連載小説
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-序章-
駆ける、駆ける、駆ける。

幾度の屍を超えて、更なる屍を生み出してもまだ駆ける。

死人の丘を越え、血の川を渡り、死に絶えた大地を踏みしめて。

かくしてその戦士は武具を振るう。

極めることなく収めた武術を振るう。

死肉を喰らい、血を啜り、唯生きる事と傷つける事を目的に。



彼は愛される。

彼は愛す。

彼を信じ続ける者達によってその身は癒されていく。

求め合い、愛し合い、交じり合い。

変わっていく。

傷つける為ではなく守る為に。

唯生きるだけではなく、愛す為に生きる為。





ガヤガヤと騒がしい此処はとある親魔物領のとある酒場―――

その奥にあるカウンター席での話。

「なぁ、知ってるか?」

木造りの椅子に腰掛ける酔っ払っているのか、真っ赤な顔をした三十路ほどの男が隣に座っている、蒼い鎧に身を包んだ黒髪の二十歳ほどの青年に声をかける。

「何が?」

青年の疑問は尤もだ。

男の言葉には主語が抜けており、それだけでは理解に苦しむ言葉となっている。

青年は理解に苦しむといった表情で男に視線を返す。

「ついこの間の戦い……『アディウスの攻防戦』ってあっただろ?」

『アディウスの攻防戦』。

親魔物領に存在する中規模都市アディウスで起きた戦。

魔物に対して教団が攻撃を仕掛けたのだ。

教団は都市に斥候を何人も出しており戦況が有利となるように幾重もの策を組み立てて都市内の魔物娘と親魔物派の人々を殺そうとした。

「知ってる。教団の策は魔物によって打ち破られ、教団のメンバーはほぼ魔物に骨抜きにされたんだろ」

青年は興味が無いとばかりに目を閉じてその手に持っていたジョッキを仰いで中の酒を喉の奥へと流し込んだ。

酒の苦い味が口の中へと広がり、空となったジョッキをカウンターに叩き付けた。

「いや、それがどうも違うらしいんだ」

「……」

男の言葉に、やはり青年は興味を示さない。

しかし酔っている男は未だその軽い口を閉じる事は無い。

「表向きは魔物が教団の策を破って取り押さえたらしいが、実際は魔物は教団の作戦に翻弄され続けて捕縛されまくってたらしいのよ」

「……なら、どうやってその騒ぎは終わったんだ?」

無視しても喋り続ける男に根負けしたのか、青年は適当に相槌を打つ。

それに気を良くしたのか男はニヤケながら口を動かす。

「それでな、その騒ぎを収めたのは今噂のあの『死人喰らい』らしいのよ!」

『死人喰らい』。

蒼いフルプレートメイルに身を包んだ謎の戦士の通称であり、その『死人喰らい』が通った戦場には死人しか残らないとも言われている。

中でも魔物を擁護するかのように教団の活動を邪魔すると、もっぱらの噂であり、反魔物領では指名手配されているほどである。

逆に親魔物領では英雄視されてもいる。

「んあ?そう言えば兄ちゃんの鎧も少し蒼いような…」

ゴッと鈍い音が辺りに響きガタンと音を立てて男が仰向けに地面に倒れる。

青年が拳で男の顔面を殴り気絶させたのだ。

男は情けなく地面に転がり酒のせいもあってか鼻からは盛大に鼻血が出ている。

青年の腕にはガントレッドが装着されており、それも威力を上げているようだ。

周りの人々や魔物達はざわついている店内のせいでそれに気がつかず、青年はカウンターに自分と殴ってしまった男の分の代金を置いて出口に向かっていく。

「…広まってるな」

青年はマントを羽織り鎧を隠すようにして酒場から出て行ってしまった。





-Rebel- 反逆者と魔物娘

-序章- 了
12/08/11 17:43更新 / ハーレム好きな奴
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■作者メッセージ
性懲りも無くまた始めました。

因みに主人公は尖ではありません。

リメイクと言うか、全魔物娘攻略を目指しているだけでそれ以外はほぼ別だと思います。

自分なりに他の方の小説を見て勉強した心算なので生暖かい目でお願いします。

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