中編上
あれからまたしばらく時が経った。
だが、黒龍は未だ飽きずに俺の上で快楽を貪っていた。
何時まで経っても自由にならない事に、俺は女が与える快楽すら通り越し、苛立ちが募っていく。
しかし、愚息はだらしなく黒龍の秘部に反応する。
その事実がとてつもなく情けなかった。
『…侵入者か……』
だが、そんな日常も終わりを告げる日がやって来た。
場内に人の気配を感じたのか、黒龍は名残惜しそうに俺の愚息から腰を上げた。
『私の愉しみを邪魔するとは無粋な奴等だな…。
仕方ない、少し思い知らせてやろうか…』
愉しみを邪魔された黒龍は刀傷が付いた右眼をぎらり、と紅く光らせ、漆黒の鱗を纏う。
『“字無(あざな)”よ――。逃げよう等とは考えない事だ…。まあ、お前の身体は私の魔力によって縛られているから逃げようとしても無駄だと思うがな…』
最後にそう俺に釘を差し、黒龍…“ニーズヘッグ”は寝室を後にした。
「結局魔力が解けない限りこのままか…解せんな…」
そう一人呟き、しばらくそのまま横になっていると、突如轟音が辺りに響き渡り、古城を揺らした。
「っ!?」
その轟音と同時に、身体に自由が戻る。
ニーズヘッグの魔力が解かれたようだ。
おそらく、侵入者があの黒龍を唸らせる猛者だったのだろう。
こちらに魔力を供給する暇を無くしたわけだ…。
俺はしめたと心の中で叫ぶと、すぐさまベッドから這い上がり、壁に立て掛けられていた刀を取る。
そして、シーツを衣服代わりに身体に巻き付けて、寝室を後にした。
立て続けに轟音が響く。
どうやら、猛者と黒龍は激しい戦いを繰り広げているようだ。
しかし、あの黒龍がここまで苦戦するとは珍しい…。
まあ、こちらにしては有り難いの一言に尽きる…が。
一階まで駆け下り、裏口らしき回路から出口へと向かう。
しかし、それと同時に轟音が止んだ。
『どこに向かうつもりだ?字無よ…』
後ろからあの女の声がハッキリと聞こえる。
振り向くとそこには戦闘を終えて、鱗を朱く染めた黒龍が立っていた。
「時間切れか…」
俺がそう呟くと黒龍は瞳を真っ赤に燃え上がらせて此方を睨みつけてきた。
銀色の長い髪は逆立つように波打ち、爪は岩すら引き裂ける様に鋭くなっている。
「侵入者はどうした?」
俺はその様子に怖気を感じながらも、平静を装いそう答えた。
『見てわからないか?殺しやったわ。私の愉しみを邪魔した罰としてゆっくりと苦痛を味あわせながらな…』
黒龍はそう言いながらゆっくりと此方に近寄ってくる。
俺は反射的に後退っていた。
「…侵入者に手こずって怒っているのか?」
『それもあるな…。確かに“奴等”は人の中では手強い相手だった。だが、何よりも…』
黒龍が目の前まで迫る。
もう後ろに退路は無い。
『何よりも、貴様が私の下から逃げようとした事に憤りを感じているのだ!!』
どんっ!!と、古城に振動が走る。
目の前の黒龍は、玩具が手元から居なくなる事が相当気に入らないらしい…。
ますます眼を紅くたぎらせて大声でそう叫んだ。
「悪いが、俺はもうここに残るつもりは無い」
しかし、その気迫に対して俺は、はっきりと拒絶の言葉を述べる。
『貴様は私のものだ!例え嫌がろうとも無理矢理にでも幽閉してやる!』
ニーズヘッグが俺の身体に掴み掛かろうとしてきたその瞬間、眩い光がその身体を包んだ。
『っ――!なんだこれは!?』
呪印の様な文字の光は黒龍の全身を包み、動きを封じ込める。
やがて、それは小さなドーム場になり、ニーズヘッグを閉じ込めた。
『魔封じの呪印か!?おのれえぇぇ!!雑魚共が余計な事を!!』
どうやら先ほど戦っていた輩が、冥土の土産に黒龍に放った術が今になって効果を発揮したらしい。
俺はおぞましい程の幸運に感謝しながらも、出口に向かって思い切り走りだした。
『字無ああああぁ!!』
地の底から這い出て来そうな程に悔しそうな声を上げ黒龍は呪印を攻撃する。
あの様子だと結界は長くは持たない。
奴を封印する事は不可能だったが、俺を逃がす為の時間稼ぎにはなった。
後で暇があればその侵入者に黙祷でも捧げて置いてやろう。
――こうして俺は、黒龍の巣から生還する事に成功した。
後は奴を殺す為の知識と武力を手に入れるだけだ…。
なぁに…時間は無限にある。
奴に見つからない程度にゆっくりと動く事にしよう…。
だが、黒龍は未だ飽きずに俺の上で快楽を貪っていた。
