなに、着たいんならあたしを楽しませたら着させてやってもいいよ」ボロボロになった礼拝堂でたばこをふかしながら言うマルゼ。その後ろでは、先ほどのシスターが器用に触手を動かして
「で、どう楽しませたらいいんだ?」若干イライラしながら言う茜。
「そうだな...」辺りを見回すマルゼ。頭上にいるケセランパサランを見ると口角を上げた。
「じゃあ、こいつを笑わせてみろ」ケセランパサランを指差す。
「こいつをって、最初っから笑ってるじゃねえかよ」
「こいつが笑うと粉が出てくるんだ。その粉を出したらおめえらにドレスでも、結婚式でも好きなだけやってやるよ。
それに、そろそろ代わってやらねえとなボソ」
「ん。最後の方聴こえなかったんだがなんか言ったか?」
「気にすんな。こっちの話だ。そうだ。こいつは腐れ縁のケセランパサランのサラだ。」
「わはー。よろしく」甲と茜の周りをふわふわと漂うサラ。
「よ〜し。だったらこいつ笑わせて結婚式するぜ」ポキポキと腕を鳴らす茜。
「茜さん。趣旨変わってない?ドレスを着るんじゃないの...」
後半に続く....
24/10/08 06:32更新 / pi-sann
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