後編
『字無あぁああっ!!』
黒龍が怒りに満ちた赤い瞳を向けて俺を呼ぶ。
その砲孔が辺り一面に響き渡り、大気をも揺らした。
「なるほど、黒龍のツガイか…。どうりで…」
視界の端で、二人の六騎士が撤退しようとする様が見えた。
「今回は引こう、名も無き侍よ。だが…いずれ天乃叢雲剣は回収させて貰うぞ」
軽々と瀕死のマイトを担ぎ上げて、捨て台詞を吐くと、六騎士ウィルは暗闇の中へと姿を消した。
最悪な事に、ニーズヘッグの意識は此方に集中しているらしく、全くウィル達に反応を示さない。
『ゴミ共は姿を消したか…丁度いい…。これから、お前を躾るのに邪魔だったところだ…』
それどころか、彼女は狂気に淀んだ美しい顔で微笑む。
「躾るだと…出来るか?お前に…」
精一杯の虚勢とは裏腹に絶望という文字が頭の中をよぎる。
後一歩で天野叢雲剣が手に入るというのに、最悪のタイミングであった。
何か手は無いか…。
龍の力はこの黒龍の前では全く意味を成さないだろう…。
何故ならば、ニーズヘッグが姿を表した途端に俺の龍化は解かれ、左腕は元に戻っていたからだ…。
頭の中で策を練るが、この絶望的な状況では何も思い浮かばない。
そうこうしているうちに、黒龍がゆっくりと此方に近づいてくる。
『強がるな…。絶望しているのだろう?その様子を見ればすぐにわかるわ…。
眼、呼吸、動悸…全てがお前の身体に訴えている。
――私が恐いとな…』
ぞくりっ――、
黒龍の言葉に背筋が凍りつく。
全て彼女はわかっていた。
俺の心の内までも…。
『この数カ月…。私は気が狂いそうだった。この傷を付けたお前を想い――、ひたすら彷徨い…探し続けた…』
右瞼に刻まれた刀傷を指でなぞりながら、彼女は話を続ける。
『なぁ…何故私の元から逃げた?あれだけ愛でてやったというのに…』
ゆっくり、ゆっくりと――、
『私の“中”は心地良かっただろう?
私の“愛”は美しかっただろう?
私の“心”は優しかっただろう?』
目の前まで来て歩みを止める。
俺はその重圧に耐えられず、全身から汗を流して震えていた。
ガチガチと歯を鳴らしながら、睨み付けるのが精一杯だ。
『なのに何故私から逃げた!?字無っ!!』
「っ!?」
首を掴まれ身体を宙に上げられる。
『足りないのか!?、私の愛がっ!
、優しさがっ!
、想いがっ!』
ばきりっ!
べきりっ!
ごつりっ!
硬い漆黒の尾が何度も俺の身体に放たれる。
俺は気が遠くなるような痛みと苦しみに、顔を歪めずにはいられなかった。
『答えろっ!!字無っ!!』
そして身体を床に叩きつけられる。
酷い打音が回廊に木霊した。
「ぐっ…あ…」
不死身と言ってもダメージはある。
俺は死ねない身体を恨みつつも、ひたすらニーズヘッグを睨みつけてこう言った。
「貴様の…愛などいらん。俺が望むのは…静寂なる安息のみだ…」
『あくまで私を拒むというのだな?』
「ああ…糞喰らえ」
『っ!!ならば――』
鋭き眼光が赤く光る。
「!?」
『満たして貰うだけだ…。私の“欲求”をなぁっ!!』
身動きが取れない俺の身体に黒龍がのしかかり、その右腕を振り上げた。
ざしゅりっ!
肉を裂く音が鼓膜に響くと同時に右瞼に
激しい痛みが走る。
「ぐっ…ああああぁああっ!!」
俺の視界が、半分赤く染まっていた。
『フフフッ…失明はしない様に加減した。これで私とお揃いだな…』
痛みに悶える俺に、黒龍は恍惚とした笑みを浮かべて答える。
『はぁああっ。待ったぞぉ…。狂おしいほどに…』
べろぉっ…。
「っ!?」
そして、その艶めかしく長い舌が俺の傷口をなぞった。
『嗚呼、もう待てぬわ…。んむっ…』
「んぐっ!ん…」
くちゅっ…ちゅぱっ…くちゅっ!
