現在地-ガレス-中央公園

sideセン

「ふわぁー……暇だなぁ……」

俺は今、ガレスにある中央公園のベンチに座っていた。

1週間前まではゴミが散らかり汚かったこの街も、掃除されて綺麗なものとなっていた。

「セン、まだ怪我は治ってないんだから体動かすのは駄目だよ」

俺の呟きに対して、隣で一緒に座っているアノンが釘を刺してきた。

これから俺に対して1日1人のお目付け役が付けられるらしい……俺ってそんなに信用ないのかな。

「分かってるって……」

チラリと横に視線を向けると、2人のサキュバスが話し合いながら俺達の座っているベンチの前を歩いて通っていく。

「あら、貴女今日は化粧が違うわね？」

「ええ、彼に喜んで貰いたくて何時もより力を入れてお化粧をしましたわ。貴女も新しい服ではありませんか？」

「フフフ、私もダーリンに見て欲しくってね」

そんな女子らしい会話をしながら俺達の目の前を横切っていく。

「いやー、この街もすっかり新魔物の街になっちまったよな。俺が来たときじゃ考えられない……ん？」

アノンに同意を求めたが、反応が無いのでアノンへ顔を向ける。

アノンを見ていると、なんだか悩ましげな目でサキュバス達の背中を見つめ続けている事に気が付いた。

「アノン？」

「…そうか！分かったよ！」

「ど、どうした？」

急に叫んで立ち上がったアノンに俺は首を傾げるが、アノンはそのまま黙ってベンチから立ち、公園の向こうへ走って行ってしまった。

「……？どうしたんだアノンの奴……てか俺のお目付け役はいいのかよ」

その後、宿に戻った俺だが、アノンのことがずっと気にかかり、モヤモヤとしていたのだった。



sideアノン

ここ最近で、またセンの周りに女が増えちまったね……これからももっと沢山の仲間が増えると、アタシなんかに構う時間は少なくなっちまう。

そう思っていたら、サキュバスの2人が女子らしい会話をしていたのを聞いて、ピンときたんだ。

アタシも化粧をして、服にも気を使う……お洒落をすればいいんじゃないか！

もっと女らしくなって、もっと綺麗になって、もっと可愛くなれば、センはもっとアタシのことを見てくれるはずさ！

思い立ったが吉日ということで、アタシは思いついてからすぐさま服屋に向かった。

この街が制圧されてから数日が経ち、早い所ならもう新しい店を建ててオープンしている筈だ。

アタシは街を駆け回って漸く服屋を見つけた。

「服屋、スパイダーウェブか……」

少し古臭い建物だったが、間違いなく服屋だね。

ドアを開けて中に入ると、様々な服が目に入ってきた。

桃色の可愛らしいドレスに青い革の上着、白い清楚なワンピースなんかもあって、品揃えは良さそうだね。

「ムフー、さて、服を選び……」

鼻息を荒くして取り掛かろうとするけど、よくよく考えればアタシは今まで、生まれてから1度たりともお洒落なんてしたことがない。

化粧の仕方も知らなければ、服なんて選んだ事もなかったのを思い出しちまった。

「早速躓いちまったね……」

ハァー、どうすりゃいいんだい？

「あら、何か悩み事かしら？」

項垂れているアタシへ、声がかかり、声の主を見ると、下半身が蜘蛛の魔物、アラクネが腕を組んで立っていた。

店の名前からしても、このアラクネが店主なんだろうね。

「いや、そのだね……」

顔が熱くなる。

初対面の相手に、好きな男のためにお洒落をしたい……だなんて言うのは誰だって恥ずかしいもんだろう？

「あー、もしかして旦那さんに見てもらいたくて新しい服を買いに来ただとかかしら？」

「んなっ！？なんで分かるんだい！？」

「あら、カマかけたんだけど、当たっちゃったかしら」

う……まんまと引っかかったみたいだね。

でもこれで話が分かりやすくなっただろうし、ちょっと手伝ってもらおかね。

「ま、まぁ店主の言うとおりなんだけどね、アタシは生まれてこのかた服なんて選んだ事ないから、手伝っちゃもらえないかい？」

「任せてちょうだい。そういうの得意なんだから♥」

と、手伝って貰うのに名乗らないのも失礼だね。

「アタシはアノン。よろしく頼むよ」

「私はロッタよ。任せて頂戴！じゃあ早速こっちに来てね♥」

「へ？ちょ、わぁっ！？」

アタシは急にロッタに引っ張られ、奥の試着室に連れ込まれる。

「な、何するんだい！？」

「ウフフ、貴女みたいな心の奥底で乙女ってる娘が萌えるのよねぇ…♥。私に全て委ねればいいから♥」

と、ロッタが言うとアタシは両手両足を蜘蛛糸で大の字に高速されちまった…！？

さっきからロッタの目が妖しく光ってるけど大丈夫なのかい！？涎も垂れてるし！？

「ウフフフ、覚悟しなさ〜い！」

「イ、イヤァアアアアアアアアアア！？」

……入る店を間違えたなと、後悔したね。



sideセン

「つー訳で、アノンの様子がおかしいんだが」

コトっと木が軽くぶつかるような音と共に、俺が言うと、向かいにいるティファルナも顔を少し顰めながら手を動かす。

「急に叫んで行ってしまっただけでは、流石になんとも言えないんだがな」

再びコトリと音を立てて、盤上の駒が動く……フム、そうくるか。

5、6秒思考すると共に、俺は手を動かした。

「ミスティ、ミン、2人は何か分からないか、っと」

