死闘は厳かに
『さあ、始めようか!』
怒号を上げる龍は大気を震わしながら字無しの前に立ちふさがる。
その禍々しい角を力強く振り上げながら、鋭く並んだ牙を魅せつけ、その口内から灼熱の息吹を放った。
その炎から逃れようと、字無しは大地を蹴り混沌とした戦場を駆け抜ける。
後を追うように、灼熱の息吹は触れたもの全てを焼き払った。
辺りにいた傭兵や、味方の兵士達も関係なく焼き払われる。
「ああああアアああああああぁ!?」
「あつい!あついよおぉ!」
容赦なく炎に焼かれる者達の断末魔が辺りに木霊した。
『あはははははっ!燃えろ!燃えろォ!』
まるでその様子を楽しみながら炎を吐き続ける龍は最早、理性のない破壊を楽しむ化け物と化していた。
龍の足元まで駆け抜けた字無しは、大きな躯体についた甲殻や鱗を足場にし龍の頭へと登っていく。
『ちょこまかと虫みたいな奴だ!』
龍は咆哮を上げながら己の身体にしがみついた字無しを払おうと鋭い爪のついいた大きな腕を振るった。
「っ!」
字無しは迫りくる巨大な腕を、間一髪で抜いた天乃叢雲の剣から放たれる雷撃にて迎撃する。
青白い雷撃は幾本もの刃のような形となり、龍の掌を貫いた。
『ああああああああっ!』
激痛に咆哮を上げた龍は身体を震わし、大地へと身体を擦りつけた。
その衝撃に耐えきれず、甲殻から手を放してしまった字無を縦横無尽に振るっていた尾が容赦なく襲う。
尋常ではない衝撃により、字無しの身体が大地へと叩きつけられる。
龍の血が流れていなければ即死していたであろう。
それでも身体へのダメージは大きく、不死身の字無しでもしばらく行動不能になるほどの重傷を負っていた。
「う・・・・が・・・!」
『死ねぇえ!あざなしぃ!』
再び怒号を浴びせながら、起き上がった龍は息吹を放とうと字無しに狙いを定める。
いくら不死身だろうと、灼熱の息吹により溶かされれば流石の字無しも生きていることはできない。
地についた身体を引きずり起こし、どうにか頭上の龍を仰ぎ見る。
(このままでは焼かれる。ここで使いたくはなかったが)
やむなく、ある物を字無しが取り出そうとしたその時、
すぐさま炎を吐こうとして大口を開いていた龍の頭上にある人影がさした。
『!!』
刹那――、龍の上顎から下顎を巨大な大剣が貫く。
『んぐっ!?』
無様な声を上げながら口を閉ざされ行き場を失くした息吹が、龍の口内で暴発した。
『うばあええああああああぁああっ!?』
己の口を焼きながら無様に悲鳴を上げた龍は、歯と歯の隙間から炎を漏らしながら醜くもがいていた。
『ぎざまぁあああ!なにものだあああぁっ!?』
喉を焼かれ最早まともな発音さえできない龍は、血眼の目を見開いて、己の邪魔をした新たな敵を凄まじい形相で威嚇する。
「フフっ!答える必要はないよ・・・。出来損ない」
強大な剣を軽々しく片手に持った黒髪の獣人は目の前の龍にそう言い放った。
怒りにまみれた龍は三度、咆哮を上げ、目の前の獣人を捻りつぶそうと襲いかかろうとする。
「私を襲うことよりも頭上を気にした方がいいよ」
獣人の女の言葉に、ふと異様な空気に満ちた雰囲気に疑問を抱き、その原因となっているであろう頭上に突如現れた叢雲に目を向けた。
「惜しかったな。アングよ・・・」
『!?』
いつの間にか己の頭にいた字無しに驚愕した龍は、これが自分の最後の瞬間だと悟った。
叢雲の剣を天高く字無しが掲げた瞬間、
またたくまに巨大な雷がその場に、つまりは龍の頭上に降り注いだ。
大陸の果てまで響くような強大な怒号が辺りに木霊する。
龍は青白い雷の中で骨まで焼かれ灰すら残らず消え去った。
その雷が落ちた後には城すら飲み込むような大きな大きな穴が空いているばかりであった。
その穴の中心で、龍の最後を見届けた字無しは、掲げていた叢雲の剣を静かに降ろした。そして、クレータの淵からこちらを伺う獣人に目を向ける。
「アギト・・・」
過去の因縁か、または己の残した業か・・・。
黒龍に次いだ生涯の強敵が再び目の前に現れる。
「久しぶりだね・・・ファング・・・いや、今は字無か・・・」
ようやく出会えた獲物に、アギトは眼を光らせ舌をなめずった。
逃れられぬ宿命――、
いざ、死闘は厳かに――。
怒号を上げる龍は大気を震わしながら字無しの前に立ちふさがる。