やがて、傷口から出血が止まった事を確認すると、麗しく貪欲な唇で、舌で、俺の口内を犯し始める。
『ぷはぁっ…こんなものは邪魔だ…』
そして、乱暴に衣服を脱がすと、自身が身に纏っている甲殻を隠し、浅黒い肌を剥き出しにした。
『さぁ、奉仕しろ。私に精を差し出せ…』
びちゃっ!!
すでに愛液でまみれていた秘部を、無理矢理俺の顔面に落とし、擦り付けるように這わせる。
そして否が応でも硬くなった俺の逸物に舌を這わせ始めた。
「やめっ!んぐ…んぶっ!」
抵抗しようにも凄まじい力で顔に秘部を擦り付けられ、発言すらままならない。
『嗚呼…いいぞ。このままお前にも快楽を分けてやる。れろぉっ――』
そして、長い舌を逸物に巻き付けてゆっくりと扱き始めた。
粘ついた唾液が、肉質のある舌の感触が、全て快感となり襲いかかってくる。
れろっ、ちゅるっ、べろぉっ、ぬりゅりゅりゅるっ、ぬりゃっぬちゃっ。
滑りを帯びた肉が厭らしい音をたてる。
やがて亀頭の鈴口から流れる汁を舐めとるように、その舌先を差し込み、激しく動かした。
くちゅっ!れろれろれろれろれろれろぉっ!
「んぐっ!?んがっ…んぶっ!」
『まず一回目だ』
ニーズヘッグはそう呟くと、亀頭を舐めながら巻き付けた舌を巧みに動かし、裏筋や、かり首にも執拗に刺激を与える。
ぬりゅりゅりゅ!れろぉっれろれろぉっ!
あまりの刺激に、溜まらず、逸物が熱くほとばしり、弾けた。
『んあああぁっ!これだ!この匂い、味…たまらぬ』
おそらく白燭にまみれた顔で答えているのであろう。
容易にその様子が想像できた。
ちゅぱっ、れる、れりりっ、ぬちゅ。
『相も変わらず濃くて美味だ…たが、まだまだ足りぬ。もっと寄越せ…。んはぁっ…んぶちゅっ!』
そう言うと、彼女は唾液を垂らしながら、思い切り逸物に吸い付いた。
俺の臀部をしっかりと掴み、恐ろしいほど速く頭を振る。
生々しく暖かい肉が逸物全体に絡みつき、激しく蠢いた。
『ぶちゃっ!ずちっ!ぶちゅぱっ!んぼちゅっ!ずちゅるるるるっ!ぶじゅっ!ぶじゅっ!ぶじゅっ!ぐぼっ!ぐぷっ!じゅちゅるるるっ!』
「んぼっ!ん…が…!」
秘部に悲鳴を遮られ、ただ、ひたすらに貪られていた。
『んぶちゅっ!もっと…んぶっじゅちゅっ!もっとだ!んぶんぐじゅっ!ちゅぴっ!ちゅぱっ!んぶぢゅるるるるぅっ!』
為す術も無く、貪欲な黒龍に精を吸われ続ける。
やがて再び射精するが、吸引を止める事は無く、飽きるまで彼女は逸物をしゃぶり続けていた。
『じゅるるるるる〜っ!ちゅぽんっ!』
やがて、口淫に飽きたのか、黒龍は一段落すると、ねちっこく淫靡な唇から逸物を解き放った。
『嗚呼…美味だったぞ。さぁて、次は此方だ』
そう言いながら、俺の顔を秘部から解放すると、その愛液にまみれた肉穴をゆっくりと指で広げた。
『どうだ?ここでお前のモノが絞られるのだ。堪らなく良さそうだろう』
息も絶え絶えな俺に、ニーズヘッグは淫靡に微笑を浮かべ、中の様子を見せつける。
肉穴の中は何重もの襞が蠢き、その隙間から夥しいほどの舌のような肉が、愛液を垂らしながら、今か今かと逸物を欲しているようだった。
あの中に挿入たら最後、こちらの命が尽きるか、黒龍が飽きるまで精を搾り取られる。
半龍にされてから何度も味合わされた地獄の名器。
常人ならば脳が焼き切れるほどの快楽で、即座に絞り殺されるであろう。
「あ……く…」
『では…頂くぞ』
最早声を出す事すら出来ないほど疲労した俺に対し、黒龍は容赦なく逸物に腰を落とした。
ぶぢゅんッ!