今日の分の仕事を終えて宿に戻ってきていた2人にも一応聞いてみる。

「そうですね……アノンさんに何か悩みがあって、その解決方法が分かった！とかじゃないですかね？」

「ミン、難しいこと分からない」

因みにミスティはベッドに腰掛けて本を呼んでいるが、ミンは俺の首に腕をまわして絡み付いてくる。

お陰でミンの吐息が耳元に噴きかかって少しゾクゾクする。

っと、ティファルナの駒が動いたな。

「アノンに悩みか……あるとすれば何だろうな？」

自分の駒を動かしてチェックメイトだ。

「うぐ！？セ、セン…待っ―」

「待ったは3回までだろ？もうナシだ」

因みに俺とティファルナは木製のチェスをしていた。

完全にチェックメイトしているからどこへ逃げようともキングは追い詰められている。

ティファルナは俺のキングに集中していたから、キングを囮に隙を突いたら結構簡単に勝利できた。

「にしてもアノンの悩みか……俺が何か心配かけてなけりゃいいけどな」

以前崖から落ちた件について皆に散々言われていたので、自分の言動が不安になる。

チェスにも一息ついて一旦落ち着いていると、ドアがノックされる。

「どうも〜、ハーピー運送業のお届け物でーす」

ティファルナが席を立ってドアを開けて対応する。

「ここの宿に居る筈のセン・アシノさん宛てなんですけど…サイン貰っていいですか？」

「ああ」

俺宛ということで、俺もドアへ向かい紙にサインを書いて荷物を受け取る。

「うおっ！？重っ！？」

思っていたよりかなり重たかったので慌てて力を入れて保つ。

それを見て慌ててティファルナが手伝ってくれた。

「中身は何だ…？生物……お一人の時にお開け下さいか……」

箱に貼り付けられている紙にはそう書いてあるが……なぜ生物なのに1人で開けなければならないんだ？それにこの重量って…？

危ない物じゃないよな？

「どうします？随分怪しい物ですし……捨てちゃいます？」

「……いや、服屋から贈られてるし魔物からの贈り物なら妖しくても危ないモンじゃないだろ。あっちの部屋で開けてくるわ」

ミスティに聞かれるが、とりあえず注意書き通りに開けてみるか。

「ミン、ドアを開けてくれ」

「ん」

宿の隣の部屋に行くためにミンにドアを開けて貰って俺とティファルナの2人で運び込む。

「ふー、じゃあ何かあったらそっちに呼びに行くから」

この部屋はコロナ特性の防音の魔法がかけられており、内部の声や音が外に漏れる事は無い……勿論夜の運動の為だ。

つまりこちら側の部屋はそういう部屋ってことになる。

ミンとティファルナが部屋から出て行くと、俺は箱の蓋を恐る恐る開ける。

なんと、そこには―――！


















「んー！んーっ！」

白い純白のドレスを着て、まるで結婚式の新婦のような服装で、白い糸の様な物でギチギチに緊縛されて身動きが取れなくされたアノンだった。

口にも、白い糸が幾重にも巻かれて猿轡をされている。

アノンはよっぽど暴れたのか、息を荒くして顔を真っ赤にし、ドレスも少し乱れている。

「むぐぐ……むむ！」

暴れるアノンの胸元に手紙の様な物が挟まっているのに気が付いた。

俺は戸惑いつつも胸元の手紙を取ると中を呼んでいく。

『セン・アシノさんへ
荷物には驚いて貰えたかしら？彼女、最近貴方の周りに魔物が増えて焦ってたみたいよ？皆に負けないように、お洒落したいって私の店に来たの。
でもあんまり可愛いから縛って着せ替え人形にしちゃった♥
結局結婚式スタイルの純白ドレスにしてみたけど、どうかしら？縛っておいたし、貴方の加虐心を擽れるといいけど♥
心ゆくまで楽しんでね♥
服屋スパイダーネット　店主ロッタ』

手紙を読み終えると、俺はフッと笑みを浮かべた。

そっか、アノンの悩みってそう言うことだったのか……なら、そんな事心配する事ないって教えてやろうか。

「安心しろアノン、俺は誰かを見捨てたり、裏切ったりすることは、絶対にないからさ」

俺は縛られたアノンを抱えてベッドに押し倒す。

据え膳食わねば何とやら！

さぁ、ヤりまくるか！

と、手紙を読んで状況を理解し、アノンのエロイ姿を見て興奮していた俺は手紙の裏に書いてあった事を見逃していた。

『P.S因みに、彼女に媚薬使ってるから何時もより激しくなると思うわよ♥』

何時も以上に燃えていた俺と、何時も以上に求めてきたアノンによって、俺達はどうやら気絶するまでヤり続けたらしい。

俺が気が付くと、アノンがアヘ顔で全身精液まみれ、全身緊縛で長時間放置されていたので、アノンが戻ってくるまで少し時間がかかったのは言うまでも無い。

「ううう……あんな恥ずかしい格好で徹底的に犯されるなんて、恥だよ…」

「そう気を落とすなって…可愛かったし、何か少しレイプしてるみたいで背徳感と言うか…何時もと違う興奮があったしな」

「とんだ変態野郎だよ、センは……そんな欲求は、アタシが解消してやるよ……♥」

「へへ、じゃあ宜しく頼む♥」

■作者メッセージ
お待たせしました。

相変わらず細かなエロシーンはカットですが、アノンの可愛さを表現できたでしょうか？

次回はアーリア予定です。

それから、今回書いてて思いましたが、今まで本編でカットしてしまったエロシーンを執筆してくれる方募集です(笑)

割と本気なんで、感想にて応募して下さい。