何時まで経っても自由にならない事に、俺は女が与える快楽すら通り越し、苛立ちが募っていく。
しかし、愚息はだらしなく黒龍の秘部に反応する。
その事実がとてつもなく情けなかった。
『…侵入者か……』
だが、そんな日常も終わりを告げる日がやって来た。
場内に人の気配を感じたのか、黒龍は名残惜しそうに俺の愚息から腰を上げた。
『私の愉しみを邪魔するとは無粋な奴等だな…。
仕方ない、少し思い知らせてやろうか…』
愉しみを邪魔された黒龍は刀傷が付いた右眼をぎらり、と紅く光らせ、漆黒の鱗を纏う。
『“字無(あざな)”よ――。逃げよう等とは考えない事だ…。まあ、お前の身体は私の魔力によって縛られているから逃げようとしても無駄だと思うがな…』
最後にそう俺に釘を差し、黒龍…“ニーズヘッグ”は寝室を後にした。
「結局魔力が解けない限りこのままか…解せんな…」
そう一人呟き、しばらくそのまま横になっていると、突如轟音が辺りに響き渡り、古城を揺らした。
「っ!?」
その轟音と同時に、身体に自由が戻る。
ニーズヘッグの魔力が解かれたようだ。
おそらく、侵入者があの黒龍を唸らせる猛者だったのだろう。
こちらに魔力を供給する暇を無くしたわけだ…。
俺はしめたと心の中で叫ぶと、すぐさまベッドから這い上がり、壁に立て掛けられていた刀を取る。
そして、シーツを衣服代わりに身体に巻き付けて、寝室を後にした。
立て続けに轟音が響く。
どうやら、猛者と黒龍は激しい戦いを繰り広げているようだ。
しかし、あの黒龍がここまで苦戦するとは珍しい…。
まあ、こちらにしては有り難いの一言に尽きる…が。
一階まで駆け下り、裏口らしき回路から出口へと向かう。
しかし、それと同時に轟音が止んだ。
『どこに向かうつもりだ?字無よ…』
後ろからあの女の声がハッキリと聞こえる。
振り向くとそこには戦闘を終えて、鱗を朱く染めた黒龍が立っていた。
「時間切れか…」
俺がそう呟くと黒龍は瞳を真っ赤に燃え上がらせて此方を睨みつけてきた。
銀色の長い髪は逆立つように波打ち、爪は岩すら引き裂ける様に鋭くなっている。
「侵入者はどうした?」
俺はその様子に怖気を感じながらも、平静を装いそう答えた。
『見てわからないか?殺しやったわ。私の愉しみを邪魔した罰としてゆっくりと苦痛を味あわせながらな…』
黒龍はそう言いながらゆっくりと此方に近寄ってくる。
俺は反射的に後退っていた。
「…侵入者に手こずって怒っているのか?」
『それもあるな…。確かに“奴等”は人の中では手強い相手だった。だが、何よりも…』
黒龍が目の前まで迫る。
もう後ろに退路は無い。
『何よりも、貴様が私の下から逃げようとした事に憤りを感じているのだ!!』
どんっ!!と、古城に振動が走る。
目の前の黒龍は、玩具が手元から居なくなる事が相当気に入らないらしい…。
ますます眼を紅くたぎらせて大声でそう叫んだ。
「悪いが、俺はもうここに残るつもりは無い」
しかし、その気迫に対して俺は、はっきりと拒絶の言葉を述べる。
『貴様は私のものだ!例え嫌がろうとも無理矢理にでも幽閉してやる!』
ニーズヘッグが俺の身体に掴み掛かろうとしてきたその瞬間、眩い光がその身体を包んだ。
『っ――!なんだこれは!?』
呪印の様な文字の光は黒龍の全身を包み、動きを封じ込める。
やがて、それは小さなドーム場になり、ニーズヘッグを閉じ込めた。
『魔封じの呪印か!?おのれえぇぇ!!雑魚共が余計な事を!!』
どうやら先ほど戦っていた輩が、冥土の土産に黒龍に放った術が今になって効果を発揮したらしい。
俺はおぞましい程の幸運に感謝しながらも、出口に向かって思い切り走りだした。
『字無ああああぁ!!』
地の底から這い出て来そうな程に悔しそうな声を上げ黒龍は呪印を攻撃する。
あの様子だと結界は長くは持たない。
奴を封印する事は不可能だったが、俺を逃がす為の時間稼ぎにはなった。
後で暇があればその侵入者に黙祷でも捧げて置いてやろう。
――こうして俺は、黒龍の巣から生還する事に成功した。
後は奴を殺す為の知識と武力を手に入れるだけだ…。
なぁに…時間は無限にある。
奴に見つからない程度にゆっくりと動く事にしよう…。
11/07/18 22:58更新 / ポン太
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