ずりゅりゅりゅりゅ!
ごぢゅっ!
一気に膣肉を掻き分け、子宮にまで亀頭を招かれる。
『んあああぁああぁっ!!いいぞ…やはりお前は最高だ!』
ぐりゅっ!ぐじゅっ!ぱじゅんっ!ぱちゅんっ!ずちゅっ!ぐぽっ!ぐちゃっ!
甲殻に包まれた腕で俺を拘束しながら、ひたすら騎乗位で分身を犯す。
厚い肉壁が、舌肉が、子宮が――。
俺から全てを搾り取るかの様に凶悪に暴れまわる。
「――ぁ!?」
ぎぢゅぢゅぢゅっ!
れろれろれろっ!
ごちゅんっ!ごちゅんっ!ごちゅんっ!
『さぁ…出せぇっ!』
じゅぢゅるるるるぅっ!
ばぢゅんっ!
そして、止めとばかりに子宮口に亀頭を吸われて俺は果てた。
どばぁっ!と子宮の中全てを染める様に、精が亀頭からほとばしる。
『んあああぁっ!いいぞ!もっと…もっとだぁ!』
だが、ニーズヘッグは満足しない。
射精しているにも関わらず、腰を降り続け、まだ快楽を貪ろうとする。
『んっ、ちゅぱっじゅるるるぅっ』
そして、尾の先端に口淫すると、それを俺の排泄口へと当てがった。
ずちゅっ!ぐりゅぐりゅぐりゅっ!
「――かっ!?あっ」
問答無用に龍尾をいれられ、前立腺を刺激される。
『嗚呼、大きくなったなぁ。それではこちらも頂くぞ。んぢゅうっ!』
「んむっ!?」
今度は口をも蹂躙され、長い舌を無理矢理差し込まれた。
そのまま舌は俺の喉奥を舐め回す。
「ぐっ!んおっ!んえっ!」
『んじゅうっ!ちゅぱっ!んぶっ!じゅちゅっるるるぅ!』
俺がえずくのもお構いなしに、黒龍は舌を蠢かせる。
ぎちゅんっ!ぶじゅんっ!ばぢゅんっ!ぐじゅっ!ずぢゅっ!
ぐりゅっ!ぐちゅっ!こりこりっ!ぐりゅっ!ずぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぅっ!
『んぶっ!んぢゅっ!ちゅぱっ!ぢゅるるるるぅっ!』
ひたすらに淫らな音を立てて、黒龍は俺から精を搾り続けた。
――それから、夜が明けるまで蹂躙され続け、黒龍は最後とばかりに盛大に絶頂を迎えた。
ようやく口と逸物は解放され、龍尾も排泄口から引き抜かれる。
そして、息をきらしながら、俺の耳元でこう囁いた。
『さぁ、完全に私のモノと…ツガイになると誓え。誓わぬのなら――』
「…断る…」
黒龍が言葉を吐き終える前に、俺は微かな声で最後まで抵抗の意を示した。
瞬間――、自分の身体が宙を舞い、宝具室の扉に叩きつけられる。
その衝撃で頑丈な扉は壊れ、おぞましい勢いで身体は地に落ちた。
「あっ…が…!」
何故こうなったのか、答えは明白。
俺が否定の意を示した途端、ニーズヘッグに身体を思い切り投げられたのだ。
ぼろぼろになった身体に更に重たい一撃が与えられ、いくら死ねない身体といっても限度がある事を悟った。
「ぅっ…あ…」
表情を苦痛に歪ませながらも、僅かな力を振り絞り、身体を起こす。
ニーズヘッグは紅く瞳をたぎらせながら此方へと近づいてくる。
『許さぬ…。字名、許さぬぞ!お前は私のものだ!ツガイの誓いを立てぬなど絶対に赦さぬ!…こうなったなら痛みで思い知らせてやる!』
どうやら完全に怒らせてしまった様だ。
俺は瞬時に、辺りを見回して、中央の台座に祭られた一振りの剣に目をやった。
色褪せた銀色の鞘に納められた両刃の刀剣。
あれが――、あれこそが!