その禍々しい角を力強く振り上げながら、鋭く並んだ牙を魅せつけ、その口内から灼熱の息吹を放った。
その炎から逃れようと、字無しは大地を蹴り混沌とした戦場を駆け抜ける。
後を追うように、灼熱の息吹は触れたもの全てを焼き払った。
辺りにいた傭兵や、味方の兵士達も関係なく焼き払われる。
「ああああアアああああああぁ!?」
「あつい!あついよおぉ!」
容赦なく炎に焼かれる者達の断末魔が辺りに木霊した。
『あはははははっ!燃えろ!燃えろォ!』
まるでその様子を楽しみながら炎を吐き続ける龍は最早、理性のない破壊を楽しむ化け物と化していた。
龍の足元まで駆け抜けた字無しは、大きな躯体についた甲殻や鱗を足場にし龍の頭へと登っていく。
『ちょこまかと虫みたいな奴だ!』
龍は咆哮を上げながら己の身体にしがみついた字無しを払おうと鋭い爪のついいた大きな腕を振るった。
「っ!」
字無しは迫りくる巨大な腕を、間一髪で抜いた天乃叢雲の剣から放たれる雷撃にて迎撃する。
青白い雷撃は幾本もの刃のような形となり、龍の掌を貫いた。
『ああああああああっ!』
激痛に咆哮を上げた龍は身体を震わし、大地へと身体を擦りつけた。
その衝撃に耐えきれず、甲殻から手を放してしまった字無を縦横無尽に振るっていた尾が容赦なく襲う。
尋常ではない衝撃により、字無しの身体が大地へと叩きつけられる。
龍の血が流れていなければ即死していたであろう。
それでも身体へのダメージは大きく、不死身の字無しでもしばらく行動不能になるほどの重傷を負っていた。
「う・・・・が・・・!」
『死ねぇえ!あざなしぃ!』
再び怒号を浴びせながら、起き上がった龍は息吹を放とうと字無しに狙いを定める。
いくら不死身だろうと、灼熱の息吹により溶かされれば流石の字無しも生きていることはできない。
地についた身体を引きずり起こし、どうにか頭上の龍を仰ぎ見る。
(このままでは焼かれる。ここで使いたくはなかったが)
やむなく、ある物を字無しが取り出そうとしたその時、
すぐさま炎を吐こうとして大口を開いていた龍の頭上にある人影がさした。
『!!』
刹那――、龍の上顎から下顎を巨大な大剣が貫く。
『んぐっ!?』
無様な声を上げながら口を閉ざされ行き場を失くした息吹が、龍の口内で暴発した。
『うばあええああああああぁああっ!?』
己の口を焼きながら無様に悲鳴を上げた龍は、歯と歯の隙間から炎を漏らしながら醜くもがいていた。
『ぎざまぁあああ!なにものだあああぁっ!?』
喉を焼かれ最早まともな発音さえできない龍は、血眼の目を見開いて、己の邪魔をした新たな敵を凄まじい形相で威嚇する。
「フフっ!答える必要はないよ・・・。出来損ない」
強大な剣を軽々しく片手に持った黒髪の獣人は目の前の龍にそう言い放った。
怒りにまみれた龍は三度、咆哮を上げ、目の前の獣人を捻りつぶそうと襲いかかろうとする。
「私を襲うことよりも頭上を気にした方がいいよ」
獣人の女の言葉に、ふと異様な空気に満ちた雰囲気に疑問を抱き、その原因となっているであろう頭上に突如現れた叢雲に目を向けた。
「惜しかったな。アングよ・・・」
『!?』
いつの間にか己の頭にいた字無しに驚愕した龍は、これが自分の最後の瞬間だと悟った。
叢雲の剣を天高く字無しが掲げた瞬間、
またたくまに巨大な雷がその場に、つまりは龍の頭上に降り注いだ。
大陸の果てまで響くような強大な怒号が辺りに木霊する。
龍は青白い雷の中で骨まで焼かれ灰すら残らず消え去った。
その雷が落ちた後には城すら飲み込むような大きな大きな穴が空いているばかりであった。
その穴の中心で、龍の最後を見届けた字無しは、掲げていた叢雲の剣を静かに降ろした。そして、クレータの淵からこちらを伺う獣人に目を向ける。
「アギト・・・」
過去の因縁か、または己の残した業か・・・。
黒龍に次いだ生涯の強敵が再び目の前に現れる。
「久しぶりだね・・・ファング・・・いや、今は字無か・・・」
ようやく出会えた獲物に、アギトは眼を光らせ舌をなめずった。
逃れられぬ宿命――、
いざ、死闘は厳かに――。
15/08/22 01:55更新 / ポン太
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