投げ飛ばされた場所が宝具室の中だった事に感謝しつつも、重たい身体を引きずりながら、必死に剣へと手を伸ばす。
そして、どうにかその剣を取り、刃を抜いた。
『!?』
鞘から抜けると同時に、その剣から放たれた光が、天へと向かって伸びていく、そして、先ほどから晴れ渡って輝いていた月を大きな叢雲が覆い始め、雷鳴や豪雨を呼び始めた。
『なんだ!?その剣は!』
異変に気づいたニーズヘッグが声を上げる。
そして、渇いた声で俺は一言、こう答えた。
「お前を殺す剣だ」
全身に力を込めて、黒龍に向かい天野叢雲剣を振るう。
『小癪なぁっ!!』
ニーズヘッグも禍々しい龍爪で剣を迎え打った。
刃が龍爪に触れる。
その瞬間、黒龍の爪が砕け散り、甲殻に大きな傷を与えた。
『ぐっ――!あああぁああああっ!!』
激痛に顔を歪ませた黒龍は、右手を押さえて後ろに下がる。
俺はその様子を見逃さなかった。
恐らくこれが最後の機会だ。
俺は縦に振り下ろした剣をそのまま下から切り上げる。
両刃だから出来る斬撃に、全てをかけた。
同時に硬い甲殻を破り、肉を絶つ感触が剣から伝わった。
『ぎっ、あああああぁあああっ!』
黒龍が地獄から響くような悲鳴を上げる。
その不死身の身体は俺の斬撃により、斜めに斬り上げられ、重症を負っていた。
『き…さま…。それは…まさか…』
「天乃叢雲剣…噂は本当だったようだ」
これで、終わりだ。
最後に剣を掲げて彼女に止めを刺そうとした瞬間、激しい眩暈が俺を襲った。
『ぐっ、おおおぉおっ!!』
その様子をニーズヘッグが見逃すわけもなく長い龍尾が俺の身体へ放たれる。
べきりっ!と腹部を強打され、後方へと吹き飛ばされた。
「ぐっ…ぁ…」
どうにか剣は離さずにいられたが、もう立てる気力すら無い。
黒龍は瀕死の身体を抑えると、大きな翼を広げて天井へと羽ばたいた。
そのまま怒轟を上げて、天井を突き破り、その姿を見上げる俺に向かいこう答えた。
『今宵は私の負けだ!字名…名も無き侍よ!だが、次に逢うときはお前の全てを奪いつくしてやる!それまで、せいぜい足掻いてみるがいい!』
巨大な龍へと姿を変えた龍神ニーズヘッグは、雷鳴と豪雨を生み出す叢雲へと姿を消した。
その姿を見送り、結局俺は黒龍を殺す事が出来なかった事実を悟る。
剣を鞘に納めると、先ほどまで荒れていた天候が嘘のように静まり、銀色の月が大きく顔を出した。
俺はその月を傷が癒えるまで、ずっと見上げていた。
――数年後、黒龍にツガイとして選ばれた男は、永遠の命に抗う為、世界各地の神の武具を探し回った。
彼に襲撃された国々は、その半龍のおぞましき姿や圧倒的な強さを恐れ、皆畏怖してこう呼んだ。
名も無き半龍…“字無し”と――。
終
黒龍が怒りに満ちた赤い瞳を向けて俺を呼ぶ。
その砲孔が辺り一面に響き渡り、大気をも揺らした。
「なるほど、黒龍のツガイか…。どうりで…」
視界の端で、二人の六騎士が撤退しようとする様が見えた。
「今回は引こう、名も無き侍よ。だが…いずれ天乃叢雲剣は回収させて貰うぞ」
軽々と瀕死のマイトを担ぎ上げて、捨て台詞を吐くと、六騎士ウィルは暗闇の中へと姿を消した。
最悪な事に、ニーズヘッグの意識は此方に集中しているらしく、全くウィル達に反応を示さない。
『ゴミ共は姿を消したか…丁度いい…。これから、お前を躾るのに邪魔だったところだ…』
それどころか、彼女は狂気に淀んだ美しい顔で微笑む。
「躾るだと…出来るか?お前に…」
精一杯の虚勢とは裏腹に絶望という文字が頭の中をよぎる。
後一歩で天野叢雲剣が手に入るというのに、最悪のタイミングであった。
何か手は無いか…。
龍の力はこの黒龍の前では全く意味を成さないだろう…。
何故ならば、ニーズヘッグが姿を表した途端に俺の龍化は解かれ、左腕は元に戻っていたからだ…。
頭の中で策を練るが、この絶望的な状況では何も思い浮かばない。
そうこうしているうちに、黒龍がゆっくりと此方に近づいてくる。
『強がるな…。絶望しているのだろう?その様子を見ればすぐにわかるわ…。
眼、呼吸、動悸…全てがお前の身体に訴えている。
――私が恐いとな…』
ぞくりっ――、
黒龍の言葉に背筋が凍りつく。
全て彼女はわかっていた。
俺の心の内までも…。
『この数カ月…。私は気が狂いそうだった。この傷を付けたお前を想い――、ひたすら彷徨い…探し続けた…』
右瞼に刻まれた刀傷を指でなぞりながら、彼女は話を続ける。
『なぁ…何故私の元から逃げた?あれだけ愛でてやったというのに…』
ゆっくり、ゆっくりと――、
『私の“中”は心地良かっただろう?
私の“愛”は美しかっただろう?
私の“心”は優しかっただろう?』
目の前まで来て歩みを止める。
俺はその重圧に耐えられず、全身から汗を流して震えていた。
ガチガチと歯を鳴らしながら、睨み付けるのが精一杯だ。
『なのに何故私から逃げた!?字無っ!!』
「っ!?」
首を掴まれ身体を宙に上げられる。
『足りないのか!?、私の愛がっ!
、優しさがっ!
、想いがっ!』
ばきりっ!
べきりっ!
ごつりっ!
硬い漆黒の尾が何度も俺の身体に放たれる。
俺は気が遠くなるような痛みと苦しみに、顔を歪めずにはいられなかった。
『答えろっ!!字無っ!!』
そして身体を床に叩きつけられる。
酷い打音が回廊に木霊した。
「ぐっ…あ…」
不死身と言ってもダメージはある。
俺は死ねない身体を恨みつつも、ひたすらニーズヘッグを睨みつけてこう言った。
「貴様の…愛などいらん。俺が望むのは…静寂なる安息のみだ…」
『あくまで私を拒むというのだな?』
「ああ…糞喰らえ」
『っ!!ならば――』
鋭き眼光が赤く光る。
「!?」
『満たして貰うだけだ…。私の“欲求”をなぁっ!!』
身動きが取れない俺の身体に黒龍がのしかかり、その右腕を振り上げた。
ざしゅりっ!
肉を裂く音が鼓膜に響くと同時に右瞼に
激しい痛みが走る。
「ぐっ…ああああぁああっ!!」
俺の視界が、半分赤く染まっていた。
『フフフッ…失明はしない様に加減した。これで私とお揃いだな…』
痛みに悶える俺に、黒龍は恍惚とした笑みを浮かべて答える。
『はぁああっ。待ったぞぉ…。狂おしいほどに…』
べろぉっ…。
「っ!?」
そして、その艶めかしく長い舌が俺の傷口をなぞった。
『嗚呼、もう待てぬわ…。んむっ…』
「んぐっ!ん…」
くちゅっ…ちゅぱっ…くちゅっ!
やがて、傷口から出血が止まった事を確認すると、麗しく貪欲な唇で、舌で、俺の口内を犯し始める。
『ぷはぁっ…こんなものは邪魔だ…』
そして、乱暴に衣服を脱がすと、自身が身に纏っている甲殻を隠し、浅黒い肌を剥き出しにした。
『さぁ、奉仕しろ。私に精を差し出せ…』
びちゃっ!!
すでに愛液でまみれていた秘部を、無理矢理俺の顔面に落とし、擦り付けるように這わせる。
そして否が応でも硬くなった俺の逸物に舌を這わせ始めた。
「やめっ!んぐ…んぶっ!」
抵抗しようにも凄まじい力で顔に秘部を擦り付けられ、発言すらままならない。
『嗚呼…いいぞ。このままお前にも快楽を分けてやる。れろぉっ――』
そして、長い舌を逸物に巻き付けてゆっくりと扱き始めた。
粘ついた唾液が、肉質のある舌の感触が、全て快感となり襲いかかってくる。
れろっ、ちゅるっ、べろぉっ、ぬりゅりゅりゅるっ、ぬりゃっぬちゃっ。
滑りを帯びた肉が厭らしい音をたてる。
やがて亀頭の鈴口から流れる汁を舐めとるように、その舌先を差し込み、激しく動かした。
くちゅっ!れろれろれろれろれろれろぉっ!
「んぐっ!?んがっ…んぶっ!」
『まず一回目だ』
ニーズヘッグはそう呟くと、亀頭を舐めながら巻き付けた舌を巧みに動かし、裏筋や、かり首にも執拗に刺激を与える。
ぬりゅりゅりゅ!れろぉっれろれろぉっ!
あまりの刺激に、溜まらず、逸物が熱くほとばしり、弾けた。
『んあああぁっ!これだ!この匂い、味…たまらぬ』
おそらく白燭にまみれた顔で答えているのであろう。
容易にその様子が想像できた。
ちゅぱっ、れる、れりりっ、ぬちゅ。
『相も変わらず濃くて美味だ…たが、まだまだ足りぬ。もっと寄越せ…。んはぁっ…んぶちゅっ!』
そう言うと、彼女は唾液を垂らしながら、思い切り逸物に吸い付いた。
俺の臀部をしっかりと掴み、恐ろしいほど速く頭を振る。
生々しく暖かい肉が逸物全体に絡みつき、激しく蠢いた。
『ぶちゃっ!ずちっ!ぶちゅぱっ!んぼちゅっ!ずちゅるるるるっ!ぶじゅっ!ぶじゅっ!ぶじゅっ!ぐぼっ!ぐぷっ!じゅちゅるるるっ!』
「んぼっ!ん…が…!」
秘部に悲鳴を遮られ、ただ、ひたすらに貪られていた。
『んぶちゅっ!もっと…んぶっじゅちゅっ!もっとだ!んぶんぐじゅっ!ちゅぴっ!ちゅぱっ!んぶぢゅるるるるぅっ!』
為す術も無く、貪欲な黒龍に精を吸われ続ける。
やがて再び射精するが、吸引を止める事は無く、飽きるまで彼女は逸物をしゃぶり続けていた。
『じゅるるるるる〜っ!ちゅぽんっ!』
やがて、口淫に飽きたのか、黒龍は一段落すると、ねちっこく淫靡な唇から逸物を解き放った。
『嗚呼…美味だったぞ。さぁて、次は此方だ』
そう言いながら、俺の顔を秘部から解放すると、その愛液にまみれた肉穴をゆっくりと指で広げた。
『どうだ?ここでお前のモノが絞られるのだ。堪らなく良さそうだろう』
息も絶え絶えな俺に、ニーズヘッグは淫靡に微笑を浮かべ、中の様子を見せつける。
肉穴の中は何重もの襞が蠢き、その隙間から夥しいほどの舌のような肉が、愛液を垂らしながら、今か今かと逸物を欲しているようだった。
あの中に挿入たら最後、こちらの命が尽きるか、黒龍が飽きるまで精を搾り取られる。
半龍にされてから何度も味合わされた地獄の名器。
常人ならば脳が焼き切れるほどの快楽で、即座に絞り殺されるであろう。
「あ……く…」
『では…頂くぞ』
最早声を出す事すら出来ないほど疲労した俺に対し、黒龍は容赦なく逸物に腰を落とした。
ぶぢゅんッ!
ずりゅりゅりゅりゅ!
ごぢゅっ!
一気に膣肉を掻き分け、子宮にまで亀頭を招かれる。
『んあああぁああぁっ!!いいぞ…やはりお前は最高だ!』
ぐりゅっ!ぐじゅっ!ぱじゅんっ!ぱちゅんっ!ずちゅっ!ぐぽっ!ぐちゃっ!
甲殻に包まれた腕で俺を拘束しながら、ひたすら騎乗位で分身を犯す。
厚い肉壁が、舌肉が、子宮が――。
俺から全てを搾り取るかの様に凶悪に暴れまわる。
「――ぁ!?」
ぎぢゅぢゅぢゅっ!
れろれろれろっ!
ごちゅんっ!ごちゅんっ!ごちゅんっ!
『さぁ…出せぇっ!』
じゅぢゅるるるるぅっ!
ばぢゅんっ!
そして、止めとばかりに子宮口に亀頭を吸われて俺は果てた。
どばぁっ!と子宮の中全てを染める様に、精が亀頭からほとばしる。
『んあああぁっ!いいぞ!もっと…もっとだぁ!』
だが、ニーズヘッグは満足しない。
射精しているにも関わらず、腰を降り続け、まだ快楽を貪ろうとする。
『んっ、ちゅぱっじゅるるるぅっ』
そして、尾の先端に口淫すると、それを俺の排泄口へと当てがった。
ずちゅっ!ぐりゅぐりゅぐりゅっ!
「――かっ!?あっ」
問答無用に龍尾をいれられ、前立腺を刺激される。
『嗚呼、大きくなったなぁ。それではこちらも頂くぞ。んぢゅうっ!』
「んむっ!?」
今度は口をも蹂躙され、長い舌を無理矢理差し込まれた。
そのまま舌は俺の喉奥を舐め回す。
「ぐっ!んおっ!んえっ!」
『んじゅうっ!ちゅぱっ!んぶっ!じゅちゅっるるるぅ!』
俺がえずくのもお構いなしに、黒龍は舌を蠢かせる。
ぎちゅんっ!ぶじゅんっ!ばぢゅんっ!ぐじゅっ!ずぢゅっ!
ぐりゅっ!ぐちゅっ!こりこりっ!ぐりゅっ!ずぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぅっ!
『んぶっ!んぢゅっ!ちゅぱっ!ぢゅるるるるぅっ!』
ひたすらに淫らな音を立てて、黒龍は俺から精を搾り続けた。
――それから、夜が明けるまで蹂躙され続け、黒龍は最後とばかりに盛大に絶頂を迎えた。
ようやく口と逸物は解放され、龍尾も排泄口から引き抜かれる。
そして、息をきらしながら、俺の耳元でこう囁いた。
『さぁ、完全に私のモノと…ツガイになると誓え。誓わぬのなら――』
「…断る…」
黒龍が言葉を吐き終える前に、俺は微かな声で最後まで抵抗の意を示した。
瞬間――、自分の身体が宙を舞い、宝具室の扉に叩きつけられる。
その衝撃で頑丈な扉は壊れ、おぞましい勢いで身体は地に落ちた。
「あっ…が…!」
何故こうなったのか、答えは明白。
俺が否定の意を示した途端、ニーズヘッグに身体を思い切り投げられたのだ。
ぼろぼろになった身体に更に重たい一撃が与えられ、いくら死ねない身体といっても限度がある事を悟った。
「ぅっ…あ…」
表情を苦痛に歪ませながらも、僅かな力を振り絞り、身体を起こす。
ニーズヘッグは紅く瞳をたぎらせながら此方へと近づいてくる。
『許さぬ…。字名、許さぬぞ!お前は私のものだ!ツガイの誓いを立てぬなど絶対に赦さぬ!…こうなったなら痛みで思い知らせてやる!』
どうやら完全に怒らせてしまった様だ。
俺は瞬時に、辺りを見回して、中央の台座に祭られた一振りの剣に目をやった。
色褪せた銀色の鞘に納められた両刃の刀剣。
あれが――、あれこそが!
投げ飛ばされた場所が宝具室の中だった事に感謝しつつも、重たい身体を引きずりながら、必死に剣へと手を伸ばす。
そして、どうにかその剣を取り、刃を抜いた。
『!?』
鞘から抜けると同時に、その剣から放たれた光が、天へと向かって伸びていく、そして、先ほどから晴れ渡って輝いていた月を大きな叢雲が覆い始め、雷鳴や豪雨を呼び始めた。
『なんだ!?その剣は!』
異変に気づいたニーズヘッグが声を上げる。
そして、渇いた声で俺は一言、こう答えた。
「お前を殺す剣だ」
全身に力を込めて、黒龍に向かい天野叢雲剣を振るう。
『小癪なぁっ!!』
ニーズヘッグも禍々しい龍爪で剣を迎え打った。
刃が龍爪に触れる。
その瞬間、黒龍の爪が砕け散り、甲殻に大きな傷を与えた。
『ぐっ――!あああぁああああっ!!』
激痛に顔を歪ませた黒龍は、右手を押さえて後ろに下がる。
俺はその様子を見逃さなかった。
恐らくこれが最後の機会だ。
俺は縦に振り下ろした剣をそのまま下から切り上げる。
両刃だから出来る斬撃に、全てをかけた。
同時に硬い甲殻を破り、肉を絶つ感触が剣から伝わった。
『ぎっ、あああああぁあああっ!』
黒龍が地獄から響くような悲鳴を上げる。
その不死身の身体は俺の斬撃により、斜めに斬り上げられ、重症を負っていた。
『き…さま…。それは…まさか…』
「天乃叢雲剣…噂は本当だったようだ」
これで、終わりだ。
最後に剣を掲げて彼女に止めを刺そうとした瞬間、激しい眩暈が俺を襲った。
『ぐっ、おおおぉおっ!!』
その様子をニーズヘッグが見逃すわけもなく長い龍尾が俺の身体へ放たれる。
べきりっ!と腹部を強打され、後方へと吹き飛ばされた。
「ぐっ…ぁ…」
どうにか剣は離さずにいられたが、もう立てる気力すら無い。
黒龍は瀕死の身体を抑えると、大きな翼を広げて天井へと羽ばたいた。
そのまま怒轟を上げて、天井を突き破り、その姿を見上げる俺に向かいこう答えた。
『今宵は私の負けだ!字名…名も無き侍よ!だが、次に逢うときはお前の全てを奪いつくしてやる!それまで、せいぜい足掻いてみるがいい!』
巨大な龍へと姿を変えた龍神ニーズヘッグは、雷鳴と豪雨を生み出す叢雲へと姿を消した。
その姿を見送り、結局俺は黒龍を殺す事が出来なかった事実を悟る。
剣を鞘に納めると、先ほどまで荒れていた天候が嘘のように静まり、銀色の月が大きく顔を出した。
俺はその月を傷が癒えるまで、ずっと見上げていた。
――数年後、黒龍にツガイとして選ばれた男は、永遠の命に抗う為、世界各地の神の武具を探し回った。
彼に襲撃された国々は、その半龍のおぞましき姿や圧倒的な強さを恐れ、皆畏怖してこう呼んだ。
名も無き半龍…“字無し”と――。
終
12/07/13 23:14更新 / ポン太
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